Angel Sugar

「学習出来ない男」 (160万ヒットキリ番リクエスト)

タイトル
 戸浪が帰宅すると玄関が薄暗かった。訝しげに思いながらも靴を脱いでいると、祐馬が手にろうそくを持って迎えてくれる。
「お帰り戸浪ちゃん」
「ただいま。ところで祐馬。もしかして停電なのか?外から見た限りではそんな風には見えなかったんだが……」
「んも~戸浪ちゃんって、今晩は俺、ムードを盛り上げるためにろうそくに火を灯してるんだよ。んな~結構ムード良いだろ?」
 嬉しそうに祐馬は笑うのだが、ムードがあると言うよりホラーだ。だが、折角祐馬が無い知恵を絞って盛り上げようとしているのだから、戸浪もつき合ってやることにした。
「ま、まあな。いい感じだと思う」
「あ、やっぱり?良かった~。夕飯の支度が出来てるから、着替えたらキッチンに来てよ。ごちそう作ったんだ」
「じゃあ、すぐに着替えてくるよ」
 戸浪が言うと、祐馬は嬉しそうにキッチンに先に行ってしまった。だが、明かりの無くなった玄関は急に薄暗くなり、キッチンから廊下に漏れる明かりだけで、手探りで移動しなければならない。だが、戸浪は何も言わずに寝室に向かう。
 元々気が回らないのが祐馬だ。それは逆に言うと大らかさでもあるのだから、小さな事で文句を言って、ぶちこわしたく無い。このまま行けばきっと久しぶりにベッドで抱き合えるはず。
 この間はいつやったんだ……
 思い出せないぞ!
 ……
 全く……
 長かったなあ……
 良く私も耐えたものだ。
 いや、祐馬が我慢強いのか?
 違う。
 それより先に服を着替えてこないと……
 戸浪は慌てて寝室に向かうと、スーツを脱ぎ、とりあえずラフな格好に着替えた。だが、ふと思うことがあって、今穿いたズボンを脱ぐと、下着を新しいものと取り替える。
 何となくだった。
 別に意味はない。
 まだ風呂にも入っていないのにエッチをするつもりはない。
 単に、気まぐれだ。
 そうそう。
 今日一日穿いていた下着を、帰ってきて穿き替えることはおかしいことではない。
 戸浪は自分にそう言い聞かせて、誰も見ていないのに照れていた顔を引き締めるとキッチンに向かった。
 
「戸浪ちゃん、座って、座って」
 皿をテーブルに並べていた手を止めて、祐馬はキッチンの戸口に立つ戸浪に言う。
「あ……ああ……」
 キッチンの電灯も消されていて、テーブルにいくつか置かれたろうそくの明かりだけがぼんやりと周囲を照らす。浮かび上がる料理は白熱灯にも似た柔らかな明かりで、いつにもまして美味しそうに見えた。
 だが問題は、小さな皿に立てられたろうそくが、どこから見ても仏壇で使われるようなものに見えたことだ。いや、戸浪が想像したろうそくで間違いないだろう。これでは火の玉が周囲に浮かんでいたとしても驚かない。どちらかと言えば、そういう雰囲気がこのキッチンに漂っていたのだ。
 正しくホラーだ……
 要するにろうそくの形状が悪いんだ。
 違う。
 用途が違うんだな。
 これは……
 つっこんで祐馬に言った方が良いのか?
「祐馬……あの……」
 椅子に腰を掛けながら戸浪は言った。
「なに?」
「このろうそくなんだが……」
「あ、うん。分かってるよ。あんま長い間、こゆのに火を付けていたら天井に煤がつくって言いたいんだよな?ごめん。ちょっとの間だけだし、もし天井が黒くなったら俺が掃除するからさ」
 違う……
 そんなことはどうでも良いんだ。
 これは仏壇用のろうそくだろうと言いたいんだが……
 チラリと祐馬の様子を窺って見た戸浪であったが、本人は嬉しそうにサラダを取り分けて並べているのだ。これでは真実を告げられない。
「そ、そうだな。天井の掃除は頼むよ……」
 結局戸浪は言い出せずに、並べられた料理に集中することにした。祐馬の精一杯の演出を頭ごなしに怒鳴るなど、いくらなんでも出来ないだろう。
「今日は、たらこスパゲッティーに野菜サラダ。フランスパンをちょこっと焼いたのと、カボチャのスープにしてみたけど、どうかなあ。折角だからもっと豪華にしたいと思ったんだけど、買い物行ってなかったし、冷蔵庫にあるもので作ったよ」
 一通り並べ終えた祐馬は、ニコニコとした顔で戸浪の向かい側に座った。
「……たらこ……」
「うん。たらこスパゲッティー。あれ。戸浪ちゃん嫌いだったっけ?」
「……いや……別に……」
 どうして……
 祐馬はキスをすると口の中でごろごろしそうな料理を作るんだっ!
 たらこは……
 結構、辛いぞっ!
 それとも、これだけムードを作ろうとしているくせに、やることまで考えてないのか!
 半分苛立ちながらも、戸浪はとりあえず笑ってみせることにした。
「食べようよ戸浪ちゃん。あ、そうそう音楽だよな……音楽」
 ……
 音楽……
 なんだか涙が出るくらい、祐馬は必死にムードを盛り上げようとしているのが戸浪には分かった。だが、どれもこれもずれている様な気がする。
 単に、分かっていないだけなのだ。
 いつものことだと思えば良い。
 これが祐馬の精一杯。
 年上の私が心を大きくして受け止めてやらなければならないのだ。
 はあ~と、心の中だけでため息をついていると、祐馬がいう音楽が流れ出した。
 だが……
 ジャジャジャジャーン
 って、何故ベートーベンの「運命」なんだ?
 も、もっと他にあるだろう?
 開いた口が塞がらず、半開きのまま戸浪は「クラッシックの筈なんだけど、なんか違うよなあ~」と、独り言のように呟いている祐馬を凝視した。
 分かってないのだ。
 クラッシックを流そうと考えたまでは良かったのだろうが、選曲を完全に祐馬は間違えている。それは分かっているのだろうが、運命をクラッシックの筈……などと抜かしている男に何を言っても無駄なのかもしれない。
「音楽はやめとこ。……なんか、これって落ち着いてメシ、食えねえよな……」
 自分でも不味いと思ったのか、カセットを止めて、祐馬はまた椅子に座った。
「さっさと夕食を済ませてしまおうか……」
 戸浪は既に疲れ切った状態で言った。
 慣れない雰囲気にも余計疲れる。
「……うん……」
 戸浪の態度に、自分が失敗したことに気が付いたのか、祐馬はやや肩を落とし、もそもそとスパゲッティーを食べ始めた。
 あ……
 もう少し言い方を考えたら良かった……
「……あ~祐馬……その……」
 何か祐馬を喜ばせるような言葉を必死に探してみたものの、思い浮かばない。
「……別にいいよ……。俺、なんていうか……自分に似合わないことをしようとしたから失敗したんだよな……」
 祐馬は珍しく目を潤ませていた。よほどショックだったに違いない。
「いや……嬉しかったよ祐馬……」
「……そんな顔全然してないよ」
「どうしてお前はそんな風にしか言えないんだっ!」
「それ、そんまま返すよっ!何だよ!俺だって、戸浪ちゃんが望むようにしてやりたいんだよっ!したいけど……俺……俺には無理だって分かった」
 最初は、噛みついてくるように怒鳴った祐馬であったが、最後の方になると声に力がなくなり、戸浪から視線をも外した。
「……」
 戸浪が黙り込んでいると、祐馬はキッチンの明かりを付けると、机にいくつも置いていたろうそくの火を消して、ひとまとめにするとシンクに投げ込む。その間も戸浪の方を一切見ない。
「祐馬……」
「……気にしないで良いよ。俺がこゆことするの滑稽だったよな。似合わないことするんじゃなかった……」
 へへへと笑って頭をかいているが、目は笑うことなく潤んだままだ。
「……いや……だから……」
「メシ……さっさと済ませよ。うん。それがいいよ……」
 暫くまたお互い沈黙しながら、料理を食べていたのだが、いつもと違う重苦しい空気に戸浪が口を開いた。
「……苦手なら、もう、無理しなくて良いんだ。祐馬はいつも通りで良いと思う。私は……その……そういう祐馬が好きなんだから……」
「……戸浪ちゃんって、俺の事、本当に好きなのか?」
 俯きながら祐馬は言った。
「は?今更何を言ってるんだ?嫌いな相手のうちで暮らせると思うのか?」
 どうしてそんな言葉が祐馬の口から出てしまうのか、戸浪には分からない。
「……別に……」
「別にって何だっ!はっきり言えっ!」
 怒鳴るように叫ぶと、祐馬はチラリとこちらを見て、また俯いた。
 こういう態度は余計に苛つくのだが、戸浪はぐっと堪えた。
「言わせてもらうけど……俺……俺は聖人じゃないっ!」
「二十歳越えたら成人だろう……今更何を言ってるんだ」
「違うっ!聖人だよっ!だから……だから、俺にはもんもんとした性欲ってのあるんだよっ!なんで、好きな人と暮らしてるのに、エッチが出来ないんだよっ!これじゃあただの同居人じゃないかっ!」
 バンとテーブルを叩いて祐馬が怒鳴った。こういう風に怒鳴り散らす祐馬は珍しい。よほどたまっているのだろう。
 だがそれは、戸浪にも言えることだ。
「……お前が、積極的に来ないからだろうが!人の所為にするなっ!」
「戸浪ちゃんって、散々振ってくるくせに、俺がその気になったら適当に逃げるじゃんよ。それなのに、押せって言われても出来ないものは出来ないんだよ!あー俺は情けないよっ!分かってるよっ!だけど、嫌がる相手を無理矢理犯すことなんて俺にできっこない!」
「犯す言うなっ!」
「セックスでも犯すでもやるでも何でも良いよっ!俺は……俺はやりたいんだっ!もう、一人エッチばっかやってても空しいだけなんだよ!」
 一人エッチ……って……
 じゃあ、祐馬はずっとそうやって誤魔化してきたとか?
「なんて勿体ないんだ……」
 思わず戸浪はとんでもないことを口走っていた。
「……え?」
「あ、いや……なんでもない……。やりたいなら、さっさと押さえつけたら良いだろう」
「そんなんしたら、戸浪ちゃん俺の事、ぼかすか殴るじゃん」
 確かに殴っていた。
 それは一応、戸浪も後悔している……と、いうより、何とか手を挙げずに済む方法を考えているのだが、いちいち問いかけてくる祐馬に苛々するのだから仕方が無い。
 男は何も言わずに行動に出るものだろう。
 祐馬はそれが出来なかった。
 もちろん、優しいからなのだと分かっているが、いちいち、これしていい?あれしていい?と、聞かれる身にもなって欲しい。折角、気分が盛り上がっていても、その一言で萎えるのだ。
「お前がべらべら五月蠅いから、その気になっていても現実に引き戻されるんだ。いい加減、分かってくれないのか?いちいちお伺いを立てられる身にもなってくれ……」
 はあ~と、これ見よがしにため息をついてみせると、祐馬はじっとこちらを見つめて言った。
「じゃあ……じゃあさ。俺が無言で戸浪ちゃんを抱いたら、殴らないでやらせてくれんの?」
 ……
 このデリカシーのない言葉……
 どうしてくれよう。
 殴りたくて仕方がない……
 とはいえ、ストレートにものをいう男にこれ以上の注文は付けられないのかもしれない。ここで、大げんかをしてしまうと、それこそ数週間は互いに抱き合うことさえ躊躇われる痼りになるのだ。毎度同じ事を繰り返してセックスレス状態に陥るのだから、そろそろ戸浪も学ばなければならないだろう。
「……ああ。やらせてやる」
 ……はっ!
 こ、こんな言葉を言ってしまうなんて……
 内心、情けなく思いつつも、久しぶりにエッチが出来るなら、何でも良いのだ。戸浪にだって性欲はある。限界だ。
「……分かった」
 祐馬はそう言って立ち上がると、戸浪の座っている側に回って膝に置いていた手を掴んだ。戸浪はそれに逆らわず、腰を上げると祐馬が引っ張るまま、付いていく。
 薄暗い廊下を歩きながら、同時に心臓の鼓動が早くなる。無言を通すつもりなのか、祐馬は一切言葉を発しなかった。
 それは寝室に入ってからも続き、ベッドに倒され乗り上がってくる祐馬の顔さえ暗闇にかき消された戸浪は、胸の高鳴りよりもいつもと違う雰囲気に、何故か逃げ出してしまいたい気持ちに駆られた。
 自分から言い出したくせに、その通りになると逆に怖い。
「……祐馬……」
 いつもなら小さな電灯が灯される筈であるのに、祐馬は暗闇の中、戸浪の衣服を脱がして己の衣服も脱ぎ捨てた。
「……あ……」
 いきなり乳首の先を指で挟まれ、久しぶりの感触に戸浪は声を上げた。痛いほどつまみ上げられているのに、快感の方が強い。珍しく祐馬が荒々しく触れてくるのは、久しぶりで余裕が無いのだろう。
 そんなことを考えつつも、祐馬の指先に翻弄されて、戸浪は身体を震わせていると、なにかキャップが外される音がして、腰に生ぬるいものがだらだらと大量に落とされた。
 戸浪は気が付かなかったが、祐馬は挿入がしやすいように塗りつける専用のゼリーを持っていたのだ。もしかすると、いつでも出来るようにポケットに忍ばせていたのかもしれない。
 そんな祐馬を考えると、戸浪は身体が高揚するのが分かった。
 余裕が無いからゼリーを使うのだ。
 それほどまでして祐馬は戸浪としたかったのだろう。
「……祐馬……っ……あ……っ!」
 ゼリーのぬめりを借りて、祐馬の指がいきなり戸浪の内部に入ってきた。ギュッと窄んでいる筈なのに、二本の指は引っかかることもなく自分の居場所を見つける。指先は荒々しく抜き差しされ、まるで祐馬の雄が実際にはそこにあって、蠢いているような錯覚すら起こしそうなほどだ。
「……んっ……」
 喘ぐ口元は祐馬に掬われ、指と同じように動く舌に戸浪は酔った。上も下も犯されているという事実が戸浪を夢心地にさせる。理性が麻痺して、欲望を満たそうとする原始からある本能が、このときばかりは己を支配するのだ。
 ぬちゃぬちゃと響く音が、合わせられた唇から聞こえているのか、後ろを指によって犯されている箇所から発せられているのか分からない。ただ、粘着質な音で戸浪は己を高ぶらせて祐馬に焦がれる。
「……ひっ……あ……」
 指先が戸浪の内部の奥を抉ると、まだ触れられていない自分の雄がそそり立ち、上下に揺れるのが分かった。己の欲望だけが素直に祐馬を誘っている。
 恥ずかしい……
 かあっと顔を赤らめながら、戸浪の首筋に愛撫を落とす祐馬に手を回してしがみつく。祐馬があそこに触れてくれたらそれほどでも無かったのだろうが、後ろを弄られただけで、己の雄が敏感に反応している事を知られたくない。
 それでも祐馬の腹を擦っている戸浪の雄に気が付かない訳は無いだろう。いつもとちがって祐馬が何も言わないから、余計に羞恥心が身体を支配するのだ。
 何か……
 何か言ってくれ……
「祐馬……っ……あっ……」
 内部の側面を指先で擦られ戸浪は己の欲望を吐き出させ、互いの腹を濡らした。簡単に後ろだけでイった自分がどうしようもないほど恥ずかしい。このままベッドに顔を埋めて赤くなっているであろう表情を隠してしまいたいほど。
 少し満たされた欲望にホッとしている自分と、恥ずかしい行為をしてしまったと後悔する気持ちが交互に戸浪を襲って思考を混乱させていたが、急に両脚を抱えられ、祐馬は己の雄を捻り込んできた。
「……くっ……」
 指ではない、もっと太く、長いものが進入してくると、いつも感じる恐怖が戸浪を襲った。祐馬の雄は長いのだ。それ以上奥に入られるのは嫌だという未知の部分まで祐馬の雄は突いてくる。そうなると、戸浪は己を見失って記憶すら曖昧になるのだ。
 快感に酔って自分でも信じられない程の喘ぎ声を上げる自分が怖い。どっぷりと浸かった快感からこのまま抜け出せなないのでは……と、不安になるほど祐馬の挿入は戸浪の理性を滅茶苦茶にかき回す。
「……あ……も……それ以上はっ……ああっ……あーーっ……」
 祐馬の背に爪を立て、戸浪は荒く吐き出される息と同時に嬌声をあげたが、祐馬の動きは激しい。何度も深く突き入れられ、戸浪はそのたびに内蔵までかき回されている様な気分を味わった。切っ先が側面を擦り、一番深い場所で蠢くと言葉では言い表せない快感が脳髄にまで染み込んでくる。このまま果ててしまいそうなほどの身体の震え、自然に揺れる自分の腰の動きすら快感を鮮やかに脳裏に刻み込み、愛されていることへの安堵感へと繋がっていく。
「祐馬……っ……あ……」
 愛されている……
 こんなにも……
 日々一緒に暮らしているささやかな日常ですらそれを感じる。こうやって繋がっているときはもっと強く愛されている事を実感する。
 単に性欲を満たしているだけなのに、赤の他人では与えられない温もりを祐馬は戸浪に与えてくれるのだ。それらに包まれているとき、どれほど幸せを感じることが出来るのか。
 祐馬は知らないだろう。
 身を焼き尽くすような激しい恋愛ではなく、穏やかな愛情に包まれて淡々と過ごす日常がどれほど貴重か。小さな事にこだわらない大らかな気質の祐馬に戸浪はいつも救われている。自分がありのままでいられるのは祐馬と一緒にいるときだけ。
 言葉にしてしまうと、上手く伝えられないから、戸浪は言わない。
 一緒にいて、沈黙の空間すら心地良い相手なのだから、陳腐な言葉に無理に代えなくても良いのだと思う。
「祐馬……愛してる……」
 快感ではなく、祐馬が側にいてくれることに感極まった戸浪は自然とそう口に出した。
 この言葉にも何も答えてくれないのだろうかと思っていたのだが、祐馬は小さな声で囁いた。
「俺も……愛してる……」
 戸浪はもう一度、ギュッと祐馬を抱きしめた。



 朝、目を覚ますと祐馬はまるで憑き物が落ちたような表情で、終始にこやかに笑っていたのだが、戸浪は熱を出した。
「久しぶりで、熱出してるなんて~戸浪ちゃんって可愛いよな~」
 こっちが散々な目にあっているというのに、何故か祐馬は嬉しそうにそう言って、アイスノンを頭の下に敷いてくれた。ありがたいが、お前が悪いと戸浪には言えない。
 原因はやりすぎだ。
 二回までは許そう。だが、祐馬は一度やり始めると、何かが切れたようにとことん貪るタイプだ。それを戸浪は忘れていた。
 たまにしか出来ないから、出来るときに思う存分やっておこうという腹なのだろうが、祐馬が毎度その調子だから、余計に次にやるまでの期間が開くのだと……

 どうして分からないんだ、この、大馬鹿ものがーーーー!

 と、実は叫びたかったが、その体力も無い。指先すら動かせない怠さと、熱っぽい身体が殴る気力まで奪ってしまっていた。
 悪循環だ……
 これを……
 どうしたらいいんだ……
 というより、何故祐馬はあんなに元気なんだ……
 三歳も若いと、体力の差がこれほどあるのか?
 色々愚痴を言いたかったのだが、結局戸浪が何も言えずにグッタリとベッドで身体を伸ばしていると、祐馬が言った。
「今度から、俺、あんまべらべらしゃべらないことにした。だったら、戸浪ちゃんもつきあってくれるみたいだし~俺もそろそろ学ばないと駄目だよな」
 そうじゃないだろう……と、戸浪は思いつつ、薄く息を吐いた。

 ところでユウマはリビングでずっとふてくされていた。
 猫のユウマの方が学習能力は高かったのだろう。

―完―
タイトル

幸せなのか不幸なのか、ここはエッチもやるときはとことんなのでちょっと辛いかもしれません。たまにはエッチこみのらぶらぶな二人を~ということだったのですが、まあ……いか(汗)。
なお、読まれましたら掲示板もしくはメールにて感想などいただければありがたいです。おそまつでした。

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