「続・悪夢のレッスン2(大地視点)」 (4万ヒット)
「私、光と申します。そちらの彼は星夜君。今晩は宜しくお願いします」
よどみなく慣れた口調で博貴はそう言った。
なんでいきなり大良が来るんだよ……
お前は新規の客は面倒見ないと言ってたじゃないかっ!
どきどきしながら大地は俯き加減で座っていると、自分と戸浪の間に問題の博貴は座った。兄の戸浪からは見えないのだろうが、博貴はソファーに腰を下ろすと同時にこちらの膝に手を置いたのだ。
なっ……
もしかしてこいつっ!
他の客にもこんな事してるのか?
「失礼します……」
先程の男が注文した酒を持ってくると、机の上に置いた。戸浪は、ウイスキーを一気に飲み干すと、机にグラスをドンッと置いた。
兄ちゃん怒ってる……
だけど俺もむかついてるっ!
「こちらの方は本日飲みたい気分のようですね。ボトルを入れましょう」
そう言って博貴はボーイに耳打ちすると、戸浪の方を向き更に言った。
「ところでお名前は何とお呼びしましょう?」
「え、……あ、ト、トミ子です」
兄ちゃん……なにそれ~
ばっかじゃないの~と、大地は思いながら自分もお酒を飲もうとグラスを傾けた。
「あっ……」
どう味わってもそのグラスの中身はオレンジジュースだった。
もしかして……
ばれてる?
チラリと博貴の顔を見ると、目があった。その目はニヤと歪む。
ばっ、ばっ……ばれてるよーーーー!!
ど、どうしよ~。
「こちらの方は何とお呼びしたらいいんでしょうねえ……」
そう言って博貴が大地に言った。
「さ、サワ子……」
大地はもうパニックになり、上手い名前など考えつかずそう言った。
膝に置かれた博貴の手は、さわさわと大地の太股を撫でている。
嘘~
おもいきり罠にかかった気分だ~
大地は冷や汗をだらだらとかきながら、必死に膝の手を払いのけようとするのだが、博貴はそんな大地を無視して、払っても払っても膝の上に乗ってくる。
博貴~
こんな所で馬鹿なことしないでくれよ~
「ああ、サワ子さんは随分気分が悪そうだ……少し休みますか?」
いきなり博貴はそう言った。
「え、その……」
お前のその手に俺は困ってるんだよっ!
「悪いでしょう?」
有無を言わせない口調で博貴は大地にそう言った。
「……はい」
大地は観念してそう言った。
「じゃあ、サワ子さんをちょっと休ませてきますね」
嬉々とした声で博貴がそう言った。
「……あ、おい」
立ち上がって二人に戸浪はそう言った。
兄ちゃん~
助けてよ~
必死の目を向けた大地であったが、戸浪は何故かそれを承知しているような目をこちらに向けると、もう何も言わずにグラスを傾けた。
に、兄ちゃんもぐる?
腰の辺りに廻された博貴の手はもう、剥がせないほどしっかり腰に食い込んでいる。これではもう逃げられない。
がっくりと肩を落として大地は項垂れた。
「ひ、光さん……」
祐馬がそう言って博貴を止めようとした。だが……
「ごめんね星夜君、私はちょっと彼女を介抱してくるよ。悪いんだけど、そちらの方を楽しませて上げてね?」
最後の希望をうち砕く言葉を言い、博貴は大地に向かってにっこりと笑った。
思いっきり、俺達がはめられたんだ……
と、大地は心の中で深い溜息をついた。
店内を後にし裏口へ廻ると、そのまま店の外へと大地は連れ出された。その途中、オーナーの榊にあったが、了解済みなのか大地の顔を見るとにっこりと笑みを浮かべただけで、博貴を止めることもしなかった。
「……お前……知ってたな……」
タクシーに乗り込み大地は言った。
「お嬢さん、そんな言葉使いはいけませんねえ」
クスクスと笑いながら博貴は言った。
「そんなことはいいんだよ!それに仕事の途中で抜け出すなんてお前っ!」
「今日は出勤日じゃないんだよ。最初から君たちが来るまでって約束だったんだよ」
「はあ??」
「まあ、女装してくるとは思わなかったけど……」
チラリとこちらを見て博貴はニヤニヤと笑った。
「……だって……」
女しか入られない。もしくは女性を同伴という規則のホストクラブに入るにはそれしか方法が無かったのだ。
「お兄さんも元が良いから、女装なのにうちのホスト達色めき立ってたよ。確かに美人だねえ。私も驚いたよ」
誉められても戸浪は喜ばないだろう。
「……はあ……何時からばれてたんだよ」
「あれ?気付かなかったの?電話を聞かせるようにしてかけたんだよ」
こ、こいつっ!
最初から全部計画してやがったんだっ!
むっかーとしているうちにマンションに着いた。
「ああもう、むかつくっ!」
大地はリビングに入ると上着を脱ごうとしたが、その手を博貴によって止められた。
「なんだよ……どうせ、わらってんだろ。女装なんかしてってさっ!離せよ、俺、服脱いで化粧落とすんだからっ!」
「サワ子さん……」
「その名前で呼ぶなっ!気持ち悪いっ!」
「自分で名付けたんだろう?」
はははと笑いながら博貴は言った。
「あ、あれはパニックになって、いいのが思い浮かばなかったんだっ!」
「では……大地……」
と言って博貴はこちらの身体をソファーに倒した。
「俺っ!する気ないぞっ!こんな格好してるんだし……」
既にスカートを捲り上げられているのだが、大地は足をばたつかせた。
「パンストまではいてるんだあ……」
ニヤニヤとして博貴はとても嬉しそうだ。
「だっ……だって……真喜子さんが……」
「あ、でも下着は女性ものじゃないんだ……」
確かめるように博貴は手を腰の辺りで動かしている。
「あっ……馬鹿っ止めろよっ!」
「……大地……なんだか妙な気分になってきた……」
「はあっ?」
博貴の顔を見ると、目が興奮している。
「じょ、女装にお前は興奮するのかよっ!それって変態じゃんかっ!」
「だってねえ……もう……可愛いんだよ君が……」
それは理由にはなっていないぞっ!
「大地……」
「がああっ!駄目だからなっ!この服、真喜子さんから借りてるんだから、皺だらけにしたら怒られちゃうよっ!」
「どうせ、そんなことだろうと思ったから真喜子さんに電話して、ちゃんと買い取りにしてもらったから、これは記念に取っておこうね」
記念って……
記念ってなんだよーーーーっ!
「うわああっ!嫌だぞっ!」
「ねえ、ここが嫌なら寝室にいこうか?」
もう行動を止める気などこれっぽっちもない博貴がそう言っていきなり大地の身体を抱き上げた。
「おいっ、大良ってっ!俺、嫌だって言ってるだろっ!」
なあんて博貴にそんなことは通じない。
寝室に入るとベットに押し倒された大地は更に暴れた。
変態ちっくなセックスのような気がして仕方がないのだ。
「大ちゃん。色気が全然ないよ」
「これってコスチュームプレイとかいうんだろ……やだよそんなの……」
「その格好が嫌なのかい?なら君が裸になるまで仕方ないけど待ってるよ。脱いで」
ここで脱ぐのか?
でもまあ、こっちの裸など腐るほど見ている博貴だ。別段恥ずかしい事はないだろうと大地は思い、いそいそと脱ぎだした。
だがまず、最初のワンピースが脱げない。ボタンが背中に着いているからだ。
「うーーーっ……届かない……」
「仕方ないねえ……私が外して上げるから……」
何故か声が喜んでいるように聞こえるのだが、大地は頷いた。すると、背中に廻った博貴が上からボタンを弾くように外していく。
そうしてボタンを全部外したところでいきなり博貴は背中に唇を這わせてきた。
「おいっ!まてってッ!全部脱いでからって言ったじゃないかっ!」
「大ちゃん~ブラまでしてる~」
後ろから大地を羽交い締めにしている博貴はクスクスと笑ってそう言った。
「だっ、だって、パットを入れなきゃ胸が作れないって真喜子さんがっ……あっ!」
背から廻された博貴の手は、ブラの下に滑り込まされ、そこにある小さな胸の突起を掴んだ。
「私はこのささやかな君の胸が好きなんだけどねえ……」
グリグリと指先で転がされながら大地は呻くように言った。
「あっ……嫌だっ……やめっろっ……!」
脱ぐまで待つって言っただろっ!
「焦らさないで……大地……」
焦らしてなんかねえよっ!
「おいっ……おいって!」
「大地……君の肌は本当に綺麗だ……」
ボタンを外された結果、露出した肌を博貴は舌でまんべんなく愛撫する。それに邪魔になったのか、口元で器用にブラのフォックを外してみせた。
なんだかこいつ……
慣れてないか?
いや、慣れていてもおかしくはないんだけど……
あ、そう言う問題じゃないっ!
「なあ……だからっ……あっ……」
「君が私を煽ったんだからね……」
俺?
俺が?
何処が煽ってるんだ?
「こんな可愛い格好をして……欲情するなと言う方が間違ってるね」
ムッとしたような声で博貴はそう言い、こちらの身体を前に倒して、膝を立てさせた。
うわああっ……
女になった気分だっ!
「たんまっ!たんまーーーっ!自分で脱ぐから待てよっ!」
「待てないっ!」
そう言って博貴はスカートを捲り上げ、露わになった下半身に残っている下着とパンストを一気に膝まで下ろした。
「うわあああっ!嫌だっ」
捲られたワンピースがこちらの顔に覆い被さってきて、気持悪いのだ。何より自分の姿を想像すると恐ろしい。
「何を狼狽えてるんだい君は……。何処の恋人達もやっていることだろう?」
こ、こんな事するのか?
じょ、女装してやったりなんかするのか?
違うと思うぞっ!
「あっ……やっ……」
ちゅっと襞の入り口にキスを落とされ、大地は身体を震わせた。
「ただの服を着ていると思えば良いんだよ……」
言って博貴は露わになった白い下半身に舌を滑らせた。
「あっ……あっ……」
もうこうなってくると、行くところまで行かなければこっちも堪らないのだ。途中で放り出されることは無いのだが、そういう虐めを身につけられても困る。
エロ大魔人の博貴は何だってやるのだ。
「大地……」
囁くようにそう言ってこちらに覆い被さり、前と後ろを交互に攻める。そんな博貴の手の動きに翻弄された大地は何度も甘い声を上げた。
高まる身体は身体の体温を上げ、息を荒くさせる。
「あっ……はあっ……や……あ……」
ギュッとシーツを握りしめ、喘ぎながらも、狭い空間に差し込まれた指の動きに自分も腰を振っている。そんな自然の動きが何時の間に身に付いたんだろうと時折大地は思うのだが、所詮博貴に慣らされた身体は、どうすればもっと気持ちよくなるのかを大地よりもしっかり自覚しているのだ。
「大地……大地も乗ってきたね……」
クスクスと相変わらず笑いながら、博貴は自分の手の動きを止めることはしない。
「……あ……はっ……はっ……あ……、あっ!」
博貴の指によって解された部分に、圧倒的な存在感を持つ雄が進入してくると、息が一瞬止まるくらいの快感が身体を一気に駆け抜ける。
「……気持ちいいっ?……私も……イイよ……」
そんな風に博貴に言われると大地も嬉しいのだ。自分の奥深くに入り、それに感じている博貴を知るのは嫌ではない。
ああ、俺……
こいつにはかなわないや……
兄ちゃんも……
今頃俺みたいに幸せな気分に浸ってるんだろうなあ……
ま、それでいいか……
ふと大地はそんなことを考え、夢心地に似た痺れに身体を任せながら大地は快感に酔った。
―完―
いかがでしたでしょうか? 分岐からは大地視点になっています。ふふ。やっぱり大地の方が励んでいますねえ。今回は祐馬が非常に可哀想になってしまいました。うう。誰よりも不幸な分(笑)幸せにしてやろうと本当に思ってしまいました。 読まれましたら掲示板もしくはメールにて感想などいただければありがたいです。おそまつでした。 |