「ユーストレス 第1部」 第14章
「み~た~ぞ~」
なにやら奇妙な声が入り口の方からして、恵太郎がそちらに顔を向けると白川が覗いていた。
「あ、白川さん」
その瞬間、逸輝の身体が背から離れた。拘束から解放された恵太郎は逸輝の方を見ずに白川の方へと走っていった。
「どうしたんですか?」
「やっぱり可愛い顔してやることは大人だな。真下さんが知ったらどうなるんだろうね」
白川はことのほか嬉しそうだ。
「何のことですか?」
首を傾げて恵太郎は聞く。
「いや……いいよ。はいこれ」
渡されたのは、温泉まんじゅうだった。
「……温泉に行ってきたんですか?」
「いや……違うけど……あげるよ」
それだけ言うと白川は恵太郎の部屋から出ていった。
「……友達が来てるの知ってて、茶菓子にしろってことかなあ?」
正確には温泉まんじゅうの形がハートになっていることなど、恵太郎には気が付かなかった。だが恵太郎が今欲しかったのは温泉まんじゅうではなく逸輝が履くことの出来るズボンだ。
白川さん貸してくれないかな……
どうせ頼むなら鳴瀬が良いのだが、帰ってきた様子がない。仕方なしに恵太郎は去っていた白川を追うように扉を開けると外に飛び出して白川の部屋を叩いた。
「白川さんーー!入って良いですか?」
すると白川はすぐに出てきた。
「五月蠅いな……嫌みなら聞く気は無いよ……」
「え、違います……あの……僕の友達の逸輝が今、遊びに来てるんですけど、御茶零しちゃって……ズボン濡れちゃったんです。それで……ジーパンが乾くまで変わりのズボンを貸してあげたいんですけど、僕のサイズだと小さすぎるんです。それで……申し訳ないんですが……そのう……白川さんのズボンで貸しても良いよっていうのありませんか?」
恵太郎が伺うように聞くと白川は「げ」という声が聞こえそうは表情になる。何故そんな顔をされるだろうか。
「……えと……駄目ですか?」
「……私は嫌だね。君達の嫌らしい行為の後始末なんて……ぞっとするよ」
恵太郎には白川の言葉が意味不明だ。
「……嫌らしい……?」
「そうやって自分は何も知りません~って、本当は知っている癖にとぼける男が大嫌いなんだよっ!」
「……それ……誤解です。僕、本当に亀の飼い方知らないんです」
「誰も亀の話なんかしていないだろうっ!……似たような物だけど……」
最後の台詞は何故か鼻の頭を赤くして白川は言った。
「えと……白川さんが貸してくださらないなら……正永さんか、真下さんにお願いしてきます……。じゃあ……お邪魔してごめんなさい……」
仕方ないときびすを返そうとすると、白川に引き留められた。
「ちょっと、真下さんにそんなことを言うなよ。これ貸すよ。だけど……そうだ。もう返さなくて良いから……」
ベシッと胸元にギンガムチェックのズボンを押しつけられ、恵太郎は慌ててそれを手に取った。何となく白川の機嫌が悪そうなのだが、それでもこうやって貸してくれるのだから、悪い人ではないのだろう。今日の白川は、ちょっとご機嫌斜め……そう思えば良い。
「ありがとうございます。済みませんでした……。お仕事からようやく戻ってこられたのに……僕の事まで気遣って貰って……。あ、亀もありがとうございました。大事に育てますね!」
大きな声で白川に言うと、困惑したような表情が返ってきた。ありがとうという言葉を掛けられるのが苦手なのだ。きっとそうだ。
そう考えるとどことなく不器用な白川の事が恵太郎はとても好きになっていた。
「もういいから……出ていってくれないか……」
だがそういう白川の口調は怒ってはいない。恵太郎は先程考えた白川についてのことに確信を抱いた。
「はい……」
白川の部屋を後にして、すぐ前にある自分の部屋の扉を開けると、逸輝がキッチンでぼんやり立っていた。
「逸輝、これ、借りてきたよ。あ、違う貰ったんだ」
逸輝は恵太郎が差し出したギンガムチェックの七分丈のズボンを手に取り、いそいそと履いていた。だが無言だ。
「まだ怒ってるの?」
「別に……」
視線を逸らせたまま、逸輝は頭を掻く。
「じゃあさ、そろそろ宿題しようよ……」
恵太郎が最初の目的を口にすると、逸輝は恨めしげな目を向けて、はぁと大きなため息をついた。
夜七時を過ぎる頃、宇都木が真下の部屋を訪れた。恵太郎の家庭教師として頼んでいたのだが、忙しいであろう中、時間通りにやってくる宇都木は相変わらずだ。
何時も通りに、部屋に設置されている簡易応接セットに座るように言い、丁度入れていたコーヒーを一口飲むまで待ってくれるように話した。すると宇都木は分かったように小さく顔を会釈し、持ってきた鞄を膝の上に置くと真下の前に腰をかける。
ほっそりした体にピッタリと合った濃いグレーのスーツは、周囲から自分の姿が浮くことのないようにと配慮がされていた。特に如月の後ろに立つときの事を考えながら宇都木は日々目立たない色彩を選ぶそうだ。それはどちらが上司であるのかを二人立ち並ぶ姿を見た瞬間に相手に分からせるという理由らしい。
ああ……
出来た秘書なんだ宇都木は……
簡単に諦めるような恋であったなら、如月を宇都木の目の届かないところへ真下の権限の範囲で適当に飛ばしてやろうと一時は思っていたほどだ。
当然、その事を宇都木は知らない。
「真下さん、どうされました?」
「いや……東様がね……」
苦笑しながら真下はコーヒーをかき混ぜる手を止めた。
「東様がなにか?」
「宇都木のことばかり話して困る……。未来はいつ帰ってくるんじゃ……と、言い出すと宥めるのに困るんだ……予定はあるか?」
チラリと宇都木を見ると困惑していた。
「ありがたいお言葉ですが……私は……」
「冗談だよ」
かなり本気の一言ではあったが、宇都木を困らせることは出来ないだろう。
「ところでね、今、鳩谷君のところには友人が来ているそうだ。まだ帰ったというのは聞いていない。ということはまだ部屋に一緒にいるんだろう」
「友人……どちらさまでしょう」
「例の腐れ縁だよ」
苦笑いに近い苦笑を真下は表情に浮かべた。
「……こんな時間まで……ですか?」
表情を曇らせて宇都木は言う。
「今の子供達は塾に通っているのもあって門限がかなり遅いようだよ。まあ……うちのしきたりとは違う世間一般でのことだがね」
東家に引き取られた子供の門限は六時だ。誰が何時決めたのか分からないのだが、昔からそうだった。もちろん、紙に書かれている訳ではない。それでも、自分の力でお金を稼ぐことが出来ない年齢では、門限破りをここでは一切認めない。
塾には出さず、家庭教師をつけるのが東家の方針なのだ。それには訳がある。競争心を付けるために大人数の中で勉強をさせるという世間の常識を東が嫌うためだ。塾で子供達が友人だと言う相手と一点の数字を競い合う姿は、涙が出るほど悲しいらしい。
自分の為の勉強ではなくて、順位を争う為の勉強になっている現状をことのほか東は嫌悪しているのだ。
「では、お友達がお帰りになるまで私はどちらで待たせて貰えばよろしいでしょう……」
申し訳なさそうに宇都木は聞いてきた。
「まあ……あれだ。二人まとめて見てやると良い」
頼むぞという表情を向けると、宇都木は瞳をパチパチと驚いたように開閉させる。
「は?」
「それらしいことを言っても……帰らないんだよ……。それでな、困ってるんだ……」
「躾のなっていないお友達ですね」
宇都木は瞳を細めてそう言った。このうちで育った宇都木だ。門限の六時は相変わらず頭の中に刷り込まれているのだろう。だから躾が行き届いていないと考えたのだ。
「でも、心配なんだろう……さて、行くか……」
「私一人で参りますから……大丈夫ですよ」
言って宇都木は腰を上げ、持ってきた鞄を小脇に抱えた。
「だが……なあ」
「真下さんはお忙しいですから……お仕事の方をして下さい。私は一人でも当然離れに向かえますよ。真下さんは相変わらず過保護ですね……」
小さく笑って宇都木は言う。
「……分かってるんだが……どうもあの鳩谷君は心配でね……。放っておくとぼーっとしていて服を着替えるのも忘れる子供だよ。なんていうか……見ているだけで危なっかしい……」
真下がため息混じりに言うと宇都木は今度声を上げて笑った。
「真下さんまでお友達と同じですね。放っておけないと言うのは過保護の始まりですよ。そんな恵太郎さんを自立させたかったのでは無いのですか?」
「……あ、そうだ。そうだったんだよ宇都木……」
今思い出したように真下は言う。
「確かに恵太郎さんは雰囲気からも放っておけませんね。分かります」
笑いを納めた宇都木は真面目な表情になった。
「そうなんだよ……何時か本人が気が付くだろうと待っていても、私が見ているという存在すら忘れて亀と戯れていたり、ぼんやりしているのが鳩谷君なんだ……。多分、ああいう子は一人で放っておけば食べることも寝ることも忘れているな……」
再度、深いため息をついた真下に宇都木は柔らかい笑みを浮かべる。
「珍しいですね……」
「ん?なにがだい?」
「真下さんがそんな風に振りまわされているのを初めて見たような気がするんです」
いや……
お前にも振り回されたよ……とは真下は言えない。
「……そうか?あ~そうかもしれんなあ……。ああいう子供は初めてだから私も困ってるといった方が良いのかもしれないよ」
眼鏡を直しながら真下は言った。年齢が離れすぎているのもあるのだろうが、それにしても恵太郎は宇宙人だ。意志疎通を図るのに数度会話を交わさなければならないというのはかなり辛い。
「真下さんがとてもきっちりされている方ですので、余計にそう思うのかもしれませんね。ですが、たまには恵太郎さんの様な子供を見て和むと良いと思いますが……。私は恵太郎さんを見ているとなんだかほんわかした気分になります。こう、何て言いますか……根がとても純粋で、二面性がないというか……。多分、恵太郎さんは大人になっても人を騙したり、腹に一物を持つタイプにはならないと思うんです。ですから恵太郎さんを見ていますと私はホッとします」
宇都木がこういうのは、仕事上で相手の腹を探ることが多いからだろう。それは秘書であった当時からそうだ。騙し合いという駆け引きもしばしば出てくる。そんな中、宇都木は相手の本意を探り出すことに長けていた。
基本的に宇都木は、誰かに尽くすタイプだが、その尽くしている相手のためなら手段を選ばないところがある。真下から見ると宇都木はどちらかというと優しい顔をしているが、敵だと判断した相手には厳しい。
「……見ているだけなら和んでいられるが……。それを何とかしろと言う方がいるから困る。宇都木も見て分かるだろう?彼の性格はどうにも変えようがないってね。それをごり押ししようと東様は考えていらっしゃるんだよ……」
「東様は……恵太郎さんとお会いになったことがあるのでしょうか?」
不思議そうな表情で宇都木は聞いてきた。
「ここに引き取って以来、遠目で見たことはあっても、話したことは無いだろうな。あの方がお忙しすぎるんだよ……」
「早々に合わせた方が宜しいのでは……」
真下もそれは考えている。一度でも会い、そして言葉を交わしてみたら分かることかもしれない。早めに予定を組んだ方がいいだろう。
「……そうだね。考えておくよ。さて。やはり私もついていくよ。今頃何をしてるか心配で仕方がない……」
そう言うと宇都木は又笑った。
「ほんとお前、全く手をつけてなかったって……そりゃないだろ……」
キッチンテーブルにお互い向かい合わせに座り、宿題をしているのだが、逸輝はさっきからそればかり言うのだ。もう恵太郎は耳にたこができて既にゆであがっている。
「……何度も同じ事言わないでくれる?僕だって……その……忙しかったんだから……」
忙しかったわけではなく、ただ気が進まず放置していただけだ。本気で勉強のない世界に行きたいと出された宿題を見ながら思っていた。
「……お前……残りの休み、これにかかりっきりになると俺は思うけど……。だから、俺がやったところは写せって……」
シャーペンを手の中で回しながら逸輝は言う。
「やだ。今回は自分で全部するんだ……」
本当は写そうかなあと思っていたのだが、もしそれが真下の耳に入ったら……そう思うと出来なくなったのだ。ズルをしている子供に思われたくなかったのだろう。もちろん今までは気軽に写させて貰ってきたが、何故か真下にだけはそれを知られたくなかった。
「……あんまり進んでないし……」
チラリと恵太郎がやっている問題集を見て逸輝は呆れたように呟いた。
「う……五月蠅いな」
両手で隠しながら恵太郎が逸輝を睨み付けると、何故か苦笑する。
「ケイってほんと可愛いよな……」
ムッ……
「僕がそう言われるの大嫌いなの知ってるだろ……」
「だけど、可愛いんだから仕方ないよ……いいじゃん。別に悪口言っているわけじゃないんだから……」
悪口でなくとも腹が立つ言葉はある。
「僕は可愛くないっ!」
男に可愛いと言われてもちっとも恵太郎は嬉しくない。男らしいと嘘でも言って貰えた方がどれだけ嬉しいか分からないほどだ。だが逆にもし本当に男らしいね……なんて言われたところで信用は出来ないだろう。
「いいけどな……それより手を動かせよ。いつまで同じ計算やってるんだよ……」
「ゆっくり考えてるんだよ……急かさないでくれる?」
実は良く分からないから同じ問題で手が止まっていた。それを正直に逸輝に言えないのが小さな恵太郎のプライドなのかもしれない。
「……なんかさ、すっげえケイって俺に反抗的になってない?」
口元を膨らませた逸輝は機嫌が傾いているのが恵太郎には分かった。いや、来てからすぐこの状態になっていると言った方が良い。
「別に反抗的になんかなってないよ……」
「じゃあさ、なんで、いつもなら写してるのに、今回は自分でしようなんて無謀なこと考えてるんだよ……」
逸輝はブチブチと不満を口にする。
「自分でするのは当たり前のことだから……。ううん。僕、いつも逸輝に頼ってる自分が嫌なんだ。佐中のおばさんのうちにいたときも、おばさんに頼りっきりだったし……だから、僕、ここに来たのは良い機会だから自分で出来ることは自分でやろうって決めたんだ。そりゃ……勉強は嫌いだし……写させて貰った方が早いんだけど……」
気持ちはすぐに楽な方を選びそうになるのだが、絶対に自分で何とかしようと決めたのだ。だから逸輝に頼るわけにはいかない。
「俺に頼るくらい良いだろっ!」
「僕が嫌なんだ……」
よく分からない問題をじっと見据えて恵太郎は言った。
「どうして?」
真下のような立派な男に、情けない自分ばかり見せたくないのだと恵太郎は思うから。だがそれは逸輝には言えない。
「だから……言ってるだろ。誰かに必要以上に頼る自分が嫌だって……」
父親と一緒の時はここまで酷くなかったのだ。佐中家にいる間に甘やかされ、ただでさえ依存心の強かった恵太郎はそれに安穏としてきた。そんな自分を心の何処かで変えたいと今まで望んでいたのだ。それには環境を変えなければどうにもならない事が多かった。
ようやくここに来て、元の自分に戻ることが出来るはずなのだ。
「誰にそんな知恵付けられたんだ?ここにいる奴らか?」
「知恵じゃないよ……それに誰かにそうしろって言われた訳じゃないって……。今までもそう思ってきたけど……思いきれなかったんだ……」
自立して、自信を持った秘書達がここに沢山いることを恵太郎は知った。あんな風になりたいと本当に思った。だから自分から変わりたいと考える。それの何処がいけないことなのだ?
「嘘だ」
逸輝は信用しない。
「嘘って……僕がこうしたいって言ってるのに、どうして逸輝が反対するわけ?これは……僕が決めたんだ」
顔を上げ、逸輝の方をしっかり見つめて恵太郎は言う。
「絶対誰かに言いくるめられてる」
だがやはり、逸輝は信用しない。
「誰かにこうしろ、ああしろって言われた訳じゃないよ……」
言いながら恵太郎は途中まで書いた計算式を消しゴムでごしごしと消した。間違っていることに気が付いたからだ。
「ケイは俺の言うとおりにしてたら良いんだよっ!」
あまりにもその言葉にむかついた恵太郎は、持っていた参考書を逸輝に投げつけた。
「僕はっ!自立するんだっ!」
誰かに依存しすぎる自分を変えたい。ただそれだけだ。
「いてえなっ!本なんか投げるなよっ!」
「逸輝が悪いんだろっ!僕は逸輝の所有物じゃないっ!僕は僕だっ!」
時折今までもふと頭にちらついていたことを恵太郎は思わず言ってしまった。
「誰も所有物なんて言ってねえだろっ!」
かあっと頭に血を上らせた逸輝は本気で怒っている。しかし、恵太郎も怒っていたのだ。
「言ったじゃないかっ!逸輝は僕が何にも出来ないからって可哀相だと思ってる。だからそんな風に言うんだっ!僕は可哀相でもなんでもないっ!自分で出来ることは自分でするんだっ!誰かに頼りすぎる自分はもう嫌なんだっ!そりゃ僕は鈍くさくて、のろまだし、人より何かするの……遅いかもしれないけど、だからって同情されるの嫌だっ!」
自分で言って情けないことだったが、本当にそうなのだから仕方ない。だから変えたい。変えるのだ。
「同情なんかしてねえよっ!泣くなよ……」
急に声を落とした逸輝はばつの悪そうな表情になっている。泣くなと言ったが、恵太郎自身は泣いてなどいなかった。涙など流していない。
「……なっ……泣いてなんかないっ!」
嘘だと思いながらも目元を拭うと、冷たい涙の感触が手の甲に当たった。
「俺は……その……なんだ……」
逸輝はチラリとこちらを見て視線を下げる。
「……なに……」
興奮していた自分を反省しながら、恵太郎も俯いた。
「ケイが好きなんだよっ」
「何いってんの?僕だって逸輝が好きだよ。それとこれは違うだろう?」
話題を変えようとした逸輝にムッとしながら恵太郎は言う。
「お前が言う好きと俺の好きは違うんだっ!」
頭をガリガリと苛立たしげに片手でかきながら逸輝はやはりこちらを見ない。
「好きに色んな種類があるの?」
そんな話は聞いたことがなかった。
「あるっ!俺は……っ!」
「君達、いい加減にしてくれないかな……」
いきなり二人の会話に割って入った声は真下のものだった。恵太郎が入り口を振り返ると真下が呆れて立っており、その後ろに宇都木が立っている。しかも宇都木は笑いを堪えたような表情でこちらを見ていた。
「……え……えと……いつ来られたんですか?」
「随分前だよ。声は掛けたんだが……聞こえなかったかい?」
はあ……とため息を付きながら真下は言った。