Angel Sugar

「唯我独尊な男4」 第41章

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「ジャック……頼むから……ソフトにしてくれよ……」
 もうすでに額に汗の珠を浮かせて、恭夜は絞り出すように言った。この状態で激しく突き上げられたら、なんだか大出血を起こしそうだ。もちろん、肩の傷が開いて……という意味だが。
「ハニーさえ、おとなしくしてくれていたら、私も無茶はしないさ」
 フウッと耳朶に息を吹きかけられて、恭夜は身震いした。尻の割れ目にはジャックの尖った雄が押しつけられていて、怪しげに揺られている。ただ触れているだけのその部分からゾクゾクとした快感が背を這って、恭夜を陶酔させようとしていた。
「う……ふっ……」
 ジャックの手は何度も恭夜の雄を擦りあげてくる。指先の動きに耐えられなくなった雄は先端から蜜を滴らせ、太股やシーツを濡らしていく。断続的に力を込められる部分はそのたびにビクビクとしなり、硬く強張った。
「……あ……も……」
 雄の内部が蜜で満たされてくると、体温が急に上がり、顔が鬱血したように赤らんできた。瞳には涙が溢れ、頬を伝う。セックスという運動をするにはとても体力が付いていきそうにないと頭では理解しているものの、現実に与えられた刺激は原始から持ち合わせている欲望を煽り、恭夜の身体を揺さぶる。
「もう、こんなになっているぞ……」
 くすくすとジャックが背後で笑う。思わず自分の下半身を見て、ジャックの手の中で見事に形取られた己の雄に、尻込みしそうになった。
 本当にどうしてこれほど快感に弱いのか。
 肩からの痛みを、それよりも強い刺激である快感がねじ伏せているのだ。こんな自分を情けないと思いつつ、ジャックの手慣れた愛撫に逆らうことなどできないのだろう。
 ジャックはいつも恭夜を守ってくれている。
 それを肌身で感じながらも、恭夜は素直に「ありがとう」という言葉にできない。言おうとは何度もしたが、口で言わなくてもジャックは分かってくれているだろうと、恭夜は思いたいのだろう。それは恭夜の男としてのプライドが、同じ男に頼っている自分を認めたくなくて――事実からは反していても――照れくさい言葉を口にできないのだ。
「……くっ……う」
 堪った快感を解放するかのように、恭夜の雄は蜜を飛ばした。一度では飽き足りないのか、ビクビクと何度も先端を震わせて、断続的にジャックの手を蜜で濡らす。
「なんだ、随分とためていたな……」
 クッと喉元で笑い、ジャックは最後の一滴までも絞り出すように、恭夜のぐんにゃりした雄をつまみ上げては、根元から引っ張った。
「あっ……あ、さ……触るなよ……」
 散々絞られて、もう何も出ないと訴えようとしたが、ジャックの手の動きに、ムクムクと欲望が形を取っていく。もうでかくなるなよ~と心の中では訴えるが、理性では抑えられない部分に対していくら文句を並べようと無駄だった。
「まだまだ、足りないようだ」
 ジャックは嬉しそうにそう言って、蜜で濡れた手で前から恭夜の蕾を弄り始めた。
「あっ……ちょ……」
 ヌルリとした感触が太股に感じ、恭夜は両足をもぞもぞと動かした。けれどジャックが求めている場所は内部で疼き、触れられることよりも貫かれることを心待ちにしている。
「片足を曲げろ。そうしないと隙間ができない」
 恭夜は言われるまま右足を伸ばしたまま、左膝を曲げた。すると股間が開き、ジャックの手の動きが一層滑らかになった。
「……うっ……う」
 クチクチと蕾を指先で弄られて、恭夜は呻き声を上げた。あまり身体を動かすと、左肩が痛んで、眉間に皺が寄る。なのに痛みはすぐさま快感に変えられて、自然に揺れ出す腰の動きをとめることができない。
「ソフトに、ゆっくりだな……こんなに欲しがっているというのに、無理ができないのは残念だ」
 なにも口にして言わなくてもいい言葉を、ジャックは言い、恭夜の羞恥心を煽った。恭夜が優しい愛撫より、貪るような愛撫が好きなことを知っているからだ。それは恭夜も否定しない。あまり気遣われるように抱かれると、理性がすぐに戻ってきて、余計に羞恥心が増すのだ。
「じっくりとほぐしてやるか……」
 ジャックの言葉通り、指は恭夜の蕾の浅い部分をグチグチとしつこく弄る。蜜が潤滑油になっていて、本来は奥まで突き入れられるのに、ジャックはしない。それが恭夜の身体を気遣ってからなのか、単にからかっているからなのか、判断のしようがなかった。
「……言うなよ……っ」
「粘っこいセックスが好きなのか?」
 ゆるゆると指先を内部に埋めて、ジャックは鼻で笑った。
「俺は……撃たれた傷があって……あ、あんたにもあるだ……っく」
 指先が小刻みに動かされて、恭夜は嬌声をあげた。
「それともネチネチと弄り回されるのが好きか?」
 ジャックの言葉通り、緩慢な動きしかしない指は、燻る恭夜の快感を煽るだけ煽って解放してくれない。いつものように、グチャグチャに掻き回してくれたらいいのにと、本心では思いつつ、それをねだることもできそうになかった。
「……ああ……あ……」
「いくらでも弄ってやるぞ……可愛いキョウの場所だ……」
 耳元で甘く囁き、ジャックは緩やかな動きで恭夜を煽る。恭夜の半開きになった口からは早くなった息が吐き出されていた。
「気が……変になる……っ」
 下半身はすでにトロトロになっている。迸った蜜がそこかしこに飛び散っているからだが、濡れているという感触だけで、恭夜はまたイきそうだ。
「ああ……私もだよ。腕の中で身悶えているキョウを見ているだけなのは辛いね……。さっさと味わいたいものだが、ソフトにしてくれと懇願されたのだから、私も忍耐をもたなければ……」
 口先だけの嘆きをジャックは言い、恭夜が快感に堕ちていく様を楽しんでいるようだった。憎らしく思いつつも、身体に蓄積された快感が本当に解放されるためには、ジャックの雄の存在が必要なのだ。
「あ……挿れてくれ……よ……」
 突き上げられ昂みを目指し、快感に打ち震えながら、意識を飛ばしてしまいたい。恭夜が今望んでいることはそれだけだった。
「ソフトがいいんだろう?」
「……そ……だけど……も……身体が……保たない……」
 尻の間に挟まれたジャックの雄が、生々しい鼓動を恭夜に伝えてくる。これがジャックの欲望の証だ。恭夜を求める欲望が形になって、蠢いている。恭夜は今ある場所からではなく、身体の奥でジャックの欲望を感じたかった。
「では、もう少し尻を突き出せ。背中を反らせるといい」
 腹を撫で上げられた恭夜は、身体を反らせて膝を曲げ、尻をジャックの方へと突きだした。
「……いい子だ」
 ジャックの雄がようやく恭夜の内部に突き挿れられたが、その動きは緩慢としていて、狭い内部は緩やかに押し広げられていく。一気に突き上げられる時に感じるものとは違い、じわりと伝わる快感に、恭夜は身体が引き絞られていくような刺激を味わっていた。
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