「暴走かもしんない」 第5章
「大良、本気で愛が足りないって思ってないよな?」
「本気じゃないよ……当然だろう?」
博貴は大地の額に軽いキスを何度も落とし、シャツのボタンを外していく。触れる博貴の手の平はとても温かく、大地は心地よさに目を細めた。
「……ん……大良……ご飯冷める……」
博貴のキスは額から頬、耳朶に首筋へと移動して、大地の敏感なところを愛撫する。唇の動きは滑らかで、時折きつく吸い上げては、大地の欲望を高めていく。
「言ったでしょ。まずは大ちゃんを温めるって……ね」
「……あ~もう……お前……っん……」
乳首の先端を軽く歯で摘まれ、チクリとした痛みが走る。すると、もっと噛んでくれとでもいうように、刺激に反応して胸が反った。
「大ちゃんの身体って本当に素直だねえ……こうやって押してやるだけでも……ほら」
指先で臍の回りを押すたびに、大地の身体がビクンと小さく跳ねるのを、博貴は愉しんでいる。羞恥から腹に力を込めるものの、逆に腹筋に力が入るせいか、余計に敏感に反応してしまう。
「俺で遊ぶなよ……っあ……」
大地が顔を赤らめて抗議の声を上げると、博貴はニンマリと笑って臍に指を入れ、ぐるりと動かした。指の腹が狭い臍の内部で動かされると、くすぐったいと感じながらも、抽挿を真似ている指に、背筋がゾクゾクとする。
「遊んでないよ、指でも大地を味わってるんだ……」
「……くすぐったいって!」
博貴の背に回していた手を解いて、やんわりと押しやる。その手を博貴は掴み、手の甲を唇で愛撫した。
「大地の手って……思うほど硬くないんだよねえ……でも柔らかくもない」
大地の人差し指をしゃぶり、博貴はニンマリと笑った。けれど、大地には博貴が何を言いたいのかよく分からない。
「そりゃ……大良の手と比べたら……俺の方が硬いかも」
博貴の唇から指を抜き、自分より大きな手と合わせる。手の大きさは体格に比例するのか、やはり博貴の手より大地の手は小さい。それでも触れ合っている手の平は、博貴よりも大地の方が硬い感じがした。空手を長年やってきた大地だから、普通の人より手の平は硬いだろう。
「それもあんまり嬉しくないねえ……」
う~んと唸って、博貴は大地が絡めている手を解き、今度は手の平から手首へと唇で愛撫していく。
「なんだそれ」
「男として……かな」
「……大良が何にこだわってるのか、俺には分からないけど……あっ!」
手首から腕の付け根へと愛撫が移動し、また胸元へと戻ってくると、乳首の先端にキスが落ちた。
「そこばっかり……っ!」
胸元から手をどかそうとしたが、博貴が大地の下肢に手を伸ばし、ジーンズの上から大地の雄がまさぐられ、力が込められる。直に触られているわけではないので、指先の感触がいやに遠く感じられ、もったいぶった博貴のやり方に、恨みすら覚えてしまう。
「……う~……」
「あれ、ここを触って欲しかったんだよね?」
「……ちゃんと、触ってくれよ……」
分かっていて焦らす博貴に、大地は口を尖らせた。
「じゃあ、大地がジーンズを脱がないと」
ニヤニヤしながら博貴は大地に言った。
いつもは博貴が脱がしてくれるのだが、今日は大地に自分ですることを望んでいるようだった。大地は自分の手でベルトを緩めて、ジーンズを下ろす。羞恥で身体中が赤くなりそうだったが、躊躇すると博貴がさらに言葉で苛めてくることを知っているからだ。
「……うう~……」
「そんなふうに、歯を食いしばらなくても……恥ずかしいことじゃないだろ?」
博貴は大地の恥ずかしさを理解しているのに、そう言ってからかう。
「わ……分かっていてそんなふうに言うなっ!」
「さあ……何のことかなあ……」
クスクス笑いながら、博貴は大地の下着に手をかけると、最後の一枚を簡単に引き剥がす。下肢はヒンヤリとした空気に晒されて、大地は身体を竦めた。
「寒い?」
「そ……そうじゃないけど……っあ」
手の平が大地の雄をゆっくりと擦り上げて、欲望を煽る。
「大地のここ……とても温かいね」
雄の形を確かめるように、ゆるゆると手が動かされた。大地はそのたびにビクビクと小刻みに太ももを震わせ、さざ波のように寄せては引く快感に、時折小さな声を上げていた。
「……あ……博貴……」
博貴の手の動きは大地の雄を硬く強張らせ、欲望で満ちさせる。もうあと少しで、耐え難い射精感に襲われるはずだ。
「本当に大地は可愛いね」
薄く開いている唇に博貴の唇が重なり、すぐさま舌が差し込まれて、大地の舌が絡め取られた。
「ん……んふっ……」
口内の隅々まで愛撫し、同時に雄が擦り上げられる。空気が足りなくて、喘ぎながらも、大地はいつしか自らも腰を揺らしていた。
「……あっ……」
愛撫に酔い、恍惚としていた大地だったが、不意に唇を離され、名残惜しそうに思わず舌で追いかけそうになるのを、堪えた。けれど、そんな大地の仕草はしっかりと博貴の目にとまっていた。
「……キスが足りなかった?」
「べ……別に……」
「私の唇を追いかけてきたように見えたんだけどねえ……」
「うっ……五月蝿いなっ!してないよっ!」
「そういう正直じゃないところも可愛いんだけどね」
博貴はそう言いながら身体をずらしていき、先程まで手で触れていた雄に、今度は舌を這わした。
「……っん」
「やっぱりここは……舌で可愛がってやらないと」
「そ……そこでしゃべらないでくれよ……」
敏感なところに息が吹き掛かってくすぐったい。大地が身を捩ると、博貴は目の前から雄が逃がさないとでもいうように、しゃぶりついた。
「あっ!」
雄を口いっぱいに含み、きつく吸い上げてくる。つるりと何もかもが吸い取られそうな気分に陥りながらも、大地はより深く快感を感じ取れるようにと、いつの間にか両脚を思いきり左右に開いていた。
「……あっ……あ……ああ……博貴……っ」
博貴の口は抽挿を真似るように動かされ、大地はあっという間に欲望を弾けさせた。迸った蜜はすべて博貴によって嚥下される。自分の蜜を飲み干されることが、未だに慣れない大地にとって、この瞬間が堪らなく恥ずかしい。
「……ああ、もう……俺……」
「身体中が真っ赤だよ」
博貴に指摘されたことで、大地は体温まで上昇させた。
「いちいち、言わなくても……っ!」
両脚を博貴によって今まで以上に広げられ、大地は息を潜めた。次に来る刺激を心待ちにしていたからだ。
「ここが一番欲しいところだよねえ」
尻の割れ目に隠れていた蕾に指が触れ、大地は唇をキュッと噛みしめた。
「ほら、ピクピクしてる」
蕾の縁を撫でて、博貴は笑う。大地の理性が及ばない場所のことをいちいち報告されても、羞恥がますます加速するだけで、嬉しくとも何ともない。それよりも、何も語らず行為に没頭してくれる方が、ありがたいのだが、博貴は違うようだった。
「……実況はいいって……ああっ!」
大地の抗議の声を遮るように、博貴の指先は蕾に沈んだ。