Angel Sugar

「真実の向こう側」 第24章

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 何とか身体を起こした冬夜はいつも通りに局入りしようとすると玄関で海堂が待ちかまえていた。
「なんだこいつは……」
 昨日冬夜が置いていった手紙を握りしめて、海堂は本気で怒ってる。
 当然だろう。
「済みません……」
 海堂の怒りは分かるが、冬夜には謝ることしかできない。
「済みませんじゃない。俺はそんな言葉を聞くためにここで待っていた訳じゃないぞ」
「はい……」
 視線を床に張り付かせて冬夜は言う。今、海堂の顔を見るのも辛いから。
「とりあえず……アナウンスルームに行こう。今日、浅木くんが来るかどうか心配だったからここで待っていたんだが……。来てくれて良かったよ」
 安堵のため息をつくのが冬夜には聞こえた。よほど心配してくれていたのだ。そんな海堂を裏切った自分が辛い。
「……」
 一歩先を歩く海堂を追いかけるように冬夜はアナウンスルームに入った。そこで膝をつきあわせたかたちで椅子に座り、散々冬夜は海堂に何故辞めたいのだと問いつめられた。当然本当の理由など言えるわけもなく、冬夜は貝のように口を閉じることしかできないでいた。
 どうしよう……
 どう言えば辞めさせてもらえるんだろう……
 あ……
 そういえば……
 ビデオ……
 青柳が置いていったビデオはどうせ冬夜たちの恥ずかしい画像でも入っているに違いない。それを海堂に見せたらどうなるんだろうか。
 今まで自分からゲイだと公言したことはない。だけど一度で良いから胸を張って言ってみたかった。
 その証拠がここにある。
 これを見たら海堂もおそらく冬夜が辞めることに頷いてくれるにに違いない。
「あの……これ……」
 冬夜は青柳が置いていったビデオを海堂に差し出す。すると海堂は怪訝な表情でこちらを見た。
「なんだこれは……」
「これを見てもらったら分かります……」
 海堂は困惑した表情をしながらも、ビデオをセットした。
 いいさ……
 普段の冬夜からでは想像付かない行為だろう。だけど辞めるということで自分がゲイだとばれようが、もうどうでもいいのだと何故か吹っ切れている。
 不思議だな。
 悪い気はしない……。
「おい……浅木くん……これ……一体何処で手に入れたんだ?」
「え……いえ……もらったんです」
「誰に……」
「それは……」
 見て分からないのだろうかと冬夜が海堂に近寄ると、テレビ画面には轟々とうなりを上げながら燃えさかる炎が見えた。
 あれ……
 思っていたのと違う……
 じゃあこれはなんだ?
「え、何ですかこれ……」
「な……なんですかじゃないぞ。お前……これ……ああ、巻き戻すよ……そうすれば事の重大さが分かるから……」
 海堂はそう言ってビデオを巻き戻すと、冬夜にも最初から見せてくれた。
 画面は住宅街。しかも何処かで見た場所だった。
「ここ……何処かで見たんですけど……」
「当然だ。今、大騒ぎしている放火された現場の一つなんだから……こいつはまだ火が上がっていない画面だよ……」
 言いながらも海堂は画面から目を逸らさない。
 冬夜も同じように見ていると、見知った男がこそこそとやってきた。夜であるため、周囲は暗いのだが、道に設置されている明かりはその人物の顔の表情をきちんと捉えていた。
「どうしてこの人が……」
「それはいいんだ……よく見ておけよ……」
 相変わらず画面から海堂は視線を逸らさない。
 そんな海堂に促されるように冬夜も画面を見据えていると、冬夜たちの知っている男はペットボトルの中身を積まれたゴミの山にふりかけていた。そうしてポケットからライターを取り出し火を付ける。
「これは……放火魔?嘘でしょう?」
「……すごいぞスクープだ……」
 火を付けていた男は報道世界の田上さんだった。

「……これを何処で手に入れた」
 海堂は他の人に見られないようにと、先程見たビデオを取り出してしっかりと両手でもっていた。いや、掴んでいると言った方が良いだろう。
「……いえ……その……ニュースソースは明かせません」
「……出所は良いとして……田上さんの経歴を調べてみる」
「……はあ……でもこれ……本当なんでしょうか?」
「まて……とにかく経歴だ」
 海堂はパソコンを叩きながら田上の経歴を調べ出した。額にうっすらと汗を浮かべているところを見ると海堂はこれでもかなり動揺しているのだろう。
 その隣でぽつんと冬夜が座っている。
 青柳が夜な夜な歩き回っていたのはこれを撮るためだったのだろうか?
 冬夜はそれを確信した。
 彼は……
 どうしても犯人を捕まえたかったんだ。
 だから戻ってきた?
「おいおいおい……なんだこれ……」
 海堂が急に声を上げた。
「何でしょう?」
「みろよ……田上さんは過去の放火の……丁度、最後の放火で死傷者がでた一週間後にパリの大学に短期留学してるぞ。で、帰ってきたのは半年前だが……」
「……じゃ……じゃあ……昔の放火も田上さんが?これって同一犯だと言われていますし……」
 身体が震えるのが冬夜にも分かった。それほど重大な事実を自分たちが掴んでいることをようやく知ったからだ。
 では……
 青柳は犯人を知っていた?。
 だから田上を追ってパリに行った。
 じゃあ……
 青柳が帰国した理由は、また田上が放火を始めたから?
 そうなのか?
「これを……どうしたらいいんでしょうか?」
 どうして良いか冬夜には分からない。
 警察に……
 そうだ……
 警察!
「変だと思ったんだ……。これは今朝聞いたんだが、昨日青柳が朝、警察に引っ張られてから昼には戻ってきたらしいじゃないか。本当に容疑者ならそんなに簡単に釈放されないぞ……。いくら任意同行でもな」
 青柳はこのビデオを警察に見せたのか?
 違う……
 今朝……
 今朝マスターを別のところに持って行くって言っていた。
 それなんだ……
 昨日は警察でこの話をしたんだ。
 だから釈放された。
 そうだったんだ……
「浅木くん!」
「は……はい」
「放火事件の捜査本部に連絡をしてみてくれないか?警察にそんなたれ込みがあったかどうかさ……。俺はプロデューサーに話を通してくる」
 言って立ち上がった海堂はやはりしっかりとビデオを握っていたが、その手は震えていた。
 なんだ……
 海堂さんもびっくりしてるんだ……
 そのことに何となく冬夜はホッとした。
「わかりました……」
 警察に確認を取る電話を冬夜は掛けることにしたが、自分の辞める話は何処に行ったのだろうという思いがふっと心を掠めた。
 これが終わってからでもいいか……
 自分自身を納得させるように、心で呟きながら冬夜は今の問題に集中することにした。

 証拠のビデオがあることに関し、冬夜たちの番組スタッフには箝口令が敷かれた。当然、昼からの打ち合わせでは、全員一致で放火の特集をトップに出すことになり、いつも気乗りしない事ばかり言うディレクターの溝口も乗り気だ。
「それで……。警察の方はどう言っていた?」
 プロデューサーの五十嵐が聞いてくる。
「捜査本部の担当者はうちがどうしてビデオを持っているのか、その点を随分と聞かれましたが、今逮捕令状を裁判所に申請しているらしくて、問題のビデオを流しても良いが夕方にしてほしいそうです」
 電話での会話を冬夜は伝えた。
「それは、うちの番組は使って良いってことだよな?」
 溝口がキョロキョロとしながら聞いてきた。
「ええ。ただし、別番組とかで先に流されると困ると釘を刺されました。一応田上さんを自宅にいたところから任意同行という形で拘束しているらしいんですけど、確定するまでは……ということのようです」
「それにしても……あの田上さんがねえ……私は信じられないよ……」
 癖になっているのか溝口は、また胃の辺りを押さえている。
「そうですか?あの人、絶対なんかやりそうな目つきしてたじゃないですか」
 中隅が言って笑った。その横から江成が口を挟んだ。
「姉さんはすぐそれだあ~」
「なんですって」
「いえ……何でもないっす……」
「田上さんが……というのはやめよう。そんなものを考えたところで時間の無駄だ。なにより見知った人間でも犯罪を犯したんだからきっちりその辺りはニュースとして報道しないと……」
 五十嵐がここにいる全員の気持ちを引き締めるように言った。
 平静を保っているがこれでみな、随分と動揺をしているのだ。だから妙に茶化したりしてしまう。その心理は冬夜にも分かる。
 本当は違うかもしれない……誰もがそう思いたい。同じ報道する立場の人間が犯罪を犯していたなんて考えたくない。
 だけど、事実は映像という形で残っていた。これは紛れもない事実であり、決して否定することなどできないのだ。
「他の局の友達にチラリと聞いた限りではビデオまで手に入れていないようですよ」
 海堂は嬉しそうに言った。
「田上さんの経歴を見たが……何処かすり切れたところがあったんじゃろうな……。エリートは四角四面のところがあるから、何かに没頭して気が付いたら途中で息切れしたのかもしれん……。わしは笑えんよ……」
 ぽつりと言ったコラムニストの坂田の言葉に全員が静まりかえった。

 長い会議を終え、冬夜はいつもするように携帯の電源を入れた。会議前には電源を落とすからだ。すると隆史からメールが入っていた。

隆史
今日、時間あいてないか?少しでいいんだ。

 メールが届いた時刻は丁度昼を過ぎた時間だった。冬夜はメールを返信せずに電話をかけることにした。
 すると隆史はすぐに出てきた。
『悪いな……忙しいところ……さ』
「それはいいんだけど……今からなら時間取れるけど、どう?五時から僕の方もスタジオに入るから遅くまで出られなくなるし……」
『いいよ。長くかかる話じゃないから……じゃあ……屋上にいるよ……』
 言って隆史から電話を切る。
 何だろうと思いながら冬夜は携帯をポケットに戻すと、屋上に向かった。

 エレベーターを降り、屋上への扉をあけて外に出ると、隆史は柵に手をかけて眼下の景色を眺めているのが見えた。それはどことなく気落ちしているようにも見える。
「隆史……!」
 冬夜がそんな隆史に走り寄りながら叫ぶと、ゆっくりと振り返った。
「……ごめんな……忙しいところ……」
「いや……なんだよ。なにかあった?」
 隆史の隣に並び、冬夜は柵を掴む。
「……白状しておこうと思ってさ……」
 突然のせりふに冬夜の心臓が一瞬はねたように鼓動した。
「なんだよ……白状って……」
「ずっと言いたくて言えなかったことがある……」
「かしこまって……なんだよ……」
 無理矢理作った笑みを浮かべて冬夜は言ったが、隆史は真剣な目をこちらではなく、夕闇迫る景色に向けていた。
「いたずらメール……あれ……うちの妹なんだ……」
「……え?」
「だから……冬夜が言ってただろう?いたずらメールが来るって……あれ……うちの妹がやっていたんだ」
 隆史には大学生の妹がいる。冬夜は以前チラリと見たことはあったが会ったことはない。
「妹さん……僕のこと知ってたっけ?なにか……まずいこと言ったかな?」
 青柳のことで意外にも何処かで失敗していたのだろうか?
「……妹な……絵美って言うんだけど……。あいつ青柳に熱あげててさあ……。もうはっきりいってストーカーの域入ってた。この間、両親が来たのも、俺じゃあどうにもならなかったから相談して……でも、絵美は馬鹿だから分からないんだよ……」
 俯き加減に隆史はそう言ってため息をつく。それは疲れたような声だった。
「……それで、どうして僕にいたずらメールって……」
「……青柳が絵美にまとわりつかれてほとほと困ったらしくて、とうとう言ったらしいんだ。とあるニュース番組に出ているサブキャスターとつきあってるってね」
「……どうして僕が……」
 青柳は冬夜の名前まで話したのだろうか?
「いや……サブとつくキャスター全部に嫌がらせしてたんだ……。あいつ……ほんと……俺、情けないよ……」
 柵を掴んでいる隆史の手が震えていた。
「……相談してくれたら良かったのに……」
 だからといって、何かが出来たかどうか分からない。だけど一人で悩む隆史の話を聞くことくらい出来たはずだ。
「……冬夜にも迷惑掛けてるの知って……言えなかった」
「それじゃあ……青柳くんと話したって言うのは……」
「あ、うん。俺は最初青柳に絵美が騙されてると思ってたんだ……。それで青柳に苦情をいったら逆に怒鳴られてさあ……話してみて分かった。絵美は青柳が日本に帰ってきてからつきまとうようになったらしいんだけど。確認したら確かに絵美の部屋には青柳の映っている雑誌の切り抜きとかパリコレのビデオとか……怖いほどあった。それを知った俺は青柳に逆に謝る羽目になってさ……。何で俺がって……思ったけど……絵美の兄貴は俺だし……」
 淡々と小さな声で言う隆史が本当に可哀想に冬夜には思えた。今まで何も話してくれなかったけれど、ずっと冬夜と自分の妹との板挟みになっていたのだろう。それが本当によく分かった。深読みしすぎかもしれないが、青柳を途中から応援し始めたのも、妹のことがあったからかもしれない。
「青柳くんに言われて……僕のこと……?」
 それが隆史の弱みだったのだろう。
 だから隆史は途中から青柳と冬夜のことを応援する立場にならざる終えなかった。それはとても辛かったに違いない。
「違う」
「違うって?何が」
「俺は青柳と話して悪い奴じゃないと思ったよ。最初、俺の妹のことを青柳は警察に訴えるところまで来ていたらしいんだ……。だけど俺と話して……暫く待ってくれるって言った。びっくりしたけどね……。でも聞くと青柳にも妹がいたんだってさ。だから俺の気持ちが分かるって言ってた。俺は青柳と話して初めて想像していた人物とは違うって思ったよ……」
 顔を少し上げて隆史は言う。確かそんな言葉を海堂からも聞いたことを冬夜同時に思い出した。
「……それって……」
「それで……何となくうち解けた感じで話せたんだけど……。あいつ冬夜が好きだって言うんだよ……笑うだろ?それ信じてもらえないって愚痴ってたよ……俺に言っても仕方ないのにさあ……」
「……嘘だよそれは……」
「最初は遊びでつながっても……何とかなると思ったみたいだな。だけど冬夜がごねたから今度はあの手この手で自分の手の中に縛ろうとしたけど失敗したって笑ってたよ」
「笑ってた……って……」
 信じられない。
 一体どういう事になっているのだろうか。
「今朝……電話もらった……ありがとうってさ。変だろう。似合わないよな……青柳に俺、感謝されたんだぜ。俺の妹は酷いことしたっていうのに……」
 泣いているような笑顔を隆史は浮かべて言葉を続けた。
「俺は……身内の恥をどうしても話せなかったから……。それに迷惑を掛けているのがうちの妹だと知られたら、冬夜に嫌な思いにさせてしまう。だから言えなかったんだ。だったら冬夜が青柳となんとかうまく行くように俺が動けば償いになるだろうって思った。だってこれって誤解しあってるけど両思いじゃないかって……。冬夜はほんと、好きな相手でもいつだって身体だけだとか言って誤魔化す男だって俺は知ってたからさ……。本当に嫌いな相手と一緒には暮らせない……。それで俺がなんとかしてやろうって……そう単純に考えたんだ。ごめんな」
 今……
 隆史は何を言ってるのだろう……
 冬夜は既に頭の中が飽和状態だった。
 いろんな事が一度に動き出したせいで、思考が追いつかない。
「……妹さんは……」
「……散々振り回したくせに……あいつ今度は違う俳優に目がいったよ。なんでも警察に連れて行かれるような男はいやよとか言ってさ。信じられるか?警察沙汰になりそうなところまで自分がなってたのに……。俺は……もうあいつを無視することにした。これで警察沙汰に今度なっても仕方ないと思うことにしたんだ。一度痛い目にあえば分かると思うから……。それは両親も納得してたよ。情けないことに家族は絵美を止められないんだ。あのパワーがどこから来るか俺は知りたいほどだよ……。これは昨日の晩の話。夜、行ったんだあいつのとこにさ……。綺麗さっぱり青柳の写真とか無くなってたよ……また違う俳優の写真が部屋に一杯貼られてた。ぞっとしたよ……」
「妹さんは……まだ若いから……」
「……そう思いたいんだけどね……。多分あいつも一人暮らししてこっちの大学通ってるから寂しいんだと思うんだ……だから現実をちゃんと見られないんだと思う」
 冬夜には何となく隆史の妹の気持ちが分かる様な気がした。
 一人だから寂しい。
 何かに……
 誰かに没頭したい。
 その気持ちは本当によく分かる。
「隆史が一緒に暮らしてやれば?妹さんが卒業するまでとかさあ……。まあそうすると隆史がうちに彼女連れ込めなくなると思うけどさ」
「あ、それいいな」
 もう無視すると言っていた割には、隆史はそんなことを言う。やはり兄姉だ。いくら頭で放っておくしかないと決めても、本当は心配なのだ。
「僕のことは心配しなくて良いよ……別にたいした嫌がらせじゃなかったし……考えると可愛らしい嫌がらせだったよ……。本当に気にしないでくれよ」
 でも……
 最後のゲイっていうのは?
「可愛らしいって……。詳しくは恥だから言わないけど、絵美が青柳にやったことは笑えないことばっかりだったんだ。だからさあ……冬夜に実害があったら……って考えてたら、言えなかった。俺……ほんと、お前に申し訳ないと思ってたから冬夜にそう言ってもらえてホッとしたよ」
 頭をかいた隆史はようやくいつもの笑顔を冬夜に向けてきた。
 それにしても笑えないことって何だろうか。
 きっとよほどのことをしたのだろう。だから隆史は土下座をして青柳に謝っていたのだ。それらが分かると昨晩の屋上でかわしていた会話も辻褄があう。
「ところでさ。妹さんは僕がゲイってこと知ってたのかな?妹さんと僕は会ったことがないから分からないんだけど……そんなメールも来たからさあ……」
「話してないよ。友達なのは知ってるかもしれないけど……。青柳がサブキャスターとつきあってるって言ったらしいから、それで相手は男だと勝手に思ったんじゃないか?多分そんなところだと思うけどな……。不特定多数のサブキャスター狙ってたしさ」
 そうなのかもしれない……
 分かると単純なことだったのだ。
 いや……
 単純じゃないけど……
 隆史にすると本当に大変だったのだと冬夜は心底同情した。
「俺……勘違いして冬夜を煽ってたんだな。本気で嫌だったんだ……青柳のこと……」
「……それは……」
 違う……
 違うんだ……
 僕は……
「まあ……友達のお節介がちょっと過ぎたって事で許してくれよ」
 苦笑しながら隆史は言った。
「違うよ……僕は……青柳くんに恨まれてるんだ……」
「は?まさか……」
「そうなんだ……その辺りの事情はまた今度詳しく話すよ……」
 今度はこちらが俯く番だ。
「……青柳も別な意味で誤解されやすいからな……」
 いつの間にか隆史が青柳の理解者になっている。二人とも同じように妹を持つ身として何処かそりがあったのかもしれない。
 青柳の場合はもう亡くなってるのだが、やはり妹を持つ兄の立場がよく分かったのだろうと冬夜は思った。
「そろそろ行くよ……ちょっと大変な事件が入ってるから……」
「あ、もうそんな時間だった?」
 隆史は慌てて腕時計で時間を確認する。
「うん。今日はびっくりするようなスクープが出るから……良かったら見てくれよ」
 今は……
 そのことだけに集中したかった。
 青柳のことを考えると、どうにかなってしまいそうな自分がいたから。
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