ランチェスターの法則

- LAW OF LANCHESTER -

■ ランチェスターの法則とは

ランチェスターの法則は、イギリスの航空工学のエンジニアであったF.W.ランチェスター(1868-1946)が第一次世界大戦時の空中戦のデータを解析して提案した理論です。OR理論(Operations Reserch理論)として、軍事作戦や経営戦略などに利用されています。

ランチェスターの法則には、第1法則と第2法則があり、それぞれ数学モデルを作成した後、実戦のデータでその妥当性を検証されました。

この法則は現実の世界で現在に至るまで利用されており、このことからも、その有用性が分かります。太平洋戦争時にも、アメリカ軍はこの法則を元に戦略・戦術をたてたと言われています。

では、実際にどのようにこの法則がAoCに利用できるのか見ていきましょう。

■ 第1法則と第2法則

ランチェスターの法則の法則には、第1法則と第2法則のふたつがあり、それは以下のようなものです。

A軍の初期兵数を A0 , B軍の初期兵数を B0
一定時間経過後のA軍の残存兵数を A , B軍の残存兵数を B
武器効率を E としたとき、

第1法則 : A0 - A = E(B0 - B)
第2法則 : A02 - A2 = + E(B02 - B2)

第1法則は『一騎打ちの法則』とも呼ばれ、両軍の兵士が常に一騎打ちを行う場合にしか成立しません。AoCでは一騎打ちが行われることは皆無といってよいでの、第1法則はAoCには直接関係ありません。

重要なのは第2法則です。この法則は、多数の兵士が入り乱れて戦う広域的な戦闘を考え、敵軍より自軍の兵数が多くてもあぶれることが少なくなり、敵兵士に集中的に損害を与えることができる状況下で成立します。まさにAoCにおける戦闘と言って良いでしょう。

それぞれの変数についてですが、初期兵数と残存兵数についてはお分かり頂けると思いますが、武器効率Eついて補足しておきます。ここでいう武器効率とは、AoCに当てはめて考えたとき、A軍の兵士がB軍の兵士に与えるダメージの比と言えます。つまり、

A軍の兵士がB軍の兵士に与えるダメージを a
B軍の兵士がA軍の兵士に与えるダメージを b

としたとき、武器効率Eは

E = b / a

で定義されます。従って、第2法則の関係式は以下のように変形することができます。

a(A02 - A2) = + b(B02 - B2)

こちらの方がより直感的でわかり易いかと思います。

■ 具体的な運用方法

上記の関係式を一見すると、非常に煩雑な式かとお思いになるかもしれませんが、実際に使うに当たって、それほど複雑な操作は必要ありません。中学生レベルの数学的知識があれば十分です。

それではまず、A軍が散兵を5体、B軍が散兵を3体を用いて戦闘を行った場合をランチェスターの第2法則に当てはめてみるとどうなるのか見てみましょう。

散兵が散兵に与えるダメージは、攻撃ボーナスも加味するとその値は (攻撃力2) + (攻撃ボーナス4) - (遠距離防御力3) = 3 となります。A軍の兵数の方が多いのですから、A軍が勝利するのは明らかです。そこでB軍の兵士が全滅したとき(B = 0のとき)のA軍の残存兵数 A を求めてみましょう。上の値をそれぞれ代入すると、

a(A02 - A2) = + b(B02 - B2) <=> 3(52 - A2) = 3(32 - 02)
∴ A2 = 25 - 9 = 16
∴ A = 4

という値が得られます。兵数は5対3でしかありませんが、戦力の比は25対9にもなり、B軍は全滅するのに対して、A軍は1体の損害しかないことが分かります。実際にAoCを同じ実験をしてみても、これとほぼ同じ結果が得ることができます。

それでは、違う兵種の場合はどのようになるのか見てみましょう。

異なった兵種を考える場合、武器効率 E に各兵種の与えるダメージの比・HPの比・攻撃速度の比をそれぞれ加味しなくてはなりません。つまり、

a(A02 - A2) = + b(B02 - B2)

における a , b を以下のように算定します。

a = (A軍の兵士1体のHP) X (攻撃速度) X (攻撃力 - B軍の兵士防御力)
b = (B軍の兵士1体のHP) X (攻撃速度) X (攻撃力 - A軍の兵士防御力)

具体的にA軍が散兵、B軍が射手を保持している場合を考えますと、a , b はそれぞれ、

a = 30 X 0.33 X 5 = 50
b = 30 X 0.5 X 1 = 15

となります。この場合、A軍が散兵を10体、B軍が射手を10体保持しているとき、A軍が勝利するのは明らかなので、B軍が全滅するとき(B=0のとき)、A軍の残存兵数は何体になるのか求めてみますと、

a(A02 - A2) = + b(B02 - B2) <=> 50(102 - A2) = 15(102 - 02)
∴ A2 = 70
∴ A = √70 ≒ 8.4

ということになります。ここでいう8.4体とは残存したそれぞれ兵士のHPを全て足すと、8.4体分のHPが残るということです。

なお、各ユニットのステータス(攻撃速度を含む)は『ユニットデータ』に、攻撃ボーナスは『攻撃ボーナス』に記載していますので、そちらをご覧ください。

■ ランチェスターの法則から導かれる戦術

数学的な話はここまでにして、ランチェスターの法則から導かれる戦術とはどのようなものなのかについて考えてみましょう。

上の例で見たように、戦力とは兵数の2乗に比例します。従って、実際の兵数以上に戦力の差は生まれてきます。結局、結論としては『数が多い方が強い』ということになり、非常に直感的なイメージであり、当然のことなのですが、ランチェスターの法則から得られる結論をもう少し正確に表現しますと、『数が多い方が思ったより強い』ということなります。

また、ランチェスターの法則を用いることで、『散兵は射手よりも強い』とった直感的なイメージを『散兵は射手何体分に相当するのか』といった具体的な数値に置き換えることができるようになります。また鉄工所でテクノロジーを研究することで得られる効果も具体的な数字として求めることができるようになります。

以後、戦略・戦術を考える上でこのランチェスターの法則を度々使用しますので、一応頭の片隅置いておいてください。

■ 補足

話をなるべく簡明にするため、法則の導出などについては触れませんでしたが、興味のある方は、『ランチェスターの法則の導出』をご覧ください。

また、ランチェスターの法則をAoCに適応する上で、一軍が2種類以上の兵種を保持する場合にこの法則を適応できないという問題点があります。現在、兵種が2種以上の場合でも適応できる関係式を求めていますので、もう少々お待ちください。

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