「黄昏感懐」 第1章
既に尖った男のモノは、いつものように狭い中を強引に割り裂いた。充分に慣らされる前に無理矢理押し入れられた所為で、皮膚は突っ張ったような、ピリピリした感触をこちらに伝え、同時に鈍い痛みも一緒に感じた。だがどちらとも拒否することもなく宇都木は表情の変えない男に手を回した。
「……あ……あっ……」
「宇都木……お前は本当に……何処でもありだな……」
そう言った男の蔑むように見える瞳は真っ青だ。真っ黒な髪はどこから見ても日本人であるのに、何故か瞳だけが青い。祖母がドイツ人だった所為で、隔世遺伝だろうと本人は言う。
「……何処でも……したいときにするんです」
喘ぎと共に宇都木はそう言って、自分の内部に取り込んだ男のモノを深く取り込むように腰を目一杯下ろした。すると最奥の敏感な部分に男の先端が当たり、身体の芯から震えた。その瞬間自分の内部が収縮するのが分かる。
「はっ……あ……」
「……お前のここは……すごいな……っ……」
やや掠れた声で男は言った。うっすらと額に汗を浮かばせる表情を見ると、自分に感じている事が分かり宇都木はホッとする。
「……ああ……貴方も……イイ……。だから……動いて……」
さっきから男は乗り気では無いのだ。そんな男のモノを無理矢理銜えて鍛えると自ら上に乗り、自分の中に誘ったのは宇都木だった。
その乗り気でない理由を宇都木は知っていた。
「……無理矢理私は犯されてるような気がするんだが……」
言って小さく男は笑った。この表情が宇都木は好きだった。
「そうですか?」
はあっと息を吐いて宇都木はなんとかそう言った。こっちは自分の中に男のモノを入れたままで話をするもの辛いのだ。苦しいのではない。快感に流され、何かを考えることを止めたいのだ。
「ああ……こういう場合も強姦になるんだろうか?」
「私が強姦されているんですよね……」
「まて、こっちが強姦されてるんだ……。お前が、俺の息子を勝手に銜えたんだろう。全く……っ……」
男があまりにもベラベラ最中にしゃべることに腹を立てた宇都木は、何度も自分で腰を振って見せた。それに煽られたのか男の方もようやくその気になったようだ。
「……あ……もう……お前という奴は……」
言いながらこちらの腰に手を回し、ようやく自分の腰も動かし始めた。
「あっ……あっ……あああっ……もっと……」
下から突き上げられると、気が狂いそうな快感が身体中を走る。
「さっさと終わらせよう……」
それがどんなに酷い言葉だということを自覚していないのだろうか……
宇都木はそんなことを思ったのだが、口には出さずに、後は快感だけを追った。
男の名前は如月邦彦。
宇都木がずっと想い続けている相手だ。だが如月には心の中にずっと誰かを住まわせている。その誰かも宇都木は知っていた。
宇都木は東都グループの会長に幼い頃に拾われ、気まぐれだかなんだか知らないが、自分を家族として迎え入れてくれた。
何か秀でていないと、ここからも追いだされてしまうと思った宇都木は勉学に励み、スキップで大学を卒業すると今度は資格を取り、犯罪ギリギリの事までやってきた。いや、法の抜け道をくぐり抜けられる悪事なら幾らでもやれる。それは東に自分が有能であると思われたかったのだ。そうすれば又捨てられることはないからだ。
金持ちの気まぐれ……
自分を引き取ってくれたのは多分そんなとこなのだろう。
それでも良いとあの時は思った。毎日お腹一杯御飯を食べることだけを望んできた宇都木だ。気まぐれだろうが何だろうが、三食を保障してくれると言われれば、どんなところにだってあの時は行っただろう。
そうして東の屋敷に住むことになった。自分には分不相応な教育を受けさせて貰い、現在は東の一番若い秘書として働いている。
秘書と言っても仕事の話より、どちらかというと親戚連中の動向を逐一見ていると言った方がいい。ここまでグループが大きくなると、普通は疎遠になりがちな親戚すら、東都というブランドにあやかろうとするのだ。そうであるから例え身内であっても、信用ならない所も多い。家族や親戚を疑うなど、他の人から見れば、おかしな事であるかもしれないが、両親ですら信用できないと考える宇都木にとって、何等不思議なことでは無いのだ。
実際、そんな親戚がいたのか?というような親戚の一人が、東都の名前でサラ金に金を借りていた事もあった。そんな親戚を表沙汰にせずに切り落としていくのも宇都木の役目であった。それにたいして、酷いことをしているという気持ちはこれっぽっちもない。逆に、関係もないのに、東都という名前を使われたことの方が腹立たしいだけだ。
そんなことをしている所為か、身内の間では宇都木はダークなイメージがあった。目を付けられないようにしろなどと、こそこそと話しているのを聞いたこともある。
別にどうでもいいんですが……
自分に後ろめたいことが無ければ、宇都木を怖がる必要など無いのだ。こちらは粗探しをしているのではない。東都という名前に傷がつくような事が無いように、身内を見張っているだけなのだ。普通に暮らしていてそんなことなど無いだろう。腹黒いことを企むから、こちらはそのままを東に報告するだけだ。逆に何も知らないまま巻き込まれそうな場合はこちらが助けの手を伸ばす。
恨みがあるわけでもない。ただ、東から有能だと思い続けて貰えればそれで宇都木は幸せなのだ。
それが……いつの間にか違うところに幸せを感じるようになっていた。
如月邦彦……
東の娘の子供が舞と祐馬と言うのだが、舞の婿が如月の兄である。が、二人が結婚する前にすでに宇都木は、また親戚が増えるという憂鬱を抱えながら、新しい如月という一家を調べることになったのだ。その時、宇都木は二十二になったところであった。その頃はまだ、先任の先輩に今の自分がしている仕事を引き継ぎされている真っ最中であった。
「子供の出来が良い普通の一家だな……借金もなく綺麗なものだ。親戚も田舎の人間が多くて都会すれしてない」
先任の吉田はそう言って笑った。こうなると合格なのだ。時には政略結婚のようなものもあるのだが、滅多に結婚に対して東はとやかく言わない。逆に自分の身内に金目当てで近づく男や女は、こうやって宇都木のような存在に上手く追い払われるのだ。
「そうですか……これが写真ですね」
宇都木は何気なく家族が映っている写真をみた。その中に一人目立ったのが如月だった。
如月家の家族写真を見た宇都木は、その如月に目が奪われた。
目が一人だけ青いのだ。回りに映る家族はみんな黒いのにだ。
どうしてだろう……
不思議に思って調べてみると、祖母がドイツ人だったのだ。それで世代を置いて隔世遺伝したのだとわかった。
その時はちょっとした興味だけで終わった。如月家には借金もなく、妙な繋がりを持つ親戚も無かった。
それが実物に会い、驚いたのだ。
舞の結婚式に出ていた如月は写真よりも素晴らしい本当に綺麗な青い瞳を持っていた。
がっしりとした体格でありながら余分な脂肪のない締まった体……
自分のようにほっそりした顎ではなく、男らしく張った顎に整った眉。肌の色は健康的に適度に日焼けしていた。
だがやはり一番印象に残るのは、真っ黒な髪に青い瞳だ。それは日本人でありながら何処か異国の人間のように宇都木には思えた。
これは一目惚れというものなのだろうか……
会ったその日から一日たりとも瞼裏から離れない如月の青い瞳が、自分を見つめるのを想像しては、一人で夜を悶えて過ごしたこともあった。
会えば出来るだけ話をするようにし、アメリカに出張すれば用が無くとも必ず如月になにかしら理由を付けて様子を伺うことにしていた。向こうもこちらと同い年と言うことと、もともと東都系列ではなく、全く違う所から入ってきた人間であったため、宇都木の詳しいことを知らなかったのも気安く話せた理由だろう。
だがこちらは如月が誰とつき合い、何時別れたのかも調べが付いていたのだ。
宇都木はその事を深くは考えていなかった。別れたのなら今はフリーだなんて甘く考えていたのだ。如月ほどの男なら直ぐに相手を見つけるだろうと思った。それが自分でありたいと思っていた。
だが……
「悪い……私は仕事が混んでいて、どうにも出しにいけない。これを帰りにポストにでも入れてくれないか?」
東都のアメリカ支社に顔を出すと如月は宇都木を見つけて挨拶よりも先にそう言うと、エアメールを渡してきた。
「それは……構いませんが……社内で出せないものですか?」
「……個人的なものだからさ。社内で出したら誰かに見られるかもしれないだろ?それも困るしな……」
言いながら如月は苦笑した。
「そうですか……忙しそうですし。構いませんよ」
クスッと笑って宇都木がそう言うと、「全くなあ……」といってスーツを羽織っていた。直ぐに出かけるのだろう。そう思った宇都木は「じゃあ……また」と言ってその場を後にした。
ビルを出ると、そこから暫く歩き、ポストまで来た。そして先程如月から預かったエアメールを鞄から取り出して、もう少しで中に落ちると言うところで、それを又掴んで鞄に入れた。
宛先を見てしまったのだ。
澤村戸浪……
その名前も、顔も良く知っていた。向こうは知らない。こちらが如月のことを調べたときに出てきた男だった。
まさか……
まだ忘れていないのだろうか?
二年ほど一緒に暮らしていたのは確認済みだが、その後自然消滅に近い形で別れている筈だった。相手の男はどうして如月が選んだのだというくらい、面白みのないただ真面目なだけの男だった。
確かに……
容姿は人並み外れてはいる。だがどう考えても忘れられないという程の男では無かった筈だ。だから如月が飽きて捨てたのだろうと当初は思っていたのだ。
それが今頃どうして如月がその男に手紙を出すのか、宇都木には気になって仕方なかったのだ。
「……どうせ……どうせ届いたところで、あの男はもう今の住所にはいない……」
宇都木は引っ越し先を調べてはいたが、エアメールの住所を見ると、以前の住所になっている。これでは届かないはずだ。届かないものを送らなくても良いだろう。
転送されるはずだと分かっていながら、宇都木はそう思いこむことでその手紙を出すことをせずに鞄にしまい込むと、ホテルに戻った。
破って捨てるか、灰皿の中で燃やしてしまうか……それとも……
ベットに横になりながら、鞄をチラチラと宇都木は見ていた。自分がとんでもないことをしているというのは分かっている。だがどうあっても投函する事が出来ない。
散々迷って身体を起こすと、鞄に手を入れエアメールを取り出した。
どうせ捨てるんだから……
震える手でエアメールの封を切り、誰もいない部屋をキョロキョロ落ちつきなく見ながら中の手紙を取り出した。
そしてその中身を読んであまりの内容に気を失いそうになった。
……如月は……
こんなに誰かを想える男なのか……
プライドを曲げ、相手に懇願してまでよりを戻したいと思う男だったろうか……
こんなの……
如月ではない……!
違うっ!
こんな情けない男でもない!
手紙は淡々と相手の男に許しを請う内容だったのだ。だが文章全体に相手に対する想いが溢れている。
こんな……
こんなの……
愛しているという言葉が何度も文面には書かれていた。それは自分に向けられているものではなく、大陸向こうにいる戸浪という男に捧げられた言葉だ。
如月ではない……
これは……
違う……
こんな…
……
…………
羨ましい……
こんな風に……
想われたい……
まるで自分宛に出された手紙のようにギュッと胸元に抱きしめて宇都木は涙が落ちた。
何故忘れないのだ……
自分を追いかけてくれない恋人など……
そんなものさっさと忘れたらいいのだ……
自分なら……何処までだって追いかけていく……
如月はそれだけしても割の合う男だからだ。
何もしない男など放っておけば良いんだ……
こんなに想われているのに……
これだけ愛していると言われているのに……
それを言葉にしなければ分からない男など……
如月に愛される資格など無い。
宇都木は手紙を破り捨て、灰皿の中で燃やした。
これは過去だ……
今更何も蒸し返す必要はない……
何も……
時はもう経っているのだから……
如月から手紙を預かり、それを投函しなかった日から一ヶ月ほど経った頃、宇都木はまたアメリカに行く用事があったためにそれらを済ませてから、何気なくを装い如月に会った。その如月は随分とやつれていた。
「……どうしたんです?何処か身体が悪いんですか?」
すっかり手紙のことなど忘れていた宇都木はそう如月に聞くと、どっかりと分厚い背もたれのついているアームチェアに身体を沈めて脚を組んだ。
「……少々疲れているんだ。最近忙しくて……」
椅子をくるりと回し、そとのネオンを眺めながら如月はそう言った。その表情が窓に映っているのだが、酷く切なく寂しそうであった。そんな顔を宇都木は未だかつて見たことがなかった。
「何か……あったんですか?」
そう言ってこちらが近寄ると、小さな溜息が聞こえた。
「まあな……欲しい人から連絡が来ないんだ……」
そこでようやく宇都木は手紙のことを思い出した。だが知らない顔をした。こういうポーカーフェイスを作るのは日常茶飯事だからだ。
「商談が上手くいかないのですか?でも時にはそんなこともありますよ。そう言うときは又新しい商談を進めればそれで良いのだと思いますが……」
「……商談か……そうだな……」
言って如月が目を閉じたのが分かった。
「何かありましたか?」
「いや……」
両手を膝で組み、如月は相変わらず目を閉じていた。
その姿があまりにも弱々しく見えた宇都木は知らずと如月の側に近寄っていた。
「溜まってるんじゃないですか?」
宇都木が椅子の肘掛けの部分に手を置いて、如月を覗き込むように眺めた。するとその台詞に驚いた如月が目を開けた。
「……宇都木はもっとストイックな感じだと思ったが、結構言うんだな……」
今度は笑いながらそう言った。
この男は……
こんな風に笑いながら……
あの手紙に書かれた言葉を何度も繰り返しているのだろう……
愛していると……
許してくれと……
大陸向こうにいる戸浪という男に心の中でずっと反復しているのだ。
馬鹿らしいと思わないのだろうか……
連絡すら寄越さない男に……
何故未練など残す?
向こうが泣いて別れたくないとでも言えばまだ話は分かる……
だがそれを
如月がしていることが……
許せない……
泣いてはいない……
だが心で泣いているような気がする……
それが……
それに腹がたつっ!
こんなに想っているのに……
私の想いはこれっぽっちも伝わらない……
なら……
なら……
「おい……宇都木?」
肘掛けに置いていた手を今度は如月の膝に乗せた。
「少しは楽にして上げますよ……」
言って手を伸ばし、如月のベルトを緩めようとした。その手を如月が掴んだ。
「よせ……べつにそんなことをして貰いたい訳じゃない……」
そう……
貴方が欲しいのは……
戸浪という男からの連絡……
でも……
来ないんです……
私が手紙を燃やしてしまったから……
「別に大したことではないでしょう?男にされたこと無いんですか?」
無いわけ無いだろう……
男とつき合っていたんだから……
「……まあ……な。で、お前がどうしてそんなことをしようとするんだ?」
もちろん……
貴方が好きだから……
ずっとしてみたかったから……
だけど……それを言っても……
貴方は笑うだけだろう……
今はまだその心の中に違う男が住んでいるから……
もっと……
もっとその男の影が薄くなれば……
私が入り込む隙間が見つかるかもしれない……
だから……
なんだって出来る……
「私も色々疲れているんです。たまには気晴らしがしたい……」
言いながら如月に掴まれている手を払い、ベルトを緩めジッパーを下ろした。
「……気晴らしか……」
何処か遠くを見ながら如月は言った。
「……ええ……そうです」
ニコリと笑みを浮かべて宇都木はズボンの中に手を伸ばし、如月のまだ力無いモノを掴んだ。そして外に出すと、そっと口に含んだ。
ずっとこうしたかったのだ……
だから……
胸が高鳴って仕方ない。
だがそんなことを気取られるわけには行かないのだ。あくまで気晴らしなのだ。こちらが嬉しがってしまうと如月は引くだろう。この男には忘れられない男がいる。その男に対してあれ程の愛情を持っているのなら、こちらの恋愛感情に気が付くと必ず逃げ出すに決まっているのだ。
だから……
あくまで気晴らしを通すしかない。
舌を使い、口内で吸い上げると如月のモノは最初の姿をとどめないほど、口一杯になった。喉の奥まで含むと流石に辛いのだが、折角乗り気になった如月をここで躊躇させる事は避けたかった。
何度も舐め上げ、舌を使い、時には先端に歯を立て、何度も何度も煽ると頭上からやや荒い息使いが聞こえた。
私に感じているのだ……
それがただの性欲でもいい……
今私がしていることで感じてくれているのなら……
そこに愛情も何も存在していなくてもいいのだ……。
嬉しいのを隠しながら、口元を上下させ、如月を自分の口の中でイかせた。その時もたらされたものは全て嚥下する。一滴も無駄にするのが惜しいのだ。
「実は……慣れてる?」
クスクス笑いながら如月はそう言い、こちらの髪を撫でてくる。その仕草が心地良い。
「さあ……どうでしょうね……」
表情を変えずにただ宇都木はそう言った。
慣れてるわけなど無いのだ。一度だって誰かと寝たことなど無い。
「こんな所見られると困るぞ」
「こんなにおそくまで残業しているのは貴方くらいですよ……」
そう宇都木は言い、机に乗っている書類をかき分けた。
「……何をする気だ?」
机の上を綺麗にすると、そこに宇都木は腰を掛けていった。
「貴方だけ気持ちよくなってそれで終わりですか?私にも気晴らしを頂かないと損をした気分がするんですけど……」
自分でベルトを緩め、ズボンを足下まで落とすと両足を広げた。
「……はは……意外な一面を見てしまったな……」
こっちは恥ずかしくて仕方ないのだ。
もう気晴らしでも何でも良いから、宇都木は如月に抱きしめられたくて仕方なかった。手紙を焼き捨てた日から、狂ったように自分の身体を一人で慰めてきたのだ。如月を想い、愛していると自分に囁く声を思い浮かべ、触れる指を想像し、何度もイって、後で自己嫌悪に浸ってきた。
そんな毎日はもう嫌なのだ。
気晴らしではなく、今の如月にすると身代わりなのかもしれない。
それでもいい……。
愛されたと錯覚でもいいからしてみたい……
「気晴らしですよ……」
それは如月に対してではなく自分に対して宇都木は言い聞かせていた。
「ああ……そうだな……」
そう言ってようやく如月は立ち上がり、両足を広げたこちらの間に身体を密着させてきた。身体が触れられるだけで自分のモノが震えるのが分かる。
ああ……
嘘みたいだ……
ここまで来て顔を上げられずにいると、如月の手が顎に掛かり上を向けさせられた。そして軽くキスをされて、そんなものでは足りない宇都木は自分から腕を廻して如月の身体を引き寄せると、深く舌を自ら差し込んだ。
「っ……ん……」
男を抱くことに慣れた手はこちらの太股を撫で上げ、そのまま下着を下ろした。シャツだけを着た宇都木は半身を全裸にされ、その自分の姿に羞恥しながらも必死に如月に抱きつきそして両足を絡ませた。
望んだ愛撫は身体中に施され、胸の尖りを何度も吸いそして指先で弄ばれた。シャツは脱がされることなく首元でくしゃくしゃになり、露わになった胸元が如月によって揉まれ喜びに震えるのが分かった。
ああ……
死んでもいい……
湿った舌は何度も敏感な部分を舐め上げ、二つのものも交互に口の中で転がされた。その刺激が堪らずに何度も声を上げて目を潤ませた。
「あっ……あ……ああ……」
ビクビクと足先を痙攣させながらも折り曲げて広げた両足を閉じることなく、如月の愛撫に酔った。そうして指先が一本捻り込まれ初めて後ろからの快感を知った。
「ひっ……あ……」
まだ開いたことのない部分は堅く、指先一本も拒んだ。そんな自分に狼狽えながらも、宇都木は痛みに耐えた。
「堅いな……」
呟くように如月はそう言って、指を抜こうとするので、宇都木はそれを止めた。
「私のはいつだって堅いんです……焦らさないでください……」
痛くてもいい……
とにかくここで止められたくないのだ。
「早く……」
せかすようにそう言うと如月が笑った。
「お前が焦らして閉じてるんじゃないのか?」
……
そんな場所……
焦らして閉じられるわけなどないでしょう!
初めてなんです!
とは口に出しては言えない。だから宇都木はただ笑った。
「全く……慣れたもんだな……」
慣れてなんかいない……
でも……
そうでないと抱いてくれないでしょう……?
だから必死にそう思わせているのだ。
「何でもいいですから……早く……」
そう言うと今度は手加減無しに一本目を捻り込んだ。すると感じたことのない場所から痛みだけが背を駆け上った。
く……っ……あ……
声に出さず、歯を食いしばって宇都木はその痛みを堪えた。歯の間から息が途切れ途切れ漏れる。
「まあ……お前も久しぶりだって事か……」
言いながら如月はこちらの事など構いもせずに入れた指を中で蠢かせた。
あ……っ……あ……
痛いっ!
いた……
……あ……
でも……少しましになってきた……
息を何度も吐き出して痛みを堪えていると、痛みだけではない何かが今度は身体を覆い始めた。
「二本目……入りそうだな……」
言ってもう一本狭い中に入れられ、指は中で交互に動かされた。するとある場所を擦れると身体がビクビクと跳ねた。
「あっ……あ……あ」
「ここがイイのか……」
言って、グリグリと指で擦られ、それだけで簡単に宇都木はイった。
し、信じられない……
こんなの……
驚きで目が見開かれて居るのだが、如月の方は妙に楽しそうに言った。
「これだけでイくなんてなあ……よっぽど良かったんだな。ここが……」
ここがと言って先程感じた部分を又擦られ、宇都木は声を上げた。
「あっっーーや……そこ……あっ……!」
「でも……これで少しは滑りが良くなるな……」
先程こちらが腹に出したものを手につけ、まるでオイルのように周辺に塗りたくった。それは気持ちが悪いと思ったのだが、如月がしてくれていることを拒否することは出来なかった。
二本が三本になるころ、こちらの息も益々上がってきた。グチャグチャという音が聞こえ、指が抜き差しされると、もう頭の芯がボーっとなってくる。
「あ……ああ……すごい……」
「指だけで満足するのか?」
呆れた風に如月が言うので、宇都木は首を左右に振った。
「もういい……入れて……」
そう言うと如月はこちらの両足を抱えて、ようやく溶けた部分に自分のモノを押し当てた。すると、ぬるりとした感触を感じ、次に重圧感のあるモノが中へと入ってきた。
ーーーーっ!
その瞬間宇都木は息が止まりそうな気がした。