Angel Sugar

「唯我独尊な男4」 後日談 第4章

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「お前はどうしてそう、食ってばかりで人の話を聞かないっ!」
 テーブルにグラスを置いたジャックは、肉を銜えている恭夜の顎を掴んで無理やり自分の方へと向かせた。
「もがもが……に、肉……肉が……」
 顎を掴まれた恭夜は半分入った肉が口から落ちそうになった。ジャックと言えば、そんな恭夜を冷ややかに見つめている。
「肉などどうでもいい」
「……んぐっ!」
 急いで肉を咀嚼して呑み込んだが、喉に引っかかった恭夜はジャックの手を払いのけ、グラスに入ったワインを一気飲みした。
「……はあ……びっくりした。人が食っている最中に手を出してくるなよ」
「私も限界だ」
「じゃあ、あんたもワインばっかり呑んでないで食えよ」
「ああ、では食欲を満たすとするか……」
 ジャックはフォークを持っている恭夜をソファーに押し倒す。恭夜と言えばまた口の中に入れた肉がもごもごしていて、声が出ない。
「あんた……もぐもぐ……いい加減……ごくん。しろよっ!」
「色気が破壊的だ」
 ジャックは金髪を撫で上げ、恭夜が持っていたフォークを無理やり奪い、テーブルの上に置く。
「ねえよ。……だから飯をちゃんと食わせてくれって」
「私の料理はハニーだ」
 ジャックは恭夜の上に乗り上がったまま、恭夜のスラックスのファスナーを下ろした。
「お前の料理もこのテーブルに乗ってるだろ。ていうか、ジャック、頼むよ……俺に飯をゆっくり楽しむ時間をくれよ」
 腹はまだ膨れていないし、できたらもう少し時間を稼いでおきたかったのだ。やり始めたらこの男は休むことを知らない。エアフォース・ワンが飛んでいる間中、突っ込まれるなど、考えるだけで地獄だ。
「ハニーの脳には肉や魚の食材への渇望が詰まっている。それを……私という恋人でいっぱいにしてやろう」
 恭夜の雄を掴み外へと誘うと、愛し子を可愛がるようにその先端を指で撫でる。ゆるやかに、そして柔らかに。その愛撫に恭夜は小さな声を上げた。
「ジャック……っ」
「前菜を味わうとするか」 
 恭夜の股間に顔を近づけ、ジャックは恭夜の雄の切っ先に軽くキスを落とした。ジャックの柔らかい唇に触れられた雄は歓迎するように鎌首を振った。
「ここはいつだって正直だ」
 ジャックは嬉しそうな顔をして、恭夜の両脚を思いきり押し広げると、まだ力のない雄を口に含んだ。生暖かい口内の感触に、恭夜は身を捩った。
「……んうっ……」
 明るい中で自分の雄がしゃぶられる姿を見るのは慣れない。目は閉じられ、両手は漏れ出る声を抑えるために口元に向かった。それでも耳は閉じることができず、クチュクチュという粘着質な音が入ってくる。
「……ん……ん……んん……っ!」
 ジャックは口全体を使って恭夜の雄を吸っている。時には根元まで吸い上げられて、恭夜は両足を震わせた。堪らない快感が身体を覆い始めていて、目が潤んでくる。甘い愛撫が恭夜を虜にさせていて、当然、ジャックを押しのける気にはならない。
「んっ……ふっ……ふっ、ふっ……っ!」
 グチュグチュと激しく口を動かされて雄が鍛えられていく。恭夜は自ら腰を振りそうになるのを耐えながら、細胞の一つ一つまで浸透し始めた快感を味わっていた。
「……っう」
 喉の奥で呻き声が抑えられたような声を漏らし、恭夜はジャックの口内に蜜を吐き出した。ジャックはすべての蜜を嚥下し、それでもまだ足りずに、力を失った雄をチュウチュウと吸っていた。
「あ……も……それ以上……吸うな……」
 ゼエゼエと息を吐いて恭夜は足を伸ばそうとしたが、ジャックはそれを許さず、足首を掴んだまま、雄を銜えた口を離そうとしなかった。
「ジャックって……ひっ……」
 執拗に舐められた雄はすぐさま力を取り戻し、ジャックの口内で欲望の形をとる。無言のジャックはひたすら恭夜の雄に食いついたまま、柔らかな表面を愛撫していた。
「ジャ……っん」
 逆らうなとでも言うように、ジャックによって軽く歯を立てられ、恭夜はもう一度手で口を覆った。
「ん……んっ……」
 ジャックは恭夜の雄の表面の皮を波打たせるように強く舌で舐め上げて、離す。繰り返されるうちに、表皮の下から質量を増した欲望の形が盛り上がる。
「うっ……うう……ん……くうっ」
 先程とは違い味わうようにゆっくりと動かされる口が、恭夜を昂ぶらせていった。
「んっ……ん……んん……」
 伝わる快感の鮮烈さに、恭夜は口を押さえている両手のうち、片手を離して顔や目を擦った。明らかに快感はしゃぶりつかれている雄から伝わるのだが、まだ触れられていない、内部から疼きがやってきて、恭夜をどうしようもなくさせているのだ。
 ああ……たまらない……。
 身体が……変になっていく……。
 二度目も簡単に果ててしまうだろうと考えていた恭夜だったが、ジャックは不意に口を離して、己のネクタイを解くと、今まで銜えていた雄の根元に巻いた。
「なっ?」
「肉や魚にばかり気を取られていた罰だ」
「はっ?ちょっと待てよ。俺は……ただ……」
 身体を起こそうとした恭夜だったが、ジャックの酷薄な笑みを見たことで、できなかった。
 ――やはりジャックは怒っていたのだ。
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