021101

人と人の間には何があるのか。
人と人間はどうちがうのか。
人は、あるいは人間は、何によって動くのか。
金か、自尊心か、情愛か、責任感か、

だが併し目下の敵は腸炎ウィルス。
かつ単独で深入りしてはいけない。


 

021103

濡れた路地に看板の白い灯りが映る。
こういう旅人宿を探し歩く旅もあった。
ここの水は甘い。みるみる自失してしまう。
棄てられるなら、棄てて逃げるか。
いや、所詮は旅情という空想を求めているに過ぎない。
棄てるなら、決して振り向くまい。


 

021104

例えばあなたの隣に座って
目を逸らさず、遠回りせず
短い、透明な言葉で
ただ話したかったんです
それだけを伝られたなら


 

021105

ぼくという人間がいなかったら
そこには風景の話すらないわけで
何も考えてなくても軽く走り出した
途端に感じる股関節の震動や咽に溜まる唾
歩くために歩いて汗を流す風の中を


 

021106

一年前と何が変わったのか。
恐れは少なくなった。
反面驚きも少ない。
いきなり走る距離を延ばすと、遅れて太股が痛んで、

それで身体を思い出した。
何を考えていたのかは思い出せない。


 

021107

…いい匂い。籾殻の焼ける匂い。
淡い遠景。辻も坂道も生駒山も白く霞んでる。
立冬だから?風向き? それにしても其処此処。

あ、明日は雨だ。


 

021108

「味噌汁に入ってるコレ、大根の葉?」「そう。硬い?」「いや、美味しい。しゃりしゃりして」「葉先なら和え物にするんだけどね。最近は早く傷むからって先を切って売ってるのが多いから」「こっちのは?やっぱり葉の根本だけど」「カブよ。でもこっちはちょっと繊維質すぎるかな」「うーん、すこし歯に残るかな。味も染みにくいみたい」「そういうのは素朴に煮るんじゃなくて、餡掛けの方がいいかもね」「餡掛けかぁ…。なるほど」


 

021109

日記の書き方とその人の生き方は関係が深い。
試しに書き方を変えてみようとすると、案外自分が固着してしまっているのに驚かされる。
ただ言葉遣いや行間のような表層を変えるのではなく、
思考のプロセス自体を変革するのだ。
あるいは、書くのを辞めてしまうというのもひとつの方法かもしれない。
おそらく風景の見え方が変わってくるだろう。但し一時凌ぎではある。


 

021110

外は思ったより寒くなかった。
坂は思ったよりきつくなかった

時間は思ったより短くなかった。

このままでいこう。喜びが増えるように。


 

021111

本屋へ行くには丘をふたつ越える
ふたつめの丘の頂には、剥き出しにされた奇妙な地蔵堂がある。
走ってみて、国道沿いに歩道がないのに気づいた。柵越に初めて川も見た。
帰りは古い小径を見つけてくねくねと辿った。そこここに枯れ木を燃す煙。
いつのまにか地蔵堂の足元へ出た。このあたりも来年には新しい家が建つ。


 

021112

遠いロシアの大きな出来事と、
軒下で咲いた一輪のツワブキ。
ストレスで血まで吐いた人と、
沈む太陽を今日も見送った人。

何のために…


 

021113

飛び込んだ瞬間、悪い予感はした。ただの山道ならまだしも、延々と石畳の坂。しかも荒廃が酷く、よほど慎重にルートを選ばないと、小さく飛び出した石を踏んだだけでも後輪をすくわれバランスを崩す。両肩から肘、手首、浮かした腰から太股、膝、緊張が切れない。転がり落ちた岩石がそのままの恰好で谷川を埋めている。落ちたらどうなる?吹き出した汗が冷たい。ふいに同じ単車で世界を回った冒険家の、生死を賭けたアフリカ縦断の話を思い出す。誤りたかった人の顔。引き返す機会は何度もあったはずだ。でも一度悪路を走り出すと止まるのが怖い。まだ大丈夫、最悪のどん詰まりまではまだ…


 

021114

砂地を這う草木にも
紅染まる仲間がいる

冬を越せない植物は
自ら黒く焦げ朽ちた


 

021115

葉書出すの遅くなった。ごめん。もう、優柔不断が服着てるような人だから。
無言だと一生懸命考えてるように見える?確かに言葉では空虚は埋められないけど…
でも何も考えてないかな。考えてるフリして見せてるだけかも。怒られそうだから。
逆に考えないでいるのって難しいのよ。難しくない?同意求めちゃダメか。
例えば、ぼくの中で「Stand By Me」はやっぱり「スタンド・バイ・ミー」なの。
そういうことにこだわってるなんて、意味あると思う?
…あ、話はぐらかしたのバレましたか。


 

021116

そんなことよりホラ、森を見てごらんなさいよ。
まるで雪が降ってるみたい!
アラ?ね、ちょっと静かにしてみて…
あれ列車の音じゃないかしら?こんな遠くまで。
寒くなるとだんだん音も通るのかしら。不思議ね。


 

021117

草と木のちがいは?
石と岩のちがいは?
日曜日と月曜日のちがいは?

つまりニンゲンの身体が物差しな訳ね。


 

021118

身体を動かせ/血を巡らせろ/汗をかけ
考えろ/考えるな/いたわれ/甘えるな
ぶち壊せ/諦めるな/切り替えろ/切り返せ
踏み込め/つっぱれ/おっつけろ/うっちゃれ
声を上げろ/目を開け/疑え/信じろ


 

021120

記憶力を高める方法を忘れてしまった。

夢を持って現実を生きろというのと、
現実のような夢ばかりみているのと、
どちらのほうが奇妙だろう?


 

021121

唯一ヴァーチャル体験できないのは死でしょうか。
それを知りたいとすれば何のためでしょうか。
準備ができるなら何をすべきでしょうか。
畏れるのはニンゲンだけでしょうか。



 

021122

なるほど!湯たんぽの波型は変形を防ぐためだったのか…
だよなァ、表面積が増えた方が冷めやすいはずなのに。
あ、左前って相手から見たとき左側の前身頃が上になってるってことかな?
しかも男女で合わせ方がちがうのは和服じゃなくて洋服だったか。
あれ?そういや最近ボタンって留めてないな?どっちが前だっけ…


 

021123

あのね、そうね、便秘が解消するかんじかな。
あのね、そうね、大阪でいうと鶴見あたりかな。
あのね、そうね、だいたい端に座ってるタイプかな。
あのね、そうね、あんまり憶える気がないんだよね。
 


 

021124

なぜ靴を履くようになったのか?
素足で地面に触れるだけで分かることがたくさんある。
言葉が頭の中だけでクルクル回ってしまうのは、足が地についてないからだ。
まずザラリと触れろ。
土を握れない手が、どうして心に直接触れられるだろう。


 

021125

鹿が畑を荒らす被害が増えてるそうですね。植林した若芽を食べられる被害も相当だそうです。ただ全体の頭数が増えているというよりは、里に降りてくる頻度が増しているということのようですよ。以前は禁猟だった牝も今は撃っているらしい。
そういえば、ここ数年庭にヒヨドリがよく来るようになって喜んでたんです。つがいでやって来て、万両や真弓の実を啄んでるのが可愛くて。でも反面スズメの姿を見なくなったな、って気づいたんですよ。昔は住宅地で見られるのはスズメくらいだったのに。田んぼで落ち穂拾いをしてるのも、最近じゃカラスばっかりですしね。いったい何が起こってるんでしょう…


 

021126

必然であれば、説明は要らない。
 
 
 
 


 

021127

シンコンの奴らが朝っぱらからさ、
シミジミ見つめ合ったりしちゃって、
シマウマは白地なの?それとも黒地?
シノゴノ言ってんじゃないよ、
シロクロつけてもらおうじゃない。


 

021128

すりばちのそこ
まるい空のむこう
台風だとおもったら
そよかぜのしらべ
そとはさむくない


 

021129

道路脇の傾斜地に踏み込むと、恐ろしいほどずぶりと足がめり込む。
人工的に造成された土地を覆う植物は、病的なまでの生命力を主張している。
地を這う蔦も、刈り取られて剣山のようになった雑草の茎も、叫び、うねり、のたうっている。
ひとつ谷を挟んで向こう側の雑木林とは、一見して様相が違う。奇妙な言い方だが、自然でない。
なぜ棲み分けが起こるのか?無秩序で、強固で、どこかカサブタにも似てる。血流の音がする。


 

021130

それは、神経的外皮肥大症ですね。
つまり感覚の上では実際より身体が大きいと認識してるわけです。
ふだんあまり人の多いところにはいらっしゃらないのでしょう?
そうですね、人ゴミは人ゴミであって人ではないというふうに、
無意識に無視してしまうということができない、とまあそういう。


 

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