《アーサー王諸国漫遊記》
『第1話:事の始まりはヴェルトマー』
バーハラでの聖戦から数年が経ち、人々は復興のメドも見えてきて、それぞれ自国の特色を生かした国造りに精を出していた。
今回の話の拠点であるヴェルトマーも、人々の努力によってこの国の色がつけられつつあった。
闇の皇子ユリウスの支配下であった頃、このヴェルトマーも圧政に苦しめられてきた過去を持つ。
しかし、父親であるアルヴィスのはからいもあって、まだそれほど過酷なものではなかった。
ある意味ではこの復興しつつある現在の方が苦しい面もある。
どういう意味なのかと言うと。
ユリウスが倒された後、セリス軍の中のメンバーが、それぞれゆかりある土地を治める事となった。
そして、このヴェルトマー領は、アルヴィスの弟であったアゼル公子の息子であるアーサーが公主の任を負ったのである。
・・・ここらへんから、カップリングに異を唱えたい人もあるかもしれないが、まぁ見逃していただきたい。
さてこのアーサー国王・・・訂正、領主なのでアーサー卿、決して治世の腕が悪いわけではないのだが、ちょっと困った性癖があった。
生まれつき放浪癖というものがあるんである。
なにせ、セリス軍に参戦する時も、妹探しにシレジアからアルスターまで旅をしていた途中だったというんである。
しかも徒歩で。・・・放浪と言うより、ただの命知らずなのかもしれない。
領主が放浪癖を持っているということは、国が自治の形をとる時があると言う事。
圧政による従うだけの生活から、頼りない主をたてた、自治含みの生活。
さぞ王に対して不満が積もっているのだろうと思われるだろうが、不思議と反感は買われなかった。
人徳というやつである。
さて、前置きが少し長くなってしまった。
事の始まりはこうだったのである。
「アーサーーーッ!!!」
幾分怒気をはらんだ声が館の中に響き渡る。そしてドシドシという足音も・・・。
「アーサー!!やっぱりここにいたのねっ!!」
声の主はある部屋をばたんと開けて怒鳴りつけた。
場所は食料庫である。
この話の主人公、アーサー卿は、いくらかの食料を手に取り、声のした方へ振り向いた。
「よう、フィー。どうしたんだ、そんなに怒って?」
おそらく素だろう、すらっとぼけた調子で恋人のフィーに話し掛ける。
少し高価そうなゆったりとした室内着と、炎の紋章がなければ領主に見えないかもしれない、そんな風体である。使用人にいじられるのを好まないため、長い銀髪も適当に後ろに流している。
戦争の頃に比べると、背もすらりと伸びきって、少し大人の雰囲気が漂ってきた気もするがやっぱりまだまだだ。フィーはそう評価していた。
「『どうしたんだ?』じゃないわよっ!!ここで何をしてるのよっ!?」
「何、って・・・。」
少し考えて、
「ちょっと腹が減ってさあ・・・。」
「うそつき。」
即座にフィーは否定した。
「ひ・・・人が頑張って作った嘘をすぐ見破るなよ・・・。」
「そんな変な所で頑張ってないで、もっと他の所で頑張りなさいよっ!!どうせ、またこっそり旅支度でもしてるんでしょう?」
「バレたか。」
少し照れ笑いを浮かべるアーサー卿にフィーはため息をついて言った。
「あのねえ・・・いい加減こっそり一人旅に出たり、わたしが出かける時便乗してペガサスに乗ったりするの、やめない?」
「おかしいな・・・なんでバレたんだ?」
「・・・聞いてる?人の話・・・。」
「あ、ああ。」
かなり恐い目でにらみつけられ、アーサー卿は思わずかくかくと頷いた。
「大体、見てれば気づくわよそんなの。アーサーってば隠し事出来ないんだもの。」
「へえ、見てればねえ・・・。」
「な、何よっ!!」
思わず笑われてしまい、フィーはちょっと赤くなって怒鳴った。
戦争の頃から、彼女のこういうところはちっとも変わっていない。
「まぁ、いいか。そろそろフィーにも話そうかと思っていたところだし。」
「へ?」
思わず問い返すフィー。
「あのな、旅に出ようかと思ってるんだ。」
「いつもの事じゃない。」
「うん、そうなんだけどな。ただ今回はすごいぞ。なんたって世界一周だからな。」
「はあっ??」
目を丸くするフィーを尻目にアーサー卿は楽しげに指折り数えていく。
「えーと、まずグランベルの各領土だろ、それからレンスターにイザーク、シレジア。それにヴェルダンとミレトスでほら、世界一周だ。」
「・・・え?」
「いや、みんな元気にしてるかなあ、と思ってさ。しばらく顔をみてないし・・・。」
「いーかげんにしなさいよっ!!!」
「うわっ!!?」
フィーのかなり大きな怒鳴り声に、アーサー卿は現実に立ち戻った。
「何考えてるのよっ!!あなたヴェルトマーの領主なのよっ!どれだけ人に迷惑がかかると思ってんのっ!?残されるわたしの身にもなりなさいよっ!!それにっ・・・!!」
どれだけ長い間わたしに淋しい思いをさせるつもりなのよ―――。
さすがにこの言葉は途中で飲み込んだ。
アーサー卿は、顔を少し赤くして黙り込んでしまったフィーを見て、静かに口を開いた。
「え・・・?フィーは一緒に来てくれないのか?」
「・・・え?」
フィー、顔を上げる。
「フィーが来てくれないと意味がないんだが・・・。無理かな?」
「なっ・・・。」
あくまでのほほーんとしたアーサー卿の言葉に、フィーはまた怒鳴り声になってしまう。
「何考えてんのよだからっ!!公主とかその代行がそんな長い間留守に出来るわけないでしょーがっ!!」
「・・・いや、別にいいんじゃないか?」
「何が!!?」
「別に、俺がいなくても、だよ。」
アーサー卿はやっぱりいつもの調子で話している。ただ、目の輝きだけは普段と違っていた。
「大臣ももう俺がいなくても十分やっていけるだろうし・・・。俺がもういなくても国としては大丈夫だろ。だから、民があきれたのなら俺はそれで構わないと思う。」
そこで、ちょっと笑って、
「だって、そうなったらそうなったでさ。ずっと、フィーとまた旅が出来るだろ?」
いつもと変わらぬ態度だったが、でもフィーには少し彼が照れているように思えた。
そして、少し大人になったのかなぁ、とも感じた。
さて、この世界一周の話だが、フィーの予想に反して民にはあっさりと受け入れられた。
やっぱり人徳である。というより想像以上に民は慣れっこになっているようだった。
「気をつけて下さいね!」「アーサーさま、おみやげ話たくさん聞かせてね!」「もっといい国にしときますからね!楽しみにしていてくださいよ!」
民のそんな見送りの言葉に、アーサー卿は笑顔で返していく。
「ああ!帰ったら面白い話みんなしてやるからな!!」
このちょっとトボけているが、常に本音で民と語らっているアーサー卿は、これはこれで民に愛されているのだった。
ふと、思い出してフィーは聞いてみる。
「ねえ、アーサー。なんで、『わたしが一緒に来ないと意味がない』、の?」
「え・・・?」
アーサー卿、少しとまどってちょっと考えた後、小声でなにやらつぶやいた。
「え?なんて言ったの?」
「ま、まあいいじゃないか!!さ、行こうぜ!!出発だ!!」
「・・・うん!!」
こうして、アーサー卿、もといアーサーとフィーを乗せたペガサスは空に駆け出した。
二人の諸国漫遊記の始まりである!!
<つづく>



(ビッグバード)
おおっ!!今回はふぁりすん☆イチオシのアーサー君のお話ですか〜。鳥も彼は大好きです!それにフィーさんがっ!!めちゃかわいいですねっ!!(力説) 戦争が終わってもアーサーが公主様になってもこの2人の関係は変わらないのです(笑)。
・・・ところで。ヴェルトマーが良い国なのはわかったけどさぁ・・・村レベルで話が進行してるよーな・・・(笑)。平和な世界ってことですかね?
(レースル)
またまたお話贈ってくれてTHANKS!というか、アンタこのままウチのお宝ページをのっとるつもり!?(笑)
さりげな〜く『第一話:〜』となってる辺り、まだまだ送ってくるつもり満々なんですネ★楽しみにしてますよ♪
私も思ったけど…えらく庶民的な王様ですな。それに、民衆との仲の良さいうか、心の距離が”村”並では…?あのユグドラルの中原に座するグランベルの一公国とは思えないゾ★(笑)
アーサーへの愛が良く分かる作品でした(^^)。



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