Angel Sugar

「君がいるから途方に暮れる2」 最終章

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「……あーもう、俺って……」
 意識を失った戸浪をベットに運んだ祐馬は、後悔しながら溜息をついた。ぐったりとしている戸浪は目の周りを赤くしている。それだけ泣いたのだろう。
 手首もかなり擦れて赤くなっていて、血が滲んでいた。その手首を持って祐馬はそっと口づける。
「……う……」
 戸浪はそう言って眉根を顰めた。
 唾液がしみたのだろうか?
「戸浪……」
 そっと頬にキスを落とすと戸浪の目が薄く開いた。
「……祐馬……」
 悲しそうな笑顔に祐馬は居心地悪く感じる。全く謝るようなことばかり自分はやっていてそれが情けない。
「……なんでっ……お前、こんな風に扱われても何も言わないんだ。それに……てめえから以前の関係でいいとか……俺には訳が分からない」
 戸浪の顔を見られなかった祐馬は背を向けてそう言う。そんな祐馬の背に戸浪は後ろからそっと身体を寄せた。
「……怖いんだ……」
 小さな声で戸浪は言った。
「何がっ?」
「……私は……お前を失うのが怖い……お前に……捨てられるのが……怖いんだ……」
 ぽつりぽつりと戸浪は言った。
「支離滅裂だ……。失うのが怖いって……。お前さあ、お前から止めたいって言ったんだぞ……お前が俺を捨てようとしてたんじゃねえの……」
「……そうだったな……済まない……」
 戸浪の頬が背に擦れる。また俯いているのだろう。
「理由……聞く権利俺にはあるはずだよな……」
 すると戸浪は祐馬にしがみつくように両手を後ろから回して身体を密着させた。
「……かもしれない……」
 戸浪はそれだけを言い、暫く口を閉ざした。沈黙が流れる間だ、祐馬はただじっと戸浪から口を開くのを待った。
 元々戸浪はゆっくりと言葉を選んで話すタイプだ。それは頭の中で色々と考えて最善の言葉を選ぼうとしているのだろう。
 だから今、戸浪は必死に言葉を探している。自分が考えていることを伝えたいと思っているのだ。だから逃げずに祐馬の背中に身体を密着させている。
 急がせては何もかもぶちこわしにしてしまうことを祐馬はようやく理解した。
 戸浪は言葉を発するのに時間がかかるのだ。祐馬はそれにじれて切れてしまうのだが、切れてしまったら元の木阿弥だった。
「……私は……祐馬にふさわしくない自分が嫌なんだ……もっと……素直になりたいのに出来ない自分が歯がゆい……」
 絞り出すように言う戸浪は、祐馬からするとどうしてそんなことで悩んでいるのか分からないような理由だった。しかし戸浪は真剣なのだ。
「……馬鹿野郎……何がふさわしくねえだよ。そんなの思ったことねえよ」
「……何時か……祐馬がそれに気が付いて……私を捨てるだろう。素直じゃない、かわいげもない。そんな私など何の価値も無いと……気付く……。気付かれて……私にとって一番辛い理由をお前から言われたら……私は……立ち直れない。なら、気付かれる前に……言われる前に別れた方がいいと……思った」
 後ろから聞こえる声が震えている。戸浪は又泣いているのだ。
 祐馬は戸浪が己に廻している手を取って口元に運ぶと唇でそっと愛撫した。
「お前……やっぱ馬鹿だよ……」
 だがそんな戸浪が愛しい。
「でも、そう思ったのに……私は祐馬を愛している。分かったんだ。手を握りしめられて……その手の温もりが私には必要だと。だから……祐馬……以前の関係に戻っても良い。身体だけでも私は祐馬の温もりが欲しい……」
 どうしてこんな考え方が出来るのだろうと祐馬は呆れた。
「俺な……考えたよ……あの一年は何だったんだろうって。身体だけの付き合いだと思ってたけど俺もお前も本心を隠して抱き合ってたんだぜ。まあ……すれ違ってたけど……さ。あれは身体だけの付き合いなんかじゃなかった。言っておくけど、俺はあんな関係に戻りたいと思わない。俺はお前を愛しているんだ。自分の心を殺して抱き合うのは……もうごめんだっ!」
「……祐馬……」
「あのさあ、俺、お前を一体何年見てきたと思ってるんだ?お前は自分の性格を嫌ってるみたいだけど、俺は好きだ。そりゃ無茶苦茶強情な所もあるし、素直じゃないこともある。そんなの知ってる。お前が入社してから二年間お前をずっと見てきたんだ。ずっとだぞ。その二年のうち、一年はお前と抱き合ってきたんだ。嫌ならもっと早くに切ってた。そんなふうには考えねえのか?」
 そう言うと戸浪はぴくりと身体を動かした。
「……俺、お前の笑顔が好きだ。あれが本当のお前なんだ……。それを知ってるからお前を冷たいとか可愛げ無いとか本気で思ってねえよ。ただちょっと自分を表現するのが苦手なんだ。別にいいじゃねえの。言っただろ。俺だけにほんとのお前を見せてくれたら良いって。他に見られたくないし……お前を取られたくねえ。だから他人に無愛想でも何でも……俺はいいぜ」 
 握った戸浪の手をキュッと強く握りしめて祐馬は言った。
 そう、こういうことで悩む戸浪が可愛いのだ。
「お前がホントに冷たくてかわいげのない奴で……嫌みばっか言う奴だったらつき合いたいと思うか?俺だって人を選ぶぞ。ボランティアでもごめんだぜ」
「祐馬……本当に良いのか?」
「お互い必要なんだぞ……何で離れられるんだ?どうして別れなくちゃいけないんだ?」
 そう言って祐馬はようやく戸浪の方を向いて怯えたように身体を竦めている戸浪を抱きしめた。
「祐馬……」
 腕の中で戸浪はじっとこちらの瞳を見つめていた。
 まだ迷っているのだろうか?
「なあ、一緒いよう……ずっと……。俺はお前をこれからも手放すつもりは無い。どんなことがあってもさ。時には喧嘩だってすると思うけど……だからといって別れたいとかぜってーおもわねえ。だから戸浪……約束してくれ。俺だけを見てくれると……俺はすげえ嫉妬深いんだ。雅之が絶対お前に手えださねえと分かっていても、一緒に居るのを見て、疑ってしまうほど俺は心が狭い。それだけお前に惚れてるんだ。お前が時々見せる笑顔が俺以外に向けられたときもそうだ。無茶苦茶腹立つんだぜ。あの笑顔は俺のだってさ。どうしてお前は俺以外にそんな笑みを見せるんだ……て、理不尽な怒りがわき上がってくる。こんな俺にお前が愛想尽かしたらどうしようと反対にそれを考えるよ…」
「……それは逆だろう……お前が私に愛想を……」
 戸浪は目線を逸らせようとしたが、祐馬は許さなかった。
「だからっ……俺はお前に心底惚れてるんだぞっ!これ以上どう言えばお前は俺の気持ちが分かってくれるんだ?」
 ギュウッと抱きしめて祐馬は言った。
 こういう強情は手に負えない。
 それでも祐馬は戸浪が愛しい。
「祐馬……苦しい……」
「俺の気持ち分かったか?もう、くだらねえこといわねえか?」
「……信じて……いいのか?本当に……いいのか?男の私で……いいのか?」
「戸浪……そんな風に言ったら俺天狗になっちゃうぞ……。お前にそれほど惚れて貰ってるってな……」
「祐馬……私は本当に……その……」
 と言って戸浪は顔を徐々に赤くした。
「何だよ……」
「お前が……好きだ……」
 最後は小さい声であったが、はっきりと祐馬には聞こえた。
「愛してるよ……戸浪……」
 軽くキスを落として祐馬は戸浪をベットに倒した。
「祐馬……」
 ようやく笑みを浮かべた戸浪の表情はやはり極上だ。こんな笑顔を他で見せられたら本当に夜も眠れなくなるほど困ると祐馬は思った。
「俺は何にも考えねえタイプだからなア……多分お前みたいに考える奴と一緒にいる方が釣り合いがとれるんだろうな……」
「そういうものか?」
 困ったような顔で戸浪は首を傾げる。
「いや、んーー気が付いたらさあ、全部好きになっちまったんだよ……どことか上手くいえねえな」
 戸浪の胸元に軽く舌這わせてそう言うと身体がぴくっと震えた。
「……あ……っ……」
「えーとだな……その、さっきは本当に悪かった。俺、お前から聞きたかったからさ。ええっと……あーその……」
「……散々弄んでくれたな……」
 ジロリと睨まれ今度は祐馬が身を竦めた。
「他の方法を思い浮かばなかったんだよ……。だってなあ、お前普通に聞いたって絶対答えてくれないだろう?」
 頭を掻いて祐馬は戸浪の方を窺う。
「自分だけ良い思いしたんだろ……」
「あー……そんな風に言うなよ……今度は気持ちよくしてやるからさあ……」
「……その……先にシャワーが浴びたい……」
 もぞもぞとしながら戸浪は言った。
「駄目。俺の残ってる方が滑り良いじゃないか」
 と言うと戸浪は、これでもかという赤い顔をして口元を押さえた。
「お、お前……何を言ってるんだ……」
「だってなあ……ほら、こおんなに柔らかくなってるんだぞ……」
 祐馬は戸浪の溶けた部分に指を滑り込ませると、そこは充分潤い柔らかくなっている。
「あっ……馬鹿……指を入れるな……」
 戸浪は腰を引いて抗議の目を向けたが、祐馬は笑って更に指を深く突き入れた。。

 なんだか信じられないが丸く収まったとはこういうことなのだろうか?
 戸浪は恥ずかしい部分に指を入れて相変わらずからかう祐馬に非難の目を向けた。
 今は穴があったら入りたいくらい恥ずかしいから。
「まあ、ちょっと出してからの方がいいか……」
 そう言って二本の指を押し広げるように内部で動かすとなま暖かいものが太股を伝った。
「ひっ……馬鹿……よせ!」
 祐馬の両肩を掴んで戸浪は言った。気持ち悪い感触なのだが、本音は気持ち悪いわけではない。むろん一発くらい殴っても良いくらいの行為を祐馬にはされているのだが、快感を煽られているのが分かる所為か身体の動きは鈍い。
「照れるなよ……俺のだぜ……」
 ぐちゅっという音を響かせながら祐馬は自分の行為を続けた。
「ああっ……よせ……やめっ……祐馬っ!」
「ばたつくなって。気持ちよくしてやろうって言ってるんだからさ……」
 戸浪の耳元で祐馬はそう囁いた。
「あっ……ああ……」
 抵抗していたはずの両手をいつの間にか祐馬に絡めて戸浪は喘いだ。どんどん身体の体温が上昇するのが分かる。耳の裏側や耳たぶを舐めたり噛んだりする祐馬の行為が気持ちいいのだ。
「ああ……祐馬……」
「すぐに入れられそうだな……だがこっちはまだだなあ……」
 そう言って自分のモノと戸浪のモノを一緒に掴んで擦りあわせた。
「あっ……う……っ……」
「俺のとお前のが一緒になってるぜ……俺の手の中でさあ……お前も感じてるだろう?だってなあ、ほら、ビクビクとふくらんできたぜ……」
「悪戯電話でもしてるつもりか…」
 快感に目を細めながらも戸浪は言った。
「はは、そりゃいいね。悪戯電話。今日のパンツの色は何?ってか?」
「ば、馬鹿者……」
「感じてるんだろ戸浪。な……気持ちいいだろ?どうなんだ?お前の……すげえ勃ってきたぜ。ここは正直だ……ほらあ……」
 グリグリと二つを手の中で弄びながら祐馬はからかう。
「あっ……止めろ……」
「感じてるだろ?気持ちいいだろ?」
「……ん……んん……」
 眉根をしかめて戸浪は頷いた。確かに感じている。
「そう言う顔……そそられるぜ……」
 祐馬は次に口内に舌を侵入させてきた。舌は丁寧に戸浪の口内を愛撫し、こちらの舌を翻弄する。その甘い感触がピリピリとしていた神経を宥めてくれた。
「私が……そんなにそそられる対象になるのか?」
 戸浪にはそれが信じられないのだ。
 こちらは男で身体とて女性のように抱き心地が良いとは思えない。
「お前の顔も身体絶品だぜ」
「……喜んで良いことなのか?」
 戸浪にとって複雑な気分だ。
「ったりまえだろ。俺……お前のその表情が好きだ……。作っていない、快感に素直に酔ってる、その何とも言えない顔が……いい……」
「よせ……そんな風に言うな……は、恥ずかしいだろう……」
 震える身体を丸め、祐馬にもたれながら戸浪は呟いた。
「俺さあ……エッチなんだよ……」
 くすくすっと笑いながら戸浪のあちこちにキスを落とす。
「な、何言ってるんだ……。あっ……も……早く……入れてくれ……」
 祐馬を引き寄せて戸浪は言った。
 己の蕾の襞がビクビクと蠢いているのが、戸浪自身にも分かるから。
 祐馬の熱い鉄を身体の奥に感じたい。
 疼いている部分を貫いて滅茶苦茶にして欲しくなる。
「入れてやるよ……」
 そう言って祐馬は糸を引いている自分の雄を掴んで、既に緩くなっている戸浪の内にずぶりと沈めた。
「あーーっ……」
 ぎゅうっとした圧迫感が下半身にかかり戸浪は夢心地になる。祐馬が腰を揺らすと淫猥な音が響き、下半身からの断続的な刺激によって喘ぐ声も大きくなった。
「気持ちいいだろ?」
「あっ……あっ……き……気持ち……良い……」
 目の奥がじんとして、涙が滲む。口元は荒く息を吐き出しているため閉じることが出来ない。祐馬が動くたびに身体を襲う刺激は、麻薬のようだ。
「意外にお前も……エッチだよな……」
 ククッと口元で笑った祐馬の声が聞こえて戸浪は羞恥で身体まで赤くなりそうだった。
「ち……違う……あっ……ああっ……いい……」
「良いとか言ってる奴がエッチじゃないっていうのか?」
 そう言って腰を更に祐馬は振った。
「あっ……ああっ……も……もっと……もっと……祐馬……」
 ガクガクと頭を揺らしながら戸浪は口から嬌声を吐き出す。
 自分でも信じられないくらい祐馬に対しては求めてしまうのだ。終わってから思い出して恥ずかしさに顔を暫く上げられなくなる位だ。それが分かっているのにこうやって繋がってしまうと、言葉に制御が効かない。
「もっとと言うのはお前なんだけどなア……」
 突然祐馬はズルリと自分の雄を抜いた。急に圧迫感が無くなった戸浪の下半身はビクビクと震える。
「あっ……止めないでくれ……」
 離れた祐馬の背中に腕を廻して戸浪は懇願した。このまま放り出されるなど考えるだけで恐怖だった。
「欲しい?」
 意地悪く口元で笑う祐馬に戸浪は頷いた。
「これ以上苛めないでくれ……」
 ベットに仰向けになる祐馬に抱きついて戸浪は言った。 
「戸浪……愛してるよ……」
 祐馬はそう言ってキスを繰り返しながら、戸浪の双丘の間に指を滑り込ませて刺激を与え続けた。
「祐馬……頼む……」
「そのまま乗れよ……」
 戸浪は躊躇する間もなくそそり立った祐馬のモノを自分の中に銜え込んだ。
「あああっ……」
 両膝を折り曲げて戸浪は奥を突く祐馬の切っ先を味わう。内部がどろどろに溶けそうな感触に戸浪は更に腰を振った。すると祐馬の方からも腰が突き上げられた。
「ひっ……あっ……ゆ……祐馬……っ」
 必死に揺れる身体を安定させようと戸浪は前屈みに祐馬の肩を掴むのだが、祐馬は戸浪の腰を掴んで戸浪の身体をベットと垂直にさせた。
「ほらっ……お前はきつい刺激が好きだろ?」
「……ゆう……まっ……」
「ここも可愛がってやらないとな……」
 そう言って祐馬はギュウッと戸浪のモノを握りしめ、次に上下に擦りあげた。
「あっ……ひいいっ……」 
 身体に骨が無くなったかのようにグニャグニャになった気分に戸浪はなる。頭が麻痺し、あるのは快感を感じる本能だけだ。
「戸浪……愛してるよ……お前は?」
「私も……愛している……っ」
 このままずっと続けて行けるという確実なものなど無い。約束すら何処まで効力があるのか分からない。だが今はこうやって二人でいたいと戸浪は心の底から思った。
 信じることも必要なのだ。
 そう思うことで戸浪は気が楽になった。ギスギスすることなど無い。祐馬にはありのままの自分でいたらいいのだ。
「戸浪……っ」
 祐馬が笑みを向けたことに応えるように戸浪も笑みを返した。
 
「なあ……」
 祐馬が問いかけるので戸浪は目を開けた。
「なんだ?」
「なんていうか……俺、努力するよ……」
「?」
「だからさあ、俺すぐ切れちまうだろ……で、自分で墓穴ほっちまうんだ。今回みたいにさあ……。でも俺、こういうの嫌だから……」
 祐馬は戸浪の指を愛撫しながらそう言った。なんだかその言い方が可笑しくて戸浪はクスリと笑った
「笑うなよ……俺は真剣なんだぞ」
「……ああ……分かってる……」
 緩やかに笑みを浮かべて戸浪は言った。祐馬といると本当に戸浪は気が楽だ。
「だからお前も努力しろよ」
「……努力?」
「……たまにはさあ、その……二人ッきりの時は、ゆうまあとか言って甘てくれよ」
 その言葉に戸浪は顔を赤くした。
「で、出来るかっ……」
 顔を逸らせて戸浪は言う。
 そんな風に振る舞えないから悩んでいるのだ。
「だから努力しろって言ってるんだよ。お互い努力すりゃいいんだろ?」
 ブチブチと祐馬は不満げに言うが、人間努力しても出来ないことがある。性格的なモノが絡むと余計に難しい。
「……今のままで良いとお前は言ったぞ」
「お前、抱いてるときは素直なのに……」
 ちぇっと舌打ちして祐馬は言った。
「……五月蠅い……」
「五月蠅いといいつつお前、顔真っ赤」
 ははっと笑って祐馬は言った。
「わ、私は……っ」
「こういうところが可愛いんだよなあ……」
 言って祐馬は戸浪の頬を撫でてくる。そんな祐馬の手をそっと戸浪は押しやった。
「か、可愛い……なんていうな……」
「ん?なんで?」
 きょとんとした顔で祐馬は言った。
「ゆうまあ……などと私が言えるか。私は子供ではな……」
 と、言ったところで祐馬の満面の笑みに言葉を失った。
「今の今のいい!」
 嬉しそうに祐馬は言った。
「た、たとえばの話しだろ」
「もっかい?!」
「何がもう一回だっ」
 枕で祐馬を軽く叩いて戸浪は言った。
 とはいえ、意外に言えそうか?とも考えて、痛くもない頭を祐馬が大げさに撫でるのを溜息をつきながら見るとニコリと笑って返す。
 戸浪は苦笑すら出来ずに毛布に潜り込んだ。

―完―
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