020401

「そーか、やっぱりアレは嘘かぁ…。ま、いいけど」
「アタシも、月イチでちょうどいい感じかも」
「正直、この先だってそんなに変わるとは思えないし。結局オトコはいつでも」
「話し始めて1時間もすると必ず結婚の話をするよな」

終電。駅から家まで必死で歩いて30分。汗だく。


 

020402

「それは何かい?ん?ああ、ミノルタ。やっぱアレか、こう、エライ、こう…。そうでもない?ふーん。わしも撮っとったな。うん、もう昔のだから、蛇腹の。ローライフレックス。やっぱりあの頃良かったのはアメリカだな。それとドイツ。レンズがええ。でも小西六も良かった。小さくて。印画紙は外国製か?昔から国産も質は高くて有名やった。サクラの。暗箱でやるのか?ふーん、まあ、ええ趣味や。ふー…、まあ、ほな」

農家の庭先で、てっきり怒られるのかと思った。


 

020403

夜ざくら、くらくら
恋ごころ、ころころ

言葉にできないのは、向き合っていないから。
まっすぐに向かいたい、
まっすぐに向かいたい、
まっすぐに向かいたい。


 

020404

バイパスのすきまに堕ちてみる。
部品をもがれた車。笑う黒い犬。
トンネルの向こう、くねる細道。
図鑑で見た鳥、昔見た野花、風。
なにもない、ところなんてない。
ゆっくりと太陽が沈む。今日も。


 

020405

ふたたびバイパスのすきま。
さあ、すべてを見つめて。考えずに見つめて。見なさずに見つめて。
あるのに見えていないもの、見えないことになっているもの。
ただそこにあるもの、価値の有無に関係ないもの。

さりげなし。さ、ありげ、なし。


 

020406

みたびバイパスのすきま。
キジ?赤い頭の鳥が、忍者みたいに薮の中を走って逃げる。
足音に呼応して、ポチャリポチャリと気配が沼に飛び込む。
あんまり呑気なウグイスは、案外阿呆なんじゃないかしら?

また雨。
消される前に、消えてしまおう。


 

020407

やさしいウソ、
怖がりなウソ、
必要ないウソ、
無意識なウソ、

話せばわかるさ、喰えばわかるさ。
あー、ラーメン美味かったな。


 

020408

ぬるい空気がまとわりつく。室温計25℃。
甘い眠気。身体を横たえた。今日は…何曜日?
眠ったほうがいいかな。でも眠らなくても大丈夫なんだけど…

もしかするとこのまま目覚めないかもしれないなんて
考えるのはニンゲンサマだけなのかな?

前にも同じ帳を見たな。でも今日はブルーにならない。
何故かな?まだぬるい。明日は雨か。


 

020409

マルチドット?スーパー、だっけ?
とにかくようやっと解決策が見えた!
倍の倍で刻め。透き通るようなつやつやオハダ♪

昨日の忸怩を反転してみた。ストッペンゴー
そんなにちがわない気もするけど、
とにかく悪くない気分だゼ。

ガソリンも満タン。

信号が次々青になっていく!


 

020410

全部腐ってる。足の踏み場もない。
埋もれて、覆われて、絡めとられて、滑り落ちて、
人間の気配が残っている方が怖い。

言葉…言葉…、言葉。
挑戦でないなら、やめた方がいい。


 

020411

自分自身の内部から何かを発信しているわけじゃない。そんなに厚い堆積はない。
見ること、聴くこと、知ること、自分という鏡に映るすべてのことを、ただ照射する。
決して借り物でないこと。自ずから自己表現。それが目的ではない。
それよりも、もっといろんなことを知りたい。知らないということも知りたい。

 


 

020415

ああ、あの声は何という名の鳥?この白いのは何という名の花?
帰ったら図鑑で調べてみたいな。でも本当は名前なんて知らなくてもいい。
またいつかこの声を聞いたとき、きっとこのときのことを思い出す。
やがてすべての記憶が永遠に消去されるまで。

文字や記録を棄ててしまったら、
ぼくらは幸せでなくなるのかな?


 

020416

ぜったいこの髪の色は変えない。
ねぇ、本気で黒が似合うと思ってるの?
私のこと、何にも知らないくせに。
どうして分かってくれないの?
これは赤じゃなくて黄色よ。
早く帰りたいわ。
でもひとりにしないで。
何か話してよ。


 

020417

時折ザーッと雨音が強まる。
窓ガラスが融けるように揺らめく。
また不意に空が明るくなる。
目を凝らすと白霧の流速が見える。
きっと山の方では雷が鳴ってる




 

020418

死んだ身体のいろんな場所から、
緑色の新しい身体が生えてくるんだ。
オレだってそうさ。
誰だってそうだぜ。
見えないものが見えるわけじゃない。
ずっと前にも見たことあるだろう?


 

020419

手先が真っ黒になったけれど、新調のタイヤは案外すんなりはまった。
グリースを注し、ブレーキレバーを確かめ、そっとペダルを踏む。
いける。いけるぞ。軽すぎて頼りないくらい。変速機も正常。小気味良い風切り音。
尻に伝わる震動が意外に痛い。段差を越えるときの衝撃がダイレクトに足に伝わる。
思い出す。思い出すぞ。
自分だって、あのころは何とも向き合ってなかった。そのまま逃げたっけな


 

020420

渇く。いくら飲んでも、ヒリつきがおさまらない。
もう水も薬もダメだ。息を吸うのも辛い。
頭がボンヤリしてくる。目も霞んできた。
ゴメンナサイ。サヨウナラ。
今日一日、ぼくはやさしい人でしたか?
ああ、渇いてく。眠らなければ。


 

020421

受話器を当ててた左の耳から、ぬるぬるしたものが大量に出てきたよ。
これぜんぶ、いま君がこぼした愚痴だ。ティッシュに丸めて捨てとくよ。
ホラ、そうしてるうちにいくつものチャンスが目の前を通り過ぎたぜ。
死なない道を選んだんだろ?だったらもっと精一杯生きてみろよ。
どっちだって君の自由さ。ウソかホントか、見分けられるのは君だけだ。
悪いけどどうなろうと知ったこっちゃないね。オレは独りでいくよ。


 

020422

ああ…、やった…。
心地よい疲労感、っなんて気の利いたもんじゃないや。
身体が休めといってる。からだカラカラ空元気。
でも、始まってしまった寂しさがちょっぴりあるから、
まだまだ余裕あるってことだ。カラカラカラ。

夏のにおい、去年のメロディにのって鼻先をかすめた。
あ、鼻づまりマシになってる。


 

020423

かすかすのスポンジみたいに軽くなったら、
自然と新鮮な水分が吸い上げられるみたい

身体が末端の方から鮮緑色に染まってゆく。

 そぞろ神のものにつきて心をくるわせ…

夏草の上を吹く風、
胸を掻きむしる甘い香。


 

020424

せかせか土を掘り出してるアリの後ろで、3倍くらいでっかいボスが睨んでた。
林の入口でホバリングしてたハチが、ブンブン耳の穴に突っ込んできた

畑で土をほじくってるカモ集団の後ろに、きょろきょろ見張り役がひとりいた。
平日の午後なのに、特等席にあぐら煙草で釣り竿並べてるオッチャンがたくさんにいた。

「今日はいいんだよ」「まだ帰るにゃ早いよ」「引いてるよ」「ありゃカメだよ」


 

020425

吠えない犬
啼かない鳥
枯れない花
考えない葦





 

020426

忘れられない人もいるさ。
死んだように眠る日もあるさ。
人間だもの。

目が覚めて、ただひたすらに歩き続けた。
足裏カーッと熱くなる。
小腸ぎゅるぎゅる動き出す。
川沿いの道、大好きな歌。


 

020427

「これ?これは糸南瓜。カボチャや。こうやってカバー付けて温度を上げるんや。あんまり上がり過ぎてもあかんから、こんだけは穴開けとく。よいっ…しょっ…と。ほれ、な。それに小さいうちは虫がつくからな。こっちのはもう虫ついとったわ。大きなったらもう、かさが増えるよってに、大丈夫やけどな」

ザリガニがバックで逃げる。キジが慌てて走り去る。蚊トンボは結合したまんまオロオロ。
みんな大忙し。


 

020428

なにをしに来たのん?
鳥の声を聴いてるのん?


こっち?それどこじゃないよー
ヒマじゃないのよ!オレだってさー
あーなんだっけな?えー、えっと、
なーんか忙しかったんだけど。
ま、いいや。じゃ、そゆことで。


 

020429

もし、植物が数百倍の速度で動くことができたら?
踏み込んだ足は背後から蔓に巻きつかれ、
根という根、粘菌という粘菌に覆い隠され、
血のような花が一斉に咲き乱れたかと思うと、
無数の胞子が弾け全身の養分を飲み干して…

森が、凝結した狂気に見える。


 

020430

分かってないのはぼくの方でした
すみませんでした。
頭でこねくり回した言葉じゃない。
あなたの叫びは胸をわーっと締めた。
自分もあのとき、同じことを考えてた。
思い出せたのは、言葉のおかげだ。


 

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