030102

先を読んだからといって失敗しないとは限らない
しかし未来を描くのは自由だ
無になって流れるのも至難
それを望んでもいない
求むほどに与うべし


 

030103

風になる夢
雨になる夢を
忘れていることに
気づかないでいる
いつのまにか


 

030104

あふれて捨てられるばかりの言葉は
目の前にあっても何も語ってこない
過剰と枯渇、豊穣と空虚

文字は記号、芽は体内にある。


 

030105

布団の中で着替え、毛糸帽とマフラー、なんとなく川沿い、いつの間にか神社の近道、日陰にはまだ雪、畝の窪みには分厚い氷、気泡がガラス玉みたい、祈祷の声、薪のはぜる音、小刻みに足踏みする女の子、竹藪の道、坂道超え、遠くの山の木の枝、真空の空、カラス脅し、黄昏、みんな泥棒風情、犬はハッハ嬉々、手先まで血が巡る、鼻と耳と顎の先が冷、上を向いて歩こう、誰にも聞こえない鼻歌、もう一度最初から
 


 

030106

墨をするときはなんとなく背筋が伸びる。
なのに筆先は云うことを聞かない。肩ばかり凝る。筆が悪いのか?
ところが母の手にかかるとたちまち素直な線を描き出す。
そのままずっと書き続けている。どんどん半紙が黒くなる。
書きながらよく喋る。昔のことなども思い出すらしい。


 

030107

「そういえば以前は、兄弟姉妹の誰と誰が死んだなんてわりとよく聞く話やったね」
「別に慣れてたわけやないけど、死ぬ子供もまわりに多かったから。百日咳なんていうのも、ほんまに百日くらい血も吐きながら全身で咳して憔悴しきるんや。そんなんをまわりでたくさん見たから。だから子供が無事に成長するように一生懸命七五三したり、なんやかやしたり。とにかく成人してくれるだけでもう、それはそれは嬉しいことやったんや」


 

030108

春眠暁を憶えず

平和な島国の残夢

蒼茫の彼方に中国


 

030109

エフェクトに騙されるなよ
エフェクトに騙されるなよ
効果ってなんだい?
効果ってなんだい?
全速力では見えないぜ


 

030110

「みてみてー♪氷のうえ走れちゃうよー。つつっつー」
「ねーねーねー、遊ぶ?遊ぶ?」
「なになに?エサ?エサ?」「オレもオレも」
「なんだ、見てるだけだってよー」「見てるだけだってさ」
「ちぇ、ケチ」「こっちだってヒマじゃねーぞ」


 

030111

田中、原田、畑山、梨本、桑原、堀部、橋本(地種属性型)
長谷川、島本、川口、河野、木下、坂上、久保(地勢属性型)
天野、下田、近藤、源、二階堂、富岡、倉持(地位属性型)
高取、弓長、染川、鎌田、寺井、足利(職業属性型)
奥西、北野、陸奥、加賀、京本(方位地名型)                ?


 

030113

軒先で運命を知ることはできない
水を掛けても病は癒えない
百度回っても叶えてはくれない
そんなことより外へ出て
空をしばらく眺めてみて


 

030115

ききわけ
かぎわけ
すみわけ
いいわけ
よこわけ


 

030116

土地の起伏、つまり尾根や谷筋を手掛かりに水の流れを追う。
どんなに平坦に見える場所でも、微かな傾きは探せば見つかるもの。それが鍵だ。
まったくの水平なら沼底かもしれない。だが水の逃げ道がなければ人は住めないだろう。
ようやく捉えた地肌の感触を、地図上に書き辿ってみる…。!
浮かび上がったのは、原始の姿ではなく
人工の軌跡?


 

030117

まるいまんげつくもがくれ
こうもりのもりみずたまり
ブーツのおんなウエスタン
ひだりハンドルみぎうちわ
こぶしくるぶしかつおぶし


 

030118

見えてきた、見えてきたぞ。
人は何に依って住まうのか?
ゆるやかに水が流れること、
山に添うこと、
適度な平地があること、


 

030119

さようなら
さようなら
あしたはあるかい?
あしたはあるかい?
 


 

030120

さっきまで雨の音がしていました。
いまタイヤの擦れる音が、
アスファルトが乾いたことを
知らせています。
静かに時が流れます。


 

030121

しろい息をはくの
鼻の先だけ冷たいの
森がまたすこし小さくなったの
いつもとちがう角を曲がるの
ほかに誰もいないの


 

030122

もし明日の朝
60歳になっていたら

何が変わって
何が変わらないのだろう


 

030123

排水管から赤い粘土がしみ出しています。ドロで埋まった溝から雨水があふれ出ています。
20年前コンクリートで作った斜面です。ところどころ表面が凹んでいます。
通学路の金網がやぶれています。下端に土がこびりついて錆色に染まっています。
三角の空き地には毎年背より高い草が生えます。年に2回刈り取られます。
家の壁にもひび割れが増えています。深夜もダンプカーが通り過ぎてゆきます。


 

030124

うかれてた時代さ
みんな夢を見ていた
でも本当はすべて夢
まだ夢の中
いまこそ夢の力をみせて


 

030125

壁に番号の入った二所帯一棟の家、ぐるっとフェンスで囲まれた貯水塔、ベランダを埋め尽くす洗濯物、家庭菜園の片隅に表札を掛けた手作りの独り住まい、全部が錆びきってる階段のない歩道橋、土壁の日本家屋と大理石の宮殿に挟まれた展望台、直線も対照形もない入り組んだ道路、池の端を回る会員制の散歩道、春には桜でいっぱいになる三角の公園、教会の裏の焼き肉屋の駐車場、外で煙草をもみ消す半ズボンのサーフボード店主、誰も居ない携帯電話の営業所とシャッターに貼り紙の写真屋、ゆるやかな下りとゆるやかな上り、バス停の人の列


 

030126

気が弛むと身体も弛むぜ
身体が締まると気も締まるぜ
迷わず行けよ
心ひとつ、道もひとつ
地べたが教えてくれら


 

030127

朝から晩まで線を引く
窓の外は雨の線
ひとつの線
百の線
千の線


 

030128

見るのではない   触れるのだ
読むのではない   感じるのだ
考えるのではない  掴まえるのだ
学ぶのではない   積み上げるのだ
 


 

030129

風で何もかも飛んでしまった。
カメラも、眼鏡も、
服も、お金も、
家も、家族も、
夢も、時も、


 

030130

一瞬の白昼夢。
世界が再び戦争へ向かい、瞬く間に価値観は反転し、
昨日の理想は紙屑と化し、隣人はみな狂気に感染り、
自らもまた抗うことなく、ひたすら日々の糧を貪り、
回転する天体の虚しさを、空から眺めるように想い、


 

030131

後回し、
後回しを後回し、
後回しの後回しを後回し、
後回しの後回しの後回しを後回し、
後回しの後回しの後回しの後回しで先回り?


 

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