30万ヒット記念企画 テーマ「酔っちゃった」 第7夜
アル&ユウマ
■ 酔っていることに気が付いていない俺
休日の午後、俺は戸浪ちゃんと祐馬に連れられてドライブに出かけた。俺の特定の席はもちろん戸浪ちゃんの膝の上だ。
祐馬が運転し、助手席に戸浪ちゃんが座る。その膝の上に俺は丸くなる。
開いている窓からは心地よい風が車内に入って来た。緑の萌える香りが鼻を掠めると俺は外に飛び出したくなる衝動に駆られる。元々野良猫だから草や木の独特の薫りに俺は弱かった。
だが俺は賢いから窓から顔を出したりはしない。そんな俺に、戸浪ちゃんは何時も「ユウマは賢いな……」と言って褒めてくれる。
だけど今日は、俺の背を撫でてくれる手も止まりがちだ。戸浪ちゃんは珍しく祐馬と会話が弾んでいたのだ。
でも今日は何処に行くんだろう……
平日は二人とも仕事だから、俺も一日留守番させられても文句は言わない。二人が働いてくれているから俺は毎日美味しい御飯にありつけるからだ。
だけど、休日のせめて一日くらいは外に出たいのだ。それは野良猫だったからではなく、ずっと家の中にいるのが息苦しい為だ。
二人ともそんな俺の気持ちが分かってくれているようで、大抵休みになると外に連れ出してくれる。いつもは公園に行くのだが今日はどうも道のりが違った。
何処に行くんだろう……
俺は丸くなっていた身体を起こし、いつもなら既に降りている車の中から外を眺めた。だが周囲は普通の町並みで、ハイキングに行く様子はない。
「あ、次の角を曲がったとこだよ……」
祐馬はカーナビを見ながらそう言った。
「ユウマ……人見知りしないかな……」
戸浪ちゃんは心配そうにそう言った。
人見知りしないと言うのはどういう意味だろう……
俺にはちっともその理由は分からなかったが、煉瓦建ての喫茶店まで来ると、その隣にある駐車場に祐馬は車を停めた。
「ユウマ、行こうか……」
言って戸浪ちゃんは俺を抱っこすると、扉を開けて車から降りた。その後を祐馬が続く。
何となくドキドキしながら周囲を見渡すと、先程の喫茶店の裏に作られた小さな広場で犬や猫が沢山たむろしていた。その犬や猫たちはどう見ても全て血統書付きの素晴らしい毛並みを持つ奴らだった。
……なんだここ……
げっと思いながら俺は顔を上げて戸浪ちゃんを見ると、とても嬉しそうだった。
「こいつ……友達出来るかなあ……」
友達って?
「……さあ……だが、猫は人見知りするって言うから……」
少し不安げに戸浪ちゃんは言う。
「大丈夫だよ。こいつだって一人じゃ寂しいじゃないか。綺麗な彼女が出来るかもしれないしさ」
彼女?
一体何の話しをしてるんだよ?
俺が驚いてキョロキョロしているうちに、戸浪ちゃんは煉瓦造りの喫茶店に入った。その入り口にはペット同伴OKと書かれていたのを俺は見逃さなかった。
ここって……
俺も入られる喫茶店なのか?
よく見ると、丸テーブルが窓側に幾つか置かれ、それらは椅子が二つ置かれているのと、四つ置かれているのと二種類有り、大きな犬を連れている人間は足下で餌をやり、小型犬や猫は机の上に乗せて、人と動物は仲良く一緒に食事を摂っていた。
すげ……
なんだここ……
俺が驚いたのは、机に乗っている犬や猫共だった。幾ら俺が戸浪ちゃんに可愛がられているとはいえ、机に乗ったり、手を置いたりするだけで怒られるのだ。
それがここではどうも良いようだ。
エル字型のカウンターの方には、何故かウサギが乗り、その隣りに女性と男性が談話しながら食事を食べている。ウサギの方は主人と同じ柄の皿に野菜が盛られており、それを一生懸命に食べていた。
変な店……
そんなことを思っていると、戸浪ちゃんは奥の丸テーブルに座った。
「祐馬……窓側は駄目だな。ここにしよう……」
先に座った戸浪ちゃんはそう言って俺を、自分の隣の席に座らせてくれた。
なんだ……机は駄目なんだ……。
「……う~ん……みたい。一杯だね。本当は窓側から見ていたかったんだけど……心配だし……」
そう言って祐馬は窓の外を意味ありげに眺めている。すると窓の向こうには先程外から見えた広場があった。喫茶店の中にその広場に入る扉が設置されているのだ。
チラリと店内にもう一度視線を戻すと、自分の飼い犬や猫をその広場に放し、主人達は窓際の席に座って御茶を飲んでいるようだ。
都会には奇妙な場所があるんだなあ……
俺はそう思いながらも、自分も机に登りたかった。行儀の悪いことだと教えられているのだが、戸浪ちゃんの顔を間近で見るには、今の位置では低すぎる。
何時も何時も下から俺は戸浪ちゃんを眺めている。俺がもっと大きくなったら、戸浪ちゃんの背を越せるかもしれないと思うのだが、俺は猫で、この世の中に人間より大きくなった猫が居たという話しは聞かない。
だから多分どう考えても無理なのだろう。
それに俺は普通でも少々小柄な方のようだ。気性はどの猫にだって負けるつもりはないが、身体が小さい。
そんなことはどうでもいいけど……
「なあ……戸浪ちゃん。ここだったらユウマを机の上に乗せてあげようよ。みんな上に乗せてるし……まあ、大きな犬は無理だろうけどさ」
祐馬は珍しくそう言って俺を抱っこすると、机の上に乗せてくれた。それがとても嬉しかった。
たまには良いことしてくれるんだ……
少しだけ祐馬を見直し、俺は戸浪ちゃんの方を向いた。戸浪ちゃんもニッコリ笑ってくれている。
「んでさあ……こいつに何注文する?」
祐馬はおもむろに机の上に置かれているメニューを広げた。すると戸浪ちゃんは祐馬の見ているメニューを横から覗き込み、二人で嬉しそうに話し出した。
良いなあ……
俺も人間になりたかった……
二人が仲が良いのは恋人同士だからだ。まあ、ラブラブな姿はそれほど頻繁に見ないが、結局二人は仲が良い。俺だって戸浪ちゃんが好きなのに、愛の告白一つ出来ない。
好きだと言っても戸浪ちゃんには鳴き声にしか聞こえないのだ。
寂しいな……
俺……
「じゃあ、ユウマ。このマグロと鮭のフレークにしようか?」
メニューの写真をこちらに見せた戸浪ちゃんはそう言って俺に同意を求めてきた。別に何でも食べられる俺は「にゃあ」と鳴いた。
「これで良いみたいだぞ……」
戸浪ちゃんは祐馬にそう言った。
「みたいだね。あっ……これ頼んでみようよ……」
言って祐馬はこちらをチラリと見ると、次ぎにクスクスと笑いだした。
むっ……
なんだよ……
人の顔見て笑うなんて……
だが戸浪ちゃんもメニューを見て笑っていた。
気持ち悪いぞ……
「にゃーにゃー……」
何、見てるんだよ…教えてくれよ……
俺は必死に頼んだが、二人は笑うだけで教えてくれなかった。
まあ……
いいけどな……
暫くすると、店員がやってきて注文を取りに来た。
「あ、俺と彼は本日のランチ。で、うちの可愛いユウマにはこれとこれ」
これとこれ?
むか……
メニューを言わないつもりだな。
よっぽど隠したいのか……
ムカムカしたが、折角のお出かけの日まで祐馬に噛みつくことだけは止そうと思った。何より、外に出たときに俺が祐馬を噛んだりすると、出られなくなるような気がしたからだ。
俺って心が広いんだよな……
そう思うことにした。
周囲は色んな種類の犬や猫が居る。みんなそれぞれ自分の飼い主に注文して貰ったランチを食べていた。
俺も幸せなんだよなあ……
ふとそんなことを考えた俺は、今の幸運を味わうんだと本気で思った。
「ユウマ、何処見てるんだい?来たよ、お前のランチが……」
いつの間にかマグロと鮭のフレークが綺麗に盛りつけされたお皿が目の前に置かれていた。
いい匂い……
美味そう……
俺は小さく一声鳴いて、むしゃむしゃと自分のランチを食べはじめた。家で食べるキャットフードもまあまあいけるけど、このランチは最高に旨かった。
今までこんな美味しい物は食べたことが無い。
お皿まで綺麗に舐め、最後まで食べ終わる頃、戸浪ちゃん達はまだ自分達のランチを食べていた。俺は邪魔をしないように丸くなって二人の食事を終わるのを待った。
お腹は一杯。うつらうつらとしていると、また店に客が来たようだった。
薄目を開け、なんとなしに入り口の方を見ると、以前俺に告白したアフガンハウンドのアルが主人に連れられやってきていた。それを確認して、薄目だった俺の目は大きく見開いた。
うそ……
どうしよう……
恐いぞ……あいつは……
悪いが俺はあいつに上に乗られ、その上追いかけ廻された。ようやく逃げられたと思った矢先、俺は川に落ちたという経験がある。その恐怖はまだ俺の中に生々しく残っているのだ。
思わず俺は、机の上から戸浪ちゃんの膝に移動した。
「ユウマ?いいんだよここは……」
急に膝に乗った所為で、戸浪ちゃんは日頃俺にしつけていることで降りたと勘違いしたようであった。だが違う。俺はアルが恐いんだ。
「戸浪ちゃん……見て、ほら、あの犬……」
祐馬がアルに気が付いたようであった。
「……ああ……だからユウマ……。あの目つきの悪い男の犬だ。覚えてるぞ。うちのユウマをよくも……」
戸浪ちゃんは思い出したのか、そう言って怒り出した。
「はは……済んだことで怒ったら駄目だよ。戸浪ちゃんって意外に執念深いよなあ……」
祐馬の方はお気楽にそう言ったが、俺は執念深い猫なんだっ!
俺は忘れてないんだっ!
あいつは……
俺を……
好きなんだぞっ!
雄の癖に……
俺だって雄なんだからなっ……
そりゃ……
戸浪ちゃん達は男同士でつき合ってるのかもしれないけど……
俺は……
アルの方も気が付いたのか、膝の上に丸くなっている俺を見つけて、尻尾をぐるんぐるんと振った。以前一緒にいた可愛らしい男は居ない。飼い主とアルだけだった。
アルの主人は常連なのか、店のお姉さんに「アル~こんにちは~元気にしていたの?」なんて声を掛けられていた。するとアルは「ワンっ」と吠え、先程まで俺を見ていたはずなのに、可愛い女性定員に愛想を振りまいた。
その姿がとてもむかついた。
なんだよ……
お前って俺が好きなんだろ?
はっ……
違う違う……
俺は……あいつが嫌いなんだからな……
プイッとアルから視線を外し、俺は寝ることにした。
猫は一日だって寝られるんだからな。そんな風に考えていると、アルは飼い主によって喫茶店の裏にある広場に放されたようだ。すると、他の犬や猫たちがアルにまとわりつき、なにやら楽しそうに話していた。
あいつ……
人気者なんだ……
好かれてるんだな……
みんなに……
未だかつて俺は友達が出来たことはない。一匹いたが、あいつは俺が見つけた餌を横取りした。それから俺は友達なんか作ろうとは思わなくなった。もちろんあいつだって腹を空かせていたのは知っていた。俺の見つけた餌を横取りするほど欲しかったのだ。だが俺だって腹が空いていた。まだ半分ずつと言われたら俺はきっと悩んだだろう。それが……あいつは全部奪って俺に爪を立てたんだ。
もう友達なんかいらない……
あれ以来、俺はずっと一人で生きてきた。アルのように血統書がついていて、その友達も食べる物で苦労したことのない連中とつき合っている。なら、俺のような経験など多分味わったことなど無いはずだ。
羨ましいな……
ふとそう思った俺は首を振ってくだらない気持ちを振り捨てた。
俺には戸浪ちゃんが居る。
ちょっと情けないけど、祐馬もいるんだ。大事にして貰っているし、今も幸せだ。
これで俺は充分だ。
「あ……これこれ……」
頭上で祐馬の声が聞こえた。
「ほんとに効くのか?」
戸浪ちゃんの声だ。効くって何が?
「さあ……でもほら、気性の荒い猫にはこれが一番って書いてるし……。あ……大人しい猫には効きません……って書いてる。でもさあ……こいつが大人しいと思う?」
俺は大人しいよ……
と、思っているのだが、戸浪ちゃんは「うーん……」と言った。
俺って……そう思われてるんだ……
ちょっと悲しい……とは思え、確かに祐馬とのバトルを考えるとそう思われても仕方ないとユウマは思った。
バリッ
がさがさ……
「ほ~ら、ユウマ~ほらほら~」
何か破く音が聞こえ、次にユウマがにこやかな顔をして、戸浪ちゃんの膝に乗る俺に、鉛筆のような木の棒を振って見せた。
はあ?
なんだよそれ……
俺は目の前で左右に振られる棒に、ちょっと興味が引かれ、身体を起こすとその棒に鼻を近づけた。
くんくん……
ほわほわほわほわ~
木の棒からは何とも言えない良い香りがし、それを吸い込んだとたんに俺は腰が砕けるような気持ちよさを感じた。
ほわほわほわほわ~
気分は最高。
兎に角世界がピンク色に見えた。
「うわ……思い切り効いてるぞ」
遠くで祐馬がそう言ったのだが、俺には訳が分からない。ほわほわとした目つきで、身体をくねらせていると窓の向こうにいるアルが目に入った。
アルは同じ犬種の綺麗な雌と話しをしていた。
むか……
むっかーーーーー!!
俺の事好きって言ったじゃないか!
で、どうして雌と話ししてるんだよっ!
違うだろ!
アルは俺と話しがしたいはずだよなっ!
ほわほわ気分で俺は「にゃーにゃーにゃー」と鳴きながら、その窓の向こうの広場を見つめた。
「こいつ……広場に行きたいみたい……。良いのかな……離しても……」
「ご自由にって書いてるみたいだが……。仲良く出来るペットに限りますとも書いて居るぞ。どう思う?」
「俺達が付いていたら良いんじゃないか?こいつもみんなと話しがしたいんだって……」
祐馬はそう言うと、ほんわーとなっている俺を抱きかかえて立ち上がった。そうして俺が今どうしても文句を言いたい相手が居る広場に向かう扉を開けて、目的の場所に連れ出してくれた。
ほわほわ……
俺はな……
ほわ~
俺はっ!
「アルっ!なんだよあんたっ!」
よろよろと俺は歩きながら、アルの側に近づいた。後ろから、戸浪ちゃんの声が聞こえたが、そんなのもう無視だっ!俺は今、本当に頭に来ていたのだ。
アルは俺が歩いてくるのをじっと見つめていた。だがその隣には綺麗な毛並みをした雌がやはり俺を見ている。
俺のこと……犯そうとしたくせにっ!
好きだって言ったくせにっ!
なんでそんな女と一緒に楽しそうにしてるんだよっ!
酔っぱらったような足取りで、アルの側まで来ると、俺は自分でも信じられない言葉で頭を一杯にしていた。
もう頭がぐるんぐるんしており、何を言っているのか自分でも判断が出来なかったのだ。
「ユウマ君……」
アルは絶句したようにそう言った。
綺麗な毛並み。気品のある長い鼻は、何度見ても紳士的だ。緩やかにウエーブしている耳の毛が、フワフワと風になびいてとても男らしく俺には見えた。
「何だよ……俺が野良だからって……馬鹿にしやがって……」
自分でも意味不明の言葉を更に言った。
「何……この汚い猫……。あら、野良のくせにビトンの首輪してる。恥ずかしい~」
くすくすと思い切り見下げた言い方で、アルの隣にいる雌は言った。
「五月蠅いよ。あんた。お前だってにあわねえグッチの首輪してんじゃねえぞ。なあにが、あら、野良のくせにビトンの首輪してるわ~、恥ずかしい~だあっ!!こんのーブス!」
フーーーッと毛を逆立て、俺は雌に言った。
「誰がブスよっ!私は血統書がついてるのよ。あなたなんか、その辺の道ばたで生まれた、ただの野良じゃないの。ちょっとばかり気のいい人に拾われたからって、いい気にならないことね」
長い鼻をつんと上に向け、雌は言った。
そうだ……
俺は道ばたで生まれたんだ……
その辺の……
路地裏だった……
生まれて暫くして……
目の前の道でお母さんは轢かれたんだ。
俺達……
兄弟六人居たけど……
生き残ったのは俺だけだった……
俺は……
思わず俺は涙がボロボロと落ちた。
野良で生まれたのは俺の所為か?
お母さんが目の前で轢かれたのは、野良だから仕方ないのか?
血統書付きがそんなに偉いのか?
俺は……
屑か?
普段はこんな事くらいで俺は泣いたりしないのだが、何故か酷く悲しくなった。
「私はね、彼が好きなんだ」
アルが突然、雌犬にそう言った。
「え?アル?」
「だから彼とラブラブしたいから、君はここから離れてくれないか?」
アルはニッコリ笑いながら驚くようなことをいった。
「この野良……猫よ……本気?」
雌犬は驚いた顔で言った。
「それにね、野良だとか血統書がついてるとか、私には関係ないんだ。君はそれを勲章だと思っているようだけど、だから何だ?私もそうだが、君だって一つ間違っていたら道ばたで生まれていたんだよ。そんなくだらないことで、優位に立って君は楽しいのかい?私には分からないね」
アルは俺の前に立ち、豊かな尻尾で俺の身体をくるりと巻いて、雌犬から守ってくれた。
「アル……」
「いいんだよ……」
こっちを向かずにアルはそう言った。そのアルの視線は冷ややかに雌犬に向けられていた。
「まさか……貴方って……」
驚いた顔で雌犬は言った。
「だから?」
「猫っていうだけならまだしも……雄じゃない」
「うちのご主人様のつき合っている相手も男だよ」
アルはきっぱりとそう言った。そうだ、俺の戸浪ちゃんも祐馬とつき合ってる。あいつもどこから見ても男だ。
男同士でもいいんだ……
おれはそんな気持がどんどん膨らんできた。
「へ……変態の飼い主だったのね……だから貴方もおかしいんだわ……」
まるで汚いものを見るような目で雌は視線をこちらに投げかけてきた。だがアルはずっと胸を張っていた。
「そうか?君のように心がねじ曲がっているよりましだと思うけどね。逆に言わせて貰うと、私は君がもっと綺麗な心の持ち主だと思ったよ。差別なんかしない人だってね。だから友達だと思ったけれど、残念だよ……」
格好いい……
アルって……
格好いいよ……
俺は思わずアルのその包容力にドキドキしていた。
「し……信じられない……素敵な人だと思っていたのに……」
言いながら雌犬はすごすごと、その場から離れた。
「ごめんね。嫌な思いさせてしまった……」
アルは首を曲げて俺にそう言った。
「……ありがとう……」
俺はそんなアルに心からそう言っていた。
そんな俺達を遠目から戸浪ちゃん達が青い顔をして眺めていたことを俺は知らなかった。
―完―
30万記念これにて終了!毎日よくお付き合いくださいました。1日落として記念にあるまじきことになりましたが、心優しくお待ちくださってありがとうございました。記念期間中も温かい励ましメールをくださった方、掲示板で身体を心配してくださった方、毎日見に来てくださった方、本当にありがとうございました。ラストはなにやら奇妙なところで切れていますけど……あははは。すみません。次回の記念にはラブラブが見えたかも?これにて、30万記念を終わります。記念期間中、楽園殿堂入りなど、嬉しいこともあり、身体の調子は悪かったですが、それらもとても励みになりました。明日からまた通常の連載に戻りますがよろしくお願いしますね。 どうもありがとうございました!! |