10万ヒット記念企画 テーマ「H」 第4夜
戸浪&祐馬
三崎祐馬「H」について考える。
雨がサラサラ降るとある土曜の午後、祐馬は何故二度目のHが出来ないのかを、箇条書きしていた。傾向と対策だと本人は真剣なのだ。
本日は母親から宅急便が届く予定になっていた祐馬は一人留守番をしている。戸浪と言えば、ユウマの定期検診の為、動物病院に行ってしまった。
そんなわけで祐馬は一人暇をもてあましていたのだ。
○俺の押しが足らない。
ここと言うときに祐馬は押し切れないのだ。
まずこれなんだよなあ……。
ガリガリと頭をかきながら祐馬はそう思った。
○俺は年下を気にしすぎる。
押しが足りないのもその所為なのだ。自分が年下であることを意外に祐馬は気にしている。だがどうにもならない三つの歳の差を今更気にしても仕方ないことも分かっていた。
分かってるけど気になるものは気になるんだよな……
○俺は男らしくない。
言うときはバシッと言いたいのだが、こと戸浪には頭が上がらない。惚れた弱みもあるのだろうが、戸浪が怒ると祐馬は何時も逃げ回っているような気がするのだ。
怒られたら怒鳴り返す位の根性は必要なのかなあ……でもそれすると戸浪ちゃんの怒りを更に倍増させるような気がする。
○邪魔が入る(人)
戸浪はもてる。だからトラブル。如月が割り込んできたときは本当に大変だったのだ。その後もまだうろちょろとしているのを知っていた。戸浪はもう何とも思っていないと言うのだが、心配なのは今も心配だった。
まあ如月さんの気持ちも分かるけどね……
○邪魔が入る(動物)
以前はネズミだったが、現在最大の敵は、黒い子猫のユウマだった。
あいつと戦うともうそれだけで疲れるんだよな……
ごろごろ喉ならしてる時は可愛いんだけどさあ……
まあ最近は少し落ち着いたような気はするけど……
○間が悪い。
どうも祐馬が盛り上がっている時と、戸浪の盛り上がっている時がずれているのだ。
戸浪ちゃんが盛り上がってるって言ってくれたら良いんだよ……
だって俺、雰囲気読めないし……
○呪われてる。
何となく祐馬が感じていることだった。
もしかして俺達どっちかに何か憑いてる?
○実は戸浪は攻めだ。
そう思ったことも祐馬はあった。
でもこれは解決したしなあ……
○本当は祐馬のことなど戸浪は何とも思っていない。
祐馬はふとそう書いて、横線で消した。
これは悲しいから考えないでおこう……
○戸浪はまだ如月が実は好き
書いて又祐馬は横線で消した。
最悪じゃんか……
○実はHするのは嫌い。精神的な触れ合いが戸浪は好き。
戸浪は淡々と二人で日々の生活を送ることに満足しているように祐馬は思えるのだ。
もしそうなら俺は……欲求不満で死んじゃうよ……。
○逆に戸浪はHするのが好きすぎて恥ずかしくて言えない。
これは祐馬の希望だった。
○戸浪は淡白
殺されるから言わないで置こう……
○俺のエッチが変質的
一度やってから後が無いって言うことは、自分のやり方が何処か普通と違ったのかもしれないと、あれ以来かなり祐馬は悩んでいるのだ。
それとも俺って下手なのかな?
○入れるところを間違った。
間違えよう無いからこれは大丈夫だったと祐馬は思った。
あれで間違ったら馬鹿じゃん。
○俺はHが下手
それを言われると俺辛い~
○俺が盛りすぎ
いや普通だよな……
違うっ!
絶対少なすぎると思うっ!
○戸浪もHが少ないと思ってる。
思ってるかな……
でもそんなそぶり最近無いし……
もう嫌なのかも……
○一度俺とやって戸浪は懲りた。
下手すぎたのか?
だからあいつとやるのは嫌だと戸浪は思っているのだろうか?
○戸浪は普通のHじゃ満足できない。
……縛ってみたら悦ぶ??
なあんて書いて祐馬は一人で笑ってしまった。
そんなわけねえじゃん。
○戸浪は痛い目に合うのが好き(ハート)
わはははははははは
俺って何書いてるんだ~
…………
俺だってさ……
健康な成人男子……
やりたいんだって…
○何でも良いから戸浪ちゃんと俺やりたい~
○吐くほどやりたい~
○俺は戸浪ちゃんが大好きなんだ~!!
最後にそう書き殴り、なんだか虚しくなった祐馬はふかあい溜息をついてその紙を丸めて捨てた。そこに宅急便が届いたのを知らせるベルが鳴った。
「ただいま……」
戸浪がそう言うと祐馬は玄関まで走ってきた。
「お帰りっ!どうだった?何も無かった?」
籠に入ったユウマを見ながら祐馬はそう聞いてきた。
「ああ。健康体だ。三種混合のワクチン注射をしてきたよ。今日一日は大人しくさせないと駄目らしいから、お前も構うなよ」
ジロリとにらみを利かせてそう言うと、祐馬は肩を竦めた。
「俺が構ってる訳じゃねえじゃん……」
まあそうなんだが……
「それより夕飯の準備できてるから食べようよ」
「そうだな……」
ニッコリ笑って戸浪は言った。
そうして二人は夕食を終え、祐馬はさっさかとバスルームに向かった。戸浪は後かたづけをしながらチラリとユウマを伺うと、流石に疲れたのかぐったりとして椅子に丸くなったまま眠っていた。それを微笑ましく眺めていると、ふとゴミ箱が一杯なのに気が付いた。
そう言えば明後日はゴミの日だ。
今からまとめておくか……
戸浪はゴミ袋を引き出しから出すと、ゴミ箱を逆さにして中身をあけた。が、丸まった一つのゴミがころりと膝に落ちた。
別に何も考えずにその丸められた紙を開いて戸浪は目が点になった。
○俺の押しが足らない。
なんだこれはっ!
祐馬が書いたのか??
○俺は年下を気にしすぎる。
どうも自分の悪いところを書いて反省していたようだな。
まあ……そう言うこともたまには良いのだろうと戸浪は思いながらその祐馬が書いた紙に目を通していった。
○俺は男らしくない。
馬鹿だな……
そんなことは無いぞ。お前は意外に気骨がある。
可愛いことで悩んでいるんだな……
思わず戸浪は口元に笑みが浮かんだ。
○邪魔が入る(人)
どういう意味だ?
邪魔が入る??
一体これは何に対して反省しているんだ?
それとも反省じゃないのか?
戸浪にはまだいまいちその紙に箇条書きされた言葉の意味が分からなかった。
○邪魔が入る(動物)
動物?
邪魔が入る動物?
それはこの間のネズミか?
それとも……ユウマか?
もしかして……
Hが出来ない理由をあいつは考えているのか?
そうなのか?
○間が悪い。
どうも……
そんな感じだな……
ああそうともお前は何時も間が悪いんだ。
自分で分かっているならもっと反省するんだな。
○呪われてる。
何となくこれは戸浪も感じていることだった。
何か憑いてるのかもしれない。
○実は戸浪は攻めだ。
あいつ……。
まだそんなことを……
私の何処が攻めに見えるんだ?
一度やったのに、それでもまだそんなことを思ってるのか?
それとも、どっちもいけるとでも考えているのか?
ムカムカしながら戸浪は続けて読んだ。次の項目が鉛筆でガシガシと塗りつぶそうとしたようなのだが、何が書いてあるかは透けて見えた。
○本当は祐馬のことなど戸浪は何とも思っていない。
祐馬は……
そんなことを本当に思っているのだろうか……
悲しい……
戸浪は酷く悲しくなった。
○戸浪はまだ如月が実は好き
……それほどまだ如月が気になるのか?
どう言えば、如月の事などもう何とも思っていないと伝わるのだろう……
戸浪は益々悲しくなった。
○実はHするのは嫌い。精神的な触れ合いが戸浪は好き。
……そんなことあるわけないだろうっ!
○逆に戸浪はHするのが好きすぎて恥ずかしくて言えない。
なっ!
○戸浪は淡白
あのガキっ!
○俺のエッチが変質的
いや……それは……
○入れるところを間違った。
ちゃんと出来たのに何を言ってるんだ今更……
○俺はHが下手
う~ん……
あの時はせっぱ詰まっていたからなあ……
上手いとか下手とか考えなかった。と、戸浪は思い顔が赤くなった。
なっ……何を私は……
オロオロしながらも、戸浪はもっと先を読んだ。
○俺が盛りすぎ
盛るのと……
出来るのとは違うんだぞ……
分かってるのか?
○戸浪もHが少ないと思ってる。
分かってるなら何とかしろっ!
○一度俺とやって戸浪は懲りた。
一晩にやりすぎて懲りたことは懲りた。
だがそれと、やりたくないは違うだろうがっ!
○戸浪は普通のHじゃ満足できない。
お前は一体何を考えているんだ……
○戸浪は痛い目に合うのが好き(ハート)
馬鹿かお前はっ!
一体どういうセックスをしたいんだっ!
私は……
なんだか次が恐いんだが……
○何でも良いから戸浪ちゃんと俺やりたい~
○吐くほどやりたい~
○俺は戸浪ちゃんが大好きなんだ~!!
……
まあ……
変な箇所は多々あったが……
最後のこの言葉で許してやるか……
戸浪はそう思いながら、思わずその紙に自分も赤で書き込みをした。
「あ~さっぱりした~」
祐馬はそう言って風呂から出た。
「ああ、今出たのか?洗濯物出して置いてくれよ。明日は晴れるらしいから全部洗濯しておかないとな……」
脱衣場で洗濯機を廻していた戸浪がそう言った。
「あ、うん」
何も考えずに祐馬はパジャマを着、冷たい御茶でも飲もうとキッチンにやってきたのは良いのだが、その冷蔵庫に祐馬が昼間書いていた紙が貼られていた。
……う……
うぎゃああああっ!
すてっ……捨てた筈なのにっ!
何でっ?
ずさっと後ろに一旦下がった祐馬であったが、おそるおそるその紙を見ると、なにやら赤いペンで戸浪が書き足していた。
○俺の押しが足らない。
○俺は年下を気にしすぎる。
○俺は男らしくない。
○邪魔が入る(人)
○邪魔が入る(動物)
ちっとも反省していないなっ!
○間が悪い。
○呪われてる。
○実は戸浪は攻めだ。
○本当は祐馬のことなど戸浪は何とも思っていない。
見えるような消し方をするなっ!
そんなことを思ってるなら、もうこのうちから出て行ってるっ!
どうしてお前はそんなことで悩むんだっ!
○戸浪はまだ如月が実は好き
○実はHするのは嫌い。精神的な触れ合いが戸浪は好き。
勝手に人を坊主にするなっ!
○逆に戸浪はHするのが好きすぎて恥ずかしくて言えない。
○戸浪は淡白
そんなに私に殴られたいのか?
○俺のエッチが変質的
ふ、普通だ……
○入れるところを間違った。
○俺はHが下手
○俺が盛りすぎ
もっと良く考えろっ!
○戸浪もHが少ないと思ってる。
○一度俺とやって戸浪は懲りた。
お前は一体何を書いているんだっ!
○戸浪は普通のHじゃ満足できない。
○戸浪は痛い目に合うのが好き(ハート)
○何でも良いから戸浪ちゃんと俺やりたい~
○吐くほどやりたい~
○俺は戸浪ちゃんが大好きなんだ~!!
こんなくだらないことを紙に書く時間があったら、態度に出せっ!
こんな事書くなっ!恥ずかしいっ!
「……うそおん……」
チラリと祐馬は廊下を眺め、視線を冷蔵庫に戻した。
さ、さっきは普通だったよな……
もしかして無茶苦茶怒ってる?
うう……
どうしよう……
今晩が……
恐い……
ボコボコにされるかも……
祐馬は今からもう戸浪に殴られるんじゃないかと怯えた。
神様……
やっぱり俺……
何か憑いてますよね……
脱力……
ガックリと祐馬は床に膝を落とした。
三崎祐馬「H」について考える。
何故やれないのか俺が聞きたい……と。
エロなの期待した方すみません。二人にはこんな感じがいいかなあと(笑)。やっぱり出来ずにというか、他とは少し変わった感じになってしまいました。あはは。ほのぼの~。まあ中休みってところでしょうか? これで少しは私の頭も冷えたかな……うん。 |