《アーサー王諸国漫遊記》
『第3話:黄金の国(?)・イザーク』
東方に位置する国、イザーク。
神剣バルムンクを奉る人々の住む国である。
公子シグルドの代の戦はここへの進軍から始まり、そしてまた、光の皇子セリスもここから反乱ののろしを上げたのであった。
この国を統治しているのは、セリスの兄貴分であったシャナン王。
もちろん、神剣の継承者である。
彼は、少し文明の遅れがちであったイザークを立派に導いていき、とうとう帝国に勝るとも劣らない文化を作り上げた。
独自の文化と、独自の風土を持つこの国が、次のアーサー達の目的地であった。
「あれっ・・・。」
謁見の間の入り口でアーサーは足を止めた。
シャナン王の隣に、女性の姿が見えたのだ。
本来、ここにいてはいけない人物の姿が。
「ちょっと、何立ち止まってんのよアーサーったら・・・って、ええっ!?」
前の見えないフィーがアーサーを押しのけて、やはり驚きの声をあげた。
「パティ!!?なんであなたがここにいるのよ!?」
「やっほー☆フィー、それにアーサー。久しぶりっ♪」
そう、シャナンの横でパタパタと手を振っているのは、聖戦の頃の仲間、パティであったのだ。
確かに、戦争時には、シャナンの恋人であったのだが・・・。
「確かパティって、ユングヴィ家を継いでたハズでしょ!?」
「もしかして旅行か?あんまり良くないと思うけどなー。」
「・・・そうであってもアンタにだけは言われたくないわね、アーサー。」
ジト目でアーサーを睨むパティ。
本来ブリギッドの長男であるファバルがユングヴィ家を継ぐはずであったのだが、彼が父の跡を継ぐ事になり、パティがその後を引き受ける事になったはずである。
それがこんな所で居座っているのだから、フィーの驚きも当然の事であった。
「・・・私も帰れと言い聞かせたのだがな、ちっとも聞かずにいるのだ・・・。」
シャナンが少し呆れたように、口を挟む。
「あら、シャナン様ってばヒドイっ!女の子が好きな人の側にいたいと思うのは、当たり前でしょっ!」
「・・・で、国はどうしたの・・・?」
「レスターに任せてきちゃった☆」
「・・・セリス様には・・・?」
「レスターに任せてきちゃった☆」
「哀れだな・・・レスターが・・・。」
「だから、国をほっぽり出して旅行ばっかしてる公主様に言われたくないんだってば。」
「・・・まあ、正直な話、うちは助かっているがな。」
主なのにすっかり影の薄くなっているシャナンが口を開いた。
「パティのおかげで、財政の方がかなり潤っている。」
「・・・まだ盗賊でもやってるのか・・・?」
べしっ!!
アーサーの一言に、パティが手近にあった花瓶を投げつける。
「違うわよっ、しっつれーな男ねっ!!私がイザークの国のお財布を握ってんのっ!!
・・・こー見えても金銭に関してはウルサイんだからっ☆」
「そういえば、イザークが最近妙に豊かになったって聞いてたけど・・・。」
「私の、シャナン様への愛のおかげっ♪ねーシャナン様っ☆」
「・・・パティ・・・。」
少し赤くなったのを隠すように、シャナンは少し咳払いをすると、シャナンは王座から立ちあがった。
「まあ、せっかく来たんだ、ゆっくりしていってくれ。たぶんパティが上手い料理で迎えてくれるだろう。
・・・城下を案内しようか?」
「あ、いえ、あの・・・。スカサハはどこに?」
「スカサハなら、おそらく兵士達の詰め所だ。会いに行くか?」
「はい、お願いします。」
「私は料理の下ごしらえしてくる☆おいしいの作るから、楽しみにしててね二人ともっ♪」
そう言ってパティは軽いステップで出ていった。くくった髪と東方風の服が、とても幸せそうであった。
「参りました!」
兵士のその声を聞き、スカサハは剣を納めた。
青年から大人への移行がもうじき完了する、そんな雰囲気をスカサハは漂わせていた。厳しくなっていた顔が少し緩む。
「スカサハさまー!」
剣の稽古が終わった事を察して、様子を眺めていた子供達が駆け寄ってきた。
ここは野外の兵士達の練習場。といっても別に立ち入りを規制されているわけではなく、誰でも自由に出入りできる。
「スカサハさま、やっぱり強いんだね!」
「スカサハさま、ボクの相手もしてよ!」
「スカサハさまー、ボクもスカサハさまみたいになれるかなー?」
子供達の「スカサハさま」コールに、スカサハは優しく笑って答えた。
「ああ、もちろんなれるさ。練習さえすればな。」
その言葉に、取り巻く子供達はワーッと沸く。
「スカサハさま、剣をおしえて!」
その言葉に、スカサハはいいよ、と答えて嬉しそうに子供達を見つめた。
彼らを見ていると、自分がシャナンに剣を教わっていた頃を思い出してしまうのだ。
「うん、いい構えだ。でも、もっと握りは・・・。」
「大人気だな、スカサハ。」
子供達に構え方を教えるスカサハに、声がかかる。
「あっ、シャナンさまだー!!」
「その人達、だあれ?」
子供達の問いに、シャナンは笑って答えた。
「この人達はスカサハに用があるんだ。だから、スカサハの用が済むまで、俺が剣を教えてやろう。」
「わーい、シャナンさまが教えてくれるんだ!」
「あ、すみません・・・シャナン様。」
「何、構わない。」
手を振って、子供達を連れて行くシャナンから目を移し、スカサハは客人たちの前に手を差し出した。
「来てる、とは聞いていたんだ。わざわざ来てもらってすまないな、アーサー、フィー。」
「いや、別に。仰々しく迎えてもらうのも嫌だしな。・・・久しぶりだなぁ、スカサハ。」
「兵士隊長の役、似合ってるじゃない。子供の相手も。」
「ああ、皆よくしてくれるんだ。俺の要求にもきっちり応えてくれる。・・・いい部下達だよ。」
「それはあなたの人徳よ、スカサハ。」
3人は、しばらく兵士達の練習風景を眺めていた。
「・・・ところで、シャナン様の言っていた用って何なんだ?」
「あ、ええっとね・・・。」
スカサハの疑問に、フィーはユリアからの手紙を差し出す。
「・・・っていう風に、私達、ユリア様から手紙を預かったの。応える応えないはあなたの勝手だけど・・・。」
ユリアからの伝言を、スカサハは黙って聞いていた。
「待っていてくれていたのか・・・。」
ポツリと言葉を漏らした。
「・・・俺も、彼女も、責務がある。それを断ることはお互い出来ないんだ。・・・けどな・・・。」
そう言って、スカサハは天を見上げた。
「時々、パティがうらやましくなるよ・・・。」
自分はパティとは違う。あのような真似は出来ない。
黙り込むスカサハを前に、アーサーは口を開いた。
「いいんじゃないのか、別に自分達のペースで。」
「アーサー・・・。」
「ユリア様も、たぶんスカサハの気持ちは分かってくれてるんだろ?だから手紙っていう手段を使ったんだ。急いで結論を出す問題でもないし。それこそじっくり考えてから決めたらいいんじゃないか?二人で。」
「・・・。すまん、俺ちょっと・・・。」
その場から去っていくスカサハを見て、フィーはちょいとアーサーの脇腹を突っついた。
「たまにはマトモなこと言うじゃないの、アーサー。」
「・・・なんの話だ?」
そらっとぼけたアーサーの姿を、フィーは笑顔で見ていた。
その日の晩は、豪華な食事を間に、皆で大いに楽しんだ。
久しぶりに飲みすぎて、アーサーが騒ぎを起こしたりしたのだが、それはまた別の話である。
そして、旅立ちの日。
「うう・・・気分悪い・・・。」
少し青い顔でうめいているアーサーをペガサスの上に押し上げ、フィーはシャナン王と、未来の妃にお別れを述べた。
「もーちょっとゆっくりしてけばいいのに。」
「ううん、国、空けてるしね。そうそう長く滞在も出来ないのよ。」
そんな会話を交わしている時、スカサハがやってきた。
「アーサー、お別れだな。」
「んん〜・・・ああ、そだな・・・。」
だるげなアーサーに向かって、スカサハはどこかさっぱりしたような顔で言った。
「あのな、また今度来た時は、手紙を、運んでもらっても構わないか?」
その言葉に、アーサーとフィーは顔を見合わせる。
「もちろん。いつでも構わないぜ!」
笑顔でそう言ってから、アーサーは頭を抱えた。
「・・・あ、頭に響いた・・・。」
「・・・馬鹿ね、ったく・・・。」
フィーの呆れた調子に、皆、笑い声を上げた。
こうして二人は次の旅へ。どこへ行くかはまた次回☆
<つづく???>



ビッグバード>シャナパティだーーーっ!!(落ち着け)
わーっ、わーっ!!なんておいしい展開っ!!そうだよね!ユングヴィからやってくるんだよね!シャナン様ために!料理を作りに!
くーーーっ!うらやましいぞ、シャナン様っ!!(ほんとに落ち着け)
・・・ふぅ。そうそう、スカサハもいいかんじですねぇ(とってつけたようにいう奴)。真面目でユリアとはお似合いだね!次はどこかなっ?
レースル>長いかも、と言いながら送ってきてくれましたが…いやいや、そんなに心配するほど長くないです。丁度よい長さでグー@です。
スカサハすごくいいですね!!うん、慕われてそうだものね★
個人的には、シャナパティは敬遠したい所ですが、まあパティが可愛いのでよしとしましょう(苦笑)。
それにしても、パティの台詞の中の☆の数多すぎだよ(笑)。音符の数も…(笑)。



≪ヴェルトマー/バーハラ/イザーク/レンスター/トラキア/エッダ/ドズル/シアルフィ/ユングヴィ≫