10万ヒット記念企画 テーマ「H」 第2夜
トシ&幾浦
トシ「H」について考える。
どうも自分に幾浦以外とのセックス経験が無いために何が普通なのか、どうしたら良いのかトシには良く分からない。普通の基準をリーチに求めて聞いたところで、怪しげな事ばかり教えてくれるので最後まで聞くことが出来ないのだ。
もう本人待ってましたとばかり教えてくれるのは良いのだが、こちらは一つ一つの言葉すら分からない。そのうち気分が悪くなり、もう聞くことが出来なくなるのだ。
はあ……
なんだかなあ……
トシはウジウジとそんなことを悩んでいた。
要するに今トシが悩んでいるのは、幾浦と抱き合っている時の話しだった。トシは自分が全部幾浦に任せていることに悩んでいるのだ。
マグロっていうんだよなあ~
リーチが教えてくれたことを思い出しながらトシは、床に寝そべっているアフガンハウンドのアルの鼻先を撫でた。アルは目を閉じながらも豊かな毛の生えた尻尾を左右に振っている。
マグロって駄目なんだよな……
アルの鼻先を撫でるのを止め、トシもアルと同じように床に寝ころんだ。
でもさあ……
だからって何したらいいんだよ……
そんなの誰も教えてくれないし……
リーチに聞いても訳が分からないんだもん……
まあ……リーチは攻めだし……
攻めに受けのこと聞いたってどうしようもないし……
はあ~と深いため息を付いてトシは目を閉じた。
幾浦とのセックスは、はっきり言って衝撃的だった。元々性行為に対して余り良い感情を持っていなかった。その理由は、性的な事に興味を持つ年齢の頃、リーチが来るもの拒まず、誰とでも寝ていたのを見ていた為、なんとなく不潔なものというイメージを持ってしまったのだ。もちろん、リーチがどうしてそんな事をしていたかは理由を知っている。だからトシも止められなかった。
あれは自分達が特殊であるために起こった葛藤だった。それを何処に発散したのかが、リーチとトシの違いであった。リーチは外へ、トシは内へ向かった。お互い何に対し、どんな風に悩んだかは分かっていた。そうであるから無茶なことばかりしていたリーチを責めることは同じ立場であるトシには出来なかった。
中にはあからさまにリーチに迫る女性もいた。向こうも誰だっていいと思っているのがありありと分かる相手とリーチは一晩過ごす事が多かった。逆に後腐れがありそうな相手とはリーチは寝ることはしなかった。
多分、どちらかに相手が出来てしまうと、また問題が起こるとあの時のリーチは思ったのだろう。だから遊びでしか相手とは寝なかった。その気持ちは嬉しいのだが、それ以来セックスに対してトシは良い感情が無くなってしまったのだ。
トシにとってセックスは奇麗なものと想像していた。それが現実に自分がその行為を目の当たりにしたときに、何て動物的で醜悪なものなのだろうと感じた。
それが幾浦に会って変わったのだ。
変だよなあ……
あんな嫌だったのに……
恭眞に抱きしめられるともう僕どうにかなっちゃいそうになる……
温かくて……
ホッと安心できて……
抱き合ってるときはもう……
なんていうか……
その……
えへへへへ……
なあんてトシがニマニマと笑っていると、アルが「クウン……」と不思議そうな声で鳴いた。
「あ、ごめん……気味悪かった?」
あははと笑ってトシは身体を起こした。するとアルは「ワンッ」と鳴く。そうだと言いたいのだろう。
「……僕はねどうしたらアルのご主人様に喜んで貰えるかどうかって考えてるんだ。こういうことはとっても大事だろ?アルだって良い子にしてるから恭眞に可愛がって貰えるんだし……」
どうしたら喜んで貰えるんだろうなあ……
そうだ~
雪久さんに聞こう~!
トシはそう思い立ち、早速名執の携帯に電話を掛けた。すると夜遅かったにも関わらずすぐに名執は電話口に出た。
「あ、雪久さん。お仕事忙しいですか?」
今名執は夜勤の真っ最中のはずであった。だが聞くところによると、救急がない日はとても暇だと言っていたのをトシは覚えていたのだ。
忙しかったらまた今度聞けばいいし……
そのくらいの軽い気持ちでトシは名執にかけたのだ。
「今晩はトシさん。本日は暇ですよ。たまにはこんな静かな夜も良いですね。ところでトシさんから電話というのは珍しいですね……幾浦さんはまだお帰りではないのですか?」
電話向こうの名執はそう言った。リーチが幾浦に自分のプライベート時に電話をかけないように、トシも滅多に名執には電話をしないのだ。
「恭眞は今日、どうしてもつき合わないと駄目な飲み会があるって言って今日は遅いんです。それで……僕、雪久さんに相談事があるんですけど……ちょっと聞いても良いですか?」
「私で良かったら何でも相談に乗りますよ。なんでしょうか?」
「あの……マグロが……」
うわっ!いきなり訳分かんないこと言っちゃったっ!
どうしよう……
トシはその一言で自分が今飛んでも無いことを名執に聞こうとしているというのに気が付いた。
「マグロ??」
「あっ……じゃなく……その……」
うわあああ~
そんな台詞を先に言って、相談なんかしたら僕がマグロってばれちゃう……!!
既にトシ、パニック状態だった。
「夕食の献立に悩んでいるのでしょうか?そうですねマグロの刺身なんて良いかもしれませんね。タレで漬けても味が染みて美味しいでしょうが……」
真剣に名執は電話向こうでマグロの刺身について悩んでいた。
違う……
言えない……
わああん~
「そ、そうですよねえ。マグロの刺身っ!ビールのあてにすごく合いますよね!」
そう言いながらトシは自分がマグロの刺身になっているのを想像してしまった。
タレに浸かった僕……
じゃない~っっ!!
恥ずかしいっ!
「……そんなことで本当に悩んでるのですか?何か違うことを相談したいのではありませんか?良いんですよ何でもおっしゃってくださって……」
だって……
マグロはマグロでも違うマグロなんだもん……
「え、あマグロの事だったんです。漬けて食べることにします」
マグロ違いだけど……と、トシは思いながら心の中で溜息をついた。
「そうですか?なら良いのですが……」
「本当に、僕夕飯のことで電話したんです。じゃあ……いまからマグロを漬けに取りかかりますからっお忙しいところ済みませんでした」
トシは慌ててそう言うと、電話を切った。
怪しげな電話をしてしまった……
後悔しながらトシはキッチンに向かった。もし、何かの機会があって、名執が幾浦にマグロの刺身の話しをすると困るからだ。
僕って……
何やってるんだよ……
冷蔵庫を眺めマグロが無いので、次に冷凍庫を見ると、フリージングされたマグロのブロックを見つけた。それを取りだしレンジに入れると半生解凍のボタンを押した。
ああもう……
飲んで帰ってくる幾浦に、またビールのあてを作っている自分がトシは情けない。
あ……そうか……
先にトシは名執に幾浦は今日飲み会に行っていると言ったのだ。そうであるのにトシががビールのあての話しをするものだから、不審に思ったのだろう。
がく……
変に思って当然じゃないか……
トシが悶々と考えているところに幾浦が帰ってきた。だが、トシはその事に気が付かないほど考え込んでいた。
「トシ……?」
だから……
マグロ絶対食べて貰うからねっ!
「ト~シっ!」
でもなあ~飲んで帰ってきてまた刺身なんて……
「トシっ!!」
「わあっ!」
いきなり幾浦の声を聞いてトシは驚き、振り返ると、怪訝な顔をした幾浦がこちらを覗き込んでいた。その横に、トシの声に驚いたアルが目をまんまるにしてこちらを見ている。
「やっ……やだなあ……帰ってきたならそう言ってよ……。び、びっくりした……」
心臓をバクバクとさせてトシはそう言った。
「……何度呼んでも気が付いてくれなかったんだぞ。何を考えていたんだ?」
「え?いや……その別に……」
あはははと笑いながらトシは「別に何でも無いよ」と言った。
「……何でも無いなら良いが……」
じいっとこちらを見ながら幾浦はスーツの上着を脱いだ。
「あ、そうだ……恭眞今ねマグロの刺身を作ってるんだけど……その……」
「悪いんだが……刺身は当分食べたくないと言うほど食わされたんだ。出来たらお茶漬けを軽く一杯貰えると嬉しいんだがね……」
苦笑しながら幾浦はそう言った。
「……お茶漬け……そうだよね……うん……。あっ、刺身のお茶漬けなんかどう?」
もうここまで来たら無理矢理にでもマグロを食べて貰わねばと、トシは思ったのだ。
「……いやに刺身にこだわるな……どうしたんだ……」
言って幾浦は冷蔵庫から麦茶の入ったボトルを取りだし、椅子に座った。
「え……だって……解凍したし……」
既に解凍が終わったマグロをレンジから出すとトシは言った。
「……私は今日飲み会だとお前に言った筈だが……」
考えるように幾浦は言って麦茶を飲んだ。
「そ、そうだったかなあ……僕忘れてたのかも……」
メールで本日の幾浦の予定は送られていたのだが、トシはそう言って知らない振りをした。
「……お茶漬け……マグロのでいい?」
トシがそう言うと、幾浦は「まあ……いいが……」とやはり苦笑しながら言った。
うう……
本当は食べたくないよね……
うん……
分かってるけど……
今日食べて貰わないと困るんだ……
トシは悪いと思いながらも、今解凍したマグロを細切れにし、熱い御飯の上にたんまりとのせた。とにかく覚えていて貰わないと困るのだ。そうであるから、御飯が隠れるほどマグロをその上に乗せた。そこに海苔をまぶし、すったわさびとタレをかけ熱い御茶を注いだ。同時に自分の分も作ったが、もちろんマグロの量は少ない。
「……トシ……」
目の前に置かれたお茶漬けを見てまた幾浦が言った。
「何?」
ニッコリと微笑んでトシは言った。
「飯よりマグロが多いような気がするんだが……」
箸でマグロの細切れをつつきながら幾浦は言った。
「そんなことないよ。恭眞の思い過ごしだって~」
あははと笑いながらトシは自分の分を食べ始めた。
「トシ……お前の方のマグロが少ない」
そう言って幾浦がこちらの茶碗にマグロを入れようとするので、トシは断った。
「そんなこと無いよっ!僕今たべたもん。恭眞もせっかっく僕が作ったんだから全部たべてね!」
「……そうか……」
困った顔をしながら幾浦は何とかそれらを全部食べた。その間トシは心の中でずっと謝り続けていた。
よかった……全部食べてくれて……
これで今晩のマグロの事は当分幾浦は忘れないだろう。
ホッとしながらトシは洗い物をした。
考えると……
そう言うことを人に聞くのって恥ずかしいことだよね……
聞けば良いんだよ……
どうして欲しい?ってさ。
トシはそう考えつき、悩んでいた気持ちも収まった。
「トシ……もう良いから寝ようか……」
シャワーを浴びてバスルームから出てきた幾浦が、こちらの側に寄ると肩に手を掛けた。
「え、……僕もシャワー浴びてくる……」
「明日の朝にしろ……」
チュッと頬にキスをされトシは頬が赤くなった。二人きりで今更恥ずかしがることなど無いのだが、こんな風にされるとトシはもう恥ずかしくて仕方ないのだ。
「……う……うん……」
「寝室に行こうか……」
耳元で囁かれトシは小さく頷いた。するとガバッと幾浦に抱き上げられ、寝室まで幾浦は歩き出した。アルと言えば、おきまりの二人を邪魔することなくリビングの方へと引き上げていった。
「あの……あのさ……」
うわうわ……
実際聞くのは無茶苦茶恥ずかしいかも……
「なんだ?」
じいっと見つめる切れ長の瞳がこちらから離れない。
「ええっと……」
ど、どう言ったら良いのかな……
どうしよう……
ベットに下ろされトシは視線をあちこちに彷徨わせた。
「トシ……」
思い切り幾浦の下敷きにされ、重みでトシの身体はいつもよりベットに沈んだ。その重みもトシは心地良い。苦しいほどの重みは相手の存在を嫌でもこちらに示すからだ。
「……恭眞……僕ね……」
シャツの前をはだけられながらもトシは言った。
「なんだ?」
「……マグロは嫌だから……」
ぽおっと頬を赤らめてトシは言った。
「……じゃあどうしてマグロのお茶漬けをしたんだ?」
はっ!
またいきなりマグロって言っちゃったよーーーーー!!
「あ~じゃなくて……そうじゃなくて……」
「……変な奴だな……」
クスクスと笑いながら幾浦はこちらの喉元に舌を這わしてきた。
「……あっ……」
ぴくりとトシの身体は跳ねた。
「じゃあ……なんだ?」
喉元を通り、そのまま鎖骨に舌が這わされる。すると微かにトシの鼻をアルコールの匂いが掠めた。
「恭眞……お酒の匂いがする……」
「さっきまで飲んでいたからな……。で、何が言いたいんだ?」
幾浦はそうトシに問いかけながらも手を胸元から外さなかった。そのピタリと張り付いた手の平は温かく、こちらよりも体温が高い。その温もりがトシにはとても心地よく感じた。
「……あっ……その……僕……」
トシが言うと幾浦の愛撫していた手が止まった。
「なんだ?良いぞ……言ってみろ……」
「あの……恭眞……僕にして欲しいこと何か無い?」
ほわほわとした表情でトシは言った。
「え?」
酷く驚いた顔を幾浦はした。
「何時も……その……僕がしてもらってばっかりだから……何か……してあげたいなあ~って思って……。僕も……恭眞に喜んで貰えると嬉しいし……。だけど……その……前にも言ったけど、こう言う経験は恭眞が初めてだから……自分で何をしたら良いか分からないんだ……」
と言うと、幾浦が何故か顔を赤くした。
「……何?その顔……」
「いや……何でもない……気にするな……」
こほんと咳払いを一つし、幾浦は言った。だが頬に残る赤さは取れない。
何を考えたんだろう……
何して欲しいって思ったんだろう……
トシはそれが気になって気になって仕方がなかった。
「え……と。いいよ。何でも言ってみてよ。分からなかったら、教えてくれたら僕やってみるし……」
「……あ~……。そんなことは気にしなくて良いぞ」
と、幾浦は言っているのだが、やはり顔に残る赤さは取れない。
絶対なんかして欲しいって今思ってるっ!
そうでもなければ、滅多に照れたりしない男が、照れる筈など無いのだ。心の中では今トシに何か希望を抱いているからこんな風に幾浦は照れている。トシはそう確信した。
「……僕がこう言うのは恭眞だけだよ。それに恭眞が教えてくれないと、僕ちっとも恭眞を喜ばせてあげられないじゃないか。だって……恭眞としか僕出来ないんだもん……」
やや恭眞としか出来ないという台詞を強く言い、トシは幾浦の様子を伺った。
「……そ、そうだな……まあ……確かにそうだ……。だがな……いや……その、だな……」
今度は狼狽えだした。
うわ……
もしかして……
無茶苦茶変なこと考えたの?
何?
縄とか?
僕が刑事だから手錠使いたいなんて考えてる?
それともローソクとか?
まっ……まさか道具使うとか??
ブランコとか木馬???
トシ、何も知らない割には、リーチから教えて貰った変な知識だけは豊富だった。
「……恭眞……」
じろ~と疑いの眼を向けてトシが言った。
「なっ……何だ?」
こちらを見て微笑む幾浦の顔は引きつっていた。
「縛られたりするの嫌だよ……。そう言うこと言ってるわけじゃないんだからね。分かってる?僕自身に何をして欲しいか聞いてるんだよ」
ムッとした顔でトシが言うと、幾浦は慌てて言った。
「そんな変なことを考えた訳じゃないぞ!」
怪しい……
妙に狼狽えてる……
「ふうん……で、さあ……元の話しに戻るんだけど……」
「ああ……」
まだその幾浦の顔には動揺が見えた。だがトシはそれを見ない振りをする事にした。
「何かして欲しいことある?これから僕は何をしてあげたら恭眞嬉しい?ねえ、僕……真剣に言ってるんだけど……」
トシが真剣にそう言うと、幾浦はいきなり無言で事を始めだした。
「恭眞っ!僕は今日何か恭眞にしてあげたいの!」
胸元に貼り付いていた幾浦の頭をぐいと押しやってトシは言った。
「……トシ……いいから……そんな気にしなくても……。それともリーチが又何かお前にくだらないことを言ったのか?」
「リーチは関係ないよ。そうじゃなくて、僕真剣に自分も何かしてあげたいんだっ!」
鼻息荒くトシはそう言った。だが幾浦は先程とは違い、困惑したような顔を向けてきた。
「……トシ……私を困らせないでくれ……」
「困らせてるわけじゃなくて……」
マグロが嫌なんだもんなあ……
そんなことで退屈だと思われるの嫌だし……
「トシ……お前はそのままで良いんだ……そんな事考えなくて良いんだよ……」
優しげにそう幾浦は言ったのだが、トシにはマグロでいいと言われているようで悲しくなった。
恭眞って……
マグロが好きなの?
な~んにもして貰いたいと思わないわけ?
違うっ!
絶対なんか思ってるっ!
さっき動揺したのちゃんと覚えてるんだから……
「はっきり言ってよ。僕、勉強したいんだから……」
トシは昔から、スポーツに関してはどうにもならないが、勉強すれば大抵の事は学べると信じてきたのだ。だからセックスにしろやはり教えて貰わないと、いつまで経っても劣等生だ。何より教えて貰うことが出来るのは恋人しかしないだろう。その恋人が後込みしてどうするのだと、トシは腹が立ってきた。
「勉強?そんなものしなくていい。お前がいきなり上に乗って来たら逆に私はどうすればいいのか分からないぞ……」
溜息を付いて幾浦は言った。
「馬鹿にしてる……」
「え?」
「今の絶対僕のこと馬鹿にしたでしょ……」
むううっと頬を膨らませてトシは言った。
「そんな事ではない……困ったな……」
言いながら幾浦は苦笑した。
益々馬鹿にされてるみたいっ!
どうせマグロな僕には何も出来ないって思ってるっ!
そう思うとトシは何だが妙に悲しくなった。
「とっ……トシ?」
じわ~と涙が滲む瞳を見た幾浦がおろおろとしだした。
「僕はっ……恭眞に……喜んで貰いたいからっ……言ってるのに……全然聞いてくれないっ!どうせ……どうせ僕なんか……」
マグロだよっ!
とは言えなかったので、トシは最後の部分だけ心の中で言った。
「おい……泣くことじゃないだろう……」
幾浦はそう言ってトシを抱き寄せた。すると、トシの頬に幾浦の乳首が当たった。
そう言えば……
リーチ前に言ってたよね……
お前も幾浦の乳首舐めてやったり云々……
そんなの……
雪久さんリーチにしてるのかな……
喜ぶのかなあ……
と、思ったトシはその乳首を口に含んだ。
「わはははははははっ!くすっ!くすぐったい!よせ、止めないかトシっ!」
いきなり幾浦にそう言われ胸元から速攻に離された。
がーーーーーーん……
お笑いになった……
ショックだ……
リーチの嘘つきっ!
馬鹿っ!
ちっとも喜んでなんかくれないっ!
余計に涙を落としたトシに笑いが止まった幾浦が又慰めるように言った。
「いや……あのだな……その……」
だが全くフォローにならない言葉しか出なかった。
「もう……いい……僕寝る……」
余りにもショックを受けたトシはそのまま毛布に丸くなった。その後いくら幾浦に宥められてもトシにはやる気などこれっぽっちも起きなかった。
所詮自分に無理なことをやろうと考えた僕が馬鹿だったんだ。
トシ「H」について考える。
学ぼうとしても学べない事だってある……と。
なんだか馬鹿馬鹿しい話になりました。はは。なんだこら第一弾と言う感じですか? それより、トシに一体何をして欲しいと幾浦は考えたのでしょうかねえ……謎(笑)。そうそう、「マグロ」の意味の分からない方は、清いままでいましょう(爆死)。 |