奈良市地域自立支援協議会とは?
奈良市地域自立支援協議会は、奈良県奈良市の、障がい福祉にかかわるいろいろな方が集まった協議会です。どのような障がいを持っていても、それぞれの地域で安心して生活できるようにするために、問題となることを話し合って解決を目指していくところです。障がい者が地域で暮らすために必要なものは何か、障がいをお持ちの方をはじめ、保健、医療、福祉、教育、就労、行政等に携わる方だけでなく、地域にかかわる方みんなで考え、見つけて実現していくところです。
・設置要領 [PDF]
奈良市地域自立支援協議会と障害者総合支援法
本協議会は法的に、『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律』(以下「障害者総合支援法」といいます。)第89条の3第1項に基づき設置できる「協議会」として、地域における障害者への支援についての課題を共有し、地域の実情に応じた体制を整えるため、地域の障がい者にかかわる皆さんが集まり、より緊密な関係を持ってみんなでより良い地域づくりを行う機関として位置づけられています。
また、障害者総合支援法上で進められている、下記の体制づくりについても話し合い、様々な立場の皆さんと協力して進めていきます。
・地域において継続して生活するために、相談をし支援を受ける体制を充実させる。
・福祉サービスを利用する際、その人に合わせた計画を立て、生活を見守る体制をとる
・障がい者が病院・施設から出て地域で暮らすための支援体制を充実させる。
・障がい者の意思決定・社会参加などの権利を守り、虐待から守る体制をとる。
自立支援協議会の機能
自立支援協議会に期待される機能として、次のようなものがあります。
これらの機能を踏まえて検討することで、誰もにとっても必要な協議会作りを進めていきたいと考えています。
@情報支援機能・教育機能
実際に地域で暮らし、自立支援のサービスを受けておられる皆さんからのニーズの中には現状のサービスが不十分なことが原因と考えられるものがあります。各関係機関から相談ケースの情報を集めていくと同じような相談を受けていることが分かります。その中から、地域にとっての問題点「地域課題」を集約していきます。
また、障がい者サービスに関する情報が正しく伝わっていない、わかりにくいことが原因となるニーズもありますのでそれらの情報も伝える支援も行っていきます。
また、関係者があつまり課題を検討し解決のプロセスを共有することで、お互いの工夫や足りないところを学び合うことが出来ます。
A調整機能・開発機能
地域で生活する中から発生する地域課題ですから、さまざまな視点でケースを見、解決の糸口を見つけていくことになります。
福祉だけではなく保健・医療、教育、労働など分野を越えた関係者の協力によって、ニーズ発見から課題の解決までを検討し障害のある方への支援の輪を広げます。
また、地域の課題を集約し解決していく中で新たな社会資源の開発や既存のサービスの改善が求められます。
それはまったく新しいものを作ることだけではなく、既存の社会資源どうしの協力やサービスの運用の仕方の改善も含まれます。特に現在は既存の施設や制度を再編しどのように活用していくかが求められています。そういった提案を行政をはじめ各方面に提示していきます。
B権利擁護機能
障がいのある人もない人も差別や区別されることなく、決して孤立せずその人らしく生活できる仕組みづくりを協議していきます。顕在化しにくい障がい者の権利侵害について原因も含めて考え、権利侵害防止の仕組みづくりを行っていきます。また、障がい者の意思を確認してサービスを利用していただくためにも権利擁護の視点は欠かせません。権利侵害防止と権利擁護の2つの働きを担います。
C評価機能
直接・間接支援にかかわらず、障がい者や家族が直接触れるサービスは量だけではなく質も問われます。支援を求めている方に対して果たして適切な支援を提供できたかについて評価をしたり、個々の支援だけでなくその支援に結び付ける過程は適切だったか評価をしたり、その人にとっての支援、その地域にとっての支援についてはどうか評価をしたりする必要があります。相談支援をはじめ各種サービスの事業者と連携し、評価とそれを踏まえた検討を繰り返します。
相談支援から始まる地域課題
1.かつて自立支援法施行前は、3障がいの相談支援が別々の事業になっていました。
それぞれが国事業や県事業であったため、制度設計のばらつきや不十分なところがあった為、個別支援会議からあがる課題が、地域の施策に反映されにくい仕組みでした。知的障がいを対象とした相談支援事業(障害児者地域療育等支援事業)では「サービス調整会議(機能のひとつが個別支援会議で明らかにされた課題の検討)」を提唱しましたが、制度化されていなかったため、十分に機能できませんでした。そのため相談員はただでさえ同じ職種のスタッフが少ない中自分で抱え込んでしまうか、課題に対して個人の力量で対応しなければなりませんでした。
2.自立支援法ではその不備なところを「地域自立支援協議会」という形で制度化しました。その中で、個別支援会議は地域自立支援協議会を活性化させるための命綱と考えられています。それぞれが個別支援会議について、@必要な関係者が参画しているか、A本人のニーズに添った支援になっているか、B短期目標と中期目標を整理して、すぐにできる支援と、時間を要する支援を分けて議論しているか、Cそれぞれの役割分担は整理できているか、D現状でできないことを確認・共有できているか、という視点で振り返ることが大切となります。また、これらの仕組みは相談員から見ると、個別支援会議で課題整理したことを協議会が受け止めてくれる、ひとりで抱え込まなくても良いというメッセージとも言えます。協議会ですべてが解決されるわけではありませんが、地域の関係者と課題の 共有を図ることができます。
3.そして平成24年4月からの障害者自立支援法一部改正により、障害者の方が抱える課題の解決や適切なサービス利用に向け、ケアマネジメントをよりきめ細かく支援するため、原則としてすべての障害福祉サービス等を利用する障害者(児)について、指定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画・障害児支援利用計画の作成が必要となりました。全ての障害者に対し、共通したフォーマットの支援計画を作成し、定期的にモニタリングを行い評価することで、個々の課題等が相談員相互で共有されやすくなります。そのことでより地域の課題として協議会に共有されやすくなります。
地域課題の例
・地域で一人で生活するための支援体制
・障がいを持つ方の子育て支援
・医療ケアが必要な障がい児・者の地域生活の支援(通学・通所支援、レスパイト等)
・障がい者サービスから介護保険サービスに移行する際の混乱
・触法障がい者に対する福祉・司法・就労等との連携の必要性
・それぞれの障がい者にとって適切な福祉サービスの種類・量とは?
・世帯の中で複数の家族が支援が必要な場合の支援体制について
・強度行動障害や他害のある人の支援
・それぞれの障がい者にとっての就労や社会参加をどう支援するか?
など、に対し、各専門部会にて、または新たにワーキングチームを結成して引き続き検討していきます。
奈良市地域自立支援協議会の歩み
1.支援者同士の横のつながりを作り、地域での課題を検討していきました。
奈良市ではこれまでも、相談支援事業所関係者、就労支援関係者、保健所および精神保健福祉関係者など各分野において集まりケース検討などをしてきました。
平成18年秋、今回の地域自立支援協議会の設置に伴い、上記関係者および行政関係者、学校関係があつまり、どのようなテーマで話し合うか協議しました。協議の上、障がい者のライフサイクルを元に、協議以前から会議を行っている相談支援・就労支援・精神障がい、協議を通して関係者が集まった療育に加え、特別支援教育、居住支援、権利擁護をテーマとした部会を設置することで確認しました。
奈良市地域自立支援協議会を設置したことにより、それぞれ所属先がちがう知的・身体・精神・そして児童の障害福祉に関わる専門職員が一同に会する機会がとれ、顔の見える関係が築けたことは成果の一つと考えられます。また、それぞれの分野ごとの障がい特性やアプローチの仕方など、支援の方法などの違いを知り情報交換できたことは支援者としての幅を広げることにつながります。また、奈良市の障がい福祉全体を見通して必要な情報や資源などについて研修会を行ったり実態調査などで課題を明らかにしたりと地域から出てきた課題に対して、さまざまなアプローチで解決方法を探ってきました。
一方で@本人への支援以上に家族の方の支援が必要なケースや、本人の支援に協力していただける施設・事業所などの社会資源がつながらないことへの対策など、経済面・制度面などより広い範囲の検討が必要になったこと、A奈良市地域自立支援協議会の活動が活発になるにつれて市内の関係事業所スタッフの参加が多くなり、参加の位置づけが曖昧な中で仕事中に参加することへの問題提起があったことから、参加している委員の位置づけや課題解決の方法について検討を重ねました。
2.提案を発信できる組織作りへ。
@の福祉サービスだけでは解決できない問題については、運営委員を障害福祉サービス関係者だけでなく当事者をはじめ学識経験者、高齢福祉関係者、保健・医療関係者、学校関係者、就労支援関係者などから委員を選出し、より広い範囲で検討を出来るように組織を作りました。また組織体制についても障がい区分を超えて部会を再編成したことで、課題に対して部会で検討を行いやすくしています。
Aの関係者の位置づけについては、運営委員については市長委嘱を行い、会長・副会長・部会長を担っていただいています。また組織体制を整えることで対外的に課題解決に向けて発信できる仕組みづくりを行っています。加えて調整会議で各部会の活動報告と各委員からの意見を整理し、毎回の運営委員会で何を検討してもらうか、それには何が必要かということを明確にすることで課題解決に向けて検討する仕組みづくりを行い、「課題解決のできる自立支援協議会」を目指していきます。
。