CD/DVD等

機動戦士ガンダム・劇場版 T・U・V 特別編
 1979年に放送が開始されたガンダム最初のTVシリーズ(通称・1stガンダム)の総集編として劇場版Tが公開されたのが1981年。それから20年を経てDVD化されたのが、この「特別編」です。なぜ「特別」と銘打ってあるのかというと、DVD用に音をオリジナルのモノラル音声(時代を感じます)から5.1chサラウンド化されたからです。新たにアフレコするなど、「音」に関しては全く新しいものに変えられています。
 普通このような作業は“より良い作品”にするため行われるのですが、この劇場版「1st」に関してはあてはまりません。これは、どこをどう考えても改悪です。作業は生みの親である富野由悠季総監督が直々に参加して行われ、ライナーノーツの中で今回のリメイクにつきいろいろと語っておられますが、私は許せません。この劇場版三部作を実際に映画館で観、TV放映を観、ビデオが出れば買って鑑賞し尽くした人間としては、この改悪はどうしても許せんのです。だから、このようなアイテムにはイの一番に飛びつく私も発売から1年以上買う気が起こりませんでした。

 DVD化にあたって正確には
1 映像をオリジナルニュープリントからデジタルリマスター。
2 音声をドルビーデジタル5.1ch化 (1)新アフレコ
                       (2)効果音・BGMのリニューアル
がなされています。
 このうち、1は画質向上の点でありがたいことです。20年も前の絵が鮮明に記録されており、その高品質は実際目を見張るものがあります。
 2(1)は、まぁ、許しましょう。主なキャラクター以外は声優が変わってて違和感ありまくりだったり(かなり頻繁に流れるWBのオペレーター、オスカとマーカーの声は案外聴けるので助かりましたが)、同じ声優でも台詞回しが妙に落ち着いた感じに変わってたりで、当初購入をためらった原因はこれでした。発売当初の店頭デモをちょっと見ただけで、拒否反応を起こしてしまったのです。が、既にマ・クベ役の塩沢兼人氏が亡くなっていたので完全に同じメンバーでアフレコすることは不可能でしたし、どうせアフレコし直すなら声の演出も変えるでしょうし、セイラ役の井上瑶さんが亡くなってしまった今では貴重といえるかもしれませんから。
 問題は2(2)です。店頭デモでは気付かなかったのですが、冒頭のサイド7に進入するザクの音が違うことでいきなり衝撃を受けました。起動するガンダムの音もガンダムじゃない!これは本当にショックで、もうガックリきました。ガンダムが最盛期だった頃まだ小学生だった私は、その世界にメカから入りました。だから各モビルスーツが出す独特の稼動音はどれも脳裏に染み付いています。ガンダムのビームライフル発射音、ガンキャノンの歩行音、ガンタンクの駆動音、ザクの(終わらないので以下略)。それらが、違うのです。モビルスーツに限らずホワイトベースのエンジン音なども同様です。ブリッジはやたら静かになっちゃいましたし。TV放映、劇場公開、そして今なお作られるゲーム、それらで統一されていた音が一切出てこない。しかも、新たにつけられた音はどれも妙に軽い迫力が増すどころか失われてます。これを改悪といわずして、何というのでしょうか。
 さらに、BGMの挿入位置が肝心なところで変わってます。オリジナルではUのジャブロー戦が始まると井上大輔(故人)の「哀・戦士」がかかって盛り上がるのですが、特別編ではかかりません。戦いの歌なのに、なぜか戦闘終了後のラストでスタッフロールといっしょにかかります。このシーン、オリジナルでは渋いコーラスで荘厳さがあったのですが、実に軽〜〜〜い感じになってしまいました。Vのア・バオア・クー戦も同じで、戦闘シーンで「めぐりあい」がかかって盛り上がるはずなのにラストに移動・・・。なぜだ、なぜなんだーーーっ。「ビギニング」がかかって、感動の余韻を残しながらのスタッフロールだったのに・・・まったくもってガッカリです。

 ガンダムを全く初めて見る人ならこれでも問題はないでしょう。むしろオリジナルより良いと感じるのかもしれません。しかし、ガンダムは前述のように幾多のゲームが発売されており、最新のゲームでもオリジナルの効果音が使われている以上、この特別編には先に観ても後で観ても違和感が残るはず。1つの作品なのだから、絵を変えなかったように音も絶対に変えるべきではなかったと思います。
 モノラルのままで構わないからオリジナル音声版のDVD、出してもらいたいものです。もし出たら、すぐにでも買い直すんですが・・・。





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