020801

臭いを嗅ぎ分けるのは大切な能力だ。
微妙な味を見分ける舌先の感覚も同じ。
とかく刺激過剰な現代では軽視されがちだが、
本来生死にかかわる重大な感覚器である。

「このナス、もうやばいよ。ホラ、微かに(クンクン…)」
「あら?ホント?ふーん…。でもアンタはお父さん似だから大丈夫よ」


 

020802

もう全部いっぺんに捨ててしまえよ。
そのつど捨ててゆけば何も困らないのに。
手の届かないものや見過ごしてしまうものなんて、
想像できないくらいいっぱいあるんだってこと。
それに人生は引き算じゃないってこと。


 

020803

事実かどうか、真実かどうか、
その空虚な論争に惑わされてきた。
本質は残す行為であるということだ。
定着への執着。
死をもって終わる世界なら無縁。


 

020804

記憶の中よりずっと急坂だった峠道、
幼い頃いつも感じた大阪という異次元、
ふと口ずさんだ夜と暁の間の674、

なぜこの場面が残されたのだろう?
考えない。考えはおよばない。


 

020805

うれしいことば

あたたかいことば

心にもらったぬくもり
済んだ想いをまた返す
そういう人でいたい


 

020806

久しぶり。街角でふと出会ってしまう感覚。
知らないうちになくしてたこのタイミング。
忘れたくない。でも必ずまた失ってしまう残酷。
何度も甦ってそのつど思い出せたならグー。

徹頭徹尾、真夏の呪文、徹頭徹尾。


 

020807

言葉を過不足なく補えたわけじゃない。
でも肝心な何かが伝わってる気がする。
不思議な対話の実感。幻だとしても。
すこしずつ、本当にすこしずつだけど
進んでる感じがするからまだ続けよう。
信じるものを見つけたら走り続けよう。


 

020808

薄っぺらくても積み重なる物質と、
ただ通り過ぎるだけの情報の乖離。
物質は朽ちる。
死んでるようでも生きている。
情報は止まっている。
生まれたときから死んでいる。


 

020809

オイルダンパー、スタビライザー、ボールベアリング、プロポ、
シャフト、マブチモーター、キョーショー、バッテリー、シャーシ!

おばあちゃんと夏休み、山積みのおもちゃ、
ひろがるイメージ、絶対風景ではない対象たち、
特定肥大化純粋映像的拡張性幼少記憶…


 

020811

いつか恋する気持ちも忘れてしまう、
慈しむゆとりも見失ってしまう、
みんなそうなる、必ずそうなる、

誰のためにそんなこと言うの?
道を探すこと諦めてしまうの?
友達だから、裏切り者になりたい。


 

020812

砂地に繁殖する草は、上に伸びた繁茂な葉よりも、
パイプラインのように地を這い回る根こそ生々しい。
すこしでも水気のある場所を嗅ぎ周り、日々貪欲に
10センチ、20センチと成長しているのだろうか?
驚異的な生命力に包囲され、唇まで乾いてゆく。
しかし身動きを止めると、恐怖は去る。
風の音だけが動き続けている。


 

020813

出会えなかった風景を惜しむ欲望。
果たして現実とは無限に広がる時空の総体か?
わかってはいても、人間の欲もまた際限がない。
戸惑うのは量による質の変化を、価値の変化と考えるからだ。
情報において然り、情交において然り。
すべては点に過ぎない。記憶と予測が邪魔している。


 

020814

虹、あのときの虹。
あのときの虹。
あのときの…

何年前、
何年先?


 

020815

つい昨日のことを遠く感じたり、
昔のことを生々しく思い出したり。

同じ川沿いの道をびっしょり汗かいて登る。
季節がひと巡りしつつある。
いくつかの考え事を、何度も仕切り直しながら。


 

020816

夢を見ない眠りから醒めて
死んでたような気がした
肌の火照りを氷で冷やすと
身体はかえって発熱した
この熱もやがて何処かへ消えてゆくよ
生きているから伝えることができる


 

020819

砂粒は風に運ばれ
あらゆるものに付着し
どんな小さなすきまをも這い回り
やがて全身を侵し
枯渇させ土と一体化し
また風とともに舞い上がる


 

020820

今日の今日、いまのいま、

不意にぎゅーっと視界が広がって遠くなる。
誰も未来のことは知らない。不安もない。

 


 

020821

立ち止まっているのは苦痛なので、
とにかく歩いていたい。歩きたい。

途中で言葉がねじれてますね。
理由を探したら旅には出られません。
死を迎えるのも同じ気持ちでしょうか。


 

020822

「この川はどっから来るか分かる?そう、荒池のほう。あそこからつながってんの。塞いでて見えんけど。そんで向こうもなホラ、トンネルになっとるやろ?ずーっと駅をくぐって向こうへ抜けんの。子供のころはカメやらコイやら捕れたんやけどね。ホンマやで。今もホラ、トンボ。でももう登って来れんようになったんやな。あそこにキリの木があるやろ?家の庭にあったやつが種を散らして増えたんや。もうあの服部さんとこのだけになってしもた。蚕、分かる?カイコ。昔ここはその集積所でな。郡山のニチボウまで運んでたんや。家も繊維工場やっててな。この前の道もこんなに狭かったんやで。こんなんや」


 

020823

─ やはり、どうしても本当のことは言えないよ。
─ じゃ、貴方にとって秘密って何なの?何のために隠すの?
─ では訊くけれど、それが事実であることの意味って何だい?写真があれば疑わないのか?
  嘘をつくつもりはないんだ。でも隠すこともまた事実なんだよ。
─ 屁理屈よ。隠されるなんて屈辱だわ。
─ 誤解だ。君にとって見えないものは無いのと同じことだ。


 

020824

あの眼…

ハゲタカの眼だ!
あるいはワニ、
人間の眼じゃない。

喰うのか?
同族でもやはり喰われるのか?


 

020825

石段

西日
4色
ときめき
ビール
さよなら


 

020826

何であれば本当らしいか?
悪くすれば終日頭を悩ませる。
所詮現実そのものではない。
正解はないし、すべて誤訳だ。
明日がやってくるというのも幻想だし、
ロジックに弄ばれるのも病気じゃない。


 

020827

黒光りする床。自然に膝が折れる。肌にひいやりと冷たさが伝わる。
阿弥陀如来の手先を見つめ真似る。闇の奥から見下ろす閻魔王と対座する。
人間が創ったものだ。しかしそこに居るのは人間ではない。何だ?
心静かなまま、ふと経文を手に取る。項を手繰り般若心経の文字を眺める。
漢字の羅列はそれそのままとして存在しているようでもあり、
そうかと思うと人間のあざとさが見え隠れするようにも感じる。
…色即是空、空即是色、
樹上を渦巻く風の音が堂内を反響している。


 

020828

大雨の午後、しっぽり濡れた案内状と膨らんだ封書が一通。
2分遅れで、うっかり人違い。へこへこ、きょろきょろ。
水の在処を見つけたら、誘われるまま、流されるまま。
地図を広げて、何もかも忘れて、どんどん広げて、
不意に我に返って、なんだか恐くて、腹蔵が痙攣してた。
しばらく寝転んで天井眺める。またわくわく、ふつふつ。


 

020829

「なんかこう、楽しい話はないか?」「楽しい話ねぇ…。そういうの、言われてすぐパッと出ないもんだな。辛いとか苦しいって話ならいくらでも楽に出てくる気がするんだけど」「ダメダメ、そんなこと言ってるから暗いんだよ。こういうのは気の持ちようでさ」「いやいや難しいよ、噺家じゃないんだから。だいたい暗い話なんていわば雑草みたいなもんでね、わざわざ探さなくったってそこらじゅうに生えてるだろ。そこいくと楽しい話は花だ。いつでもどこでもってわけにはいかないけど、なんとなく有り難いもんだろ。金払ってでもって、思うじゃない」「なるほど。なら、タメになる偉い話はさしずめ木だ。どーんと立って、根も深い。一朝一夕じゃ出ないし」「いずれにしたって潤いがなきゃね」「そういうこと。ど?一杯」


 

020830

道頓堀の七坪の店が、口コミで評判になった。
行列するのは嫌だから、深夜に数人連れだって行ったっけ。
10年で郊外チェーンを展開する優良企業に!

新聞記事にあったとおり、いつの間にか近所にも大型店が出来ていた。
順番待ちも出るお昼どき、Tシャツにキャップの店員が忙しく立ち回る。
カウンターに座ると、正面に徹底的な分業コンベアふう厨房。20人はいる。
スープはスキヤキみたいな甘辛味。白菜もいっぱい。あぁ、こんなだったな…
でも、もう来ることないな。


 

020831

価値の大小はないという前提を、
本人がつい忘れておりました

理解が足りなかったのかもしれません。
しかし天の邪鬼は虚無の親戚ですから、
強い意志を持たなければ危険でしょう。


 

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