Angel Sugar

「嫉妬の効用」 (100万ヒット)

タイトル
 いつになく機嫌が悪くなっていたのは、二週間も出張でうちに帰られなかったからだろう。その上、帰りに業者に誘われ、仕方なしに飲みに行ったのも不機嫌の理由だった。
 悪酔いしたな……二度は行かないぞ。
 エレベーターの軽い浮遊感に身体を任せながら如月は一人ごちる。
 仕事上仕方がないとはいえ、宇都木を同行させることができない仕事はほとほと疲れるのだ。当然何もかもを自分がしなければならないと言うのもあるだろうが、行く先々の予定を取り仕切る業者がまた不慣れであったため、確認の上確認という二重三重の作業が如月の苛々に拍車を掛けた。これが宇都木ならすんなり予定が立っていたに違いない。
 スケジュールとはそう言うものだろう。だが大手のパイプ役として間に入っている業者を責めるわけにもいかず、如月は心の中では不満を噴出させてはいたが、表面上は社交辞令を保って苦笑いをするだけにとどまった。
 それでもこの二週間に及ぶストレスは半端ではない。ここまで人を苛々させる事が出来る業者を逆に褒めてやりたいほどだ。
 ようやく自分のマンションの鍵を開け、中に入る。住み慣れた自分のうちがようやくピリピリとしていた如月の気持ちを落ち着けさせた。
 玄関で靴を脱いでいると、宇都木がスリッパをぱたぱたと音を立てて走ってくるのが聞こえた。顔を上げると、頬を紅潮させた宇都木がにこやかに立っている。その様子からとても喜んでくれているのが目に取れた。
「ただいま」
「お帰りなさい。今回は長かったですね……」
笑みを絶やさない宇都木は、たった二週間顔を見られなかったはずであるのに、如月には何処か新鮮に見えた。不思議なことだ。
「まあな……」
 言いながら如月は宇都木を腕の中に入れ、ギュッと身体を抱きしめる。男らしい体つきでもない、かといって女性とは違う感触が如月には心地よく感じた。
「未来の匂いがするな……」
 微かに鼻につくソープの香りは宇都木が暫く前に風呂に入ったことを如月に分からせた。じっと温もりを追うと、確かにまだ普段の体温より温かい。
「邦彦さんからはアルコールの匂いがします……」
 宇都木も如月と同じように両手を回してこちらに身体をすり寄せてきた。まるで庇護を求めるような仕草だ。
「ああ。帰りに飲んできた。付き合いとはいえ、疲れる……」
「今回は大変でしたね……」
 腕の中で小さく笑う宇都木はじっとこちらを見上げてそう言った。
「色々ね……。ところで未来は私が留守にしている間、何をしていたんだ?」
 ふと気になった。それだけだ。
「そうですね……家庭教師をしていました」
 身体をそっと離そうとしたので、如月は更に拘束を強めた。
「邦彦さん……」
「家庭教師?」
「え、ええ……。大したことじゃ無いのですが……。私も貴方がいない時間を一人で過ごすのも寂しかったので暫く先生のまねごとをしていたんです」
 こちらを見つめてくる瞳は濁り無く見えた。
「ふうん。相手は女?」
「いえ。可愛い男の子ですよ」
「……それで、誰に頼まれたんだ?」
 何となく如月は嫌な予感がした。
「……真下さんですが……」
 また真下。
 如月は真下の名前を聞くのがどうも気に入らないのだ。宇都木が頼る相手だと分かっているからかもしれない。しかも、真下からの話であるならば、宇都木は東家に出かけていたことになる。
 あの東家に。
 それが非常に如月には不満に思えることであった。
「真下さんね……」
 そこで如月は宇都木の身体を離そうとする。が、今度は宇都木の方がしがみついてきた。「邦彦さん?」
「なんだ」
「何か私は問題のあることを申し上げましたか?」
 真下の名前と、東家のことだ。だが宇都木がそこで育ち、ずっと真下のしたで働いていたのだから、会うなとも行くなとも言う権利は如月にはない。それでも気にくわないものは気にくわない。これは理屈では説明できないことだ。多分、真下がそれだけ魅力的な男性であることを如月が知っているからだろう。もちろん真下はノーマルで、宇都木に手を出すとは考えられない。だが宇都木が誰かを信頼している姿は自分以外にあって欲しくないというわがままがここにあるのだ。
「別に。風呂に入りたいんだが……そろそろ離して良いか?」
 口調がややきつくなってしまったが、仕方ないだろう。ただでさえ機嫌を傾かせて帰ってきたのだから、ここで更に聞きたくもない名前を耳に入れたことが理由だ。
「え……ええ……分かりました……」
 如月の様子が妙であることを宇都木は生来の勘の良さで察知したようだったが、理由を話すことは出来ない。情けない男だと思われたくないからだろう。
 宇都木を抱きしめていた手を解くと、如月はバスルームに向かった。その後を宇都木がじっと眺めていたことを背中に向けられる視線で感じていたが、振り返ることが出来なかった。

 自分は馬鹿だと思う。
 浴槽に身体を伸ばして如月は思った。
 更に嫉妬深い心の狭い男だ。
 普通ならそこまで自分自身を的確に分析できるなら、変えようもあるのだろうが、プライドが高いからか、それとも何処か自分に自信がないからか分からないがどうにもできないでいる。あんな態度を取れば宇都木がおろおろするのは目に見えているのだから、ものの言い方くらいどうにかしてやれば良かったのだ。
 全く……
 自分のこういう性格が宇都木を時折傷つけていることを最近知った。いや、それでお互いがすれ違っていたのだ。だったら、そうならぬように気を付けるのが如月の役目なのだろう。そのことは真下にも釘を刺されているのだから。
 そう、真下に。
 真下に言われたから余計に意地になる部分がある。どうあがいてもあの男には敵わないと思っているのだろう。全く違う仕事をもっているのだから、競っても仕方がないのはわかる。しかも、競ったところで意地になればなるほどこちらの評価は下がるに違いない。真下自身がそういうものと無縁な男だから張り合おうとすることこそ滑稽だろう。
 宇都木自身に恋愛感情のない男なのだから無視すれば良い。だが時折宇都木の口から出てくる言葉まで遮ることなど出来ないのだ。実際はかなり遮っているような気はするが。
心が狭すぎる。
 分かっているが、真下が特別なのだ。実際、宇都木が無理矢理鳴瀬に犯されたときよりも、二人の間に何もない真下の方が気になるのだからどうしようもない。
 はっきり言えばいいのだろうか。
 真下の名前を出すな。東家には関わるな。
 言うのは簡単だった。だが、宇都木にとっての家は東家なのだ。今も親権と呼ばれるものは東家が保有する。そんな家族を悪し様に言うことはいくら如月にも権利がない。幼い頃、辛い時期を過ごした宇都木を救ったのは他ならぬ東家なのだから。
「邦彦さん……」
 突然宇都木の声が響き、驚いた如月は顔を上げた。すると、脱衣場とこちらを隔てる磨りガラスの扉向こうに人影が立っているのが見え、それが宇都木だと分かる。
「なんだ?電話でもあったか?」
「いえ……あの……」
 先程の態度に何かまた不安を覚えたに違いない。分かっていてそんな態度を取った如月が悪いのだ。
「すまないな……ちょっと疲れていて……口調がきつく聞こえたか?そんなつもりは毛頭無いよ。もし先程の言葉が気に障ったのなら忘れてくれて良い。未来に当たるつもりはなかったんだ……」
 言い訳がましく聞こえたに違いないだろうが、こんな言い方でしか答えられないのも事実だ。
「もしかして……その……聞いて良いですか?」
「なんだ?」
「邦彦さんは、真下さんがお嫌いなのでしょうか?」
 ……っておい。
 いきなり核心を突くつもりか?
「……いや……そうじゃないさ……」
 誤魔化すように如月は自分の顔を洗った。
「ですが……真下さんの名前が出ると邦彦さんは嫌な顔をされます。以前、あったことが原因なら私が謝ります」
 以前あったこと。
 それは多分、宇都木を連れ戻そうと東家を訪れた如月を真下が追い返した事を指しているのだろう。だがそれは如月が一方的に悪かった事だ。
「あのことは別に気にしていない。私が悪かったんだからな」
 単に嫌いなだけ。当然、宇都木には言えないことではあった。
「だったらどうして……その……真下さんの名前が出ると嫌な顔をされるんです?」
 真下、真下と連呼されるのは辛い。
「もういい。その話は止めてくれ」
 余計に気分が悪くなる。事実、本気で如月は気分が悪くなってきた。悪酔いしてしまったのだろう。
「邦彦さん……」
 そろりと開いた扉から不安な表情の宇都木が見えた。如月はこの表情が嫌いだ。しかも原因が自分の場合もっと心苦しくなる。
「未来……だから……その……な」
言い訳に言い訳を重ねている自分が益々情けない。
「私……何か……」
まるで怯えたウサギのように肩を竦めながらこちらに近寄ってくる。薄いブルーのパジャマも何処か寂しげに見えた。そんな宇都木に手をさしのべて頬にそっと触れ、安心させるように動かすとやや顔色が戻った。
「愛してるよ……未来。顔が見られなくて寂しかった」
 如月が言うと宇都木の方から唇が重ねられた。久しぶりの柔らかい感触が下半身を疼かせ、湯の熱さではない熱の高まりが身体を覆う。
 口元が離れると、宇都木は驚くことに自分から上着を脱ぎ始めた。
「おいおい……」
 と、言った後、
「いや……良いんだが……」
 すると宇都木は目線だけで男を虜にするような極上の娼婦のような瞳をこちらに向けた。
 その場ですべて己の衣服を脱ぎ捨てた宇都木は当然のように湯船にはいると、如月の身体に自分の冷えた身体を密着させてくる。ひんやりした肌が次第に湯と共に温もってくるのが伝わり、如月の欲情を煽った。
「寂しかった……」
耳元で囁くように言われ、如月は自分の下半身が益々膨らむのが分かる。ここまで来ると自分を押さえられそうにない。宇都木が乗り気なのだから拒否することもないだろう。
「未来……」
 男にしては細い首筋にキスを落としながら如月は絡みつく宇都木の足を自分の方からも絡ませた。自分より頼りない足ではあるが、如月には愛おしい。
「本当に寂しかった……」
 もう一度宇都木はそう言って、こちらの額に口づけてくる。何度も何度も。それは緩やかで愛おしそうに繰り返された。
「未来……ん……」
また宇都木の方から唇が重ねられ、今度は舌が滑り込んできた。なにやら負けているような気がした如月はこちらからも舌を絡め取り、宇都木の口内を翻弄することに集中する。同時に手を伸ばし宇都木の長らく触れなかった部分を握り込んだ。
「……っ……あ」
刺激で口元が離れた宇都木は声を上げ、狭い浴室内で木霊する。それは快感を伴った声だ。そんな声をもっと聞きたくなった如月は、宇都木のまだ柔らかいモノを更に手の中で転がし揉み上げた。
「……あっ……ああ……」
四つんばいになりながら、宇都木は刺激に対して身体をくねらせて見せ、羞恥の欠片もない姿に如月は目を細めて笑みを浮かべた。この姿を見せてくれるのも、見られるのも自分だけだという確信がある。如月を喜ばせようとする宇都木は抱き合うと大胆に変貌するのだ。だがそれも自分だけ。それが如月の独占欲を満足させる。
「もっと……触って……邦彦さん……お願い……」
潤んだ瞳に突き動かされ、手の中で硬くなっているモノを強く刺激すると、まるで生き物のように動きだし、最後には手の中で弾けた。
「あ……ああ……」
 宇都木は完全には身体をこちらに倒さず、浴槽の縁を掴んで刺激に耐え、薄く息を吐き出して次にこちらの頬にキスを落とす。
「随分我慢していたのか?」
 小さく笑いながら言うと、頬を赤くして頷く。このまま抱きしめてしまいたいほどの可愛らしさがこの男にはあった。
「もしかして……私がいない間、自分で慰めたことはあったのか?」
 聞いてみたいことを口にすると、今まで以上に宇都木は顔を赤らめる。当たりというやつなのだろう。
「いいえ……」
「嘘だろう?」
「……いいえ……」
 答える声が少しずつ小さくなる。
「正直に言わないと、ここを可愛がってやらないぞ」
 まだ硬い部分を指先で触れると、宇都木は視線を彷徨わせ、またこちらに視線を戻して僅かに顔を上下させた。
 可愛い宇都木。
「でも……あの……貴方のことを思いだして……」
 全身赤く染めた宇都木が羞恥で赤くなっているのか、湯の熱さの所為か分からないが、多分前者だろう。大胆に見せる行動の中にチラリと窺わせる羞恥が宇都木の魅力なのだ。
「当たり前だ。私、以外を思い出したら許さないぞ……」
 ギュッと指を突き立てると宇都木の身体が震えて仰け反った。
「邦彦さん以外……考えられない……」
当然の答え。それが心地良い。
「未来……」
指先を更に奥に滑らせて温かい体温を指先に感じる。ギュッと締まった部分はまだ硬い。それでも拒否されているわけではなく、逆に取り込もうとしているようだった。
「食いついて離れないぞ……」
「……邦彦さんの指だから……」
「何本でも?」
「何本でも欲しい……」
 はあっとついた息と共にはき出される声。
「じゃあもう一本……」
 指を増やし、捻り込むように蕾の部分を抉ると、宇都木の嬌声が上がった。だが嫌がる声ではなく、艶のある快感を伴った声だ。それは耳に、身体に心地よく響く。宇都木が如月の行為に酔いしれるとき、己の征服欲が満たされるのだ。
自分のものであること。
 品物ではないが、宇都木は如月だけのものだと思っている。いや、信じている。どんなときも裏切らない瞳。多分、一文無しの男に成り下がったとしてもこの宇都木だけは最後に残るだろう。そう信じられる男なのだ。
 だから何もかもを自分のものにしておきたい。わがままなのだろうが、それが真実なのだ。そういう気持ちがあるだけに、真下の名前が耳障りなのだろう。宇都木は誰に関しても無関心な男だ。そんな宇都木が唯一視線の中に入れているのは如月と真下だけだった。それを自分一人だけにしたいというどうにもならない希望を如月は持っていた。
「邦彦さん……もっと……」
指先を何度も動かしすと快感を感じて喘ぐ口元も宇都木であるから嫌らしくは見えない。逆にもっと煽ってやろうと思うほど如月は宇都木にのめり込んでいる。
 愛しているのだろう。
 だが身体は二の次だ。
 この男の見せる健気な姿が一番如月が愛おしいと思っている所。
そして見返りを求めない愛情を自分だけに傾けてくれる宇都木こそ、如月が愛してやまない部分だった。
「未来……腰を落としてくれ……お前の中に入りたい……指じゃ私が満足できない」
 宇都木の見せる嬌態に己自身も煽られている。張りつめて立ち上がっている下半身は既に宇都木の中に入りたがって湯の中で揺らめいていた。
「私も……欲しい……」
言いながら宇都木は腰を落としたが、途中でその行為を止めた。
「焦らしてるのか?」
「え、いえ……湯を抜いて良いですか?」
「湯?」
「浮いた感じがして嫌なんです」
 はっきりと、だが恥ずかしそうに宇都木は言う。その理由が如月にはよく分かった。もちろん如月も賛成だ。
「……はは……良いぞ」
 如月が言うと、宇都木は湯を抜きすぐさま腰を落としにかかった。だが湯はすぐには排出されない。ちまちまとしか湯が減らない状況に、宇都木が業を煮やして如月のモノを掴むと自分の中に誘い込んだ。
「っ……せっかちだな……」
「もう……限界なんです……」
 潤んでいた目が今は涙目になっている。それほど長く留守をしたのだろうかと逆に罪悪感すら如月は感じた。
「だがこの状態では未来が動かないとお互い気持ちよくならないような気がするが……」
 自分の上に乗っているのは宇都木だ。しかもこっちは浴槽の中で身体を伸ばした状態である。これで腰を使えば、違う意味で背が痛くなりそうな気が如月にはした。
「私が動きます」
今更何を……と、言う口調だ。
「そうか……楽しませてもらうよ」
 愉快そうに言うと同時に宇都木が腰を揺らし始めた。がっちり食い込んだ己のモノは宇都木の内部を久しぶりに味わって悦びもだえているようだ。湯は既に抜けて、しっかりとした重圧感を如月に伝え、それすら快感に変えるように宇都木は腰を上下させていた。
「ああっ……あ……」
 擦りあっている部分から、宇都木も快感を味わっているのか、何度も声を上げ、それでも動きを止めようとしない。ぬるりと湿っている内部は如月のモノをどうあっても離すつもりはないようだった。
「……未来……」
「貴方のものが……私の中で……動いてる……」
「ああ……悦んでる……お前のモノも悦ばしてやるよ……」
 先程一度イかせた部分を掴み擦りあげてやると、宇都木は益々身体を激しく揺さぶった。快感に酔いしれている宇都木は誰よりも魅力的だ。もちろん普段もそうだが。
「良い……っ……あ……もっと……」
 自分で動くしかないのに、宇都木がそう言って涙を頬に伝わらせた表情をこちらに向けて訴える。如月もそんな宇都木に煽られるように腰を上下させた。多少硬いステンレスの浴槽が背に当たるが、ここまで来たらもう自分を止めることは出来ないだろう。
「未来……っ……く……」
 腰を上げるように動かし、長く留守にしていて押さえていた欲望を取り戻すような激しさをそのまま宇都木にぶつけるような勢いだった。
「あっ……あ……ああ……あ……すごい……奥まで……来てる……」
「もっと奥まで……味あわせてくれ……」
グイッと更に突き上げると宇都木はウッと唸るような声を出し、如月の手の中に己のモノを吐きだした。同時に如月も望んだ場所で欲望を遂げた。

「……私……なんだか変でしたね……」
 数度繋がったあと、もう一度湯を満たした浴槽で、互いに抱き合っていると宇都木がぽつりと言った。
「欲求不満だったんだろうな……」
「邦彦さんは?」
「私もだな……。お互い様だ。あまり長い間離れないような予定を組むようにしてくれないか?」
 笑いながら言うと宇都木が真剣な顔つきになる。
「それは……他に……誰かを見つけると……」
 どうしてそんな風に考えられるのか如月には理解が出来ないのだが、どうも宇都木は何事に関しても、一番最悪なことをまず先に考えるようだ。
「そんな意味で言ったつもりはない。お前がいないとき、未来と同じように私も自分を慰めるだけだ。だがそれは空しいだろう?」
 言うと宇都木は冷めた顔をまた赤らめた。
「今度からそういう予定を組むようにします」
 何かが変だが、宇都木は真面目にそう言った。笑いたくはないが、どうしても笑いが漏れてしまう瞬間だ。
「笑わないでください……」
「笑ってないよ……」
「あ、ところで、話を戻しますが……真下さんが嫌いですか?」
 だから……
 どうしてこういうときに真下の名前を出す?
 これではいつまで経っても宇都木は真下のことをことあるごとに出して来るに違いない。それは勘弁して欲しいことだった。
「はっきり言うぞ」
「はい」
「私は真下が嫌いだ」
「どうして?」
 信じられないという表情だ。
「お前が信頼している相手は誰でもが私にとって嫉妬の対象になる。理由はそれだけだ。別に性格が嫌いだとか、話しにくい相手だとか、そういうことを言うつもりはない」
 言うと、宇都木は最初目を丸くさせ、次に嬉しそうに笑った。何故笑うのか如月には理解が出来なかった。
「どうして嬉しい顔をするんだ?」
「邦彦さんが……真下さんに嫉妬しているって事ですよね?」
「ま……まあな……」
「私が以前真下さんの下で働いていたからですか?」
 今度は不思議そうな顔。
「違う。真下がお前を気に掛けているから。未来も真下を頼ることがあるから気に入らないだけだ」
「……邦彦さん……」
「なんだ?」
「嬉しいです……」
 涙目の宇都木だ。
「だから……何が嬉しいんだ?」
 しかも涙付き。
 如月はその理由が分からない。
「私のことをそれだけ愛してくださっていると言うことなんですね?」
 それには答えられずに如月はただ小さく頷いた。よくよく考えると、とても恥ずかしい会話をしていることに気が付いたからだ。
「気を付けます……」
 目元を拭いながらそういった宇都木は満面の笑みを見せた。

 その後……

 今まで以上に、頻繁に、だがさらりと真下の名前を出してくる宇都木の行動に如月は暫く悩むこととなった。

―完―
タイトル

宇都木……ちょっと策士気分? というか、愛を確かめたい宇都木だから真下の名前をだしてはむかつく如月を眺めて内心飛び跳ねるほど喜んでいるかと思われます(笑)。珍しく如月視点でエッチをやってみました。あはは。エロエロという希望だったのですが、もう少しエロしたかったんですけど枚数が足りませんでした。ごめんなさい。あわわ。
なお、こちらの感想を掲示板やメールでいただけるととてもありがたいです。これからもどうぞ当サイトを可愛がってやってくださいね!

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