《アーサー王諸国漫遊記》
『第4話:レンスター・・・熱い者達の住まう国』
新トラキア王国旧レンスター領――――イード砂漠の南東に位置する国である。
代々地槍ゲイ・ボルグを継承する者がこの地を治めていた。
先のレンスターの王子、キュアンは親友であるシグルドを助けるためここから戦場へと赴き、その息子リーフはシグルドの息子セリスの助力を受け、この地を外敵から守ったのであった。
戦後のレンスター及びトラキア両国は、国民の強い要望もあってリーフが王としてトラキア半島を統一したのである。
もちろん、これは彼一人の成し遂げた所業ではない。
リーフを陰日向から支える王妃ナンナと、彼に絶対の忠誠を誓う槍騎士フィンの助けがあったからこそ、リーフは王として今も立派にやってきているのである。
豊かな実りを誇る国へと、アーサー達はやってきていた。
「ほほぉ・・・。」
思わず口から感嘆の呟きが漏れる。
美しい緑に包まれた国。
話には聞いていたが、これほどまでとは思わなかったのだ。
と言っても、彼らがここへ訪れるのは初めてではない。
戦争の頃、ここも戦地として訪れた事があるし、特にアーサーの場合、ここにいるという妹に会うため、あの頃旅に出たのだ。
しかし、あの時はここは戦場であった。焼け跡が各地に出来ており、街道は草が生え、荒れ放題であったのである。
しかし今は美しい森、花は咲き乱れ、かぐわしい匂いを辺りに放っている。
「・・・これ、ホントにあのレンスターだったの―――?」
フィーが思わずこのような疑問を口にしても不思議ではない。
「と、いうよりこっちが本当の風景なんだろうな、ここの。あ〜、あそこの原っぱ気持ちよさそうだなぁ。」
日当たりの良い草原を指差して、アーサーは呟いた。「寝転ぶのに丁度・・・。」
「あ〜の〜ね〜、気持ちはわかるけど、ココでのんびりしてたら、今日は野宿になっちゃうわよ?」
「俺は別に構わないけど?」
「あたしが構うのよ。」
「・・・けち。」
アーサーは聞かれないように呟いたつもりだったのだが、次の瞬間フィーにペガサスから蹴り落とされていた。
「うわあああぁああっ!!!?」
「好きなだけ寝てればー?」
ジト目のフィーの台詞も、叫んでいるアーサーの耳には届かなかった。
「遠くからご苦労様、アーサー、フィー。」
「お久しぶり!」
そんなこんなで、辿り着いた二人を出迎えたのはリーフ・ナンナの二人と、フィンであった。
「お元気そうで何よりです、リーフ王。」
「やだなぁ、よしてくれよ。戦争の時のままでいいから、リーフって呼んでくれよ。」
「え・・・いいんですか?」
「戦争の時も言ったろ?セリスや君達の前では、位とかそういうの気にしたくないんだ。」
「リーフもこう言ってるから気にしないで。あ、私もナンナでいいから。」
リーフの言葉に、ナンナがそう言いたす。
「それじゃあ、遠慮なく・・・。本当に久しぶりね、ナンナ!」
「うん!」
「それにしても、すごい豊かな国だったんですねぇ、ここって・・・。」
「ああ、そうか。アーサー達はレンスターを戦争の時のものしか知らないんだね。うん、そうなん・・・。」
「当ったり前ですっ!!!」
突如リーフの話に割って入ったのはフィンである。
「このレンスターの地は、今は亡きキュアン様とエスリン様が命をかけてお守りし、そしてこのリーフ様が全力で復活させたものなのです!豊かでないわけがありませんんっっ!!!」
拳を握りしめて熱くここまで力説すると、ハッと我に返り、
「あっ、すみませんリーフ様!!出過ぎた真似を致しました!!」
深深と謝礼。
「はは、気にするなよ。・・・と、そういう訳なんだ。レンスターは元々、こういう土地だったんだよ。僕が物心ついたときはもう戦場だったんだけどさ。」
「へええ・・・。」
二人で思わず感心したような吐息をつく。
「あ、そうそう。フィー達はまだなの?」
いきなりナンナがこんな事を口にした。
「何が?」
「結婚式。」
ガタタッ!!!
アーサーとフィー、二人仲良くずっこける。
「な、ななな、何でいきなりそうなるのよ!!?」
「え、だって、戦争の頃から仲良かったじゃない、二人とも。ヴェルトマーに二人で住んでるっていうし。」
「ナンナと二人で今ごろ教会でも探しているのかな、って言ってたんだよ。」
リーフまで口を出してくる。
「何言ってんのよ!あたし達、そんな全然・・・。」
「ああ、結婚とか何にも考えてないぜ。」
慌てて二人で誤解を解こうとする。そこへ、
「それはいけませぇぇぇぇえええんっ!!!」
またもやいきなりフィンが嘴を挟んだ。
「お二人とも、何をそんなのんびりした事を言っておられるのですか!!きっと民達はあなた方の婚儀を首を長くして待っておられるでしょうに・・・。
リーフ様に仕える私などは、既にもうすぐ生まれるお世継ぎの心配までしているのですよっ!!!」
「えっ!?ナンナ、赤ちゃんが出来たの??」
フィーが目を丸くして聞くと、ナンナはこれ以上ないくらい幸せ、といった風な笑顔で頷いた。
「うん!そうみたいなの。」
「へえ・・・。きっといい子が産まれるわね!」
「もちろんです!」
父親でもないのに、フィンは拳を握り締めて答えた。
「リーフ様の御子ですもの、かわいくないはずがございません!!!このフィン、リーフ様の御子様にもこれまでと同様、変わらぬ忠義を尽くす所存でございます!!そもそも・・・!」
何やら長くなりそうなフィンの演説に、アーサーはこっそりため息をついた。
「フィンさん、相変わらずこの手の話は長いんだな・・・。」
「・・・そうね・・・。」
思わずフィーも相槌を打つ。
「ところでさ。」
慣れたようにフィンの語りをさらりと無視し、リーフは客人に問い掛けた。
「グランベルの皆は元気なのかい?」
「ええ、特に何もないようです。」
「聞いてるわよ、アーサーったら月に一度は必ずティニーの所へ行っているんですって?」
「そうなんだよ!」
実に嬉しそうに、アーサーが頷く。
「もう、ティニーがどんどんキレイになっていっててさ、本当に自慢の妹なんだよなー、んでさ、・・・」
それからは彼の一人舞台。ティニーがあーだこーだと長々と語り出した。
「あんたもフィンさんの事言えないじゃないのよ・・・。」
フィーがボソリとつぶやくと、リーフが笑って言った。
「お互い、変わってないな!!」
しばらく、王宮内にフィンとアーサーの声が響き渡った。
「・・・ところで、アルテナ様は?」
こう聞いたのは、ようやくトリップから脱したアーサーである。
「ああ、姉上ならトラキアの方にいる。」
リーフが少しだけ複雑な表情をした。
「アリオーンと共にトラキアの地を治めてくれているんだ。」
「アリオーン・・・。」
かつては敵国の王子であったのだ。やっぱり少し気になるのだろう。
「姉上が、アーサー達が来るって聞いた時に言ってたよ。ぜひ、トラキアまで足を伸ばして、美しくなったあの地を見て欲しいって。」
「本当に変わったのよ、トラキア。凄くキレイになったからぜひ見て行って欲しいわ。」
ナンナもそう薦めた。
「そっか・・・じゃあ次の目的地はトラキアだな。な、フィー?」
「うん、あたしもトラキアや、アルテナ様にお会いしたいわ。」
問いかけに、大きく頷くフィー。
「でも、こっちにもしばらくは泊まるんだろ?」
「ああ、そうしたいんだけど・・・いいかな?」
「もちろん!久しぶりに色々話そうぜ!!」
リーフが笑って言った。
<つづく???>



ビッグバード>レンスターほのぼの一家編!(違) フィン殿がいい味出してますね〜。かくいう鳥の中の彼のイメージもこんな感じです。ほっとくと一晩とかしゃべってそうで、しかもリーフ君はさらっと流しちゃうし(笑)。いやぁほんと平和だなぁ、レンスター。結構悲劇の土地なのに緊張感の無い印象があるんですよね。たぶん万年新婚夫婦のせいだろう@次のトラキア編ではハンニバル様を楽しみにしてます〜!!
レースル>レンスターなんちゃって家臣編!(違) フィン…ギャグ版ならばこんな感じかな。私のイメージの中のフィンはちょっと違うけど…(^^;)。でもこんなフィンも好きよv
それにしても、ナンナ幸せそうだなぁ〜。いいなぁ〜。ああ、私も子世代の子供のこと書いてみたい!…どうでもいいけど、リーフってああ見えて結構大人だったんだな(爆)。お父さんになるのか…。



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