Angel Sugar

「監禁愛5」 おまけ

枝として切り離した鬼畜シャル♪

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「二度と逆らえないように思い知らせてやろうと思ってな」
 シャルはハンドルを握り前を向いたまま淡々と告げた。
「シャル……」
「お前の兄と言う男に知られたくないだろう?お前がどんな風に生きて来たのか……それともレポートにまとめて送りつけてやろうか?」
 皮肉るような言葉にエリックは俯いていた顔を上げる。
「……シャル……そんな……本気で言ってるの?」
「私が冗談を言えない男だと知っているだろう?」
 シャルの目だけがこちらをチラリと見て、また前を向いた。
「……あ……」
 この男は弱みをどんな風に利用するのが一番効果的かよく知っているのだ。
「いいか、この間のように騒ぐな。分かったな」
 エリックはもう何も言い返すことは出来なかった。
 車が止められると、そこは近代的なホテルだった。シャルがここに滞在しているのだろう。何も言わずにシャルはキーをホテルマンに渡すとエリックを見ずにホテルに入っていく。エリックがついてくるのを当然だと思っているのだ。
 悔しいが、ついて行くしかない。
 時間は既に夕刻だ。
 七時の約束はどうなるのだろうか?しかしどうなると考えたところでどうにもならなかった。ここでシャルを拒否すれば、有無を言わさず名執に全てをばらすだろう。
 それはエリックには耐えられなかった。
 広い室内に入るとシャルはネクタイをゆるめた。そこに携帯が鳴った。
「私だ……ああ、その件か……私が帰るまで保留にして置いてくれ……」
 通話が終わるとシャルはエリックの方を向いた。怒ったような表情でじっと見つめられ、身体が急に硬直した。
「お願いが……シャル……兄さんに電話を掛けさせて……夕食を一緒にとる約束してるんだ……心配掛けるといけないから……」
 視線を避けてそれだけ何とか言った。
「心配ね……」
 顎を掴まれ顔を上げさせられたエリックだったが、もう一度言った。
「お願いだよ……そのくらい聞いてよ……」
「そうだな……」
 意外にあっさりとシャルは自分の携帯をエリックに渡した。シャルの気が変わらないうちにとエリックはようやく覚えた名執の電話番号をかけ、留守番電話になっているところにメッセージを入れた。
「気が済んだか?」
「……」
 エリックは携帯をシャルに返すと、沈黙する。
「無駄なことをするな……。どうせお前は私と一緒に帰るんだ。兄さんという男の家に私が帰すと思っているのか?」
 おずおずと顔を上げてエリックはシャルを見た。
「どうして……シャルはこんなに嫌なやつなんだろう……どうしてこんな奴に出会ったんだろう……もっと早く兄さんに会いたかった。優しい隠岐さんに会いたかった……」
 ポロポロと涙を落としながらエリックはそう言った。シャルはそんな姿に一欠片の同情も見せずエリックの腕を掴むと後ろでねじり上げる。
「嫌な奴で結構だ。なんと言われても私はいたくもかゆくもないぞ」
「シャル……痛い……」
 痛みに呻くエリックのことなど構わずシャルは解いたネクタイで手首を縛った。
「可愛がってやる。随分ご無沙汰だったからな……」
 ずるずると引きずられ、ベットに放り投げられるとエリックは小さく呻いた。結局この男からは逃れられない。
 エリックは目を閉じ、いつもするようにぐっと歯を食いしばった。
 嵐が通り過ぎるのをただじっと待つのだ。
 こんなに嫌がっている自分を何故抱きたいと思うのだろう。確かに散々弄ばれた末に、シャルの思い通りになるとしても嫌悪感を丸出しにしている自分を何故抱きたいと思うのかエリックには分からなかった。それともそんなエリックを弄ぶことを楽しんでいるのだろうか?多分そんなところだ。
 従順な女も男もシャルが望めば周りにいくらでもいる。では反抗するのではなく従順にした方がシャルはつまらないと思って解放してくれるかもしれない。それに大抵最後はエリックがが負けるのだ。どうせ負けてしまうと分かっているのなら、抵抗という労力は無駄なのだ。それに今日は抵抗する気力が無かった。
 エリックは精神的にかなり参っている。もうどうなっても良いと言う気持ちも強かった。
「シャル……ねぇ……ネクタイはいらないよ……逆らうつもりは無いから外して……逃げたりもしないの分かってるだろ……」
 その言葉に既に馬乗りになっているシャルは驚いた顔をした。意外なはずだ。こんな事をエリックが口にしたのは初めてだったからだった。その所為か、シャルは何も言わずにネクタイを解く。素直に言うことを聞いてくれるシャルに驚きながらもエリックは平静を装った。
 シャルの唇が自分の唇に触れるとエリックはあっさりそれを受け入れた。暫く舌を絡め合ったが、シャルの方が不審を抱いた。
「変だな……何を企んでる?」
 ちょっと首を傾げるようにシャルは言った。
「何も……」
「素直すぎる……」
「好きにして良いんだ……ただそれだけだよ……企む事なんて僕には出来ない」
「殊勝な心がけだな」
 もう、どうでも良かった。
 こんな自分を名執が知ったらどう思うだろうか?
 どちらかといえば潔癖性に見える名執のことだから、きっと汚らしいものを見るような目で自分を見るのだろう。二度と家に上げてくれないだろうし、会うことすら拒否することになるはずだ。
 では利一はどういう態度を取るだろう?
 この間の件で薄々気付いているような気がした。いや、気がついているにちがいない。
 だが利一は何も聞かなかった。どうしてあんなに優しいのだろうか?きっと本当の事を知っても利一はいつも通りに接してくれるに違いない。例えどんな人間であろうと卑下したり差別したりしないという確信があったのだ。
 どうしてああいう男性に出会うことが出来なかったのだろうか。悔しくて仕方なかった。
「何を考えてる?」
「え?」
「何を考えているんだ?」
 酷く怒ったようにシャルは言った。エリックには何故怒っているのか見当も付かなかった。
「別に何も……どうしたんだよ……僕……逆らったりしていないだろ……」 
 手首をぎりりと掴まれエリックは小さく呻いた。
「痛っ……シャル……何で怒ってるんだよ……」
「誰か他の男の事を考えていたな……」
 利一の事を考えていたのは確かであった。
「え、あ、ううん……」
 そうエリックが答えるとシャルはいきなりエリックの顎を掴むと激しく唇を貪った。その勢いにエリックは息が出来ずシャルの肩を掴んで押しのけようとしたが全く無駄であった。
「……う……やめ……シャ……ル……息が……」
 ようやくシャルが唇から離れると今度は手荒に身体をひっくり返した。エリックは咳き込みながら何がなんだか分からなかった。どうしてシャルがこれほど怒っているのか分からないからであった。
「シャル……シャルって……あっ……」
 今度は身体を起こされ、シャルの膝に乗るような形で座らされると、エリックの萎えたモノをシャルは、ぎりっと握りしめた。その瞬間、エリックは息が止まるかと思うほど痛のみを感じた。
「あ……あうう……うう……」
 痛みで涙が頬を伝うが、シャルは一向に手をゆるめる気配は無かった。それよりも一層掴んだ手に力が入っている。
「その男に惚れたのか?お前が?こんな風に私に抵抗も出来ずに抱かれているお前が?」
「あ……シャル……止めて……」
 もう片方の手は胸をまさぐり、指先で突起をいたぶる。痛みが二重にエリックの身体を駆けめぐり、手足が痺れて動かせなかった。シャルが何かを言っているのだがその所為でよく聞き取れなかった。
「シャル……いたい……いたいんだ……僕は……言うとおりにしてる……手荒にしないでよ……シャル……」
 涙が頬を伝って胸へと流れ落ちる。それでもシャルはエリックを弄ぶ手を緩めない。
 エリックは誰かに助けて貰いたかった。誰も自分を助けてくれる人などいなかった。だが許しを請おうとシャルは聞き入れようとはせずにひたすら痛みをエリックの身体に与え続けている。こんな行為に甘んじている自分を救って欲しかった。誰が助けてくれるだろう。一度助けてくれた利一なら助けてくるのだろうか?
 きっと助けてくる。そう思うと、知らずにエリックは利一の名を呼んでいた。
 そのままエリックの意識がとぎれた。

―完―
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