Angel Sugar

「監禁愛3」 第5章

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「おい、おいって……」
 やっぱり狼狽えながらリーチはそう言った。だが名執の方は既に間近まで来ている。
 俺にホモ道突っ走らせる気か!!
 と、心の中では悪態をついていたが、期待している自分もいるのが分かる。この間とは違う積極的な名執がそう思わせるのだろう。
 そんな事をごちゃごちゃ考えていると、名執の細い指がこちらのバスローブの裾を割った。伸ばされる指は迷うことなくこちらの逸物に手をかけた。
「嫌がる割にはもう勃っているじゃないですか……」
 そう言って名執はくすりと笑った。
「うるせえっ!生理現象だっ!」
 って、朝勃ちとは違うだろう。だが、 お前が色っぽすぎるんだとは言えない。
「説得力無いですね……」
 言って名執はこちらの勃ち始めていたモノを口に含んだ。柔らかな舌が敏感な部分にくるりと巻き付く。
「おいおいおい……」
 と、リーチは足ばたつかせてはみるが、所詮こういう行為に弱い男だった。
 暫く反抗していたが、名執が口を上下させると、あまりの気持ちよさに、こいつが勝手にやってることだし……なんて、考えを切り替えた。
「……ま、いっか……気持ち良いし……」
 それに景色も絶景だ。名執が素っ裸で四つん這いになり、こちらの下半身に顔を埋めていることで、背中から腰のラインまでが眺められる。その白い肌は艶めかしく、時折身じろぎするその姿は、リーチの本能をかき立てるのだ。
 何度か口元を上下させ、一旦口からモノを離すと、横向きに吸い付き始めた。その舌は側面を丁寧に愛撫している。
 気持ち良いけど……何か犬に舐められてるみたいだな……とふとリーチは思った。だがそう思うと同時に名執の指先が先端を掴んでつま弾いた。
「うっ……あ、んっだよ」
 小さな痛みにムッとしたのだが、気持ちいい~と表情に浮かべているリーチには迫力などこれっぽっちもなかった。
 暫く、舐めることに専念していた名執であったが、再度むしゃぶりつくと、そのまま一気に口を上下させ始めた。
 うわ、こいつ俺をイかせる気か?
 と、一瞬思ったが、名執の頭を手で支えて、リーチは名執からもたらされる刺激に酔った。
 ああもう、何でもいいや……
 すげえ……イイし……
 目を細めて、荒くなりだした息を吐きながらリーチは、ぎりぎりまで耐え、暖かな名執の口内に欲望を吐き出した。
「……はあ……あんたAV女優みたいだな……」
 そう言ってリーチが、顔を上げた名執を見て、ドキッと胸が跳ねた。
 名執はリーチから吐き出された滴を口元に付け、指にも落ちたそれをペロリと舌で舐め取ったのだ。その舌は赤く、ぞっとするような色気が漂っている。
「なんとでも……」
 口元だけで笑い、名執は更にリーチの首元に絡みついてきた。すると名執の胸元がこちらの胸元と擦れ、薄いはずの胸板がやたらにしっくりとこちらに馴染む。この感触はついぞこの間、名執を無理矢理抱いたときにも感じたことだった。
 決して、女性のような柔らかさが無いその細い身体は、何か、鍵にぴったりと合ったキーがはまったような感触をこちらに伝えてくる。
 首元を名執の舌によって愛撫され、こっちもどんどん体温が上がってくる。
 こんな奴に翻弄されるなんて……
 思うのだが、突き飛ばすことなど到底出来ない。それよりも、このまま放っておけばこの男、一体他には何をしてくれるだろう等と、期待してしまうのだ。
「……あ……リーチ……」
 切なそうな瞳でこちらを見ながら、名執は両手で頬を掴むとそのまま口元に噛みついてきた。閉じていた口元を名執は自分の舌でこじ開けてくる。
 こちらもうっすらと口を開けてやると、迷わずに中に滑り込んできた。
「……ん……」
 名執の舌はリーチの口内隅々まで愛撫する。その動きはとても優しい。
 俺、酔っぱらった気分……
 もう既に、名執の思うがまま翻弄されて、リーチは感じる快感を手放せなかった。自分からも手を回して名執の腰や背を撫でさすっていた。
 綺麗な肌……肌理が細かく、汗をしっとりかいている。
 ふっと、名執の両手が頬から離され、その手は後ろに回った。あの手は何処へ回されるのだろうと思っていると、名執は自分の双丘に手を伸ばして、喘ぎ始めた。
「……痛いのは……嫌ですから……」
 喘ぎの中から名執はそう言って、自ら蕾を刺激していた。その姿がリーチには堪らなかった。羞恥心がまだあるのだろう、自分で行っている行為に頬を染め、目の端に涙を浮かべている。それでも止める様子はなかった。
 そんな姿をニヤニヤとリーチは眺めた。
 こいつ、最高かもしれない。とも思っていた。
 普通の女性がこんな姿を見せたらリーチは興ざめしていただろう。だが、やりたくないが、やるしかない。恥ずかしいけどどうしようもないという、何とも言えない名執の表情が堪らないのだ。
 名執の瞳からぽろぽろと落ち出す涙が、リーチの胸元に伝う。それすら、こちらの嗜虐心を煽る。
「はあっ……」
 大きく息を吐き出した名執は、既に又ムクムクと勃ち上がっているリーチのモノを掴むと、ゆるゆると自分の奥へと誘った。
 確かに自身で柔らかくしたといっても限界があったのだろう、入る寸前はこちらもきついと思ってしまったが、一番太い部分が入ると、すんなりと中へと入った。
 が、かなり狭い。
「あっああっ……」
 腰を完全に落とすことが出来ずに名執が中腰より低い体勢で、呻くように言った。だが、リーチには分かっていた。
 名執も感じている……と。
「全部入れなきゃ駄目だよな……」
 高みの見物のようにリーチは言った。すると半開きの口でこちらを向いた名執は、口惜しそうな顔を向けた。
「この腰落とせよ」
 言ってリーチは名執の腰元を軽く数回叩いた。すると涙目の名執が今度はキッと睨んで寄越した。それでも全く迫力は無かった。
「お前が仕掛けてきたんだから自分で何とかしろよ。俺しんねえぞ」
 リーチはそんな言葉にいちいち反応する名執が堪らないのだ。
「……ひっ……あっ……」
 ようやく腰を落とした名執はうつむき加減で暫く息を整えていた。が、いきなり腰を揺らし始めた。
「あっ……ちょ、ちょっと……うはっ……」
 急に動かれたリーチは一気に下半身から上がってくる快感に、驚きながらも、目の前で、必死に腰を動かす名執を見て、熱に浮かされたようになった。
 名執の中は狭いが、襞がぴたりと張り付き、それが擦りあわされると、どうしようもなく気持ち良いのだ。時折、急激に狭くなり、食いちぎられそうな錯覚に陥るのだが、それすらより快感を感じる要素にしかならない。
「あっ……あっ……」
 名執は相変わらず悲壮なほど必死だ。
「すげ……イイ……っ……」
 リーチは追いつめられるまま名執に任せてそう言った。やはりどこかでこの感じを味わった記憶がかすかに見える。
 この男を抱いていたのだろうか?
 以前、こんな風に?
 だがパズルのピースは余りにも失われすぎて、思い出せない。
 本能だけが先走って理性が付いていかないのだ。
「リーチ……っ……触って……私のも……お願い……っ……」
 そう言って名執が手を伸ばしてくるので、それを掴むと名執は自分のモノへとリーチの手を誘った。
 リーチは迷わずその名執のモノを掴み、上下に擦り上げた。
 ちっとも気持ち悪いと思わなかった。
 同じ男なのに……
 変だ……
 何が変なのかも分からない。
 俺はホモじゃない……と、名執との行為に溺れながらもそう思った。
 これは本能なのだ。そう思うことにした。
 この男に素直に従っていれば……気を許してここから出すかもしれない。他人に従うというのはリーチにとって本来絶対許せないことなのだが、状況が状況なだけに、こちらも作戦を変える必要があるのだ。
 気に入ったふりをして、言うことを暫く聞いて、いい子になるとするか……
 確かに身体の相性は良さそうだ。だが、どうあってもこの男とこんな風に抱き合うのは異常だと思った。
 出して貰えばこんな奴、捨ててしまえばそれで良いのだ。
 自由になれば覚えてやがれ……。
 それまで仕方ないからこいつが望むように可愛がってやるか……。
 愛しているというのなら、そんな相手に後で突き落とされたら、この男どうするだろうか?それはそれで俺のむかつきも少しはましになる。
 考えるととても愉快だとリーチはほくそ笑んだ。
 そう思うことで何とかプライドを守れそうな気がしたのだ。
 結局リーチは名執によって数度イかされた。

「……どうしたんですか?」
 事が終わって、突き放されることも無かった為、名執はリーチのむき出しの胸元で暫くすり寄っていた。だが、リーチが天井を見たまま無言であったので、心配になって問いかけたのだ。
「いや……なんか不思議な感じなんだよな……」
「何が不思議なんです?」
「あんたのことは覚えてないけどな。身体が覚えているって言うか……」
 名執はその言葉を聞いて嬉しくなった。
「それだけでも覚えていただいて……嬉しい……」
 自分のしたことが無駄ではなかったと分かって名執はホッとした。本当は、穴があったら入りたいくらい恥ずかしかったのだ。
 本当に恥ずかしかった。
 それでも結果は良かったのでホッとするのと嬉しいのと同時にやってきた。
「……そんなもんかな……」
 溜息と共にリーチは言った。
「……思い出せなくても良い……やり直しはいくらでも出来るから……」
 そう言って名執は目を閉じた。その名執の背にリーチの手が回されて、いつもしてくれていたように背を優しく撫でた。その仕草が無意識であろうと、リーチがいつも名執にしてくれていた行為だ。
 いたわるような手の動きはリーチそのものだ。
 名執はつむった目から涙が零れそうになった。
 どんなリーチでも愛することが出来ると誓った。これが昔のリーチならそれでも良い。昔のリーチも今のリーチも同じなのだ。同じ優しさと強さを持っているはずなのだ。人間の基本的な性格は例えどんなことがあっても早々変わるものではない。
 ただ名執を忘れているだけだった。
 それを取り戻そうとするより、今のリーチを手に入れる方が前向きな事だろう。
 トシのことをどうするかが問題だが、今は考えたくは無かった。
 その日久しぶりに名執はリーチの腕の中で眠った。
 悪夢は見なかった。

 翌日、論文がはかどった。例えリーチの事で休みを貰ったからと言っても、こちらも仕上げてしまわなければならない。
 名執は持ってきた医学書や、参考書を色々くった。情報が少ないものに関してはインターネットを使って検索した。
 ふっと気がつくと随分時間が経っていた。名執は椅子から離れ、リーチの様子を窺うと、本人は布団の上でごろごろしていた。だが、新たに持っていった本を読んでいるようであった。足をばたつかせて、読んでいるところを見ると機嫌が良いようだ。
 今日は今朝から不気味なほど大人しかった。悪態をつくことも無し、素直にこちらの言うことに従っているのだ。その上驚いたのが、昼食を食べた後「鎖が届くんだったら洗い物位やってやるんだけどなあ~」等と言ったのだ。
 気持ち悪い……
 何か企んでる……
 リーチは記憶を失う前でも、急に素直になったり、愛想が妙に良くなると何か企んでいる場合が多い。大抵はベットの上で新しいことに挑戦しようとしている場合が多いのだが、記憶を失った場合はどうなのだろう?
 この場合は何を企んでいるのかが分からない。
 名執が鍵を持っているなら、あの変わり様の理由も分かるが、鍵は幾浦が持っている。なら何を企んであんな風に借りてきた猫のようになったのか分からないのだ。
 気を付けないと……
 あれはリーチであってリーチではないのだ。まだ今の性格をきちんと把握しているわけではないから、行動の予想がつかない。
 まあ、もう一度殺そうとは考えていないだろう。
 それは分かる。
 では何だろう……
 名執はリーチのように直感や思いつきで行動するタイプではない。昨夜の事も随分考えての行動だったのだ。
 男を毛嫌いしている状態では、記憶が戻らないままここを出ることになった場合、名執の元へは二度と帰ってこないだろう。なら、餌付けではないが、身体浸けに出来るのならと恥ずかしくも考えたのだ。
 昨日の感触ではリーチは、かなり喜んでいたようだ。後は何度か身体を重ねて、男も良いんじゃないか~から名執は良いんじゃないか~と持っていきたかったのだ。
 それなら一度味を占めたリーチは必ず、戻ってくるだろう。
 人間の行動とはそういうものなのだ。
 特にそれが本能に訴えかける場合、かなりの効果を上げる。そう言う実験だってあったのだ。美味しい料理を食べると又その店に通うのと同じ心理だ。
 だから恥ずかしくとも、ああいう行動に打って出たのだ。決して思いつきで行動したわけではなかった。
 だがリーチは直感と思いつきに優れている。頭の構造が原始的なのではないかと思うくらいだ。だから名執には推測すら出来ない。逆にトシは理性的で、物事をよく考えてからしか行動に移さない。
 あの二人、足して二で割ると丁度平均が取れるような気もするが、逆に個性が無くなって、普通の人の中に完全に埋もれてしまうだろう。それに、もし、平均にならなかった場合、一人の人間があんな性格を持ち合わせる事になる。それだと分裂症だ。
 あれはあれで良いのかもしれない……。
 何を企んでいるのか分からないが、とりあえず自分が考えた行動をするしかないのだ。と、名執は腹をくくっていた。
 後戻りは出来ない。
 このまま監禁することも出来ない。だから外に手放した瞬間、自主的に戻ってくる方法を今のうちに講じておくことが名執の作戦であった。
 今はリーチが何を企んでいるのかは考えないで置こう。
 所詮考えたところで分からないからだ。
 そう思いながら夕食の準備に取りかかることにした。
 一週間分の食料を既に冷蔵庫に詰め込んでいるが、だんだん食材も減ってきた。一週間の期限もそろそろ最終に入ってくる。
 包丁で肉を切りながら名執は溜息を付いた。
 このままここに監禁しておくのも良いのかもしれない……
 そんな事まで名執は考える。
 記憶を失ったままなら、自分一人のものに出来るのだ。
 そこまで考えて名執は頭を振った。
 あの身体はリーチ一人だけのものではない。そして自分と同じようにあの中にいるトシを愛している幾浦がいる。彼らを裏切ることは出来ないだろう。
 裏切っても良いと思った瞬間もあった。だが立場が逆だった場合、自分はどうしていただろう?こんな風に幾浦にトシを預けることが出来ただろうか?
 幾浦は名執を信頼しているからこそ、リーチを自分に委ねたのだ。そんな幾浦と、信頼し、今スリープしてくれているトシの気持ちを踏みにじることはやはり出来ない。
 肉を切りおわると、それをしょうゆと砂糖、ショウガで味付けし、甘辛く炒めておく。リーチは甘辛く炒める肉が好物なのだ。そして先に作って置いた出汁を火にかけた。炊飯器の方はタイマーで既に炊き込みご飯が炊けていた。
 冷蔵庫からうどんを取り出して、沸騰した出汁に入れた。
 そうして肉うどんと炊き込みご飯が出来た。
 名執は、お茶等を用意し、リーチの待つ部屋へと向かった。
「肉うどんだ……」
 リーチは嬉しそうだった。
「あんた、結構料理上手いよな……」
 また、気持ちの悪い事を言うのだが、名執は「ありがとうございます」とだけ言った。
 名執はここにずっといるだけで、殆ど身体を動かさないこともあり、食欲はほとんどない。だからリーチより量の少ない肉うどんだけを食べた。
「食欲無いのか?」
 ああもう気持ち悪い……
「ええ。ここに来て殆ど身体を動かしていませんから……」
「ふうん。昨日あんなに乱れて見せたくせに?」
 ニヤニヤとした顔でリーチは言ったが、名執は平静を保って言った。
「あんなの運動のうちに入りません。ただ腰が痛いだけです」
「へえ、結構言うなあ……」
 ばくばくと炊き込みご飯を食べながらリーチは言った。この男よっぽどのことが無い限り食欲が落ちないのだ。その上、人より沢山食べる。それと、甘いものが好きだ。よくこれで太らないものだと名執は以前から思っていた。トシも結構食べるらしい。
 一人の身体で二人分食べるのだろうか?
 果たしてそう言うカロリー消費は成り立つのだろうか?
 もし、彼らの存在が研究者の目にでもとまればモルモットにされるだろう。
 それほど彼らの存在は不思議であった。
 リーチは食べ終わると、ごろんと又布団に転がった。こちらはうどんを半分も食べられなかった。
 結構ストレスになっているのかもしれない。
 名執は元々食が細いのだ。リーチとつきあい始めてから、きちんと食べるようになったくらいだ。食べない分、健康食品で補っていたのだが、それを見つけたリーチは全部ゴミ箱に捨ててしまった。
 捨てたと言えば、風邪薬、腹痛の薬以外は全部捨てられた。特に名執は不眠症を持っていたため、バルビツール系の薬を多数持っていた。それら一切合切リーチが探し出して捨てたのだ。
 余談ではお客用に買っておいた、布団一式も捨てた。
「片づけが済んだら来いよ……」
 と、こちらがうだうだと考えているところにリーチがいきなりそう言った。
「え、あ、はい」
 何か話しでもあるのかと思いながら、後かたづけをし、小一時間立った頃またリーチの所へ戻ると、本人は既に風呂から上がって、頭をタオルで拭いていた。
「何ですか?」
「何ですかじゃない。こっち来いよ……」
 そう言うので、名執がリーチに近づくといきなり腕を捕まれて引き寄せられた。その拍子にリーチに倒れ込んだ。
「おいおい、あんたが軽いのは分かってるけど、いきなり倒れ込んでくるなよな」
 胸元をさすりながらリーチは言った。
「あの……?」
 名執は身体を起こして何が何だか分からないという表情を見せた。
「俺ねえ、リードされるの嫌いじゃ無いけどな。ずっとは嫌なんだよ」
 意味ありげにそう言って、名執を布団に倒すと、リーチがその上に馬乗りになった。
「……やるんですか?」
「あのさ、俺暇で仕方ないの。じゃあ、こういう事しかする事無いだろ?それにあんたも昨日は乗り気だったじゃないか。今日は俺が乗り気なの」
 嬉しそうにリーチが言った。
 これは癖になってるのだろうか?
 良い傾向になるのだろうか?
 名執には分からなかったが、この間のように抵抗する気は無かった。
「昨日は俺が翻弄されたけどな……今日は俺が翻弄してやるよ……」
 言ってシャツの上からいきなり乳首を捕まれ力を込められた。
「ひっ……」
「痛かった?痛いわけ無いよな……あんた結構淫乱なの俺昨日分かったし、こういうのも感じてるんだろ?」
 更に乳首を握り揉まれて名執は身体を捩った。
「い……痛い……っ……リーチ……っ!」
 ピリッとした痛みが名執の身体を走る。
「痛いと言いながら、立ってきたぞ……ほら、シャツの上からでも透けて見える……」
 リーチはそう言って、薄いシャツの上から名執の突起を口に含んだ。手の方はズボンの中に入れられている。
「あっ……やっ……」
「う~ん。ホント俺と同じものがついてるとは思えねえよ、あんた……」
 忍ばされた手は太股を撫で、敏感な部分をさらりと撫でた。
「あっ……」
「昨日みたいに俺を誘って見ろよ……」
 くすくす笑いながらリーチは言った。名執はそれを聞くと自ら手を伸ばしてシャツのボタンを外しだした。
「いいねえ、こういうのも……」
 全部外し終わると、リーチの方がシャツを剥いだ。露わになった胸元は、二つの尖りだけが赤くなっている。
「リーチ……」
 手をリーチに伸ばして背に回すとこちらに引き寄せた。リーチは素直に身体を重ね合わせてきた。
「白い……肌だ……」
 言いながら胸元を愛撫するその舌は、温かくねっとりとしていた。
「……ああっ……リーチ……舐めて……もっと……」
 恥ずかしいのだが、必死に名執はそう言った。リーチはその言葉を受けて、執拗に舌で愛撫を繰り返した。
 時折きつく吸い付く感触が肌から伝わる。キスマークでも付けているのだろう。
 沢山付けて欲しいと名執は願った。そうすれば、なんだかリーチに本当に愛されているような気がするからだ。
 隙間の無いくらい付けて欲しいと切実に願う。その数だけ希望も増えるような気がした。
「あんたほんと好きものだよな……」
 ちょっと卑下して聞こえるのは仕方ないのだろうか?それとも本当にそうリーチが思い、呆れているのだろうか?
 細めた目を開けてリーチの顔を窺うと、本人は鼻歌でも歌いそうな感じで名執のズボンを剥いでいた。
「貴方だって……あんなに嫌がっていた男を……抱いてるんですよ……」
 切れ切れに名執が言うと、リーチの手が名執のモノを締め上げた。
「ひっ……!」
「くだらねえ事言う口はこうやって塞ぐといいんだな。学習したよ」
 言いながらぎゅっと掴んだ手は緩まない。
「ち、力緩めて……あっ……あっ……いた……」
 仰け反ってそう言うのだが、リーチは緩めることをせずに、もう片方の手でその辺りをまさぐりだした。口元は首下を愛撫している。そんなリーチの肩に名執は噛みついた。
「あいたっ!」
「緩めてくださいっ!本当に辛いんですっ!」
 名執は涙目でそう言うと、リーチは逆に笑い出した。
「ほんとに辛いのはこれからだろうに……ま、ちょっと緩めてやるけど……」
 急に痛みが遠のいたと思ったら今度は裏返しにされ、うつむきに布団に倒された。
「俺、勝ち負けに結構こだわるタイプなんだ……」
 言いながら腰だけを上げさせられ、膝を立てた状態で顔が布団を擦った。尻を突き上げた格好が酷く恥ずかしい。
 後ろに回ったリーチが名執の白い双丘を両手で掴んで左右に開いた。隠されていた蕾はまだ堅く窄んでいる。
「あっ……やあっ……」
 明るい中で隠すものもない。そんな中、隠したい部分を露わにされた羞恥は酷く名執の快感を煽った。恥ずかしいのだがそれすら快感になる。
「舐めて欲しいんだろ……」
 言いながらリーチは舌で蕾の縁をペロリと舐めた。ゾクッとする快感が背骨を這って脳に伝えてくる。
 ピチャピチャと聞こえる音が後ろから聞こえると、耳まで真っ赤になりそうだった。
「なかなかここって堅いんだな……」
 急に指を一本つっこまれて、名執は布団に仰け反った。
「あっ……ああっ……いた……」
「痛い?ここ痛い?嘘だよなあ……昨日自分でつっこんで喜んでたじゃないか……」
 リーチは言って指で内部の壁を擦った。
「ひっあっ……やっ……いやっ……」
 擦り上げられると、ビクビクと両足が痙攣した。自分を忘れているはずのリーチは絶妙に名執の快感のポイントを押さえて刺激しているのだ。これで忘れているのかと思うくらいだ。
 習慣のように身体に染みついているのだろうか?
 こういう経験も習慣のうちにはいるのか?
 分からないのだが、名執は確かにリーチからの刺激に酔い始めていた。
「嫌って言って喜んでやがる……」
 何度も何度も内部で指を曲げたり伸ばしたりを繰り返し、ポイントをついた攻め方をリーチはする。そのたびに名執の身体は跳ね、喘ぎを上げた。
「なかなか広がらないもんだなあ……」
 リーチは困ったように言って両手の人差し指と中指を使い、左右に二本の指を端にかけて蕾を開くのに前後左右何度も引っ張った。
「あっ……何っ……いやっ……そんなの……嫌ですっ!」
 慌てて名執は後ろに手を回してリーチに訴えるのだが、全くリーチは止めようとしなかった。名執がそう言うことで余計に力を入れて引っ張り始めた。
「いやっ……!嫌ですっ!」
 腰を引こうとするのだが、逆にそれがリーチから見ると誘っているように見えるのだろう、リーチはそんな名執の揺れる腰を見て愉しんでいる。
「すごいな……女なんか目じゃないな……尻で誘ってやがる……」
「ちがっ……違うっ……離して下さいっ……」
「ばーか、これからじゃないか……昨日は自分でここを開いたんだろう?そんな恥ずかしいこと出来た奴が、この程度で恥ずかしい訳ないよなあ」
 言われて名執はうっと呻いた。
 好きにさせるしかない……そう思った。
 恥ずかしくても、リーチの思うようにさせるんだと必死に名執は心の中で呟いた。
 拒否は出来ない。  
「……そう……ですね……好きに……して下さい……」
 ようやく名執はそう言った。
「なんだ素直だな……」
 ずずっと指先を入り口の浅い所に四本差し込まれて、名執は喘いだ。リーチはとにかく中より入り口を広げたがっているのだろう。
「あっ……ああっ……」
 息がどんどん上がってきた。体温もそうだ。
「ううん……どのくらいが丁度良いのか俺には経験がそんなに無いから分からないな……」
 と、グチャグチャと入り口を指で攻めながら独り言のようにリーチは言った。こちらはもう息が荒くなり、身体の震えが止まらないところまで来ているのだ。
 だが、リーチはただ入り口の辺りをかき回すだけで奥には指を入れてこない。
 ジリジリとした快感が体中を這っているのが分かる。もう堪らないのだ。リーチの鋼を突き入れて欲しいと、名執は何度も思った。それでも、リーチの焦らしは続く。
 入り口が溶けて柔らかくなる頃、リーチは指を二本奥まで突き入れた。そこでもやはり中をかき混ぜるだけだった。
「もちょっと指でも奥までいけそうだな……」
 言って片手を名執の丸みに置いてぐいっと蕾に突き立てている手に力を入れた。ぎゅるっと入り込んだ指は、いつもより深く進入してきた。
「ひっあっ!!」
 頭の中までかき回された気分になった名執は嬌声を上げた。
「良い声だな……」
「リーチ……入れて……指じゃなくて……貴方の……入れて……もう、我慢できない……」
 名執は涙ながらに訴えた。
「じゃあ、自分で広げておけよ。俺は初心者なんだからな」
 と、ふてぶてしく言うのだが、名執はリーチの言うとおりに、ゆるゆると手を伸ばすと自分の指で蕾を開いてリーチを誘った。
「早く……お願い……もう……耐えられない……」
 名執がようやくそう言うと、重量のあるものが中に進入してくるのが分かった。それは一気に置くまで入れられた。
「あーーーーっ……!」
 駆け上る快感が名執に声を上げさせた。
「……っせまっ!」
 リーチはそう言いながらも腰を揺らし始めた。前後に動くたびに名執の奥深くが震えるのが分かった。
 待ち望んだ快感だ。
「あっ……あっああ……」
「俺はイかせてもらうけど、あんたは暫くそうやって悶えてろ……」
 言ってリーチは名執のモノの根元を掴んで締め上げた。その間もリーチは機嫌良く腰を揺らしている。だが名執は気が狂いそうだった。
「いやっ……いやあっ……リーチ……っ!こんなのいやああっ!」
 快感に溺れながらも、締め上げられた部分が熱くなる。だが、一杯一杯になっている疼きが解放されることもままならず、痛みと更なる快感を脳に伝えてくる。
「嫌っていってもな。言っただろ。俺、自分の上に立たれるの嫌いなんだよ。でもあんたは俺の上に立とうとしただろ?だから少しくらい苛めてやらないとな……」
 リーチはそう酷薄に言って、愉しむように腰を揺らした。
「あっ……ああっ……あっ……あああっ……い、イかせてっ……お願いっ……耐えられないっ!リーチっ!」
「耐えられるさ~あんた慣れてるんだから……。俺は駄目だな。勝手にやらせて貰う」
 リーチは更に腰を揺らし、名執は限界をとうに超えて快感をその身に蓄積させていた。堪らなかった。手足がバラバラになるような気がした。そんな中、リーチは一人でイった。だが、名執を締め付けた戒めは緩めようとはしなかった。
「すげえ……イイわ……この中……」
 ほおっと息を吐き出し、名執の背に身体をもたれさせながらリーチは言った。が、名執の方はどうにもならない身体が小刻みに震えていた。
「あ……ああ……リーチ……イかせて……お願い……」
 涙がボロボロとこぼれ落ちる。
「あと二回くらいイったらイかせてやるよ……」
 リーチは名執に突き刺したまま、抜かずにそのまま自分の行為に没頭し始めた。内側で萎んでいたものが又急に内部に一杯になる。
「ひっ……やっ……いやっ……」
 名執は泣きじゃくりながら必死にリーチに訴えるのだが全く聞く耳を持たない。
「あんたもすげえ、快感を感じてるはずだぜ……。こういうのって、我慢した後が一番イイらしいからな。俺あんたを感じさせてやりたいばっかりに悪者になってるんだ。分かってる?」
 くすくすと笑いながらリーチはそう言ってのけた。
 結局、名執は最後の最後でようやくイかされた。
 天国と地獄を見たような気がした。
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