Angel Sugar

30万ヒット記念企画 テーマ「酔っちゃった」 第4夜

昨夜タイトル翌夜

恭夜&ジャック

■ 都合の良い男

 最近ジャックが妙なことに凝りだした。
 湯船にユズを浮かべているテレビ番組を見たその日に、どこからかユズを購入し、ジャックは湯船に浮かべユズ風呂を楽しんだようだ。
 幼い頃、まだ恭夜の祖母が生きていた時の話しだが、その祖母の家に泊まりに行くと、必ずと言っていいほど、風呂にユズや、井草を浮かべてくれた思い出があった。そうであるからジャックの行動に恭夜は、久しぶりに幼い頃の思い出に浸り、ユズ風呂を楽しんだ。
 それが原因か、ただ単にジャックの探求心の深さなのか、それ以後ユズに留まらず、唐辛子にニンニク、その他身体に良いとされる食材を浴槽に浮かべ、ネタがつきると今度は、バスクリン各種始まり、次ぎにアロマ風呂をやり、ミルク風呂までジャックは制覇した。
 要するに凝り性なのだ。
 今晩は何だろうなあ……と閉口しながら恭夜はバスルームに入った。すると何やら強烈な臭いがしてきた。
 くさっ!
 何だよ……
 こ、これって……
 酒くせえっ……
 あまりの臭いに恭夜は鼻を押さえていると、浴槽と脱衣場を隔てているガラス戸が開いた。
「キョウ、いい感じになったぞ。今日はアルコール風呂だ」
 嬉しそうにジャックはそう言い、ゴロゴロと日本酒の入っていたであろう空瓶を持って出てきた。
 だが一升瓶の空瓶は洗面台の下にも置かれていたるのだ。
 な……
 何本つっこんだんだ?
 まだ鼻を押さえたまま恭夜がジャックを凝視していると、空瓶をやはり洗面台の所に置いて言った。
「さてとキョウ。一緒に楽しもうか?」
 と、ニッコリ。
 そんなジャックに恭夜は鼻を押さえたまま顔を左右に振った。
「何が不服だ」
「あんた……まさか、浴槽の中、全部酒じゃねえだろうな?すっげー臭うぞ……これだけで俺は酔いそうだ……」
 ふがふがと鼻の詰まった声で恭夜が言うと、ジャックは怪訝な顔をした。
「当たり前だろうが……酒風呂と言う位なんだから、中身は全部酒だ。良い酒加減だぞ」
 って……
 どういう言葉だよ……
 良い酒加減って……
「あのなあ……普通、お湯にアルコールを少し入れて酒風呂って言うんじゃないのか?それも冬、寒い時期にするんだよ。身体が温まるからな。それをこんな夏前に何考えてるんだよ。にしても臭いし、臭いだけで酔いそうだよ……俺はかんべんな……」
 鼻をつまんだまま脱衣場を出ようとすると、ジャックが恭夜をいきなり抱き込んだ。
「一人で入っても面白くないだろう……。それにな、臭い臭いと言うが、慣れるとそれほどでも無い。なによりアルコールは風呂を沸かせば簡単に飛ぶ。気にするな……」
 慣れれば……
 と言うことはジャックも実は臭いと思っていたのだろうかと恭夜は思ったが、それよりまず恭夜を拘束する手から逃れなければと思い、手足をばたつかせた。
「沸かせば……って。あんた浴槽で酒をぐらぐら煮るわけじゃねえんだから、アルコールが飛ぶわけ無いだろ。俺は嫌だっ!離せよっ!」
 廻されている手を掴み、引き剥がそうとするのだがジャックの腕は緩みもしなかった。
「キョウ……私はハニーと楽しみたいんだよ……アルコールに身体の芯まで浸かって、身も心もトロトロになろう」
 言いながらジャックは恭夜の身体から衣服をドンドンと剥がしていった。この素早さはいつものことだが、上手く恭夜には対抗できないのだ。
「あっ……よせよ……俺は嫌だって……」
 と反抗している間にいつもの如く素っ裸にされた恭夜は、最後にはズルズルと風呂場の中に引きずられた。
「私も脱ぐから酒加減でも見て居るんだな。熱かったら酒を足せばいい」
 酒を足すのか?
 水じゃなくて……
 すさまじいアルコールの臭いが充満する浴室は、鼻が曲がりそうなほどだ。円形の浴槽は並々と酒が注がれており、湯気が立ち上っている。それはまるで陽炎のように向こうのタイルをゆがませて見せた。
 これだけの酒をバスタブに流し込む間、ジャックがどうやってこの臭いに耐えていたのか恭夜は驚くばかりだった。
 いや……
 驚いていられない……
 逃げないと……と思うのだが、出入り口になっている扉の向こうにジャックが居るのだ。とうてい逃げられない。
 はあ……
 くせええ……
 たまんねえよ……
 臭いだけで顔がぼーっとしてきた恭夜は、それを振り払うように首を左右に振った。
 そうだ……
 今のうちに風呂の栓を抜いてやれば良いんだ……
 ようやくその答えにたどり着いた恭夜は早速湯船に近づいた。だが近寄れば近寄るほどアルコールの強烈な臭いが鼻から喉を直撃する。
 あいつ……
 良くこんな中で作業してたな……
 すげえよ……
「ぐは……ぐぜええええ……」
 酒が並々と入れられている浴槽に手を突っ込み、バスタブの栓を掴んだ瞬間に後ろから怒鳴りつけられた。
「こらっ!何をしてるんだっ!」
 条件反射的に恭夜は手を引っ込めると、その手はうっすらと赤く染まっていた。
「あ、アルコール度、何度あるんだ?」
 酒に浸かった部分の皮膚からジンジンと熱が伝わってくる。恐ろしくなった恭夜は後ろに居るであろうジャックの方を振り返り、こちらも怒鳴りつけてやろうとした。
 が……
「キョウ~一緒に美味い酒を楽しもうか~」
 ははははと笑ってジャックは叫ぼうとする恭夜を抱き込んだまま、酒のたっぷり張られた浴槽に引きずり込まれた。
「うわっ……」
 バシャ!
 ぶく……
 ぶくぶく……
「がはっ!し……死ぬ……げほげほ……鼻……鼻に入った……」
 逃げだそうと浴槽の縁を掴んだが、その指をジャックによって払われた。
「しっかり浸かれ。身体が柔らかくなるだろう」
 ジャックはそう言って自分は首まで浸かり、足で温まった酒をかき回す。恭夜と言えばジャックと向かい合わせに抱き込まれたまま、酒にどっぷり浸ってしまった。
「何考えっ……げほっ……ぐは~め……目が回る……俺はウサギの肉じゃねえ~」
 アルコールが口と鼻から入り、更には肌からも吸収され、一気に身体中に酔いが回ってきた。恭夜は、元々酒が強くないのだ。ジャックは平気なのだろうが、こちらはもう既に目が回っている。
 下手をするとアルコール中毒になるだろう。
「俺……マジ……駄目だって……」
「私は結構楽しいが……」
 真っ赤な顔をした恭夜の額にジャックはキスを落としてきた。だがその感触がいつもより鈍く伝わってくる。
 あ……
 なんか変……
 ジャックの手は恭夜の背に回されており、逃がさないようにと力が込められていたが、片手だけが背を伝い、そのまま双丘の谷間に滑らされた。
「あ……はあ……」
 感覚が麻痺し、目の前にいるジャックがぼんやりと霞む。快感を感じていると言うより酒に酔いすぎ、五感が鈍っているようだった。
「あ~……」
 目の前に星が散っているようなそんな感覚が恭夜にはあった。もう何がなんだか良く分からない。ジャックが恭夜の身体のあちこちを触っているのだが、それも五感が鈍っているために、気が付かないほどだった。
 そんな恭夜に業を煮やしたのか、ジャックはいきなり指を奥まで突き入れてきた。流石にこの指の動きは恭夜にも分かった。
 だが……
「うはははははっ……やめ……止めろって」
 既に酔いが回っている恭夜は陽気になっていた。何が楽しいのか分からないのだが、とにかく楽しい。その全身はアルコールで真っ赤に染まっていた。
「なんだ……気分が良さそうだな」
 笑っている恭夜を怪訝な目でジャックは見つめた。
「あはっ……あはははっ……良いぜ~すっげ~良いかも……」
 酷く自分でも気分が高揚しているのが分かる。だが頭の芯まで酔いで痺れた感覚しか今恭夜には無かった。
 なんか……
 すげええ……
 夢の中に俺居るぞう~
 えへへへへへへ
 なんて思っていると意識が飛んだ。

 次ぎに目が覚めると身体が温もり、高揚した気分だけが恭夜にあった。横たわっている所はベットの上なのだが、シーツの冷たさが心地よい。
 ああ……
 あははは……
 なんか気分最高~
 シーツの上で両手両足を動かして、恭夜自身は喜びを表現しているつもりであった。
 あれ……
 風呂は?
 あれ……
 臭かったけど結構いいじゃん……
 もっかい入ろうかな……
 身体を起こし、恭夜がベットから降りようとした。すると寝室の扉が開き、ステンレスのボウルを持ったジャックが入ってきた。その姿は素っ裸だ。だが思考が麻痺している恭夜にはそれが不自然には見えない。
「キョウ、横になっていた方がいい……」
 珍しくジャックは心配そうだった。
「え、俺もっかいあの風呂に入ってくる。すっげー気持ちよかったんだ」
 うっとりと言った恭夜であったが、視界は歪んで見えていた。
「……あれはかなり問題の風呂になった。酒を入れすぎたようだな。いや温度の問題か?」
 言いながらベットの端に座っている恭夜の身体をグイと押し、ベットに戻す。
「……おれ……風呂~」
 両手をばたつかせて恭夜は言ったがジャックは許さなかった。
 珍しい……
 自分から手を引いてる?
「いや……お前が気持ちよかったのは血圧が上がりすぎていたから脳味噌がおかしくなって居るんだろう。冷やした方が良い。流石に私も鼻血まで出して笑っているお前を見ているのは気味が悪かった。今度はもう少し薄めでやった方がいいな……」
 意外に深刻そうな顔でジャックは言った。
「鼻血?ん~あははははっ……鼻血くらい、だれだって~出るって……ん……」
 笑っている口に氷が放り込まれた。
「……ん……ぐ……がりっ……」
 冷たくて美味しい……
 氷をガリガリと囓りながら、恭夜はベットに寝そべった。
 とにかく気分が良いのだ。
「美味そうに食うんだな……」
 ステンレスのボウルには氷が一杯入れられていたのだ。
「ん……もっと……」
 あ~んと口を開けると、ジャックは自分もベットに上り横になると、恭夜の口に氷を又一つ入れた。恭夜はそれを銜えてまたガリガリと食べた。
 幸せだ……
 すっげー気持ちイイ……
 ニコニコとした顔で氷を頬ばっていると、ジャックは氷を又一つ手に取り、今度はそれを恭夜の胸元に乗せてきた。
「あ……つめた……」
 キュッと眼を閉じ、恭夜は小さく震えた。だがジャックはその氷を手の平で押し、恭夜の胸元で這わせた。
 体温の上がっている身体は氷をすぐさま溶かし、肌の表面を水で濡らす。
「ジャック……すげ……気持ちイイよ……」
 口の中の氷を食べ終えた恭夜はジャックに手を伸ばしてそう言った。そんな恭夜の横でジャックは恭夜の胸元で氷を転がしては楽しんでいる。
「酔っぱらったキョウは可愛いな……」
 俺……
 酔っぱらってる?
 別に酔ってねえよ……
「酔ってねえ~酔ってねえもん……」
 自分がどういう行動をとっているのか恭夜には分からないのだ。だがジャックはそんな恭夜に満足そうな顔をしている。
 ……あれ……
 なんかジャック嬉しそう?
 変なの……
 俺、何時もと一緒なのに……
 ぼんやりそう思っていると、下半身から冷たさを感じた。
「ここも……熱いだろう?」
 言ってジャックは恭夜のモノの上に氷を走らせた。
「あっ……そ……そこ……つめたっ!」
 とはいえ、確かに恭夜は気持ちよく感じていた。
「嫌がっていないな……」
 小さく含み笑いをし、ジャックは氷とモノを掴んで擦り上げた。まだピクとも勃ちあがっていないモノはその刺激に小さく震えた。
「冷たい……けど……ま……気持ちイイから良いかア……」
 陽気な恭夜は普段なら絶対言わないような言葉を自分が言っていることに気が付いていなかった。
 今の恭夜はうきうきと気分が高揚し、何をされても嬉しく感じるのだ。
「……ジャックう……もっと……」
 横になり肘を立てて上半身を起こしているジャックに、恭夜は擦り寄った。その肌は自分と違いヒンヤリしている。
「可愛いぞキョウ……何時もこうならいいのに……何が悪いんだ?」
 呟くようなジャックの言葉に、何時もと同じだと思っている恭夜には何故ジャックがそんな風に言うのか全く理解が出来なかった。
「俺……いつもこうじゃん……」
 両手をジャックの首に巻き付け、ねだるように身体を更に擦りつける。するとジャックはようやく体勢を変えてこちらの上に乗り上がってきた。
「いや……キョウは何時も強情だからね……それも可愛いが……」
 クスクスと笑いながらジャックは首筋を舐めてくる。その愛撫も冷たい。
 あれ……
 なんか……
 もしかしてジャック氷銜えてんのか?
 氷を銜えたままジャックは身体の線をなぞっているのだ。その氷が胸の突起を潰すと恭夜は声を上げた。
「あ……」
 ゴリッと何度も氷で潰され、恭夜はジャックの背に爪を立てた。
「ひっ……あ……」
 外気で冷えてきた身体の体温が、今度は快感で上昇するのが恭夜には分かる。その所為か氷の冷たさが先程より皮膚に感じた。
 ちゅ……
 ジャックは小さくなった氷と、固くなった胸の突起を口内で何度も転がした。冷えてくる胸元が逆に恭夜の快感を煽る。喘ぐ口元からはますます熱い吐息が漏れた。
 あ……
 すげえ……
 目を細め、恭夜は口元に笑みが浮かんでいる。心地よい冷たさが、身体を緩慢にしていくのだ。
 ジャックの肩に顎を乗せ、恭夜がその快感に浸っていると、氷が妙なところに当てられるのが分かった。
 え……
 あ……
「そ……そこ……やっ……め……」
 氷が窄んでいる部分に当てられ、その奥にねじ込まれようとしていたのだ。ジャックの行動に驚いた恭夜が、上半身を起こそうとすると、力強く押し返されてベットに沈んだ。
「駄目だっ……そんなの……」
「熱いんだろう……身体が……内側も冷やしてやらないとな……」
 言いながらジャックは氷と共にねじ込んだ指を中で蠢かせた。すると既に角の取れている氷が中で動き、恭夜の体温で溶けていくのが分かった。
「……いや……だっ……あ……」
 ビクビクと内側を痙攣させ、恭夜は何度も身体を起こそうとしたが、ジャックは全く恭夜を離そうとしなかった。いや、ますます強くなる愛撫に酔った身体は既に力が入らないのだ。
 一つ氷が溶けると又一つと、幾つか氷を入れられた恭夜は、冷えるどころか体温が更に上がった。冷たいのだがそれが溶ける瞬間が何とも言えないのだ。
 入り口からは水滴が零れ落ち、恭夜の太股を濡らす。それは生ぬるく人肌ほどの温もりになっていた。
「あ……あ……も……やめ……」
 指が動かされると共に動く氷は奇妙なほど奥に当たっている。触れる瞬間、身体が反り返るほどの刺激が下半身を走り、それらは快感として恭夜に伝わった。
 あ……
 何だか分からないけど……
 だんだん頭がぼんやりしてきた……
 断続的な刺激が脳を麻痺させているのかもしれない。
 そんな事を思いながらも、なかなか入れて貰えない焦れったさに恭夜は言った。
「……は……あ……も……入れろ……っ……」
「……そうだな……氷も一緒に味わってみるか?」
 カランとまた一つボウルから氷を取る音が遠くから恭夜の耳に入ってきた。
 なに……
 何言った?
 いくつ目が分からない氷が入ったと同時に、既に鍛えられていたジャックのモノがグイと狭い中を割り裂いて奥に侵入するのが分かった。だが感じるのは冷たい氷が奥の敏感な部分に当たっている感触だった。
「ひっ……やめっ……」
 更に奥まで押し入れられ、先に入れられている氷が恭夜の奥深くに到達する。冷たさと、生ぬるいモノが同時に感じられ、襞を擦っていた。
「や……嫌だっ……あ……っ……うっ……!」
 恭夜が声を上げると、ジャックの腰が最後まで押しつけられた。溶けながら襞を擦る氷が奥に触れると恭夜は息が詰まった。
 うそ……
 こいつ……
 なに……
 あ……うご……
 動かないでくれよ……
 みっちり詰まった質量のあるジャックのモノはまるで鋼に何か弾力性のあるもので包んだような感触がある。表面は柔らかさを持っているのだが、それは薄皮一枚の部分だけで中は酷く堅いのだ。そんなモノが何度も狭い奥を氷と共に出たり入ったりを繰り返すと、頭の芯を痺れさせるような感覚が感じられた。
「やっ……こ……氷……いやっ……」
 押しやろうとする両手を押さえつけられ、何度も強く挿入されると恭夜はもう声を上げることしかできなかった。
 氷が小さくなると、ジャックはすかさず新しい氷を入れるのだ。中は熱いのか冷たいのか分からないほどだ。
 もう……
 頭……変になりそうだ……
 す……
 すげえ……
 氷を入れるたびに一旦入り口まで退くジャックのモノは一番太い部分が入れられたままであるために張りつめている。そんなところを指で更に開かれ氷をねじ込まれると、切れてしまうのではないかと不安になる。だが逆にもっと詰めて欲しいなどと思う気持ちも沸き上がってくるのが不思議であった。
「ジャック……あ……ん……う……ん……」
 貪るように口元に噛みつかれ、恭夜の舌はジャックによって絡められて翻弄される。何度も喘ぎながらもすぐさまジャックによって口元を塞がれた。
 俺……
 すげえ……
 愛されてるんだ……
 真剣なジャックの表情が恭夜の潤んだ瞳に映る。それは恭夜だけに見せる表情だ。
「キョウ……愛してるよ……」
 ジャックが少し口を離してそう言い、また恭夜の口元を貪る。それは答えを聞きたいのか、聞きたくないのか分からない問いかけの仕方だった。
 溶けた氷は後腔からどんどん外に漏れ出てくる。それ以外のものも一緒になり、淫猥な音を立てながら、氷よりも熱くなった中がギュッと締まった。
「……あ……も……俺……」
 目眩に似た感覚が眼裏に焼き付いていた。恭夜はジャックからもたらされる全てを取り込むように、寒いのか熱いのか分からない身体をジャックの汗ばんだ肌に押しつけ、目を閉じた。
「キョウ……君は?」
 問われた言葉に何か返したような気がしたが、恭夜は自分の耳で聞き取れなかった。
 今は快感だけしか感じていなかったのだ。

 翌朝、奇妙なことにジャックは酷く機嫌が良かった。
「ハニー……素敵な朝だね」
 満面の笑みだった。
 こ……
 こわ……
「……え……あ。まあ……うん」
 キッチンで既に朝食の用意をしているジャックに対し、毎度こいつには似合わないなアと思いながら、機嫌が良いのは良いことだと恭夜は思うことにした。
 昨日何かあったのだろうか?
 お尻がヒリヒリするのは分かるが、恭夜は昨夜のことを覚えていないのだ。その覚えていない間に何があったのだろう。
 このジャックの機嫌にかかわっているのだろうか?
 恭夜は薄気味悪く思いながらも椅子に座った。 
「ハニー……本当に君は素敵な私の恋人だよ……」
 座った恭夜の後から手を回したジャックは、頬にキスをしてくる。
 げえ……
 気持ち悪い……
「あ……朝からあんた何企んでるんだよ……」
 廻された手を払いながら恭夜は鬱陶しげにそう言った。するとジャックの表情が変わった。
「何だね君は……まさか昨日の晩のことを何も覚えていないなどと、生物学上考えられない事態に脳味噌が陥っているとでも言いたいのか」
「小難しい言い方すんなよ。俺は酒風呂につっこまれてからの記憶がねえの。どうせ、ここぞとばかりあんたは酔っぱらった俺に突っ込みまくったんだろうな。お尻がすっげーヒリヒリするぞ。いいかげんに……」
 と言ったところで、ジャックが溜息をついた。
「何その、呆れた顔……。あんたが悪いんだろう。反省しろよっ!」
 後ろに立つジャックを振り返りながら、椅子の背を掴んで恭夜が怒鳴るようにそう言うと、呆れていた表情がすっと冷えた。
 ひ……
 言い過ぎた?
「都合の悪いことは忘れるんだねハニーは……。あんなに素直で可愛かったのに……それが……寝たらこれか?で、忘れたと言うのか?信じられない男だな」
 顎を掴まれ上に持ち上げられると、ジャックの薄水色の瞳と視線が交差した。
 それは怒っているような、寂しいような奇妙な色をしている。
 なんだよ……
 俺……
 何やったんだ?
「お……俺が一体……な、何を……」
「ハニーはあそこに氷をつっこまれて、ひいひい悦んでいたんだよ。なにが忘れただ。氷と一緒に私のモノも味わっただろう。余程良かったのか、何度もねだられたんだがね……氷も私自身も……」
 ニヤと口元をゆがませてジャックが言うのとは逆に恭夜の顔が真っ青になった。
 アイテムは氷?
 でもって一緒につっこんだって?
 そ……
 そんなもの……
 普通つっこむかーーーー!
「がーーーーーっ!あんたは人間じゃないぞっ!何を考えてるんだよっ!それも酔って自分が分からない俺に何つっこんでんだよ!しんじらんねえっ!」
 バッと顎を掴むジャックの手を払いのけ、恭夜は叫ぶように言った。
 何より何も覚えていないのだ。あそこだけがヒリヒリしているだけで、あとは綺麗さっぱり忘れている恭夜には、ジャックの言葉が信じられないのだ。
 ぜえぜえと言いたいことを言い終えた恭夜は、ジャックが何時の間にか目の前に居ないのをようやく気が付いた。
 あれ……
「そういうなら……もう一度チャレンジしてみるか?ねだったらキョウの負けだ」
 冷凍庫を開け、手に持てるだけ氷を持っているジャックは、真剣そのものの顔つきでそう言い放った。
「あ……あはははは。う……嘘だよ……冗談……ほら……酔ってたから……うん……俺……」
 誤魔化そうと笑っている恭夜の腕を掴み、ジャックはその身体を引きずり出した。
「悪かったって……嘘……俺が酔ってたんだ……悪い……だから……こんな朝っぱらから……おーーーーい……ジャックっ!聞けよっ!」
 廊下まで引きずられたところでジャックの足取りが止まった。
「さあキョウ。質問だよ。昨夜から、これからのラウンドを入れて一体何ラウンド君は私に要求したか答えられたら許してあげるよ」
 ニッコリと酷薄な笑みを浮かべたジャックはそう恭夜に言った。もちろん恭夜がそれに答えられる訳など無かった。

―完―
昨夜タイトル翌夜

アイテムは氷でした。相変わらず学習能力のない恭夜がまた今夜炸裂してしまいました。うは……。エロ……もういいって……あはははは。でもほら~、今元気だから私……。何か違うけど……うん。で、恭夜が自分で言って覚えていない言葉はなんだったのでしょう。ジャックが不満だったのはそれを覚えていなかったことだったんですね。うふふ。明日は大地達か……またエロ??

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