020601

夢園、川端、線路脇。
首尾よく抜ければ儲けもの。
案外遠回りしたかもしれないけれど、
このシテヤッタリ感がお得なんだな。

あ、踏切…


 

020602

短距離走、長距離走、リレー、
死芸、
人間。

この程度で良いのか、
この程度ではダメなのか、


 

020603

たくさん会った。
ただ、交わってはいない。
人間が自動車のようだ。
衝突しないよう、各々のスピードで渦巻いている。

最近ウインカーを出さずに曲がる人が多い。


 

020604

絶叫せず、
冷静に見つめて。
誰もが見たはずなのに、
たちどころに忘れてる。
黒髪だったことも忘れてる。


 

020605

目覚めたとき、右腕の感覚がなかった。
左腕で掴み上げる。不気味なほど重い。

ヒトノヨロコビ、ヒトノクルシミ。
実感ない。この虚脱感以外。
考えるだけで消耗するみたい。
もう腕1本分くらい減った。
どこの肉が消えてゆくのだろ?


 

020606

忙しさと疲れで日記を付けられないときほど、
録画の如く鮮明に記憶を呼び起こせたりする。
あるいは、言葉に置き換えなかったために、
かえって映像がそのまま残されたのかもしれない。
だが言葉には固有の世界があるはずだ。
どちらも他方に隷属する関係ではない。


 

020607

20±1℃を厳守すること、
時間も正確に、次液へ浸した時点で計ること、
最後は勘。測量値と経験と感触とから読み切る。

どこへ向かうだろう?何が起こるだろう?
濃緑と硬質の影、追憶と欲情のあわい。
次のはじまり。


 

020608

静かでも思考できない偏頭痛。

こんなところまで車の音が聞こえる。鳥や風よりずっと遠いはずなのに、低く粘りつくようにしつこく届いて途切れることがない。飛行機のごーんという風切音や、ヘリコプターの羽音も。農耕機械の震動、人の話し声…、いくらなんでも聞こえすぎではないだろうか?ここにはオレひとりきりなのに。時間の進むのがやけに遅い。

放り投げた石その向こう青空。


 

020609

やった!かかった!いい音。まだ 生きてるぜ!
ひとりでできた。あそこで電話が通じなくて良かった。
一段とひとつになれた気がするもの。
エンジン音と震動に触れただけで、
視界がもう疾走してる。


 

020610

せつなさという言葉のせいで、
このせつなさに届かない。

ぼくはますます無言になる。
言葉の海を泳ぎたいな。
恋のような青い底


 

020611

本当の雨の、
凍りつく冷たさ、
斬りつける痛さ、

すべって転んだらサヨウナラ。
かっこわるいけどそれでおしまい


 

020612

開いて開いて開いて、
閉じて閉じて閉じて


かりそめのなれそめも誰それ。
あれはぼくだったのだろうか?
そんなこと考えること自体無駄か。


 

020613

バトハパで、ダンボールに寝そべって読書した。
キンシャサで、再びアリの奇跡の瞬間を観た。
75km左回りの疾走。
また別れて、出会って、また別れるの?
独りなら、簡単に無重力へ堕ちられるよ。


 

020614

湯船の水面を
真横から眺めるひたりひたり


どうか思い悩まないで。
忘れるしかないわ。
そうでなくても、忘れてしまうものよ。
いい思い出になってしまうの。


 

020616

眠たくなるから眠る
入りたくなるから入る。
甘えたくなるからごろにゃん。

オタクの想像、たぶん外れてるよ。
オレ、考えてないもん。


 

020617

他人を否定しないと、自分を肯定できないんだな
過剰な言葉とはウラハラにぬるぬるした輪郭が見えるよ。
見たことも聞いたこともないものに憧れてるの?
ぼくは見えるもの、すぐ近くにあるものに触れていたい。

衝突寸前ですり抜けろ。雨より速く走れ。


 

020618

身体は新陳代謝を繰り返すのに、
なぜ記憶は残されるのだろう?
残されるというのは幻想で、実は
記憶もまた生きものなのかもしれない。
組み替わっているのに気づかない。
過去ではなく現在の投影にすぎない。


 

020619

黙っていれば関係を持たなかったことにはならない。

目を合わせなければ会わなかったことにはならない。

考えなければそれだけ早く忘れられるとは限らない。


 

020620

黒い。路面がまだ濡れてる。いや、今も降ってるのか?
白い。高度のせいか?登るに連れて霧が濃くなってきた。
にじんでるのは雨粒?それともゴーグル内の眼鏡の曇り?
足首が冷たい。裾が上がってる?確かめられない。滑る。
大丈夫だ。問題ない。もうすぐ着く。集中!拭わなきゃ。
黒い。乱反射してる。慎重に。前のその前のその前の…


 

020621

「思い出すな。帰りたくなっちゃった」
「あそこは人の住むところじゃないです」
「懐かしい。もう螢が飛んでるかな」


ネコの咽を撫でると、ドレンホースのような食道にあっけなく触ってしまう。
脆いのか、強いのか、恐くて力が入らない。体温が指先から伝わってくる。


 

020622

衝動買いのもう1枚は完全に失敗でした。出だしの数秒で分かった。
あなたはずっと同じことをしてる。同じ曲もまた歌ってる。
時代の要請なんて実は無いんだな。あなたという、あなただけの時代がある。
それだけでいい

 


 

020623

記憶装置が壊れたら、
記憶装置が壊れたら、
記憶装置が壊れたら、
記憶装置が壊れたら、
記憶装置が壊れたら、
記憶装置が壊…


 

020624

雨音、雨音、あまおと…
濡れるのが平気になったのは、
確か去年の今ごろです。

澄んだ灰色。
足先が冷たい。


 

020625

水滴が石を穿つ夢を見るか
それとも唇を雫で湿らすか


どうか疲れないで
この身体よ


 

020626

あぁ、なみだとまんないや。
父親譲りだろうな、
やっぱ。

なんでなみだ流れるんだろ?
どうしてウッてなるんだろ?
水漏れみたい。


 

020627

何も現れないよ
目を逸らしてる。
飛ぶことはできない。
飛び去ってゆくものに
振り向きもしない。


 

020628

路肩に車を停め、山に挟まれた水田地帯を見下ろす。
黄色みを帯びた残照、風に遊ぶ稲穂、汗ばむ肌と蝉の声。
三脚を立て、じっくりと何枚かシャッターを切る。

車に戻り、エンジンを始動し、走行車線に出ると…
あれ?なんで左ハンドル?しかも立って運転してる???
いや、前窓がせり上がってきてる!?ハンドルに背が届かない…
ぶつかるっ!!

ここで目が覚めた。身体が火照って炭火のようだった。


 

020629

漂泊の末路上の屍
雨に朽ち陽に乾く
遍く塵に帰すのみ
罪悪も脆弱も無し
涙も声も跡形無し


 

020630

すべては自身の影。
陥ってはいけない。
姿見の向こう側、
見つめること、
ただ見つめること。


 

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