Angel Sugar

「唯我独尊な男4」 後日談 第8章 完結

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「怖い?私が側にいるのに……か?」
「ひっ……!」
 最奥を突かれた恭夜は身体を反らせた。激しく突き挿れられるジャックの雄は、狭い粘膜を割り裂いて、恭夜の内側を擦り上げていく。
「あっ……ああっ……ああっ……!」
 ジャックの激しい抽挿に絡め取られた身体は、快楽の虜になっている。また、同じように心にあった不安をもジャックは絡め取る。絶対的な存在感を示すのはジャックの雄ではない。ジャックそのものだ。この男がいるから、恭夜はあらゆる不安から守られているに違いない。
「いい顔だ……」
 ジャックはクスクス笑いながら、抜き差しを繰り返し、恭夜の顔といわず、あらゆるところにキスを落としていく。快感に溺れながらも恭夜はジャックの優しさを感じ取っていた。
 この男は恭夜にだけ優しい男になるのだと、ジャックを知る人間は思うだろう。けれど、それは違う。ジャックは人を見下していながらも、人間に対する愛情を人一倍持っていることを恭夜は知っている。
 だからジャックはネゴシエイターなのだ。
 権力も欲しがらなければ、地位も求めない。いつだって、悪態を付きながらもジャックは人質救出のために全力を尽くしている。本当に人間が嫌いな男なら、そんな仕事には就かないだろう。
 いや、恭夜が思うような優しさからジャックは人を助けているのではないかもしれない。馬鹿な人間が人質に取るという行為そのものがただ気に入らないのかもしれない。
 けれど、恭夜にとってどちらでもいいのだ。
 ジャックが恭夜だけを見てくれるのなら、それでいい。
「ああっ……ジャ……ジャック……」
 強く打ち付けられる動きに、恭夜はジャックにしがみつくようにして、上へと押し上げられる力を受け止めていた。
 身体が溶けていくような感覚だ。
 濡れて音を立てる接合部分が生々しく、肉が擦れあう部分がひどく熱い。
「キョウが不安になるほど、私のこの腕は……抱擁は……弱々しいか?」
 筋肉質ではないが、がっちりした腕が恭夜を拘束していた。その力の前には恭夜も抗えない。いや、ジャックが纏う雰囲気は普通ではないのだ。人によるとそれをオーラとでも呼ぶのか。ジャックの纏う神々しいまでの存在感はどれほど人に紛れようと、霞むことはなかった。
「あっ……あ、弱く……ない……っ!」
 身体はジャックの思うまま貪られている。抗う気など無い。快感に支配されている恭夜は、身体を任せるしかないのだ。そうすればどんな不安からも守られる。
「なら、不安を感じることなどないだろう」
「俺の……側に……」
 喘ぎの中からようやく紡いだ言葉は、信じられないほど素直なものだった。
「どんなときでも側にいてやる。安心しろ」
 恭夜を見つめるジャックの薄水色の瞳はとても温かい。その瞳にも恭夜は酔いそうだった。人目を惹く綺麗な金髪を持つ男。誰もが羨む容姿をももっている。そんな男が恭夜を愛しているのだ。
「んっ……あっ……ジャ……ック……」
 ジャックの抽挿はますます激しくなり、内蔵までも抉る勢いで突き挿れてくる。愉悦というゆりかごの中で揺らされているようだ。
「生の世界も、死の世界にあっても……私たちは一緒だ」
 ジャック以外の人間が口にすればとても恥ずかしく聞こえるセリフだったが、恭夜は照れることもなく、ただ心地よく耳に響いた。



「どうして食わない?腹が減っていたんだろう?あれほど食わせろと叫んでいたキョウはどこにいったんだ?」
 ジャックは恭夜の口にハムを押し込んでくる。恭夜は機械的に口を動かしてハムを咀嚼した。腹は確かに減っているのだが、限界まで体力をそぎ落とされると、逆に何も口にしたくなるのだから不思議だ。
「ん……ん……もぐもぐ……」
 結局、いつものことながら、一度では身体を離してもらえず、何度も蕾を穿たれた恭夜は、半分放心したように身体をソファに横たえていた。狭いソファに無理やり身体を押し込んで横になっているジャックが邪魔なのだが、押しのける気力もない。
「これはどうだ?」
 今度ジャックはチェリーを掴み、また恭夜の口に押しつけてきた。
「う~……」
「なんだ、チェリーは嫌いなのか。ではこれはどうだ?」
 ジャックはことのほか嬉しそうに、テーブルに置かれた料理を掴んでは、恭夜の口元に運ぶのだ。もういいと言いたいところだが、声帯を震わせることも辛い。
「我が儘な奴だな。それともハムが気に入っているのか?」
 唸っていると、ジャックはハムを掴み、恭夜の口に運ぶ。仕方なしにまたハムを口に入れて恭夜はモグモグと食べた。一体どれほど食せばこの男は恭夜の口に食べ物を運ぶことをやめるのだろう。
「喉は渇いていないのか?」
 ジャックはそう言うと恭夜の返事を待たずに、ワインを口に含むと、恭夜の口内に流し込んできた。
「ん……うう……」
 一度、人の口に入ったワインは生ぬるく、味わっている感じが全くしない。
「もっと美味そうに飲み食いができないのか……。なんでもいいから、しっかり食って体力をつけろ。まだ空の旅は終わっていないんだからな」
 ジャックの言葉に恭夜はハムを喉に詰まらせ、しばらく咳き込んだ。

―完―
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