Angel Sugar

「唯我独尊な男4」 第18章

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「ジャック……あのさあ……っ……」
 両脚を抱えられ、見下ろされた恭夜は不覚にもジャックの整った顔立ちに、ドキリとした。
 ジャックは貴族的な容貌をしているのだ。どういう性格をしているのか、恭夜もうんざりするほど分かっているのだが、こうやって間近に見るとドキドキする。恋愛感情がなく、例え同性であっても自分にはない綺麗な顔に見惚れるのはごく普通のことだろう。
 特にジャックはただ綺麗なだけの顔ではない。この男の持つ、独特の雰囲気は触れると火傷するだろうと分かっていても、指を近づけてみたいと思うやっかいなものだった。
「キョウ……私がいなくて、寂しかっただろう?」
 見下ろしているジャックは、恭夜の頬を指先で触れながら笑みを浮かべた。
「……別に……っひ!」
 ジャックの雄によって開かれた部分に指先を突き入れられて、恭夜は胸を仰け反らせた。己の放ったものを執拗に掻き出そうとするジャックに、恭夜は手を振り上げる。
「そういうこと……するな……あっ!」
「憎らしいことを言おうとしたからな……」
 ムッとした顔つきで、ジャックは更に指先を動かしてくる。ゴリゴリと内部を擦りあげる指先は、一度収まった内部の疼きがまた高まろうとしていた。
「……俺はっ……あ……」
「私はこれほど寂しかったというのに……相変わらずハニーはつれない」
 フッと息を吐き出し、ジャックは指先を引き抜くと、怒張した雄を捻り込んできた。硬いゴムのような切っ先が内部の襞を擦りあげるようにして奥へと入る。粘ついた感触と、摩擦で恭夜は嬌声をあげた。
「……あっあ……も……よせ……っひ!」
 ジャックは恭夜の胸の尖りを甘噛みし、口内で弄びながら、注挿を繰り返す。胸が赤くなると今度は顔や首筋にキスを落としてくる。それは一瞬吸い上げられて、離されるのだが、小さな痛みをあちこちから感じ、ジャックが己の刻印を恭夜の肌に隙間なくつけようとしているのが恭夜に分かった。
「……つ……つけるな……あ……」
 何故か首筋から特に小さな痛みを感じ、恭夜は呻くように言った。そういう、服で隠しきれないところに痕をつけられると困るのだ。だが、言ったところでジャックが止めるわけでなく、執拗に吸い上げられる痛みに恭夜は耐えるしかなかった。
「……あ……も……」
 身体が溶けて流れていきそうな愉悦に、恭夜はジャックにしがみついた。快感を感じているときは全てが二の次になる。後のことを考えると、ここで絶対に止めさせた方がいいのだろうが、ジャックを止められる人間などいないことも、恭夜は知っていた。
「……それで、サラームをみて、お前はどう思った?」
 突然の問いかけに、恭夜は快感で流した涙で潤む瞳をジャックに向けた。
「……え?」
「私から見ても、随分と魅力的な男だと思ってな」
 笑いもせずに、何故か冷えた目つきでジャックは言った。
「……突然、なに言い出すんだ……っく」
 内部で雄が左右に揺らされ、恭夜は新たに加わった快感に唸る。
「金持ちで、美男子だ。目を奪われなかったか?」
 突き刺さりそうな視線をジャックは恭夜に向けつつも腰の動きをとめようとしない。
「……あっ……あ……はあ?」
 こいつ……。
 こんな状況で、もしかして嫉妬してるのか??
 ただ、あのとき訪れたのはサイモンとそのボディガードだ。その二人のことを口にしないのは、一応ジャックの美的感覚は正常だと考えていいのだろう。
「ちょ……ジャック……っう!」
 口内を貪られるように愛撫され、もう恭夜は何も考えたくなかった。このまま、快感に押し流されて我を失いたいのだが、ジャックの問いかけは更に続く。
「よがってる場合か」
 口元を離して、腹立たしそうに告げられる言葉に、どう返答しろというのだ。よがらせている原因はジャックで、さっさと終われば済むことなのに、しつこく恭夜に揺さぶりを掛けていることをこの男は理解していないのだろうか。
「……は……っあ……あ、あんた……何、言ってるんだよ……」
「誰に対してもうちの扉を開けるというのは、どういうつもりだ?キョウには警戒心の欠片もないのか?なにより、あのうちは私とハニーの愛の巣だろう。私が留守にしているからと言って、そういうふざけたことをされて私が黙っているとでも思うか?」
 何をこいつは言い出すんだ~!
 人が尋ねてきたら普通は対応するだろ~。
 しかもうちに入れた人間は全部お前の関係者ばっかじゃねえか~!
 と、口から出したい気持ちに駆られたが、もちろんいつものように黙っていた。どういったことでも自分に都合よく変換する男に、恭夜の意見など聞き入れられたことはないからだ。
「……そんなの、知るか……っあ、ぎゃあああっ!」
 思いきり己の雄を握られて、恭夜は絶叫をあげた。この男は、いつも気に入らない答えが返ってくるとこうやって恭夜を苛めるのだ。
「ハニーはもう少し警戒心を養うんだな。できないと言うのなら、家から出られないよう外から鍵をかけてやるが?」
 薄水色の瞳が凄味を帯びた輝きをもって恭夜に向けられていた。
「い……いて……いてて……は、離せ……あーーーっ!」
 ジャックに手加減という言葉はない。
 もちろん、セックスに関してもそうだ。本気でねじり上げてくるし、どれほど恭夜が泣き叫んだとしても、この男は手を緩めない。これが本当に恋人に対する扱いなのだろうかと、思うことはあるが、相手がジャックだということで、全て納得できてしまう。
「……ひーーーっ!やっ……やっ……やめろ~……!」
 足の指先まで伝わる痛みに恭夜はジャックの肩に掛けた両脚をばたつかせたが、上から押さえつけるようにして雄を突き入れられて、もう、意識はぐにゃぐにゃだ。
「ジャック……う……あ……も、俺……」
 どっぷりと快感に浸っている身体は、何をされても快感としか伝わってこない。人間はこれほど快感に弱いのかと、本気で考えてしまうほど、ジャックとのセックスは麻薬だ。
「……ハニー……」
 冷えていたジャックの瞳が、穏やかな光りを灯している。だが、先ほど怒っていた件を忘れているとは思えない。何かまた企んでいるに違いない。
「……もう、イカせろよ……」
「イカせろ?」
 ピクリと眉を上げてジャックはじっとこちらを見下ろしていた。
「イカせてください……」
 仕方なしに恭夜が懇願すると、ジャックはニンマリと笑った。そのジャックの表情に、散々快感に翻弄されていた恭夜は安堵の顔色に変わる。僅かの変化を感じ取ったジャックは恭夜の耳元で囁いた。
「まだまだ時間はあるからな……」
 それは恭夜にとって悪魔の囁きに聞こえた。



 指先すら動かせないほどの目に遭わされ、恭夜がグッタリとベッドで身体を伸ばしている横でジャックは平然とした顔で新聞を読んでいた。
 新聞なんか読んでんじゃねえよ……。
 お前の体力は底がねえのか?
 はあ……と、心の中でため息をついて、恭夜はうっすら開いた目を閉じた。だが、ジャックは恭夜の僅かな気配から、目を覚ませたことに気がついたのか、片手を恭夜の頭に乗せると、ゆるゆると撫でてきた。
 気持ちいいけど……。
 腹も減った。
 毛布にくるまったまま、横向きに身体を折り曲げて恭夜は疲れすぎのため、起きて何か食べ物を探したいと思いつつ、微睡んでいる。だが、頭の中は食べたいものを想像していっぱいだ。
「……腹を鳴らすな」
 新聞を見つめながら、ジャックは言う。
「……身体の自然な欲求だよ……」
 はあ……と、ため息をついて恭夜はようやく言葉を発した。
「後で頼んでやる」
「今、食いたい」
 恭夜の言葉にジャックは急に笑い出した。何が可笑しいのか恭夜には分からない。
「……んだよ」
「いや。用意したところで、食えるような状態ではないだろう。それとも、私が食べさせてやらなければならないか?まあ、ハニーがどうしてもと言うのなら、甘えても構わない」
 何度も恭夜の髪を撫で上げながらジャックは楽しそうに言った。
「……後でいい……」
 口を尖らせて恭夜は答えるとジャックは何を思ったのか、新聞を差し出してきた。
「……なんだよ」
「他にも目を通さなければならない新聞があるんだが、一つどうだ?」
 どうだと言っているが、ジャックは既に恭夜の枕元に今自分が読んでいた新聞を置いている。要するに読めと言っているのだろう。
「俺は、テレビ欄しか興味ねえ……」
「ハニーの脳みそが動かないのは、そういうところしか興味がないからか。よく分かった」
 呆れたように言い、ジャックは新しい新聞を開いた。
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