「苦悩だって愛のうち」 第3章
「御茶入れてくるね」
何も知らない祐馬はそう言って急須を持って立ち上がった。
「祐馬、私がっ……」
そう言って立ち上がろうとするのを祐馬が止めた。
「いいよ。足悪いんだから、無理しなくて良いって」
祐馬はキッチンへ向かった。
「……止せ……」
小声で戸浪は如月に言った。
「何が?」
如月は何事も無いようにそう言った。
「私に……触るな……」
必死に睨み付けて戸浪が言うのだが、如月の方は堪えている様子はない。
「こんな風にか?」
と、言って如月の足先が股下の一番敏感な部分を撫でた。その刺激で両足の膝を机の裏で打ち付けた。
ガツッ!
「ひっ……」
息が止まりそうなほどの痛みを膝から感じ、戸浪は足を引きずって机から離れた。そんな戸浪に如月が近寄る。
「どうしたんだ?澤村さん……」
あくまで他人の振りをして如月が言う。
足が自由に動くのなら、蹴りの一つでも入っていただろう。
だが今膝を打ち付けた事で、かなりの痛みを感じ、本当に泣きそうだった。
「そう言えば膝が痛いらしいな」
言ってこちらの太股に手を掛けて、這って逃げようとする戸浪を捕まえる。
「触るなっ……いっ」
何とか戸浪がそう言うと、如月にギュッと膝を掴まれて、息が上がった。
「何やってんの!」
戻ってきた祐馬が二人の姿を見て驚いてそう言った。
「ああ、足が痛いと言ってね。横にさせたほうが良いと思って寝室に連れて行こうとしていたんだ」
「え、そんなん、俺がするから如月さんはいいよ」
ムッとして、祐馬は戸浪の横にいた如月を押しのけて、戸浪を抱き起こそうとした。戸浪はそんな祐馬の首に手を回して捕まった。
「済まないが……休ませてくれないか?」
耳元でそう戸浪が祐馬に言うと、顔を赤くして頷いた。
「ごめん、俺ちょと運んでくる。調子悪そうだから……」
如月に祐馬はそう言って、戸浪を抱き上げた。
「ああ。私は一人で食べてるよ」
祐馬に抱き上げられたことで戸浪はホッと胸を撫で下ろした。見せつけるようにギュッと祐馬の首元に戸浪は絡みつく。
そんな戸浪を如月がじっと見ているのが祐馬の肩越しに見えた。だが戸浪は如月を、視界から消したくて祐馬の肩に顔を埋めた。
「そんな痛いのか?」
廊下を歩きながら祐馬はこちらを覗き込むようにそう言った。
「さっき……机の裏で膝をいつものように立てようとして……打ち付けたんだ。それで……」
違う……如月に触れられて驚いて膝が立ったのだ。
だがそんなことは絶対祐馬には言えない。
知られたくない。
「ええっ!そんじゃ痛いだろ?大丈夫か?」
「痛い……祐馬……痛いんだ……」
言いながら絡みつけている腕に力を込めた。
「戸浪ちゃん……やっぱ病院に行こう……俺、休みでもやってる病院探してやるから……そんな痛いのおかしいよ……」
心配そうに祐馬はそう言った。
「……大丈夫……」
寝室のベットに下ろされるのだが、祐馬に廻した腕を解くことが出来ない。
このままずっと抱きしめて貰いたい……
どうして如月が祐馬と親戚なんだ……
何故こんな事になる……
悪夢を見ているようだ……
「戸浪ちゃん?どうしたの?」
何時までも抱きついている戸浪に祐馬は不思議そうに聞いてきた。
「祐馬……恐いんだ……」
お前を失いそうで恐い……
言えばいいのだろうか?
話してしまえば楽になれる?
「もしかして……甘えてる?」
何も知らない祐馬は嬉しそうに言った。
「……かもしれない……」
祐馬……
お前に言えないことがこんなに辛い……
戸浪はぐっとこみ上げてくるものを必死に押さえた。
「人間って、怪我とか病気とかしたら気が弱くなるって言うけど、本当なんだなあ。戸浪ちゃんもこんな可愛くなるんだ」
祐馬もベットに横になってそう言った。
「祐馬……っ……」
祐馬の胸の中に顔を埋めて、戸浪は泣きそうになるのをじっと耐えた。
「大丈夫。大丈夫。すぐに治るよ」
そう言って優しく髪を撫で上げてくれる仕草がとても心地良い。
祐馬といると本当にホッと出来る。
自分が大事にされているのが分かる。
「じゃ、俺、ちょっと電話帳調べてくるね。やっぱ病院に行こう」
そう言って祐馬が身体を起こすので戸浪はその手を掴んだ。
「祐馬……ここで……ここから電話してくれないか?一人にしないでくれ……」
又、如月が来そうな気がして恐いのだ。
あの男は何か企んでいる。
だから二人きりにはなりたくなかったのだ。
「え、うん。いいよ。じゃ電話帳取ってくるよ」
祐馬は嬉しそうだ。
「ああ……」
ホッとして戸浪はベットに身体を伸ばした。だが膝はかなり痛みを訴えている。先程ぶつけた拍子に、内側をかなり傷つけたかもしれない。今は曲げることすら恐い程だ。
「見せつけてくれたな……」
如月の声に身体が跳ねた。
「……お前がっ、あんな事をするからだっ」
「そうだな。随分お前に触れていないから私もとんでもない行動に出たんだろう」
言いながらベットに腰をかける。
「足……あの時のか……」
ちょっと表情を柔らかくして如月が言った。
「……すぐに祐馬が戻ってくる」
「だから?」
如月はじっとこちらを見て視線を外さなかった。
「言ったはずだ。もう構わないでくれと。今の私には、祐馬しかいないんだ。お前のことはもう何とも思っていない」
「失ってみるか?」
「え?」
「祐馬を失ったら私しか残らないだろう?」
そう言って如月は戸浪の膝を撫でた。
「何を……」
言っているのだ、この男は……。
「失えば……後は私とお前だけだ……戻ってくるしかない」
バシッと戸浪は如月の頬を叩いた。
「……どうしてそんな風に考えるんだ……お前は優しい男だっただろう?」
どう考えても昔つき合っていた頃の如月に見えないのだ。
「言っただろう……お前を取り戻すためなら何だってすると……」
叩たかれた頬を自分で撫で、如月は言った。
「……祐馬に……話す……全部……全部私が話す」
それで駄目になっても、これ以上、この男に振りまわされるのは堪らなかった。
「じゃあ、私も話そうか。本当のお前は男二人を手玉に取って、被害者面をしているとな。可哀相な祐馬はどう思うだろう……。祐馬に憎まれてみるか?恨まれて、毛嫌いされて……お前のことなど二度と見たくないと思わせることなど簡単だ」
そんなことを本気で考えているのか?
だが如月の瞳は真剣で、とても冗談を言っているようには見えない。
「……あっ……」
「戻ってくるぞ。嫌なら黙ってるんだな……」
パタパタと祐馬の廊下を走る音が聞こえ次に寝室に入ってきた。
「あれ、如月さん」
片手に電話帳を持って祐馬がこちらに歩いてくる。
「心配でね。様子を見ていたんだ。昔私も膝を壊したことがあるから、少しは分かるんだよ」
膝に乗せた手をどけてくれと戸浪は思いながら、戸浪は必死に祐馬の方を見た。
頼む……
この男を何処かにやってくれ……
追いだしてくれ……
頼む……
祐馬……っ……
戸浪は祐馬を見ながら心の中でそう祐馬に訴えた。
「あ、そうなんだ。でも戸浪ちゃんをこれから病院に連れて行くから、如月さんはいいよ。すげー悪いんだけど、そう言う訳で、ここ留守にするから帰ってくれて良い?ちょっと戸浪ちゃん酷そうだから……」
祐馬のその言葉がありがたくて仕方なかった。
「そうか……ま、またゆっくり夕飯でもご馳走して貰いにくるか……」
如月は意外にすんなりそう言って立ち上がった。それと同時に戸浪の膝に置かれていた手も離れる。
「う~ん……如月さん、俺そう言ったけど、戸浪ちゃんの膝の具合によったら、それ無理かもしれないから……又俺から連絡するよ」
心配そうに祐馬は戸浪をちらりと見てそう言った。
「分かったよ」
にこやかな仮面を付けた如月はそう言ってようやく帰っていった。
こちらはそれを見送って、急に身体の力が抜けた。
「戸浪ちゃん、もちょっとまってね。休日の急患センターって絶対あるからそっちを探すよ」
言いながら先程如月が座っていた所に祐馬は腰をかけて電話帳を開いていた。そんな祐馬に手を伸ばして上着の裾を掴んだ。
「何?」
祐馬はそう言って振り返る。
「……痛い……」
祐馬は戸浪が延ばした手を握った。
「甘えてる~」
本当に嬉しそうにそう言って祐馬はギュッとこちらの手を握ったまま、もう片方の手で電話帳を繰っていた。
「……甘えてる……か……」
握られた手をじっと横目で見ながら戸浪は目を閉じた。
安堵感から、どんどん身体の力が抜けていく。痛みより睡魔が襲ってきた。
「戸浪ちゃん?」
気が付くと戸浪はぐっすりと寝込んでいた。
「あ……」
「戸浪ちゃん起きた?」
診察室のベットで戸浪が目を覚ました。まだ自分が何処にいるのか分かっていないようだ。目線がキョロキョロとしていることでそれが分かる。
「ここ……」
「うん。病院」
「え?」
「戸浪ちゃん、あれから寝ちゃったから、抱っこして車乗せて病院に連れてきたの。起きるかなあって思ったんだけど、全然起きないから俺の方が心配だったよ」
熱でも出たのかと祐馬は本当に心配したのだ。だが熱も無く、気持ちよさそうであったので、ただ単に眠っているのだろうとようやく思えたのだ。
「……ええ?」
戸浪は信じられないという表情を浮かべてこちらを見ている。いやだがそれは祐馬の方が言いたいくらいだった。戸浪はレントゲンを撮るときも眠っていたからだ。
「あ、右の方だけ、ギブスはめることになったから。膝の所だけね。で、二週間は会社いっちゃ駄目だって。今ギブスの準備してる」
と、話していると医者が戻ってきた。
「ああ、起きたのかい。それじゃあギブスをはめるよ。君、この両膝は昔に一度壊しているだろう?」
戸浪の右膝にクリームを塗ってそう医者は言った。
「はい……」
「そのとき注意されている筈だがね……」
「済みません。随分前でしたので、気が緩んでいたんです……」
戸浪はそう言って項垂れた。
「君のこの膝は、治ったらそれで終わりじゃない。半月板が奇形なんだよ。それは治らないからね。これからは気をつけるように。それで会社を二週間休めるなら膝だけのギブス、駄目なら右足全体を覆うギブスをはめるが?」
と医者が言うので、戸浪が何か言うより先に祐馬が言った。
「休ませます。膝だけでお願いします」
「祐馬……」
「駄目駄目。そりゃ、酷いのは右って先生から聞いたけどね、左もそんな良くないらしいよ。だからどうせならゆっくり休んだら良いんだ。戸浪ちゃんが出来なくなった仕事はちゃんと代わりの人がしてくれるよ。それがチームワーク!でもって、そう言うことが出来るのが会社って組織のいいところだろ?逆に戸浪ちゃんがギブスして松葉杖で行く方が迷惑かかると俺思う」
まくし立てるように祐馬はそう言った。
先程、医者に思いっきり脅されたからだ。
ここで、きちんと治さないと、足を引きずるような後遺症を残しますよ……と。それを聞いてから祐馬は絶対休ませる!と決めていたのだ。
「その診断書も帰り持ち帰れるように頼んだから……そうしようよ戸浪ちゃん」
暫くこちらを見て、戸浪は頷いた。
それから膝にギブスをはめ、松葉杖を借りると祐馬は戸浪を抱き上げ車の後部座席に乗せた。そうして戸浪が横になれるようにクッションを背においてやる。
戸浪は帰り着くまで沈黙したままだった。
「そだ、この事、弟さんに知らせた方がいい?」
戸浪をベットに下ろしながら祐馬は聞いた。
「いや……いい。この事でまた、大地が落ち込むと可哀想だからな」
意味ありげにいうので、もしかして膝のことは大地が何か関係しているのだろうか?
「それって、もしかして弟さんが関係してるの?」
「……まあな……だがあれは弟には関係ないんだ」
そう言って戸浪は沈黙した。
何があって今戸浪の膝が悪いのか、いつかきっと教えてくれるだろうと思った祐馬は医者に言われたようにバスタオルを丸めて、戸浪の膝の下にいれてやる。知らなかったのだが、膝は完全に伸ばす方が足に悪いらしい。だからやや曲がる位が丁度いいそうだ。
暫くすると戸浪が言った。
「なあ祐馬……」
「なに?まだ痛い?」
「いや、痛み止め打って貰ったから痛みはないんだ……そうじゃなくて……」
戸浪は何か言いにくそうなことを言おうとしているのだ。
「んじゃ何?」
「……私は悪い男かもしれないな……」
「何それ……」
「祐馬は……もし、私と別れたとして……その……何年か後に私に再会したとしたら、まだ私に好きだと言えるか?それとももう他の人を見つけて、私を無視するだろうか?」
戸浪はぼんやりとそんな事を言った。
「……俺は言えるだろうなあ……前誤解したとき、そんな事考えたよ。戸浪ちゃんが過去の男とよりが戻ったって誤解した時ね。……例えその先俺に誰かできたとしても……戸浪ちゃんが帰ってきてくれたら……きっと戸浪ちゃん選んじゃうだろうなって……」
そう言うと、戸浪は目を細めた。
「そうか……なら……私は悪い男だな……」
戸浪がそう言うので祐馬は驚いた。
えええ、なんかそれってやばくない?
「ちょっとまってよ。俺、話し見えないよ。そんで、何が戸浪ちゃん言いたいの?俺と……駄目ってこと言いたいのか?」
祐馬が戸浪に覆い被さってそう言うと、戸浪は目をまん丸にして、次に笑い出した。何が可笑しいのかこっちには全く分からない。
「済まない……笑い事じゃないな。いや、私もそんな事を昔に考えた。多分もう誰も好きにならない、あの男を一生好きでいるんだとね。なのに、今は祐馬が好きだと言える。今あの男が不意に現れたとしても、私は祐馬を選ぶだろう。そう思うと、私はあんまり褒められた男じゃないなと……そう思ったんだ」
これはものすごい告白だ~と祐馬は、嬉しくて戸浪を抱きしめた。
俺が一番なんだ……
戸浪ちゃんは俺が一番好きなんだ……
もう嬉しくて仕方ない。
「お、おい祐馬……」
「俺が褒めてやる~戸浪ちゃんを褒めてやる~!」
戸浪の頬に自分の頬をこすりつけて何度もそう言った。
「馬鹿だな……」
苦笑して言う戸浪の声が聞こえた。
「だってな、嬉しいんだぞ。それって俺が一番って事じゃん。戸浪ちゃんってさらっとそう言うこと言うんだからな。全く俺、戸浪ちゃんが可愛くて大好きだ~!」
「何だ……今頃気づいたのか?私は何度も言ってるはずなんだが……」
「だってさあ、やっぱりこう、やることやってないと……その不安じゃんか。そりゃそれを目的って訳じゃないけど……この辺りはものすごくデリケートなんだぞ。分かってるのかなあ……」
一度だって手に入れていたら、きっともう少しくらい自信がもてただろう。だが、今のところ、当分お預けだ。
だからようやく芽生えた自信も何だか頼りない。
「別に……足を気にしなければ良いんだ……」
この男は自分の状態を本当に分かっているのだろうか?
「ほら、又そうやってからかうだろ。出来るわけないじゃん。やるって簡単に言うけどね、膝が曲がらないとすっげーきついと俺思うぞ。んも~煽らないでよね。そんでなくても俺、我慢してるんだから……」
折角二人でラブラブ出来ると思っていた矢先の事なのだ。ほんと、俺って呪われてるよなあと、実際何度思っただろう。
「じゃあ祐馬……そんなに自信が無いのなら、自信がもてるように私の身体に印でもつけておくか?」
戸浪がそう言った。
だが祐馬にはどういう意味かよく分からなかった。
「え?」
すると、戸浪がシャツのボタンを外しだした。全部外し終わると胸元をはだける。すると自分より白い肌が露わになった。
「……だから……煽らないでって……」
というのだが、祐馬は戸浪のその白い肌から目が逸らせなかった。その胸元にある乳首も美味しそうに祐馬を誘っている。
うう……拷問だ……
「だから……印を付けておけ。俺のだってね」
言って戸浪は真っ赤になっている。本人も恥ずかしいのだろう。
「え……」
「き、キスマークの事だろうがっ!お前はどうしてそう鈍感なんだっ!」
戸浪にばしっと頭をはたかれてようやく祐馬はどういう意味か理解した。
だがちょっと待て、それだけで終わるのも非常に俺は辛いんだけど……と思うのだが、戸浪がこんな風に言ってくれているのを拒否など出来なかった。
「いいの?」
ごくりと喉元がなる。
「好きなところに付けて良い。お前が付けたいところに付けろ」
戸浪に促されるまま祐馬は露わになった戸浪の鎖骨の部分をまず愛撫した。肌のきめが細かく本当に綺麗な肌だ。
多少強ばっている戸浪の身体も今までよりましだった。
するすると移動して尖りに吸い付いた。久しぶりの戸浪のささやかな突起がとても甘く感じて、そこばかりを攻めていると又頭を殴られた。
「戸浪ちゃん……酷い……何処でも良いって言ったじゃんかっ!」
「お前はっ!舐め回されてこっちが戻れなくなったらどうしてくれるんだっ!痕を付けるだけだっ!分かったかっ!」
これでもかと言うくらい顔を赤くした戸浪がそう言ってもう一度頭を殴ってきたが、それもまあ仕方ないかアなどと祐馬は思った。
「……分かった……」
折角プッツリ立った戸浪の尖りを仕方なく見送って、首元や胸元に幾つも自分の印を刻み、それだけじゃ物足りなくなった祐馬は舌をどんどん下へと移動させて、なめらかな腹にもいくつか付けた。でもまだ何だか物足りない。
「まだ……満足できないか?」
ちょっと息を荒くした戸浪がそう言った。そんな声が祐馬の耳を掠めるともう堪らない。
うう、拷問再び~
「もちょっと……」
良いのかなあと思いながら、ズボンに手をかけたところで、更に殴られた。
「そ、そこは駄目だっ!そんなところを煽られたら私が堪らないだろうがっ!」
「何処でも良いって言ったじゃんか!俺ここ付けたいっ!」
ぐいっとズボンを引っ張ったとたんに、髪を引っ張られた。
「あいてててててて……っ」
「これで終わりだっ!もう良いっ!これ以上は駄目だっ!」
戸浪が余りにも必死に言うので祐馬は諦めて言った。
「分かった。そんで、お腹空いてない?あんまり昼食ってないだろ?」
ふか~い溜息が一緒にもれる。
「……空いた」
必死に戸浪はズボンをずりあげながらそう言った。