Angel Sugar

50万ヒット記念企画 テーマ「一人でできるもん」 第5夜

昨夜タイトル翌夜

恭夜&ジャック

■ 一人でエッチ・バージョンアップ編―後編―

「なんだ……何処にいるんだ……」
 やはりモニターでも見ていたのか、ジャックは唸った。
 やっぱ見てやがったんだ……
 こんのーー嘘つき……っ!
 しかし、今恭夜のいる場所は物置だ。それも狭い場所であり、更に真っ暗だ。いくらジャックであってもこんな所にまでカメラを仕掛けているとは思わない。
「……別に……何処でも良いだろ。だってあんた声が聞こえるだけで良いっていっただろ」
「ハニーは本当に恥ずかしがり屋なんだね。まあ、そういうキョウが可愛いんだが……」
 妙に嬉しそうな声でジャックは言った。見えなくても一応恭夜が協力的な態度を示したことで機嫌が良いのだろう。
「じゃあ……早く聞かせてくれ……キョウの喘ぎ」
 ジャックは更にそう言い、耳をそばだてているような雰囲気が漂っていた。だがいきなりそんなことを言われても、すぐに行為が出来るわけなど無いのだ。
「い……いきなり言うなっ!お……俺にだって……その……ムードとか……色々……色々あるんだよっ!」
 狭い中で叫ぶと、自分の耳に普段より大きな声が入る。それすら、恥ずかしさを助長するのだ。
 心の何処かで、止めた方が良いのではないか……という気持があったが、ジャックへの同情心の方が少し上回っていた。
 多分、他に浮気などされたくないと言う気持も大きいのだろう。
 ジャックは本当に他の男や女の影がちらつかない男だった。もちろんあの男に淡い恋心を抱いて近づいたとしても、外見と中身のギャップに驚くことが殆どらしい。が、人間の好みは様々だ。
 世の中は広い。ジャックが良いという男女が存在する可能性だってあるのだ。
 あの強烈な個性を脇によけ、ジャックの一途さだけをとってみれば、これほど理想的な相手はいないのではないかと恭夜は思う。
 こんな恭夜でも心の底に確かに不安がある。
 可愛くなれない、振る舞えない自分が何処まで行ってもただの男であることに不満があるのだ。だからといって女のように振る舞うことも、可愛げな男性を装うことも出来ない。
 いつか飽きられるかも……
 そんな不安が、ジャックの行動を押しとどめられない理由かもしれないと最近は考えるようになった。
 ジャックが言うことに対し、嫌だとはっきり言えずに、どんどん流されていくのも、その辺りに理由があるのだろう。しかし元々流されやすい性格なのかもしれないと思うようにもなった。
 俺って……流されやすいのかなあ……
 言うなれば、ジャックの押しは鉄砲水のようなもので、川辺でぽつんと転がっている恭夜のような小さな石ころなど、大海まで簡単に流されて行くに違いない。
 いや……ハリケーンかも……
 あいつを中心にして、みんなぐるぐる振り回されるし……
 ジャックの知り合いは殆ど外人だから……
 みんな手を振り上げて「オーノー!」なんて言いながらまわってんだよ。
 ぷっ……
 なんか笑えるぞ……
「何を一人で笑ってるんだ。そんな気持ちの悪い笑い方をされてもこっちはちっとも感じやしないぞ。キョウは自慰をするとき、漫才でも思い出してやるのか?それは変態だぞ」
 いきなり呆れたようなジャックの声が耳に入り、恭夜は我に返った。
「ま……漫才なんか想像してんじゃねえよっ!……何処の世界に漫才を想像して一人エッチするやつがいるんだよ……」
 ブツブツと恭夜は言いながら、パジャマのズボンを膝まで下ろし、体育座りのような格好で、ひんやりとする床にお尻をつけていた。
 ……
 クッションでも持って入ったら良かった……
 でも、今更外に出るのもなあ……
「キョウ……何時まで焦らすんだ……」
 だんだん機嫌がまた傾きだしたジャックが言った。
「……え、あ……うん……そうなんだけど……」
 現実をまだ引きずっている恭夜には、なかなか手を動かすという行動に移せないでいたのだ。
 もじもじしてる場合じゃないよな……
 これじゃあ俺も何時まで経っても寝られないし……
 仕方ないんだよ……
 ようやく手を自分の股の所まで持ってくると、恭夜はそろそろと自分のモノを薄い下着の上から撫で上げた。
 ……なんか……
 その気になれないなあ……
 うう……
「キョウ……いつも私がして上げていることを思い出せばいいんだ……難しい事じゃないだろう……」
 ジャックはことのほか優しい声でそう言った。その声だけで恭夜の体温は上がった。
 ……変なの……
 こいつの口調が変わっただけで俺……
 なんか気分が……
「……ジャック……なんかもっと言ってくれよ……」
 恭夜は小さな声でそう言うと、ジャックはクスクスと笑った。
「なんだ……キョウは一人で出来ないのか?仕方ないな……」
 言葉とは違いジャックの声は酷く喜んでいる。
「……だってな……」
「指で胸をそっと触ってごらん……。その次は指先で私がいつもして上げるように力を込めて縁を描くように回転させてみるといい……」 
 囁くようなその声は、まるで悪魔のささやきそのものだった。それが分かるように恭夜の反抗する気持はここには無い。
 ジャックの言われるままに手を胸元の伸ばし、自分の胸元にある尖りを撫でた。
「……あ……っ……」
 ずくっという身体の疼きが身体を走り、恭夜は身を竦めた。
「ゆっくり……廻して……優しく……壊れ物を扱うように……撫で上げて……ほら……キョウ……一人でも気持ちよくなれるだろう?」
「……俺……っ……あ……」
 自分で何度も撫で上げた所為で、突起部分が固くなってきたのが恭夜には分かった。息が少しずつ上がり、肩に置いている携帯を落としそうになった。
「胸元全体を揉み上げて、想像力を使うんだよ……キョウ……。私は側にいる……キョウの胸元を愛撫して……どんなところも舌で舐め上げてあげるね?その感触は忘れていないはずだ。思い出してごらん……気持ちよくなれる……」
 ジャックの声がまるで本当に身元で囁かれているように恭夜には聞こえ、自分で触れているにも関わらず、ジャックに触れられているような気分になってきた。
「あ……だ……駄目だ……」
 身体を小刻みに振るわせ、恭夜は壁に背を張り付けたまま顎が上がった。
「駄目?そんなことは無いさ……足をもっと開いて……楽になれる……」
 恭夜は言われるままに両足を開いた状態で喘いだ。
「……あ……」
 急に下半身に力が入り、自分のモノが狭い下着の中で張りつめていることに恭夜は気が付いた。その所為で思わず胸元を彷徨わせていた手を、ふくらみを持ち始めているところに伸ばし、邪魔になっている下着を一気に下ろした。
「……ん……」
 ギュッと自分の両手で、モノを包むように握りしめ、息を細く長く吐き出した。
「……はあ……っ……」
 俺……
 まねごとだけするつもりだったのに……
 フッと一瞬だけ戻った理性がそんなことを考えている。だが既に熱くなってきた身体は、ここで止めることを拒んでいた。
「キョウ……まだ早いよ……ほら……周囲をもっと揉んであげないと……可哀想だろう?」
 含み笑いを込めてジャックは言った。
 まだ早い……
 そうかな……
 そうなのかな?
 あれ……
 なんか変だよな……
「……早い……?」
 喘ぎを上げている口元から恭夜はようやくそう言った。
「そうだ……早い……。先に周りをゆっくり指先で揉んであげるんだよ。優しく……時々強く揉んで上げると良い。二つある君の大事なものを一緒に持って擦り上げてもいいね……気持ちいいぞ」
 恭夜の手はジャックの言いなりだった。
 片手で二つを握りしめ、手の中で転がすと、身体の芯を這うような快感が感じられた。
「……あ……ああっ……俺……っ……」
 背を丸め、両足を広げた状態で恭夜は声を何度も上げた。
 いつの間にか膝に落ちた携帯はまだ通話状態を保っている。
「も……駄目だよ……ジャック……」
 丸まった背で恭夜は膝にある携帯にそう言った。
「可愛いキョウ……それで後ろはほったらかしかい?君は後ろが気持ちよくないとイけないだろう?」
 ……後ろって……
 俺……
 どうなってるんだ?
 変だ……
 なんか……もう……
 何でも出来そうな気分になってる……
「……あ……でも……俺……」
 半分涙目でそう恭夜は言った。
「一番敏感な部分だからね。優しく触れてごらん」
「……俺……」
 嫌々するように顔を左右に振り、恭夜は言ったが、既に片手は後ろに廻っていた。どうしても決定的な刺激が欲しいのだ。
 もちろん、頭がその考えにとりつかれ、身体の方も望んでいた。
「キョウ……駄目だ。ちゃんと指に唾液をつけてあげないと……君が苦しいことになるんだから……」
 心配するようなジャックの声が酷く甘く聞こえた。
 あ……
 そうだった……
 指……
 乾いてるから……
 痛いよな……
 恭夜はゆるゆると後ろに廻していた手を口元に持ってくると、今度は指先を何度も口内で舐めた。そうして指が湿ると、もう一度手を後ろに回し、ジャックが言うように窄んだ部分をそっと指先で撫でた。
「……ん……ん……あ……なんか……俺……変だ……」
 何かおかしいのだが、恭夜には分からないのだ。ただひたすらジャックの言うがままに行動している。
 止められない……
 俺……
 自分のモノを片手で擦り上げると同時に、もう片方の手で蕾を何度も弄った。それだけでは飽き足らなくなった恭夜は最後には指を無理矢理奥に捻り込み、何度も内部を擦り上げた。
 どちらもぬめりを帯びてくる状態に、恭夜は余計に煽られ、散々自分で煽り立てた。
 今までで一番感じている一人エッチだ。
「あ……っ……あ……あ……も……俺……っ!」
 自分で擦り上げている淫らな音が耳に入り、恭夜は閉じる手を失っていた。狭い空間で普段より大きく聞こえるのが、余計に自分の快感を煽るだけのものでしかなかった。
「キョウ……可愛いキョウ……」
「あ……も……駄目だっ……っ……!」
 身体も限界に来ていた恭夜はそこで一気に自分の欲望を解放した。
「……はあ……っ……あ……」
 恭夜は暫く息を整えるために丸めていた背を壁にもたれさせ、目を閉じた。
「はあ……もう……俺……何やってるんだよ……」
 頭を掻きながら恭夜は目を開け、膝に置いたままだった携帯を取り、電話口に出た。
「……や……やっただろ……お前も楽になれたな?……ったくもう……」
 異常に羞恥を感じていた恭夜は自分の事を隠すように言った。
 だが……
「おい、犯人から入電だ。そういうエッチな電話をそろそろやめて仕事をしてくれないか?ああ、エッチな画像も見るな。頼むよジャック……」
 この声……って……
 テイラー?
「ん、そうか。廻してくれ。じゃあなキョウ。帰ったら沢山愛して上げるよ。暗視カメラの赤外線で見るのもなかなかだな。堪能させて貰った」
 ジャックは晴れやかな声で残酷なことをさらりと言うとさっさと携帯を切った。
 暗視カメラ?
 赤外線?
 こ……
 こんな所にも設置済み?
 しかも……
 やっぱり現場からかけてきてた?
 その上……
 観客沢山で良かったね。
 違う……
 ちーがーうーーーーー!
 あい……
 あいつっ……
 だっ……
 騙されたーーーーー!!
 恭夜は茹で蛸のように顔を赤らめ、衣服を整えると即行バスルームに走っていった。
 涙も出ない状況に、恭夜はここで記憶喪失になってしまいたかった。

―完―
昨夜タイトル翌夜

お馬鹿さんの恭夜……。ジャックが物置に仕掛けていないわけないでしょ~と言うことで、さらに笑いが……いや……悲しみが……。恭夜ってどこまでいってもジャックの手のひらで可愛がられていますねえ……。愛があっても、このジャックに付き合うのは大変だね。たぶん、どれだけの人がいても、ジャックを好きになるのは恭夜だけだと思うんだけど……あはははは。面倒見てるのか見られているのかわからない関係でした。う~ん複雑なカップルだ……。エロに関して苦情はいやんです。

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