Angel Sugar

10万ヒット記念企画 テーマ「H」 第1夜

昨夜タイトル翌夜

リーチ&ユキ

 名執雪久「H」について考える。

 この間の旅行で、もう穴があったら入りたい程の目に合わされた。セックスに関しては別に問題はない。ただ、あのように人様を煽るような真似はやはり、今後は止めた方がいいのだ。自分が恥ずかしいのもある。それよりも、相手のカップルに失礼だという気持ちがあるのだ。そんな事をリーチに言って聞くわけなど無い。本人とっても楽しいのだから罪悪感などこれっぽっちも無いのだ。
 確かに流されやすい自分を名執は自覚していた。だが理性レベルでの自覚と、本能的な身体の問題は別物なのだ。そこが痛いところであり、困っているところであった。
 はあ……もう……
 名執は溜息をついて部屋に置かれた時計で時間を確認した。もうすぐ十時である。そろそろ問題児がやってくるのだ。
 どうしましょうね……
 名執はまた溜息を付いた。
 要するに、名執はリーチに少々反省して貰いたいのであった。だが言って聞かない相手に何をどう話して説得して良いのか名執には分からない。散々言い聞かせたとしても、リーチははなからそんな事を聞いては居ないのだ。なにより、話が佳境に入るとすぐにリーチはこちらを抱き込み身体ごと名執を懐柔するのだから始末に負えない。名執自身もそうなるともう自分ではどうにもならないのだ。
 あ……
 名執はそこで思いついた。
 言って聞かない相手なら、態度で示せばいいのではないか?と。
 そうなると、リーチは拗ねるか無視するかどちらかで名執を苛めに入るのだが、それすら無視すれば良いのだ。それはかなり辛い試練になりそうな気がしたのだが、本当に名執はこの間のことを後悔し、そして怒っていた。
 自分だけが苦しいわけではない。きっとリーチもそのことで、どれだけ名執が腹を立てているか気付く筈だった。
 仕方ないです……
 何度も付いた溜息をここでもう一度名執が付くとリーチが訪れたのを示すベルが鳴らされた。
「ただいま~」
 リーチは自分のプライベート時に名執のうちに来るといつもそう言う。
「お帰りなさい」
 そんなリーチに名執は笑みを浮かべてスリッパを差し出した。
「これ土産。以前解決した事件での被害者から貰ったんだ。結構良い物だと思うから捜査一課に置いてこずに持って帰ってきた」
 言ってリーチはワインのボトルをこちらに渡してくる。そのワインには可愛らしいリボンがくくりつけられ、花をあしらったように巻かれていた。
「良かったですね」
「まあな……食後に飲もうぜ」
 名執によって差し出されたスリッパを履いてリーチは言った。
「そうしましょう」
「今日の夕飯は何だろう……」
 言ってリーチはスリッパをぺたぺた鳴らしながらキッチンに向かう。それはいつもの光景であった。
「今日は大した物を作っていないのですが……」
 名執は言いながら、先程からリーチの為に暖めていた鯖の煮付けを皿に移し替えた。
「何でもいいよ。ビールさえ飲めたらいい」
 冷蔵庫を開けて、缶ビールを出したリーチはいそいそと自分の所定の椅子に座った。
「……なんだか最近、色々事件込み合ってて頭がごちゃごちゃだよ。まあその辺はトシが全部覚えていて整理してくれるから良いんだけどな。やっぱり物事は一つ片づけてから次に移る方が効率的だと思うんだけどなあ……なんでこう捜査本部の掛け持ちが増えていくんだろ……参るよ」
 言い終わると、缶ビールのプルトップを開け、ごくごくとリーチは飲むと「旨い~」と嬉しそうに言ってニコリと笑みを向けてくる。そんなリーチに名執は胸がチクリと痛みながら、夕食の献立を机に並べた。
「……なんだ……なんかあった?」
 気配に敏感なリーチがそう言って不思議そうな目を名執に向けた。
「え?いえ、別に……」
 ドキドキしながら名執はそう言った。だがリーチの視線はこちらに固定されたまま動かなかった。
「そんなじろじろ見ないでください……」
 苦笑しながら名執が言うと、リーチはもう一度ビールを飲んだ。だがこちらを見る黒い瞳は逸らされることは無かった。
「言え」
 いきなりリーチはそう言い、缶ビールをテーブルに置いた。
「……食事を終えてからと思ったのですが……リーチにお話があるんです」
 自分も椅子に腰を掛けて名執は言った。
「んだよ?」
「この間の旅行のことですが……」
 リーチの方をチラチラ見ながら名執は言った。
「あーー?お前まだあのことうじうじ思ってんのか?信じられねえ……お前は公安の佐波かっての。あのな、そういうのはしつこいとか、根に持ち野郎とか、暗いとか言うんだ。いい加減にしろよ……」
 ムッとした顔でリーチは言った。
「公安の佐波さんという方は知りませんが……。そうじゃなくて……ああいうことはこれからは謹んで下さい。リーチが分かったと言って下されればそれで良い事じゃないですか……」
 こちらも負けずに名執はそう言った。ここで引き下がるか、言い淀むともうリーチの思うツボなのだ。
「……はいはい。分かった。二度と他人を煽るような真似は致しません。で、これで良いんだろう?」
 とリーチは口では言っているが、全くそんな事など思ってはいない口調であることが名執には分かった。
「リーチ……それ、本気で言っていないでしょう……」
 名執がそう言うと、ちらりとこちらを見て溜息を付いた。
 やはり反省の「は」の字もしていない。
「私があの時どれだけ恥ずかしかったか分かりますか?何より相手の方達にも申し訳なかったと本当に思うんですよ。それなのに……」
「お前だって悦んでた」
 リーチはジロリとこちらを見つめてそう言った。
「そ、それは否定しません。でも……あれは……」
 もごもごと名執が言葉を濁していると、またリーチは言った。
「あっそ、あ~そっ。要するにああいうのは嫌だっていうんだよな?」
 そう言ったリーチに名執は頷いた。
「……ふうん。良いけど別に……分かったよ……。もうしないよ」
 やや声のトーンを落としてリーチは言った。今度はどうも少々は反省しているような口調であった。
 これでも少しは進展があったと言うことですよね。
 これ以上は言っては駄目ですね。
 名執は自分にそう言い聞かせ「分かってくださったらそれでいいんです」と言って笑顔をリーチに向けた。
 そんな話し合いをした所為か、ワインを開ける事をすっかり忘れた。
 
 ……?
 なんだか変だと名執が気付いたのは、夕食を終えてからだった。いつもはベタベタとしてくるリーチが一向に動かないのだ。
 怒っているのかも……
 あんな風に言ってしまったし……
 名執はやや後悔しながらも、あれはあれで良かったのだと思うことにした。
 そうしてようやく寝室で二人仲良くベットに横になったのだが、リーチは既に寝る体勢に入っていた。
 ……ええっ??
 まさか……
 リーチ何もする気無し?
 身体を起こしてリーチの様子を窺うと、リーチはこちらに背を向け、目を閉じていた。
 本日の仕事で疲れたのだろうか?
 だからもう眠るつもり?
 そんな事を思いながら名執は起こした身体を再度ベットに沈め、自分も毛布にくるまった。こちらから見えるリーチの背中が名執を拒絶しているように、ふと思う。そんな風に思ったことを振り払い、名執も目を閉じた。
 翌日、益々リーチの態度はおかしくなった。いや、言動などはいつも通りなのだが、ピタリと名執に触れることを止めたのだ。
 これは……
 もしかして……
 本気で怒っているのだろうか?
 等と名執は考えてみるのだが、それを仄めかすような態度や言動はない。ただ名執に触れて来ないだけだ。何よりいつも出勤するときはキスをねだってくるリーチなのだが、それすら無く、ただ「行ってきます。先生」といつもの言葉を最後にリーチは名執のうちを後にした。
 怒ってる……
 本気で怒ってる……
 リーチを見送った後、名執は動揺しながらそう思った。
 だが……
 リーチがその気なら私だって……
 名執もこの事に付いて譲る気は無かったのだ。
 いいですよ……
 好きに怒っていたら良いんです。
 私だって怒ってるんですから……。
 ここで名執が許すと、どうせリーチの事であるからまた、人様をからかうような事をするだろう。それに毎度流される訳にはいかないのだ。名執自身恥ずかしいのもある。それに他人を巻き込んで楽しむと言うことは、やはり許せないことだからだ。
 我慢……我慢……
 私も普通に接すればいいんです……
 名執は心にそう誓うと、自分も病院へ出勤する準備に取りかかった。


 
 数日ゾッとするような日々が続いた。リーチとは会話はある。普通に接している。食事の時も普通にくだらないことを言いながら進行する。
 だがリーチは名執には触れてこなかった。寂しい……という目を名執が向けてもリーチは気付かない振りをするのだ。そんなリーチの態度を何とか名執は耐えたのだが、触れ合えない日々が四日目にさしかかる頃、リーチから電話が入った。
 丁度その時名執は仕事から帰り、買ってきた食材を冷蔵庫に入れようとキッチンに立っていた。
「ごめん……俺今日行けないわ……」
 申し訳なさそうにリーチは言った。
「お仕事忙しいのでしょう?仕方ありませんよ。また明日にでもいらしてください」
「仕事……忙しいけどな……。行こうと思えば行けるんだ。んだけど……おまえんちに行っても最近楽しくねえもん。だから今日は久しぶりにうちに帰ってだらだらするよ」
 とんでもない台詞をリーチはまるで日常会話のごとく言った。
「え……」
「お前が言ってたこと俺守れそうに無いし……でもそんな俺が嫌なんだろう?俺お前に嫌われるのだけは避けたいからさ」
 溜息を電話向こうでついているのが名執には分かった。
「リーチ……何をおっしゃってるんですか?守れそうにないって……一体なんです?」
 なにか約束をしただろうか?
 名執には見当すら付かなかった。
「お前が言ったんだろ……、やるのは嫌だってさあ~。必死になって俺にやるなって言ってただろお前……。何ぼけてるんだよ。まあいいけど……。んじゃあ、俺これからまだ仕事だから、気が向いたらまた行くよ」
「あ、リーチ……!」
 呼び止めようとしたときにはもう電話は切られていた。
 名執は、他のカップルを分かっていて煽る事を止めて欲しいと言っただけなのだ。それがどうしてやるのが嫌に結びつくのだ。
 リーチは……
 本当に何を名執があの時言いたかったのか全て承知の上で、あんな風に言ったのだ。それが分かるために名執は余計に腹が立ってきた。
 貴方って……
 貴方って……
 どうしてこう私を苛めるんですっ!
 腹も立っているのだが同時に酷く寂しさも名執は感じた。
 気が向いたら又行くよ……
 そんな言葉など聞きたくなかった。
 リーチ……
 私が言ったこと間違ってますか?
 お願いしたこと間違ってます?
 間違ってませんよね。
 名執はハラハラと涙が落ちた。どうしようもない寂寥感だけが心を占める。自分から決心したことであるのに、ぐらぐらとその決意は頼りない。
 折角……
 リーチの為に今日は色々作ろうと思っていたのに……
 買ってきた食材だけが、もうその理由も無くなった今、寂しげにテーブルに置かれていた。そしてついこの間リーチが持ってきてくれたワインがそこに一緒に並んでいる。それら全てが虚しく名執には見えた。
 ……
 もう今日は何をする気にもなれない……
 上着を脱いで名執はパジャマに着替えると寝室に入り、ベットに倒れ込んだ。
 リーチの馬鹿っ!
 馬鹿馬鹿馬鹿っ!
 毛布にくるまり名執は心の中でそう繰り返し言った。言いながらも涙が零れる。
 仕事で会えないときは仕方ないと諦められる。だが、こんな風に毎日会っていたにも関わらず、触れてもこない、キスもしてくれないリーチにどれだけ歯がみしたか分からないほどだ。
 触れられていないと安心できない……
 キスされないと愛されていないと思ってしまう。
 何度耳元で愛していると囁かれても、抱き合うことが無いと身体がリーチを求めて寂しがるのだ。身体だけではない。満たされない心がリーチを求めるのだ。
 そんな名執の事をリーチは良く理解している筈が、どうしてこんな事をするのだろう。それが腹立たしく、そして寂しい。
 リーチはいつだって……私に触れてくれるのに……
 そっと自分の手で胸元を触り、名執はリーチを思った。
 こんな風に……
 触れて……
 そして……
 ここも……
 触れて……
 口に含んで……
 舐めて……
 暫く触れられていない身体は、リーチのことを想像するだけでも簡単に熱くなった。
 手を自ら前に回し、自分のモノを掴んで名執は小さく呻いた。
 ここ……
 ああ……
 リーチ……
 もっと触って……
 そこ以外も……
 ああ……
 そこ……
 前に回した手を今度は後ろに回し、名執は自分で自分を慰めた。そうでもしないと、余りにも身体がリーチを求め、最後には自分で制御出来なくなるからだ。
 イイ……
 リーチ……あ……そこが……
 だめ……
 も……
「お~い。何やってる?」
「きゃーーーーーーーっ!!」
 いきなりリーチの声が聞こえたものであるから名執は叫び声を上げた。その口をリーチが手で塞ぐ。
「……んーーーー!んーーーーー!」
 なっ……
 何故リーチがここにいるんです?
 塞がれた口はそう言っていたが、声にはならなかった。
「……そう叫ぶなよ」
 ようやく手を離され、名執は毛布を更に引き寄せると、顔を真っ赤にして言った。
「なっ……どうしてっ!リーチ……っ!こ、こ、今晩は来られないって言ってましたよね?ねえっ!どうしてっ!どうしてここに居るんですか?」
 もう全身茹で蛸のようになりながら名執は言った。
 見られた……
 見られた……
 見られたーーーーーーー!!
 その事実で名執の頭の中はパニックだった。
「……つうか、元々帰ってくる気だったし……ちょっと電話でからかってみただけだったんだけど……お前っおもしれえ」
 ニヤニヤとした笑みを口元に浮かべながらリーチは言った。
「かっ……からかうって……からかうってなんです?」
「そろそろお前泣くんじゃないかな~なんて思ってさあ。で、泣いてると思ったら……」
 チラリとリーチはこちらに視線を向けた。
「……」
「自分で慰めちゃってるし~」
 余計に顔が赤くなるような事をリーチはさらりと名執に言った。名執はもう、口から言葉が発せ無いほどショックを受けていた。 
 見られた……
 嘘っ……
 嘘ーーーーー!
 名執はずらしていたパジャマのズボンを速攻に引き上げ、引き寄せた毛布を頭からかぶるとそのまま丸くなり、両手で顔を隠した。はだけた前を整える気持ちはどこかに吹っ飛んでいる。とにかく、恥ずかしく、今リーチにどんな顔をして見せて良いのか分からないのだ。
「なあなあ……教えてくれよ……俺のこと思いながら自分で慰めてたんだよなあ……」
 リーチは名執が頭からすっぽりとかぶっている毛布を剥ぐと、横向きに丸くなっている名執に覆い被さった。
「なあって……」
 耳元でそう囁くリーチの声は、名執の火のついた身体には残酷だった。
「ほ、放って置いてください……も……リーチっ……リーチなんて……」
「え?こんなになってるの放って置いて良いのか?」
 言ってリーチは名執のモノを掴み、にぎにぎと手の中で弄んだ。
「あっ……あっ……や……っ……」
 ビクッと身体が跳ねたと思った瞬間に、名執は自分の欲望を吐き出した。
「簡単にイったな。もしかしてユキちゃんものすごく欲求不満?」 
「…………っ!!!!」
 恥ずかしくて名執は両手で顔を隠したまま声も出ない。
「馬鹿だな……お前……そう言うときは俺に言えよ……」
 言いながらリーチは名執が隠したい部分に指を入れ二本の指を押し広げるように内部で動かした。
「やっ……」
「お前が弄っていた所為でいつもより柔らかいぞ……」
 ぐちゅっという音を響かせながらリーチは楽しそうに自分の行為を続けた。
「ああっ……やっ……リーチっ!」
「ばたつくなよ……気持ちよくしてやろうっ思ってるんだからな……自分でするより俺にされた方が良いだろう?ん?」
 名執の耳元でリーチは再度そう囁いた。
「あっ……ああ……」
 顔を覆っていた両手を、いつの間にかリーチに絡め、名執は喘いだ。どんどん自分の身体の体温が恥ずかしさとは違う温度で上昇するのが分かる。とにかく耳の裏側や耳たぶを舐めたり噛んだりするリーチの行為が気持ちいいのだ。
 久しぶりなのも快感に拍車をかけているのだろう。
「ああ……リーチ……」
「すぐに入れられそうだな……でもこっちも触ってやらないとなア……」
 そう言って自分のモノと名執のモノを一緒に掴んで擦りあわせた。
「あっ……ん……っ……」
「俺のとユキのが一緒になってる。ユキも感じてるんだろう?だってなあ、ほら、ビクビクとふくらんできたぞ……」
「や……あ……っ……」
 快感に目を細めて名執は言った。
「感じてる……ユキ……気持ちいいだろ?どうなんだ?お前の……また勃ってきたぜ、ここは正直だ……ほら……」
 グリグリと二つを手で弄びながらリーチは言った。
「いやっ……」
「感じてるだろ?気持ちいいだろ?」
「……ん……んん……」
 眉根をしかめて名執は言った。確かに感じている。
「そう言う顔……そそられるぜ……」
 リーチはそう言って口内に舌を侵入させてきた。舌は丁寧に口内を愛撫し、こちらの舌も翻弄する。
「私……っ……あっ……」
「ユキの顔も身体絶品だなあ……」
「や……そんな風に言わないで……は、恥ずかしい……」
 震える身体を更にリーチにすり寄せて名執は言った。
「俺さあ……エッチなんだよ……」
 知ってます……
 そんな事……
 今更言われなくても……
「あっ……も……早く……入れて……」
 リーチを引き寄せて名執は言った。自分の蕾の襞がビクビクと蠢いているのが、名執自身にも分かるのだ。リーチの熱い鉄を身体の奥に感じたい。狭い中を貫いて滅茶苦茶にして欲しいのだ。
「入れてやるよ……」
 そう言ってリーチは糸を引いているモノを掴んで既に緩くなっている中に突き入れた。
「あーーっ……」
 ぎゅうっとした圧迫感が下半身にかかり名執は夢心地になった。その上リーチが腰を揺らすと淫猥な音と、下半身からの刺激で喘ぐ声も大きくなる。
「気持ちいいだろ?」
「あっ……あっ……き……気持ち……良い……」
 目の奥がじんとして、涙が滲む。口元は荒く息を吐き出しているため閉じることが出来ない。リーチが動くたびに身体を襲う刺激は、麻薬のようであった。
「俺無しでいられないの分かってるのかなあ……」
 ククッと口元で笑ったリーチの声が聞こえ名執は、今度は羞恥で赤くなりそうだった。
「分かってる……あっ……ああっ……いい……」
 ギュッとリーチを掴む手に力を込めて名執は喘ぐ口からそう言った。
 知っている……
 分かっている……
 貴方が居ないと私は駄目になってしまう……
「分かってるんだったら、あんな事もう言うなよ……」
 そう言って腰を更にリーチは振った。
「あっ……ああっ……も……もっと……もっと……」
 ガクガクと頭を揺らしながら名執は言った。自分でも信じられないくらいこういうときリーチに対して求めてしまうのだ。終わってから思い出し、恥ずかしさに顔を暫く上げられなくなる位だ。分かっているのにこうやって繋がってしまうと、もうどうにもならない。
「俺の言うこと聞けよ……」
 そう言ってリーチはズルリと自分のモノを抜いた。急に圧迫感が無くなった名執の下半身はビクビクと震えた。
「あっ……止めないで……」
 離れたリーチに腕を廻して名執は懇願した。このまま放り出されるかもしれない……など考えるだけで恐怖だった。
「欲しい?だったらもう言うな。分かった?俺も少しは反省したし、お前が自分で自分を慰めるほど、嫌だと思った事だから今度からあんな事しないよ……」
 そう言って意地悪く口元で笑うリーチに「そんなふうに絶対思ってなんかないーー」と思いながらも名執は頷いた。
「これ以上苛めないで……」
 自分の負けなのだ。
 所詮リーチにはかなわない。
「ユキ……愛してるよ……」
 リーチはそう言ってキスを繰り返しながら、名執の双丘の間に指を滑り込ませて刺激を与え続けた。
「リーチ……お願い……」
「そのまま乗って……」
 名執は躊躇する事も無くそそり立ったリーチのモノを自分の中に銜え込んだ。
「あああっ……」
 両膝を折り曲げて名執は奥を突くリーチの切っ先を味わった。するとリーチの腰が突き上げられた。
「ひっ……あっ……ゆ……リーチ……っ」
 必死に揺れる身体を安定させようと名執は前屈みにリーチの肩を掴むのだが、リーチは名執の腰を掴んで身体をベットと垂直にさせた。
「ほらっ……お前はきつい刺激が好きだろ?」
「……あっ……ひっ……」
「ここも可愛がってやらないとな……」
 そう言ってリーチはギュウッと名執のモノを握りしめた。次に上下に擦りあげる。
「あっ……ひいいっ……」 
 身体に骨が無くなったかのようにグニャグニャになった気分に名執はなってきた。頭が麻痺し、あるのは快感を感じる本能だけだった。
「ユキ……愛してるよ……お前は?」
「私も……愛している……っ」
 名執とリーチはその晩、今までを埋めるようなセックスに没頭した。

 翌日、名執が目を覚ますと、満足げに眠るリーチの顔が側にあった。
 所詮私には……
 この人には勝てないんですよね……
 その性格には似合わない幼い顔を見て名執は小さな溜息を付いた。

 名執雪久「H」について考える。
 所詮、愛しすぎた方が負けなのだと……。

―完―
昨夜タイトル翌夜

10夜連続で皆様おつき合いしてくださりありがとうございました。連載を毎日するより、キャラがころころ変わるというのは結構大変でした。一夜を飾ったリーチチームですが……。いきなり濃ゆいエロで始まってしまいました。う~ん。こんなんでいいのか?記念なのになんだかやって終わりで……ははは。まあこれが彼らと言えば彼らというか……それぞれキャラに「H」について深く考えてもらおうと思っています。さてどうなる事やら(結構無責任)!

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