Angel Sugar

「思いこみ」 (キャラ別ショート)

タイトル
 本日はとある喫茶店で宇都木は如月を待っていた。
 テーブルの上にはアイスティーが既に置かれ、それは半分まで減っていた。読んでいた新聞も既に見る場所が無くなってしまい、宇都木は小さく溜息を付いた。
 ちりちりん……
 喫茶店の入り口が開閉すると鈴がなる。宇都木はその度に俯いている顔を上げ、如月かどうかを確認していた。
 三度目に顔を上げた宇都木は、入ってきた人物を見て目を疑った。
 戸浪さん……
 だが、戸浪の方は宇都木に気が付かないようで、どこか空いている席は無いかと探していた。
 本日は満員に近かったのだ。
 ……私の前……
 空いてる……
 まさかね……
 と、思っていたのだが、アルバイトらしき女性が、そんな事などしなくていいのに、宇都木の前のテーブルに戸浪を案内した。もちろんテーブル自体は離れているのだが、戸浪はこちら向きに座ったものだから、流石に向こうも宇都木に気が付いたようであった。
 あ……
 目があった……
 戸浪と目があった瞬間、宇都木は頭を垂れた。
 ど……
 どうしよう……
 如月は戸浪に宇都木のことを話して居ないはずなのだ。
 ここに邦彦さんが来たら……
 どうなるんだろう……
 まっ……まさか……
 邦彦さんが戸浪さんをここに呼んだとか?
 それで……
 やっぱりよりが戻ったとか言うんでしょうか?
 そ……
 そんな……
 でもここは戸浪さんの行きつけではない喫茶店だし……
 じゃあ……
 嘘……
 どうしよう……
 やっぱり邦彦さんが呼んだんだ……
 宇都木は俯いたまま顔を上げられなかった。すると遠くからまた鈴が鳴った。だが、宇都木は喫茶店の入り口を確認することは出来なかった。
 戸浪と目が合うのが怖かったのだ。
「戸浪、久しぶりだな……」
 遠くから何故か如月の声がした。
 え……
 チラと視線を上げると、如月は戸浪の席に立ち、身体を屈めなにやら二人でこそこそと話していた。
 ……嘘……
 なに……
 一体これはどういうことなんですか?
 もしかして……
 よりがもどったとか?
 そ……そんな……
 こんな場所で私に邦彦さんは言うんですか?
 よりがもどった……って……
 あっ……
 如月と親密に話していた戸浪の視線と、やや顔を上げていた宇都木の視線と交差した。すると戸浪はうっすらと笑った。だがその表情が不敵な笑いに宇都木には見えた。
 ……やっぱり……
 ショックで固まっていると、戸浪は立ち上がり伝票を如月に押しつけると、そのまま店を出ていった。それと同時に如月はこちらの席にやってきた。
 ……なに……
 その伝票を私に支払わせるつもりですか?
 そんなの……
 酷い……
 言葉を失った宇都木は心の中でそう思い、何故か苦笑している如月の顔を見つめた。
「悪い……これな、押しつけられてしまったよ……」
 はははと如月は笑った。
 笑い事……
 笑い事なんだ……
 私達のことは……
 笑い事なんですか?
 で、ここで……
 さよならなんて言う気ですか?
 視線を窓の外に移すと、戸浪が歩道のところで立ち止まり、こちらの様子を窺っているのが見えた。
 外で……
 待ってるんだっ!
 酷い……
 酷すぎますーーー!!
 宇都木はそこまで来るともう、頬を伝う涙を止められなかった。
「うわっ!どうして泣くんだっ!」
 驚いた声で如月は言い、椅子に腰をかけ、また俯いて涙を落としている宇都木を覗き込んできた。
「……貴方は狡い……」
「え?」
「……何もこんなところで別れ話なんかしなくても……」
 人目があったら宇都木が自分を見失わないとでも思ったのだ。だが宇都木は、如月にはっきりと言えた。例えどんなところでも如月から別れると言われたら、受け入れることしか出来ないのが宇都木だ。そんな宇都木を知っていて、仲の良いところを見せつけるなど、余りにも残酷な仕打ちだった。
「わ、別れ話??」
 如月は奇妙な声でそう言った。
「だって……邦彦さん……邦彦さんが、戸浪さんをここに呼んだのでしょう?」
 恐る恐るそう聞くと、如月は頷いた。
 やっぱり……
 やっぱり……
 やっぱりそうじゃないですかーーーー!!
 その事実が余計に宇都木の頬に涙を伝わせた。
「そ、それでどうして別れ話になるんだ?私は……お前を戸浪に紹介したんだ。向こうに私がずっと独り者だと思われたくなかったからな……。だから今度祐馬ともめてもうちには来るなと言ったんだよ。まあ……本当の所、未来を戸浪に見せて自慢したかっただけだったんだが……」
 照れ臭そうに如月は頭を掻きながらそう言った。
「……え?」
 自分の誤解にようやく気が付いた宇都木は、羞恥で今度は顔を上げられなくなった。
「なあ……未来……」
「は……はいっ……」
 まだ顔が上げられなかった。
「そろそろ、私の恋人だという自覚を持ってくれないか?」
 恋人の自覚……
 自覚……
 くらくらくらくら……
 嬉しい如月の言葉に宇都木は口をぱくぱくさせながら結局何も言えなかった。

―完―
タイトル

なんていうか……30分で書いたんですけど……すみません……落ちるのやだったので……うん。でももう……日付代わってますね……あははは。誰か読んでくれるんだろうか……それもむっちゃくだらないぞーーー(脱兎)。

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