Angel Sugar

「障害回避」 後日談 第3章 完結

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「あっ、あっ、あっ……ああっ……!」
 激しく抽挿を繰り返されて、宇都木は身体を揺さぶられながらも、如月にしっかりとしがみついていた。
 肉の擦れあう瞬間が、堪らなく心地いい。久しぶりに感じる、如月の確かな雄の存在に、宇都木は酔った。こうやって抱き合える日がもう一度訪れたことに、心から感謝しながら、生きている実感も味わう。
「すごい……締め付けだな……未来。久しぶりだからか?」
 腰の動きを止めることなく如月はそう言い、宇都木の額にキスを落とした。
「久しぶりで……私も……すごく感じてる……邦彦さんの……ものが……奥に当たると、そこで視界が真っ白になる……あああっ……」
 宇都木の雄も同時に扱かれ、我慢できない欲望が雫となってこぼれ落ち、腹や如月の手を濡らす。淫らでいていやらしい自分の姿だったが、躊躇いなどなく、ただ、愛されていることに宇都木は悦びを感じていた。
「ああ……もっと突いてっ!激しく……して……貴方のことしか考えられないように……愛して……」
 切ない声で、宇都木は如月に訴えた。
 いま、自分の居場所を与えてくれている如月の手が失われたら……きっと、宇都木は生きていけないだろう。もう東家には宇都木の居場所はないのだ。どれほど求められても、例え、そこしかもう帰る場所がなくなったとしても。
 宇都木は如月の側でなければ、息すらできないような気がしていた。
 温かい抱擁。
 安堵を運んでくれる、柔らかなキス。
 どんな悩みも吹き飛ばしてくれる、如月とのセックス。
 それを自分の責任で、すべてを失ってしまうところだった。
「邦彦さん愛しています……心から貴方だけを……。もし……いつか、貴方が心変わりをしても……ずっと貴方の側にだけは、いさせてください……」
 宇都木はギュッと如月に抱きついて、快感に身を委ねながらもそう言った。
 それはとても自然に漏れた言葉だ。
「馬鹿だな……未来。お前はどうしてすぐ、そんなことを言うんだろう……な。私にとってお前がどれほどかけがえのない存在なのか、もう少し理解してくれ……」
「邦彦さんにとって、私はかけがえのない存在になっているのでしょうか?」
「ああ……もう、随分前から……な。愛しているよ……未来……もう二度と、私の手の中から逃げ出すようなことはしないでくれ……約束だ」
 宇都木は目に涙をいっぱいためながら、感激で喉が詰まった変わりに、顔を何度も上下させて答えた。
「約束は破るなよ」
 如月は唇を歪めてニヤリと笑うと、しばらく緩やかに繰り返していた抽挿のピッチを上げた。襞を擦り上げて奥を突くその動きに、宇都木はもう何も考えられなくなっていた。
「あっ……ああっ……あ……あ……ああ――――っ!」
 嬌声を上げながら、宇都木は身体の昂ぶりが収まるまで、何度となく求めた。



 欲しいだけねだった結果、風呂に入って自分の身体を洗うことすらできなくなった宇都木は、すべてを如月に任せて、恥じ入っていた。
 快楽を求める欲求というのは不思議なもので、何かに取り憑いたように相手を欲したかと思えば、それらが叶えられると、突然、冷静になって、羞恥で身が焦げそうになる。もっともすべてが終わった後で後悔してもどうしようもないが。
 ただ、如月は妙に機嫌がよく、宇都木の身体を丁寧に洗い、まるで小さな子供の面倒を見るように、宇都木を扱った。そんな如月に宇都木は申し訳なく思いつつも、疲れ果て、動かなくなった身体を預けることしかできなかった。
「もう、ねだってもしないぞ」
 バスルームから宇都木を抱えて運び、ベッドに横たえた如月は、苦笑混じりにそう言った。
「……したい気持ちはあるんですが……さすがにもう無理です……手も動かない……」
 宇都木が正直な気持ちを言葉にすると、如月は目を見開いて咳払いをする。
「まだまだ休みはあるんだから、ゆっくり身体を休めるといい。まあ……セックスをした後に口にするセリフではないが……なあ」
 宇都木の隣に横になり、如月は手を伸ばしてくる。そんな如月に宇都木は自ら身体を密着させた。
「そういえば……」
「ん?」
「私……病院で長い長い……夢を見ました。あれが夢なのか、実は違うのか……すごく不思議な体験をしたんです」
「すごいな、未来。どんな体験をしたんだ?幽体離脱か?」
「違います。それならそれで、もっと興奮してますよ。いえ……両親と会いました。ものすごくリアルで……抱きしめられた感触も……まだ残ってます」
「そうか。何か話をしたのか?」
「ええ……長年の胸にあった痼りが消えました。私の希望が見せた夢かもしれませんが……両親は確かに後悔していました。そして……私を愛していると聞かせてくれました。私は……嬉しかった」
 また目頭が熱くなったが、涙はこぼれることがなかった。如月の温かい身体に密着していることで安心しているからだろう。
「……子供を愛さない両親はいない」
 如月の言葉に宇都木は何故かとても救われたような気がした。
「ええ……」
「あ、そうだ。香月のことだが……」
「はい?」
「仕事にもようやく慣れた香月を、宇都木が戻ってくるからといって追い出すのも忍びなくてね。お前が復帰したら、部下にしろ」
「誰のですか?」
「お前のだ」
「ええっ!」
「これで少しは楽になるだろう?こき使ってやるといいさ……」
「……ですが……」
「お前は少しずつでいいから、会社での人間関係も広げていくべきだ。それが香月からであってもいいはずだぞ。違うか?」
 宇都木はその言葉に答えることなく目を閉じると、寝たふりで誤魔化した。

―完―
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