Angel Sugar

50万ヒット記念企画 テーマ「一人でできるもん」 第3夜

昨夜タイトル翌夜

大地&博貴

■ 一人でがんばったもん

「ウサ吉のこと頼むな~」
 最近大地は仕事に行く前、必ず博貴にそう言うようになった。
「大地は心配性だね。毎度言うようだけど食べたりしないよ……」
 博貴はにこやかな顔をしたが、内心はあまり嬉しくない。
「……お前……マジで食っちまいそうだもん……」
 ジロリと疑惑の目を向ける大地に博貴は苦笑するしかない。
「食べないよ……。ほら、そろそろ出ないと仕事に遅れるよ。ウサ吉のことは私一人で面倒は見られるから……君は心配しないで仕事に専念するんだね」
 心の中では眉間に皺を寄せながら、表向きは平静な顔を博貴は装っていた。
 ハッキリ言ってこの台詞を毎日博貴は大地に言っているのだ。それでも大地は博貴とウサ吉をこのうちに残していくとき、心配し、更に「食うな」と言う。
 以前、丸々太らせて料理してくれ……などと言ったものだから、大地は半分本気にしているのだろう。だから博貴と二人きりにするのが心配なのだ。
 もちろんあわよくば何時だって丸々と太らせて……と、博貴は思っているのだが、口が裂けても大地には言えない。
「……うん。行ってくる……」
 大地はそう言い、ようやく玄関を出ていった。

「さてと……今日は久しぶりに何かするか……」
 リビングにあるローソファーに座り、一通り本日の新聞に目を通した博貴は、独り言のようにそう言った。
 最近、暇な時間が増えた博貴は、何時も料理を作り、洗濯物をこなし、掃除もしてくれている大地のために、たまには自分がしてやろうと奮起することにした。
 夕方戻ってきたときには、大地が驚く様な料理を作り洗濯物も全て洗い、畳んで片づけて置いてやると、きっと喜ぶに違いないと思ったのだ。
 問題はウサ吉だった。
 チラリとウサ吉の寝ている籠を見ると、何故か向こうもこちらを見ており、黒い瞳と目があった。
 ……
 気に入らない……
 博貴はウサ吉が気に入らなかった。
 今まで大地を独り占めしてきた筈が、この闖入者によって現在は大地の権利をこのウサギと半分ずつしているような気がしてならないのだ。
 もちろん、夜を邪魔されることは無いのだが、大地は帰ってくるとウサ吉の所に走り、博貴よりも先に抱きしめている。それがとにかく気に入らなかった。
 ……私が恋人だ……
 ウサギ相手にライバル心を燃やしても仕方がないのだが、元々動物が嫌いな博貴からすると、本気で丸々と太らせて料理に使いたい気分になる。
 もちろん、そんなことをすれば大地に嫌われることが分かっているために博貴は「食ってやれ」という衝動を抑えているのだが、とにかく気に入らないものは気に入らないのだから仕方がない。
 ウサ吉は大地が買ってきた真っ青なリボンをしているのだが、全く似合っていないと博貴は思った。
 なによりウサ吉の毛の模様が笑えるのだ。
 白地に黒の点々がはいっており、その姿はどう見ても牛だった。しかし大地は可愛い可愛いと言うのだ。仕方がないので、博貴も「可愛いね……」等と大地にあわせて言っていた。
 だが実はそんな気持ちなど博貴にはさらさらない。
 ウサ吉より私を可愛がって欲しいよ……
 大の大人がそんなことを考えてしまうほど、大地はウサ吉を可愛がる。例え畜生であってもこの場合は嫉妬しても仕方がないはずだ。
 ウサ吉を見ていると、籠から身体を出し、ピョコピョコと歩き出した。ウサギもトイレのしつけが出来ると聞いているのだが、大地がいるときはきちんとウサ吉専用に買ってきたトイレに行き、用を足す。だが、博貴と二人きりだと、嫌がらせのようにあちこち小さな丸いウンコをウサ吉はまき散らした。
 嫌がらせをされている……
 要するに……
 私が気に入らないんだ。
 ああ、私も気に入らないね!
 読んでいた新聞を机に置き、自分が用事をしている間、あちこちにウンコをされると困るため、博貴はウサ吉を細い紐にくくりつけてやろうと近づくと、こちらの意図察したウサ吉が、スピードを上げて走っていった。
 ウサギの癖に……
 むかつくねえ……
 大地が飼いたいと言ったために、仕方無しに博貴もウサ吉の存在を認めている。だが本気でこのウサ吉は気に入らないのだ。
 大地が居ないからと言ってウサ吉を虐待したりはしないが、好き嫌いは強制出来ない筈だ。嫌いなものは嫌いなのだから仕方ない。
 ようやくウサ吉を部屋の隅に追いつめ、博貴は子猫専用の紐を首に掛けた。次に用事をしている間、邪魔であるためリビングから出られる屋上の庭に縛り付けておくことにした。
 大地がいるときは悪さもしないため、放しているのだが、博貴が面倒を見る場合、大抵水道のパイプに繋いで放置しておく。そうでもしないと何をするか分からないからだった。
 ぶぶぶぶ……
 ウサ吉はこちらの睨んでいるような表情で不満げに鼻を鳴らした。気に入らない相手にはこんな風に鳴くそうだ。
 お前に好かれたくは無いよ……
 大地がいると、とたんに強気になるウサ吉は、こちらも大地がいると怒ることが出来ないのを知っているため、鳴くだけではなく、蹴りまで入れてくる。もちろん痛みは無いが、その行動が博貴には腹が立っていた。
 丸々太らせて……
 本気で料理してやりたい……
 まだ子供のウサ吉を引っ張りながらそんなことを考え、リビングから外に出ると水道のパイプに紐をくくりつけた。紐は長さが充分にあるため、草むらで遊ぶことが出来る。
 嫌いなウサ吉のためにここまでしてやってるんだから感謝しろと博貴は思いながら、洗濯物を洗うことにした。
 博貴はバスルームに向かい、洗濯物を洗濯機に入れ自動のボタンを押す。後は時間が来るまで放っておけばいいのだ。
 一旦、リビングに戻り、大地が何時も見ている料理の本を数冊取り出すと、自分でも作られそうで、ちょっと凝ったものを探した。
 私だって一人で色々作られるところを見せてやらないと……
 もちろん、大地の作るものは絶品で、張り合うことはとうてい出来ないのだが、どうも大地から、博貴は自分では何もしないタイプと思われがちなのだ。
 たまには何でもそつなくこなせる所を見せないと……
 博貴が色々思いを巡らしながら料理の本を繰っているとウサギの丸焼きが目に入った。
 このウサギとあのウサ吉がどう違うのか博貴は大地に聞いてみたいという気に駆られたが聞いたりしない。ここで兎の丸焼きが出たことで、博貴は何となくガラス張りの向こうに見える庭に視線を移し、ウサ吉の様子を窺った。するとウサ吉本人は機嫌良さそうに土の所でピョコピョコと歩き回り、穴を掘って遊んでいた。
 楽しいだろう……
 私がそこに繋いでやったんだからな……
 感謝してくれよ。
 また視線を料理本に戻し、何を作るか博貴は考えることにした。ウサ吉は放って置いても大丈夫だと思ったのだ。
 何を作ろうか……
 余り手の込んだものは作られそうにない。下手にチャレンジし、キッチンをめちゃめちゃにすると大地に怒られるからだ。
 う~ん……
 外食の方がいいか……
 思いながらも、いくつか本を見て、自分が作れそうなものをより分けてみるのだが、美味しそうだと思うものは大抵料理の仕方も下準備から複雑になっていた。
 いくらなんでも博貴には複雑な下準備など出来ない。
 ふう……
 顔を上げ、もう一度ウサ吉を見ると、そこにあったのは紐だけで、ふわふわの姿は無かった。
「あっ!」
 博貴は料理の本を置き、リビングから庭の方へ飛び出したが、ウサ吉の姿は見あたらなかった。
 うわ……
 何処に行ったんだろう……
 残された紐だけを掴み、博貴は更に探したが、何処にも隠れている様子はなかった。
 ……
 上から落ちた?
 まさか……
 屋上は確かに緑化計画で草木が植えられているとはいえ、コンクリートの段が一メートルほどある。その上に網が設置されているのだ。
 博貴がじ~っと足跡を見ると、点々と小さなへこみが辺りにあり、それを追いかけて行くとマンションの部屋の方へ向かっていた。
 ……
 何時の間にか中に入ったのか?
 驚きながらも靴を脱ぎ、リビングの方へ入ると、小さな白い点々がフローリングについている。それをまた追いかけ、博貴はウサ吉を探した。
 すると脱衣場にある洗濯物を置いた所にウサ吉はいた。だがきちんと畳んだタオルを引っ張り回し、白い布地に足跡を付け、あちこちに手ぬぐいやタオルを散乱させていた。
「……う……ウサ吉ーーーー!」
 博貴が怒鳴ると、ウサ吉はタオルの山から顔を出し、ニヤリと笑った(様な気が博貴にはしたのだ)
「こらっ……まてっ……お前というウサギはっ!」
 捕まえようと手を伸ばすと、それをするりと交わしウサ吉はまたピョンピョンと、ものすごい勢いで廊下を跳ねていった。それを博貴は紐を持って追いかけ、捕まえようとした。が、また姿を消した。
 ……何処だ……
 ウサ吉は……何処に行ったんだ……
 博貴はあちこちを見て回ったが見失った。仕方無しに博貴はバスルームに戻ると、ウサ吉が足跡だらけにしてしまった手ぬぐいや、タオルを片づけ、それも洗うことにした。
 全く……
 用事を増やさないでくれよ……
 溜息をつきつつ、博貴は先程自動にしておいた洗濯物を取りだし、汚れたタオル類をつっこむと、再度自動にした。
 はあ……
 やっぱりあのウサギは一日繋いでおかないと……
 洗い終わった洗濯物を今度は乾燥機に入れてスイッチを押す。こちらが乾く頃にはタオルも洗い終わっているに違いない。
 肩を落としながら、博貴はウサ吉を探すことにした。今、見つけておかないとまた何をしでかすか分からないからだ。
「ウサ吉っ!どこだっ!怒ってるんだぞっ!」
 声を上げ、あちこちの部屋を探しながら博貴は結局リビングまで戻ってきた。
 ああもう……
 何処に行ったんだろうねえ……
 このうちにいるのは分かっているのだが、なにぶん小さなウサ吉のことだから、何処かに隠れてしまうとなかなか見つけられなくなるのだ。
 はあ……
 だから動物は……
「あーーーーっ!」
 ウサ吉はローソファーに置かれた大地の料理本を囓っていた。だが博貴が大声を上げたことで驚いたのか、口元から紙切れをポロリと落とし、また走って逃げようとするのをようやく博貴は捕まえた。
「お前ねえ……これは大地の本だぞ。私のだと思ったんだろう……」
 するとウサ吉は目を大きく見開いた。
 やはり博貴の本だと思ったのだ。
 私に嫌がらせをしてやろうと思ったんだなこいつ……
 ……
 ああもう……
 それよりこのびりびりになった本をどうするんだ……
「どうしようかねえ……」
 ウサ吉の耳を掴んだまま、博貴は溜息をついた。大地には一人で面倒を見られると言った手前、こういう状況になったと話せない。
 仕方ない……
 同じ本を買いに行くしかない……
 博貴は今度こそ、しっかりウサ吉を紐で結わえ、籠の側にある柱に繋ぐとブックセンターに行くことにした。
 ウサ吉は一応反省しているのか、耳を垂れさせ、大人しく籠に入った。それを見届け、博貴はマンションを後にした。
 
 数件回り、ようやく同じ料理本を手に入れた博貴は、うちに帰る途中、デパートに寄り夕飯の買い物をしてからうちに戻った。
 色々買いすぎたかなあ……
 博貴は甲殻類が好きなのだ。だからロブスターや、タラバガニなども買ってしまった。その上肉も霜降りのものを買った。
 ガサガサ……
 手に持っている箱の中では、まだ生きているロブスターとタラバガニが動いている。
 新鮮は良いことだ……
 ほくほくとキッチンに入り、博貴がテーブルに荷物を置きながら、仕方無しにウサ吉をみると、籠をひっくり返し、小さな黒いうんこをあちこちに転がしていた。
 これらの行動は大地がいるときは絶対にしない。
 嫌がらせ再び……
 こいつはどうしてこう私に対してこう挑戦的なんだっ!
 当のウサ吉は機嫌良さそうにひっくり返った籠に入り、眠っていた。それに博貴は益々腹を立て、ティッシュで丸い小さなウンコを拾った。
「ウサ吉っ!いい加減に……」
 ……
 あ、そうか。
 面白いことを考えた。
 博貴はロブスターを箱から出すと、ウサ吉の側に連れて行った。
「ほ~らウサ吉……お友達だぞ~」
 うりうりと籠に入っているウサ吉に生きたロブスターを見せると、後ろに下がった。少しは怯えているようだ。
 考えると気味が悪いはずだった。ロブスターの方は手足をカクカクとさせて、動いている。その動く足でウサ吉の背中を撫でてやった。
 ぶぶぶぶぶ……ぶう……
 ウサ吉は丸くなり、ブルブルと震えだした。
 なんだ……
 面白いじゃないか……
「おい、ウサ吉……今度またこんな悪いことをしたら、ロブスターで攻めるからね」
 博貴がそう言うと、ロブスターはハサミをパチンパチンと開閉させていた。その間にウサ吉のヒゲが挟まり片方が落ちた。
 ……
 あ……
 半分取れた……
 すぐにロブスターを引っ込めたが既に遅く、ウサ吉のヒゲは片方が全く無くなってしまった。
 ……まあいいか……
 悪いことをしたらこういう目に合うと言うことが分かっただろうし……
 少しだけ可哀相な気がしたが、博貴はそう思うことにした。だが籠のなかで小さくなって震えていたウサ吉が、ヒゲを落とされたことで切れたのか、いきなりロブスターに飛びかかってきた。
 っていうか……これ……
 食材だった……
 はははと笑っているのもつかの間、いきなりロブスターの頭が落ちた。
「うわーーーっ!」
 ゴロンと転がった頭と、それに付いている小さな目が博貴を見ていた。ウサ吉は口元をカチカチ鳴らせて、戦闘態勢に入っている。
「……あー……頭が落ちたよ……」
 同時にロブスターの身体の動きが鈍くなり、暫くすると動かなくなった。死んでしまったのだ。
 ……
 生きているときに料理した方が美味しかったんだが……
 博貴は足下に転がったロブスターの頭を拾い、キッチンに戻ると、それを氷水に浸け、もう一つの箱から今度、タラバガニを取りだした。
 こちらも生きている。
 だがロブスターは腹の方に足が付いていたため、ウサ吉を苛めやすかったが、タラバガニは真横に足が付いているために上手く足でつつくことが出来ない。
 次もロブスターにしよう……
 博貴はそんなことを考えながらもタラバガニをウサ吉にうりうりと押しつけた。ウサ吉は迷惑そうな顔をしながら、ぶぶぶぶぶと怒り、足で蹴ってくる。その姿が意外に面白く、博貴は笑い転げながらもタラバガニをウサ吉に押しつけていた。
 だがタラバガニのハサミが今度、ウサ吉のもう片方あるヒゲを落としてしまった。
 あ……
 う~ん……
 まあ……
 バランスが良くなって良いか……
 ヒゲの両方無くなったウサ吉の顔を見ながら博貴はそんなことを考えていると、またウサ吉がタラバガニに飛びかかってきた。
「あっ……ウサ吉VSタラバガニ……」
 何となくそんな言葉が出たが、そんな悠長なことを言っていられなかった。ウサ吉はタラバガニの腕をもぎ取り、更に攻撃を仕掛けようとしたため、また博貴はタラバガニも引っ込めた。
 ……
 これも食材だった……
 床にバラバラに落ちた手足を拾いながら、博貴は笑いを堪えてそれらをキッチンに運び、ボウルに漬けた。
 意外に楽しめるじゃないか……ウサ吉~
 くすくす笑っているとウサ吉が恨めしそうな顔でこちらを見ている。その顔にはヒゲが無い。
 ぶはっ……
 ヒゲなどそれほど重要に思わなかった博貴だが、実際無くなってしまうと顔がなんだか変なのだ。
 ぶぶぶぶっぶ……
 ウサ吉は鳴きながら抗議の声を上げているようだ。その鳴らしている鼻に血が付いていた。
 あ~あ……
 怪我してるよ……
 ハサミが当たったのかなあ……
 クスリを塗っておかないとまた大地に怒られるねえ……
 博貴は手を洗い、救急箱から擦り傷用のオロナインを取り出すと、ウサ吉の元に戻り、首根っこを掴むと無理矢理鼻にオロナインを塗った。
 だがウサ吉はその強烈な匂いに暴れ回った。
 ……
 確かに臭いけど……
 これは擦り傷にも切り傷も、軽い怪我には何でも効くからねえ……
 なのに気に入らないのか?
 ハッキリ言って博貴は動物を飼ったことがないのだ。だからどんな風に扱って良いのか分からない。そうであるから苛めてやれと思ってオロナインを塗ったわけではないのだ。
 怪我をしているからクスリを塗ってやった。それだけだ。
 だがウサ吉は鼻を必死に前足で掻き、更に小さな舌で何度も舐め、目を白黒させた。
「クスリなんだからね……少しくらいしみるのは当たり前だろう……」
 人間に言い聞かせるように博貴は宥め、何度塗ってもウサ吉がすぐにクスリを手足で取るか、舐めてしまうため、今度はオロナインを塗った上に傷用テープを貼った。
 そこでようやくウサ吉は諦め、籠に丸くなった。
 それで良いんだよ……
 何故か博貴は得意な気分になった。

 大地が戻ってくると、やはり博貴に抱きつくことより、靴を脱ぎ捨てウサ吉の元へ走っていった。
 ……ああ……
 私は愛されていない……
 大地が走っていった後をゆるゆると追いかけながら博貴は溜息をついていた。
「ぎゃあああああっ!」
 いきなり大地の声が聞こえ、博貴は驚き、リビングに駆け込んだ。
「おま……お前……な……なんだよこれ……ひ、ヒゲは?それと……は……歯がどうして欠けてるんだ?……で……鼻……鼻にどうしてテープなんか貼ってるんだ?こんなもの毛の多いウサ吉に貼ったら取れないだろうっ!何……何があったらこんな事になるんだよっ!」
 ウサ吉を抱き上げ大地は茫然としながらそう言った。
「ん?ちょっとカニと対決をさせてねえ……それで怪我したから鼻にオロナインを塗ってあげたんだけど自分で舐めたりするから、テープを貼ったんだ。何か問題があるのかい?」
 当然の如く博貴が言うと、大地は今度、怒りだした。
「こんな敏感なところにオロナインなんか普通塗るか?ちょっとくらいの怪我なら放っておけば治るんだよっ!それより毛にくっついたテープをどうやって取るんだっ!おまけに……カニ対決って何だよっ!」
「……いや……ウサ吉が楽しそうだったからねえ……」
 はははと笑って、出来上がっている夕食を指さした。
 テーブルには既に料理されたタラバガニとロブスターが綺麗に並べられていた。
「……お前……何考えてるんだよっ!じゃあ……ひ……ヒゲも……」
 真っ赤だった顔が次に青くなる。そんな大地も可愛いなあ等と博貴は呑気に考えていた。
「でも、戦いに勝ったのはウサ吉だったよ。いやあ……やっぱり男だねえ……」
 感心しながらそう博貴が言うと、大地は更に怒鳴った。
「訳の分からないこと言うなよっ!か……可哀相に……」
 ピリピリとテープを剥がそうとした大地であったが、粘着部分に毛が張り付いているために取れない。どうするのかじっと見ていると、大地はハサミを持って、毛を含めて切り取った。
「あはははは。鼻の所ハゲた」
「お前が悪いんだろうっ!」
 こんどは涙目だ。
「だって大地……私はウサ吉にとって良いことをしたと本気で思っているんだよ。動物を飼ったことが無いから分からないんだって……」
 正直に博貴が言うと大地はウサ吉を撫でながら言った。
「……歯が欠けてるし……」
「齧歯類なんだからまた生えてくるだろう。欠けても死にやしないよ。逆にあちこち噛まれるよりいいじゃないか……最初から欠けてる方が……」
「そう言う知識だけあるんだな……お前……」
 ジロリと睨まれて博貴はまた笑った。
「なんだ……褒めて貰えると思ったんだけどねえ……。ウサ吉の面倒も一人で見られたし洗濯だってしたんだよ。それと夕食も豪華に作ってあとは大ちゃんを待つだけの状態でスタンバイしていたんだ……なのに、怒らないでくれないかい?」
 苦笑しながら博貴が言うと大地は溜息混じりに言った。
「やっぱりお前にウサ吉を任せるんじゃ無かった……」
 どうしてそんな風に大地に言われるのか博貴には全くわからなかった。

―完―
昨夜タイトル翌夜

可哀想なのはウサ吉。ああ今夜もエロがない。でも明日はエロ満開になってます。あわわ。だってジャックだもん。ぷっ! まあいか。しかし博貴……もう少し動物を飼う知識を入れた方がいいとおもうけどなあ……。あまりのことに大地も呆れてるよ……はは。友達とご飯を食べに行っていたら遅くなっちゃった~。ごめんなさい(汗)。

↑ PAGE TOP