30万ヒット記念企画 テーマ「酔っちゃった」 第5夜
大地&博貴
■ どうしようもない男達
博貴が酔っぱらって帰ってきた。
それは別に構わない……と、大地は今、玄関に座り込んでいる陽気な男を見ながら思った。
酔うのは良い。
過去、博貴がべろんべろんに酔っぱらったとき、一度酷い抱かれ方をした記憶があった。その時の事が忘れられなかった大地は、今、目の前で酔っぱらっている男から少しだけ距離を取ろうと思った。但し、あの時は大地も合意だった。
大地は博貴の状態を分かっていながら受け入れたのだ。後悔はしていない。良いことをしたのだと今でも本当に思っていた。
だが陽気に酔っぱらう博貴がどんな行動に出るのか大地はまだ知らなかったが、陽気な博貴に酷い目に合うのは勘弁して欲しかった。
「おーい……。酔ってるのか?」
大地は二メートルほど離れて博貴に声をかけた。
「ん……ん……ん~大ちゃん……酔ってるよ~」
玄関に腰をかけたまま、ぐいんと反った博貴は逆さまの顔でニッコリ笑った。
「……そ、そう?」
へへへと笑った大地はもう半歩後ろに下がった。
「大ちゃん……どうしてそんなに離れてるんだい?こっちにおいで」
逆さの顔はそう言ってまた笑う。その顔がなんだか気味が悪いと大地は思った。
「……いいよ……あっ……水でも持ってこようか?」
大地は引きつった顔でくるりと身体を反転させるとキッチンに走った。
「だ~い~ちゃああん……」
後方から異様に甘えた声が聞こえ、ゴツッと音がする。あの体勢のまま後ろに倒れたのだろう。それは大地が後ろを振り向かずとも分かったことであった。だから振り返らなかった。
とりあえず水。
大地はあの酔っぱらった博貴を少しまともにしたいと本気で思ったのだ。
キッチンに入り、大型の冷蔵庫からミネラルウオーターのボトルを取り出すと、早速大地は玄関に戻ろうときびすを返した。だが廊下に出たところで、玄関からこちらに向かって博貴が床を這っているのが見えた。
うは……
芋虫じゃねえっての……
思わずその姿に笑いが漏れそうになった大地であったが、ぐっとその衝動を堪え、芋虫なる男の側に近づくと上半身が起きた。
「水持ってきたよ」
ボトルの側面を博貴の頬にピタピタと押し当てると、ムッとした表情に変わる。
「大地~水なんかいらないよ……。酒だ~」
ごつっ!
叫ぶ博貴の頭をボトルで大地は殴った。
「酔っぱらってるんじゃねえぞ。俺はお前と違って明日は仕事なんだからな。さっさと酔いを醒ませて、ねろって。俺なんかもうパジャマ着て寝る体勢だったんだからな」
「ねえ……大ちゃん。一緒に飲もうか?」
博貴は先程頭を殴った痛みなどこれっぽっちも感じていないのだろう。
「ははははは。冗談きついよお前……。俺は別に良いけど、お前はベロベロだろ。それでまだ飲むって言うのか?信じられねえ……」
もう一発殴ってやろうかと大地は思ったが、殴っても少しも痛がらない相手をぼかすか殴っても仕方がないと諦めた。
「向かい酒って言うだろ?」
ニコニコ。
「それは二日酔いの時の話しだろっ!いい加減にしろって」
大地が言うと博貴はすくっと立ち上がった。
なんだ……酔ってねえのか?と、大地が驚いて博貴の姿を目で追うと、立つには立ったが、歩き出すと振り子のように左右に身体を振り、足下は頼りなかった。
「おい……待てよ……」
後ろから追いかけ、大地は博貴の腕を掴んだが、その足取りは止まらなかった。逆に博貴は大地を腕にぶら下げたまま、その身体を引きずって歩き出した。
お前は、ばんえいの馬か?
「大良……やめとけって……」
木にぶら下がる猿のような格好で、大地は博貴によってワインセラーまで引きずられた。
博貴はおもむろにビトンのキーホルダーを取り出し、セラーの扉を開ける。すると随時適温に調節されていることが分かるように、ひんやりとした空気を大地の頬に感じさせた。
その中にやはり大地を腕にぶら下げたまま博貴は入り、木で作られた専用の棚を眺めていた。
「止めた方が良いぞ……」
とはいえ、大地の目はワインのボトルに注がれていた。
「……飲む。飲むんだよ大地。つき合ってくれるだろう……?」
ニッコリ笑った顔で博貴は既にワインを手に持っている。そのワインはバローロでしかもリゼルヴァの表記がされたものだ。
「そりゃ……お前が良いって言うなら……」
そのワインは博貴のコレクションの一本で、ずっと大地が狙っていたワインだった。それを開けようと言うのだから、嫌だとは言えなかった。
「じゃあ……二人で酒盛りしよう……」
嬉しそうに博貴はあと数本ワインを片手に持つと、よろよろとワインセラーから出ると、扉に鍵をかけ、ローソファーの所に倒れ込むように座った。
「大丈夫か?」
ワイン……
とは言えずに、大地は今の拍子に床に転がったワインが無事なのを確認した。
「大丈夫だよ……大ちゃんは本当に私のことを好きなんだねえ……」
ワインを床に転がしたまま、博貴は大地に向かって擦り寄ってくる。
うう……ワイン……
酔っぱらいは良いからワイン……
大地は博貴に羽交い締めされながらも、視線はワインのボトルから離れなかった。
「な、飲むんだろ?」
チラとワインから視線を上げ博貴を見ると、半分眠ったような目をしてこちらに重心をかけてきた。
「おいっ……寝るなよ。飲むんだろっ!俺飲むぞ!」
滅多に博貴は大地にアルコールを飲む許可を与えて貰えないのだ。もちろん博貴が居ないときにこっそりとビール位は飲むが、ワインは管理を博貴がしているために、大地は一本たりとも手を付けられない。だから博貴が良いと言ってくれるのをいつも待っているのだ。
「あ……ああ、そうだったね……」
半眼の博貴はそう言って、大地から離れるとローソファーにまた腰をかけた。
身体が自由になった大地は床に転がったワインのボトルを机に並べると、自分からグラスを用意し、コルク抜きもキッチンから持ってきた。
博貴抜きでもいいし……
えへへと思いながら、半分寝転けている博貴を放って、大地はワインのコルクを開けた。すると芳醇なブドウの香りが鼻を掠め、思わず大地は喉がなった。
嬉々としてグラスにワインを注ぎ、さて飲むぞと思った瞬間、博貴の声が聞こえた。
「何?自分一人で飲むんだ……」
じーっと後ろから眺められ、大地は慌てて博貴の分も入れると、そのグラスを渡した。
「大ちゃん……最後までつき合ってくれるね?」
クスクスと、良い感じに酔っぱらっている博貴はご機嫌だった。だがこの調子で本当に最後までつき合えるのだろうかという疑問が大地にはあった。
絶対博貴の方が先にダウンするだろうと思っていたからだ。
ま……俺はゆっくりワインを楽しませて貰うし……いいや……
大地はこの突然巡ってきたチャンスに、気分が良かった。
「じゃあ大地、乾杯~」
と言って飲みだした二人は、一時間後にはへべれけに酔っぱらった男二人が出来上がっていた。
「……でねえ……もう堪らない客が居るんだよ……私も困ってるんだよねえ……」
ワインのボトルを片手に持ち、博貴はソファーに深く背をもたれさせていた。
「……ん?そう言えば……どういう客がいるんだあ?聞いたこと無かったな……」
大地の方はチビチビとグラスに入ったワインを飲んでいる。意識はあるのだが、かなり酔っている自分を自覚していた。
「あのねえ……くすくす……私のあれをいきなり掴んで、光さんのあれって小さいんだ~って言うんだよ。勃起させて見せてとかねえ……困るんだよねえ……お客さんだから怒ることが出来なくて……」
「わはははははは。お前って小さかったのか?」
大地は可笑しくて堪らなかった。
「ちがうよ……。そうじゃなくてねえ……私の玉を握ってたんだな。そんなもの揉んだってでかくなんかならないって……」
ふうと息を吐いて博貴は再度ワインのボトルをそのままラッパ飲みした。だが大地はまた大声で笑った。
「君ねえ……私はこれでも結構ホストとして苦労してるんだからねえ……分かってるのかなあ……」
博貴の大地を見つめる瞳は、もうただの酔っぱらいだった。
「俺だってねえ……やなことあるぞ……」
大地はよろよろとした手つきでワインをグラスに注ぐと、ぐいっと飲んだ。
「おお……大ちゃん良い飲みっぷり~」
パチパチと手を叩きながら博貴はそう言った。
「いや……だからな。やなことだよ。俺の同僚なんだけどな……俺の前じゃあ、大ちゃんって可愛いい~なんて言うくせによ……影でなんて言ってたと思う?」
机に腰をかけ、博貴の方を向いて大地は言った。
「犯したい男ナンバーワン!!」
びしっと指を何故かブイの字にして博貴は大地を指した。
「わはははははっ……。それ……いいな……って、違うよう……俺がねえ……言われてたのは……ちびって……」
博貴の問題発言も全く大地には理解できていない。要するに二人とも酷く酔っているのだ。
「ちびってなんだい?」
ん~?という問いかけの顔に大地は更に言った。
「背が低いって言われてたんだ」
思い出してむかついた大地は更にワインを煽った。
「え、大地は低いだろう。何処が間違ってるんだい?」
当然のようにそう言った博貴は三本目のワインを開けていた。
「五月蠅い~俺はまだ成長期なんだ~!これからにょきにょき伸びていくんだーー!毎日牛乳飲んでるんだから絶対伸びるんだからなっ!」
「わははっ!わはははははは。無理無理~大ちゃんはちびだっ!ちびのままだ!」
両足を上げて博貴はそう言った。
「う、五月蠅い五月蠅い~俺はでっかくなるんだっ!絶対いつかお前を越してやるからなあ!」
博貴の方へ飛びかかり、大地はぼかすかと胸元を殴った。だが酔っているために力が入っていない。
「大きくなってもいいから……私よりは駄目だよ……大ちゃん……」
膝に乗る大地に博貴は言って、額を撫で上げた。
「……ん……まあね……。でも加速が付くとでっかくなるって戸浪にいが言ってたもん」
やや涙目になった大地はうつむき加減に視線を下に向けた。
「こっちがでっかくなっちゃったよ~」
博貴は自分のズボンの中で張りつめているモノを指さした。その方向に、大地の視線が移動する。
「……お前って……」
大地の跨いでいる丁度前の辺りが、膨らんでいるのだ。それを目線で確認した大地は次に顔を上げると博貴をじっと見つめた。
「なんだい?」
「節操無しだよなあ~あはははははは」
「君には節操無しになるんだよねえ……はははははは」
多分、どちらかに少しでも理性が残っていたらこんな事にはならない筈だ。だが大地もそうだが、どちらも酔いすぎて、自分達の言動が本当に分かっていなかった。
「牛乳飲んだら……ここも大きくなるのか……?」
ふと大地はそんな事を言った。
「……聞いたこと無いよ大地……。なに、君、ここを大きくして誰か泣かせたいとでも思ってるのかい?駄目だよ……君は私が泣かせるんだから……」
博貴は大地を抱きしめたのだが、その股下にあるモノが、大地の微妙な部分にあたり、くすぐったかった。
「わはっ……よせよっ!くすぐったいって……!」
「君が食べたいよ……大地……」
頬を擦りつけてくる博貴に、大地は言った。
「……ば……馬鹿野郎……恥ずかしい事言うなよ……」
少しは恥じらいが残っているようだった。
「そういえば……うちに南っていうホスト居たの覚えているかい?不届きにも君に手を出そうとした馬鹿者だけど……」
目元を怒らせて博貴は言った。
「……ん~そういや……居たなあ……」
ぼんやりと霞んだ意識の中にそんな記憶を大地は見つけた。
「彼の誘い文句って最低なんだよねえ……どうにかならないのかといつも思うんだけど……聞きたい?」
ニヤニヤと笑いながら博貴は大地の頬にキスを落とした。
「ん?変なのか?」
「僕の竿を君のハートに突き刺したい……って言うんだよ」
大地は博貴の顔をじいっと見つめ、暫く言葉を失っていたが、同時に二人は笑い出した。
「んっ……だそりゃーーーー!ばっかじゃねえのか?そいつ。そんな言葉でどんな女が引っかかるんだよっ!あはははははっ……よ……よせよっ!腹が痛いっ!」
腹がよじれるほど大地は可笑しかった。博貴の方も同じように大笑いだ。
「だろ?誰も付いてこないってね。いきなり竿なんて言うかい?でも本人はそれがとっても素敵な口説き文句と思ってるんだよ……面白いから誰も注意しないんだけどねえ……」
「そいつ……他にも面白いこと言うのか?」
博貴の肩に手を置いたまま大地は聞いた。
「僕の竿は貴方の虜」
そしてウインク。
「ぐっはーーーーーっ!ひでええっ!なあなあ、他には?」
目に涙を溜めながら大地は博貴に更に聞いた。
「僕の竿は貴方にメロメロ。女王様のご到着を今か今かとお待ちしております。これはお客様に送った葉書の言葉」
「ひーーーーっ!そいつ竿から離れろよーーー!駄目だ……笑える……死ぬ……可笑しすぎるーーー!」
大地は手を博貴の肩から外し、自分の腹を押さえた。笑いすぎて腹がよじれるほど痛かったのだ。
「でもね、普通ならそんな変な奴なんか……って思うだろう?それが、彼が面白いっていう客が意外に付いてるんだよねえ……」
苦笑しながら博貴はそう言った。
「で、さあ……お前は……どうやって口説くんだ……」
大地は博貴にやや複雑な面もちを向けた。
「私が口説くのは……大地だけだよ……」
言って博貴の手が大地の顎にかけられ、引き寄せられる。それに従い、大地の両手も自然に博貴の首に回った。
「ほんとか……?」
「そうだよ……大地だけだよ……」
博貴の唇が大地の頬を擦り、そのまま口元に合わされた。
「……ん……」
入ってきた舌に大地は自分から舌を絡め、逆に吸い付いて離さなかった。
いつもある、何かが外れている……大地はそんな事を意識の遠くで思ったが、今、自分の行動を止める障害は何も無かった。
キスを繰り返しながら、大地は自分からパジャマのズボンを脱ぎ捨て、下着を放り投げた。
「……触ってくれよ……」
口元を離し、甘えた声で大地がそう言うと、博貴はニッコリと笑い、素肌を見せている太股に手を走らせた。
その手は暫くソファーの上で膝をついたまま博貴に跨っている両足を撫で回していた。
「あ……博貴……俺……好きだよ……ん……」
薄く開いた口から告白された言葉に重ねるように、博貴の口元が再度合わせられた。そして今度は博貴の方から大地の舌を絡め取り、口内で翻弄した。その間、博貴の手は、太股に触れるのを止め、大地の後ろと前に廻されていた。
「……っ……ん」
同時に前と後ろで博貴の手が動かされると、大地は一瞬口元を離しそうになったのだが、逃げた口を追いかけるように博貴の舌が大地の舌を捕まえたために、結局離れることは無かった。
「……ん……う……ん……」
後ろは指が差し込まれ、前は博貴の手に握られたまま何度も擦り上げられた。大地は一気に高まる快感にとうとう合わさっていた口を外して声を上げた。
「あっ……あーっ……や……っ……」
刺激に身体を後ろに退こうとすると、後ろから差し込まれている指がより奥に入り、その感覚に今度は前に身体を倒そうとすると、博貴は握り込んでいる大地のモノを更に握り込む。どちらに動いても、大地は信じられないほどの快感を感じた。
だったら動かなければ良いのだが、微妙に力加減を前と後ろで調節する手の動きに大地は翻弄されていた。
「ああっ……あ……はっ……あ……や……あっ……」
「大地……」
快感で涙目になっている大地の目元を博貴は舌で掬い取った。だがその間も手の動きを止めることはしなかった。
「駄目……だっ……あっ……」
大地は前と後ろを交互に責められ、最後にはちょっとした博貴の手のスナップに簡単にイった。
博貴の手のひらには白濁したものがネットリと絡みついている。それを手に付けたま博貴は大地の股下を前から後に手を動かして撫でつけた。
「……やっ……」
生ぬるいトロトロとしたものが股下の前後に撫でつけられる感触は、酷く心地よかった。
「大地……私も気持ちよくなりたいよ……」
博貴はそう言って大地の首筋を舌で舐め上げた。
「う……うん……」
はあはあと小さな喘ぎを漏らしながら、大地は博貴の首に巻き付けていた自分の手を解くと、ベルトに手をかけた。だが震える手は、博貴のベルトを上手く外せない。
何度もチャレンジし、ようやくベルトを外すと、大地はそこで張りつめていたモノを外に誘った。
「……あ……」
堅く反り返った博貴のモノを視界に収めた大地は、ごくっと喉を鳴らした。
「前はイけたけど……大地は後ろが寂しいと、満足できないんだよね……」
嬉しそうに博貴はそう言い、大地の後ろに差し込んでいた指を引き抜いた。すると軽い刺激が下半身から大地の身体を走った。
「……俺……」
じっと博貴のモノを見つめて大地はそれが欲しくて堪らない自分を自覚していた。
「乗って……大地……」
言われるままに大地は腰を落とし、ゆっくりと博貴のモノを後腔で呑み込んだ。
「あーーっ……」
全部博貴のモノを自分の中に収めると、大地はぜえぜえと息を吐き出した。
「上手に入れたね……褒めてあげるよ……」
うっすらと額に汗を滲ませた博貴は笑った。
「あ……はい……入ってる……」
重くずっしりとした質量を大地は身体の奥から生々しく感じとっていた。それは熱く、身体の内部を圧迫している。
「そうだね……入ってるよ……。大地……動いて……私を感じさせてくれないかい……」
「博貴……」
瞳を潤ませ、大地は囁くような声で言ったが、博貴はただにこやかに微笑んでいた。
「大地……ほら……」
腰元をさらりと撫でられ、大地はゆっくり腰を動かした。ずるっという音と共に、中で擦れる快感が堪らない。
「あっ……はあっ……」
より強い刺激を求めて大地は腰を何度も振った。目の前に座っている博貴の瞳も徐々に快感によってうっとりしたものへと変わっていく。それをもっと見ていたいと思った大地は更に腰を動かした。
「……く……大地……すごいよ……」
「俺……俺も……っ……」
汗が皮膚を這い、下へと伝う感触すら大地には快感になっていた。
「……あ……ああ……俺……」
二人の酔いは全く醒める様子はなかった。
大地が目を覚ませると、回りの状況に呆然としてしまった。
俺……
何やったっけ……?
すっげーー頭痛いよ……
大地はどれだけ酔っても記憶が無くなることはない。それらが意識の目覚めがはっきりすると共に、戻ってきた。
ひーーーーーーっ!!
俺……っ!
ローソファーに博貴がクッションを枕に横たわっている。その上に抱っこされたように大地は眠っていたようだ。それは良い。だが、周囲に転がる空になったワインボトルの山と、昨晩の自分の行動がいかに異常であったかを認識した。
「……ん~大地……」
大地の下で寝こけている博貴が腕を廻してきたのを払うと、その頭を殴った。
「お前……っ!お前が悪いんだーーーーー!!」
絶叫。
「……ん……あ、おはよう……大地」
目覚めの良い男はぱっちりとした目を大地に向けてそう言った。
「お前が悪いんだああああアーーーー!」
俺は……
乗った。
自分から乗って……
腰を……
ふったあああああああーーーー!!
ひーーーーーーっ!
その事実が現実にあったことだと大地はとても認められなかったのだ。
「……何を言ってるんだい……ああ、昨日の晩のことねえ。とても素敵だったよ未成年の酔っぱらい君」
くすくす笑いながら博貴はクッションに頭を沈ませている。
「なっ……」
わ……
忘れてねえっ!
「わ……わっ……忘れろっ!今すぐ記憶喪失になれっ!」
「……訳の分からないことを……」
相変わらず博貴は笑顔だ。
「……それに……お前っ!客に玉なんか握らせるなよっ!」
「あっ……」
そこで博貴は自分の言動を思い出したようであった。
「あははははははは。記憶喪失になれ~」
と言って博貴は大地を指さした。
「なるかっ!」
顔を真っ赤にして大地は怒鳴った。だが自分の怒鳴り声が頭に響いてがんがんする。それでも言わずに済まされなかった。
「ちび~牛乳飲んでる、ちび~」
次に博貴はそう言った。
「あっ……」
大地も自分の言ったことを思い出す。
「……だっ……誰がっ犯したい男ナンバーワンなんだよっ!!」
自分の言ったことを振り払い大地は言った。
「ん?あそこもでかくなりたい~だから牛乳飲むの~くすくすくす」
博貴も負けていない。
「…………」
うう……
もしかして俺の方が立場悪い?
「なあ……お互い忘れない?」
これが譲歩だろう。大地は本気で思った。
「そうだねえ……それが一番かもねえ……」
そうだ……
お互い忘れることにするんだ……
それが一番なんだっ!
大地はコクコクと首を振った。
「で、大ちゃん。何か違和感を感じないかい?」
苦笑いしながら博貴は言った。
「え?」
そう言えば何となく気持ち悪い……
チラリと大地は上半身を先程より起こし自分の状態を確認した。
「っぎゃーーーーーー!」
「……そうなんだよ……まだ入ったまま」
あははははと博貴は笑った。
―完―
どうしようもない話になってしまいました。多分楽しい話でエロにしたかったのだと自分で自分を分析。うぬ――――。しかしこの二人……いいカップルじゃないの……なんて思ったのは私だけ? アイテムなんかなくても愉しめる二人に、ある意味微笑ましさが?? いやワインがアイテムだったかな? しかし……ホストの南……あんたって一体……(謎)。 |